第五話 輪ゴムが命綱
変換装置の投入口へ、司は輪ゴムを一つ放り込んだ。
【Rubber Band ×1】
【Weapon Category Confirmed】
【変換を開始します】
白い光が装置の中で渦を巻く。
数秒後。
排出口から一本の黒い拳銃が姿を現した。
【Beam Gun】
【Quality 1】
「……できた」
司が拾い上げる。
重量も質感も、本物そのものだった。
「輪ゴム一本で……?」
シルヴィアが目を丸くする。
「変換装置は素材そのものの価値じゃなく、カテゴリーを基準に変換するらしい。」
司はビームガンを眺める。
「同じ条件なら、輪ゴムでも武器として扱われるってことだ。」
「そんなことあるんだ……」
「俺も信じられなかったけどな。」
司は苦笑しながら、残った輪ゴムの箱を三つ並べた。
合計千五百本。
「ここからが本番だ。」
次々と輪ゴムを投入する。
白い光が何度も明滅する。
【Quality 10】
【Quality 20】
【Quality 50】
数字が上がっていき、やがて表示が変わった。
【Quality MAX】
「よし。」
完成したビームガンは青白い発光ラインをまとい、先ほどとは比べものにならない完成度を見せている。
司は同じ工程を繰り返す。
一本。
二本。
三本。
四本。
「四丁も?」
「二人分と予備だ。」
「私の分もあるの?」
「当然だ。」
さらに司はナイフも作った。
「遠距離攻撃が効かない相手もいる。接近された時のために持っておく。」
輪ゴムはみるみる減っていく。
それでも、まだ十分な量が残っていた。
「……輪ゴムが武器になるとはな。」
司は完成した装備を眺める。
「世の中、何が役に立つか分からないもんだ。」
◇ ◇ ◇
一通りの装備を揃えると、司は街で買ってきた革袋をシルヴィアへ渡した。
「これ、お前の分。」
「かわいい……。」
シルヴィアは嬉しそうに肩へ掛ける。
「アイテムバッグだ。武器も工具も入る。」
「便利だね。」
シルヴィアはビームガンやナイフを一つずつ収納していく。
「これから先、お前にも戦ってもらう。」
シルヴィアの表情が少しだけ強張った。
それでも。
「……うん。」
静かに頷く。
「お兄ちゃんの隣で戦う。」
「ああ。」
司も頷いた。
「無理はするな。危なくなったら俺の後ろへ下がれ。」
「分かった。」
二人は装備を整え、遺跡入口へ向かった。
◇ ◇ ◇
物陰からアルファドローンが姿を現す。
「ギギ……」
司はビームガンを構えた。
「まずは俺がやる。」
引き金を引く。
青白い光線が一直線に走った。
アルファドローンの胸部装甲を撃ち抜き、内部のコアへ直撃する。
一瞬。
機体が震え、そのまま崩れ落ちた。
「……一発。」
シルヴィアが呆然と呟く。
「鉄パイプと全然違う……。」
「これなら戦える。」
司はビームガンを確認する。
威力は十分。
少なくとも、アルファドローン程度なら問題ない。
だが。
「次はもっと厄介な相手だ。」
司は遺跡の奥を見る。
「ガーディアン・アルファ。」
「アルファドローンを大量に引き連れてくる。」
「一体一体は弱くても、数が増えれば厄介だ。」
「だから雑魚を素早く処理できる武器が欲しかった。」
シルヴィアは自分のビームガンを見る。
「私も撃っていい?」
「ああ。」
司は頷く。
「落ち着いて照準を合わせろ。」
二体目のアルファドローンが姿を現す。
シルヴィアは深呼吸した。
銃を構える。
「……。」
照準を合わせる。
そして。
引き金を引いた。
青白い光が夜の遺跡を走る。
アルファドローンの胸部を正確に撃ち抜き、機体が崩れ落ちた。
「倒せた……。」
「十分だ。」
司は微笑む。
「ちゃんと当てられてる。」
三体目。
今度は物陰から現れようとしている。
司は手を上げた。
「待て。」
シルヴィアが止まる。
「敵が出てくる場所を先に見るんだ。」
シルヴィアは目を細め、通路の奥を見る。
「……いる。」
「そうだ。」
アルファドローンが飛び出した瞬間。
「そこ!」
引き金を引く。
青白い光線が敵を貫いた。
「……先に見れば、怖くない。」
シルヴィアが小さく笑う。
「その通りだ。」
司も頷いた。
「戦い方を覚えればいい。」
シルヴィアは嬉しそうに笑った。
「ありがとう、お兄ちゃん。」
その笑顔を見ながら、司はふと空を見上げた。
あのエンペラードローン。
この世界で遭遇した、未知の敵。
司が知っている情報だけでは、到底判断できない存在だった。
だからこそ。
「デソラを出る前に、まずはあいつへの対策を考えないとな。」
司はビームガンをホルスターへ収める。
「そのためにも、今は強くなる。」
シルヴィアが隣に並ぶ。
「うん。」
二人は並んで遺跡の奥へ歩き出した。
その先には、巨大な機体が待ち受けている。
ガーディアン・アルファ。
まずは、目の前の敵を倒す。
それが今の二人にできることだった。




