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第五話 輪ゴムが命綱

変換装置の投入口へ、司は輪ゴムを一つ放り込んだ。


【Rubber Band ×1】


【Weapon Category Confirmed】


【変換を開始します】


白い光が装置の中で渦を巻き、数秒後、排出口から一本の黒い拳銃が姿を現す。


【Beam Gun】


【Quality 1】


「……できた。」


司が拾い上げると、重量も質感も本物そのものだった。


「輪ゴム一本で……?」


シルヴィアは目を丸くする。


「変換装置は素材の価値じゃなく、武器カテゴリだけを見てる。同じレアリティなら輪ゴムでも銃でも結果は同じだ。」


「そんなことあるんだ……。」


「ゲームでも有名な裏技だった。」


司は笑うと、輪ゴムの箱を三つ並べた。


合計千五百本。


「ここからが本番だ。」


次々と輪ゴムを投入する。


Qualityはみるみる上昇し、やがて【Quality MAX】へ到達した。


完成したビームガンは青白い発光ラインをまとい、初心者装備とは思えない美しさを放っている。


一本。


二本。


三本。


四本。


すべてQuality MAX。


「四丁も?」


「二人分と、壊れた時の予備だ。」


「私の分もあるの?」


「当然だ。」


さらに司はナイフも作り始める。


「ビームが効かない敵もいる。近寄られた時の備えも必要だ。」


輪ゴムは減っていくが、まだ十分残っている。


「このガレージじゃ、輪ゴム一つが命綱なんだ。」


一通り武器を揃えると、司は街で買ってきた革袋を差し出した。


「これ、お前の分。」


「かわいい……。」


シルヴィアは嬉しそうに肩へ掛ける。


「アイテムバッグだ。武器も工具も全部入る。」


見た目以上の収納力に驚きながら、シルヴィアはビームガンやナイフをしまっていく。


「これから先、お前にも戦ってもらう。」


シルヴィアは少しだけ不安そうな顔を見せたが、静かに頷いた。


「……うん。お兄ちゃんの隣で戦う。」


司は満足そうに頷き返す。


装備は揃った。


デモンフレーム。


ガールズフレーム・アリス。


Quality MAXの武器。


しかし、司はすぐには出発しなかった。


「まずは性能確認だ。」


二人は遺跡入口まで歩く。


物陰からアルファドローンが姿を現した。


「ギギ……。」


司はビームガンを構える。


「まずは俺がやる。」


引き金を引く。


青白い光線が一直線に走り、アルファドローンの胸を貫いた。


一瞬で装甲が焼き抜かれ、コアは消滅する。


敵は爆発すらできず、その場へ崩れ落ちた。


「……一発。」


シルヴィアが呆然と呟く。


「鉄パイプと全然違う……。」


「これがQuality MAXだ。」


ゲームと同じ性能。


弱点を狙う必要すらなく、装甲ごと撃ち抜く。


ようやく、本来の初心者装備を取り戻した。


「これなら安心?」


「いや。」


司は首を振る。


「ようやくスタートラインだ。」


表情が引き締まる。


「この先のボス、ガーディアン・アルファはアルファドローンを無限に生み出す。武器が弱ければ雑魚処理だけで押し潰される。」


だから正式サービスでも、十分に強化してから挑むのが常識だった。


「これでやっと挑戦権を得た。」


シルヴィアはビームガンを見つめ、小さく息を吸う。


「私も撃っていい?」


「ああ。」


二体目のアルファドローンが現れる。


「落ち着いて。照準を合わせて、引き金を引くだけだ。」


シルヴィアは深呼吸し、ゆっくりと構えた。


青白い光が夜を切り裂く。


ビームは正確に敵の胸を撃ち抜き、アルファドローンは一瞬で崩れ落ちた。


「倒せた……。」


「十分戦える。」


司は微笑む。


「だから渡したんだ。」


三体目が現れる。


「今度は待て。」


「敵が出てくる前に、出口を見るんだ。」


シルヴィアは目を細め、通路の陰を見た。


動く気配。


「そこ!」


引き金を引く。


飛び出す前のアルファドローンを撃ち抜いた。


「……先に見れば怖くない。」


「その通りだ。」


シルヴィアは嬉しそうに笑った。


「ありがとう、お兄ちゃん。」


その笑顔を見ながら、司は静かに空を見上げる。


「……エンペラードローン。」


ゲームには存在しなかった敵。


ゲームの知識が、この世界でも通用する保証はない。


だから油断はできない。


それでも、まず越えるべき壁は決まっている。


「デソラを出るのは、あれを超えてからだ。」


司はビームガンをホルスターへ収める。


二人は並んで遺跡の奥へ歩き出した。


最初の試練――ガーディアン・アルファが、静かに待ち受けていた。


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