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第七十六話 追いつく者

クロム・ラビリンス三百階。


センチネルを倒した司たちは、ゲートの向こうへ進んでいた。


そこには、広い空間が広がっていた。


壁際には古い機械が並び、その中央に一台のテレポーターが設置されている。


「……これがテレポーターか」


司が装置を見る。


表面には厚く埃が積もっている。


長い間、使われていないようだった。


アルマが端末を接続する。


「起動していません」


「一階のロボットなら修理できるんだったな」


「はい。ですが、帰還先がどこなのかは分かりません」


司はテレポーターを見る。


「今は使わないほうがいいな」


シルヴィアが頷く。


「そうだね」


アルマは壁際の機械に目を向けた。


「こちらも確認します」


端末を向け、機械の状態を調べる。


「……記録領域が残っています」


「何か分かるか?」


「いえ。ログは消去されているようです。現状では、何に使われていた機械なのかも特定できません」


司は古い機械を見回した。


ここに何があったのか。


誰が使っていたのか。


今のところ、分かることは何もない。


「……今は後回しだ」


司はテレポーターから離れた。


「Kaliを先に探す」


「うん。あのまま放っておけないしね」


シルヴィアが答える。


アウラも頷いた。


「……追いつきましょう」


司たちはゲートの部屋を後にした。


三百階から、階段を降りていく。


二百九十七階。


二百階。


さらに下へ進む。


百九十七階。


階層を戻るにつれて、周囲の様子も変わっていく。


敵の姿は少ない。


通路には埃が積もり、壁や床には壊れた機械が放置されている。


動いているロボットもいた。


だが、正常には動いていない。


同じ場所を歩き続けるもの。


壁に何度もぶつかるもの。


腕だけを動かし続けるもの。


「……誰も通ってないみたいだな」


司が呟く。


「はい」


アルマが周囲を確認する。


「長期間、整備されていない状態です」


司は足を止めない。


さらに下へ進む。


百階。


五十階。


三十階。


そこで。


「……待って」


シルヴィアが足を止めた。


「どうした?」


「音がする」


司も耳を澄ます。


微かな機械音。


一定の間隔で、何かを操作しているような音が聞こえる。


「……行ってみるか」


司たちは慎重に進む。


通路の先。


開けた空間が見えてきた。


そして。


「……いた」


シルヴィアが小さく呟く。


紫色のメタトロンフレーム。


Kaliだった。


Kaliは端末の前に立っている。


その周囲には、七体のHydraが並んでいた。


司が目を細める。


「……Hydra」


七体とも、十八階で見たものと同じ機体だった。


Kaliは司たちに気づいていない。


端末を操作している。


画面に何かが表示される。


Kaliがしばらく画面を見つめる。


そして、別の操作を行う。


「何をしてるんだ……?」


司が小さく呟く。


その声に反応したのか。


Kaliの手が止まった。


ゆっくりと振り返る。


司たちと目が合う。


「……あなたたち」


淡々とした声だった。


司が武器を構える。


「Kali」


Kaliは司を見る。


しばらく無言のまま立っている。


「……三百階から?」


司が少し驚く。


「知ってるのか?」


Kaliは答えない。


再び端末へ視線を戻す。


「まだ終わっていない」


「何をしてる?」


Kaliは端末を操作する。


「……確認している」


「何を?」


「それは、あなたたちには関係ない」


司は一歩前へ出る。


「そう言われて引くと思うか?」


Kaliが司を見る。


「……思わない」


その言葉と同時に。


KaliがHydraへ視線を向けた。


「Hydra」


七体の機体が一斉に動く。


複数の首が持ち上がる。


巨大な機体が司たちへ向き直る。


「来る!」


シルヴィアが叫ぶ。


司が武器を構える。


「全員、構えろ!」


アルマがHydraを確認する。


「レベルは75です」


「俺たちより低い」


司がHydraを見る。


「でも、油断するな」


「はい」


アルマが続ける。


「浸食にも警戒してください」


司の表情が変わる。


「……ああ」


シルヴィアも構える。


「前みたいなのが来るかもしれないってことね」


「その可能性があります」


七体のHydraがゆっくりと前へ出る。


動きが揃っている。


司はその動きを見ながら、Kaliを見る。


だが。


Kaliはもう司たちを見ていなかった。


端末へ視線を戻し、再び操作を始めている。


「……まだ、やることがある」


Kaliの声だけが聞こえる。


次の瞬間。


七体のHydraが、一斉に動いた。


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