表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/10

第六話 終わらない物量

スクラップ遺跡の奥は、不気味なほど静かだった。


足音だけが、錆び付いた通路へ反響する。


崩れた配管。


天井から垂れ下がるケーブル。


壁には、数百年前に人類が残した警告表示が今も薄っすらと残っていた。


「ゲームと変わらない……。」


司は小さく呟く。


マップも。


通路の分岐も。


落ちている瓦礫の位置まで覚えている。


「この先だ。」


曲がり角を一つ抜ける。


巨大な扉が姿を現した。


高さ十メートルほどはある鋼鉄製のゲート。


中央には歯車を模した紋章。


「ここが……。」


シルヴィアが息を呑む。


「ボス部屋。」


司は頷き、ゆっくり扉へ手を触れた。


重々しい駆動音が鳴る。


ゴゴゴゴゴ……


巨大な扉が左右へ開いていく。


広い空間だった。


円形の部屋。


天井は高く、中央だけが照明で照らされている。


そこに、一体の巨大な機械が立っていた。


全高四メートル。


両腕は巨大なシールド。


胸部には赤く輝くコア。


頭部には一本角。


視界へ赤い文字が浮かぶ。



【Guardian Alpha】


Lv.10



「やっぱりいた。」


司は静かにビームガンを構える。


その瞬間。


ガーディアン・アルファの目が赤く光った。


ギィィィ……


両腕が展開する。


内部からゼリー状の物体が次々と吐き出された。


ぼとり。


ぼとり。


ぼとり。


床へ落ちたそれは、一瞬で人型へ変形する。


アルファドローン。


一体。


二体。


五体。


十体。


「うわっ……!」


シルヴィアが息を呑む。


「まだ増える!」


次々と現れる。


止まらない。


「これがガーディアン・アルファ。」


司は冷静だった。


「自分ではほとんど戦わない。」


「無限にアルファドローンを生産して押し潰す。」


正式サービス当時。


初心者の多くはここでゲームオーバーになった。


鉄パイプでは処理が間に合わない。


囲まれて終わる。


だから武器を強化してから挑む。


それが常識だった。


「シルヴィア!」


「右を任せる!」


「うん!」


アルファドローンが一斉に飛び掛かってくる。


「今だ!」


パンッ!


ビームが一直線に走る。


先頭のアルファドローンを貫き、そのまま装甲ごと溶かした。


一撃。


続けて二発目。


三発目。


四発目。


Quality MAXのビームガンは、アルファドローン程度なら弱点を狙う必要すらない。


命中した瞬間、外殻ごと焼き切る。


「すごい!」


シルヴィアも引き金を引く。


ビームが命中する。


アルファドローンは抵抗する間もなく崩れ落ちた。


「一発で倒せる!」


「焦るな!」


司が叫ぶ。


「敵を見るんじゃない!」


「次に湧く場所を見ろ!」


「え?」


その瞬間。


床の発生口が開いた。


アルファドローンがまた姿を現す。


「そこ!」


パンッ!


シルヴィアのビームが現れたばかりのアルファドローンを撃ち抜いた。


「できた!」


「その調子!」


二人は背中を預けながら撃ち続ける。


もう数を数える余裕はなかった。


部屋を埋め尽くすアルファドローンの群れへ、二人は無言で撃ち続けた。


次々とアルファドローンが消えていく。


やがて。


ガーディアン・アルファの動きが止まった。


「来るぞ!」


司が叫ぶ。


巨大な腕が持ち上がる。


初めてボス自身が動いた。


鋼鉄の拳が振り下ろされる。


ドォン!


床が砕ける。


シルヴィアが飛び退く。


「速い!」


「でも単調だ!」


ゲームで何百回も見た攻撃。


横薙ぎ。


叩き付け。


踏み潰し。


パターンは変わらない。


「今!」


ガーディアン・アルファの胸部。


赤いコアが露出する。


司は迷わず撃った。


青白いビームが一直線に突き刺さる。


コアへ直撃。


装甲が赤熱する。


「シルヴィア!」


「うん!」


二本のビームが同時にコアを撃ち抜いた。


ガギンッ!!


亀裂が走る。


ガーディアン・アルファが大きくのけ反った。


さらに一発。


もう一発。


コアの亀裂が広がる。


そして――


轟音と共に巨大な身体が崩れ落ちた。


床が揺れる。


土煙が舞い上がる。


静寂。


アルファドローンは、一体残らず動きを止めていた。


「……勝った。」


シルヴィアがその場へ座り込む。


「これが……ボス。」


司もゆっくり息を吐いた。


「本来、ここは五人パーティで攻略する前提のボスだ。」


シルヴィアが目を丸くする。


「五人?」


「ああ。」


「前衛が囮になって、後衛がドローンを処理して、最後に全員でコアを撃ち抜く。」


「それが教科書通りのやり方だ。」


司は静かに続けた。


「それを二人でやり切った。」


「Quality MAXの装備がなければ、ここまで辿り着く前に終わってた。」


「輪ゴムまで遡れば……あの一本が今日に繋がってるんだ。」


ようやく、本当の意味でスタートラインに立てた。


その時だった。


ガコン。


部屋の中央で何かが落ちる音が響いた。


司はゆっくりと顔を上げる。


その音を、忘れるはずがなかった。


「……来た。」


土煙の向こうに、鈍く輝く宝箱が姿を現した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ