↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
79/79

第七十七話 追う者、逃げる者

クロム・ラビリンス三十階。


七体のHydraが、一斉に動き出した。


「来るぞ!」


司が叫ぶ。


七本の首が、それぞれ別の角度から襲いかかってくる。


だが、動きはばらばらではない。


一体が攻撃すれば、別の一体が退路を塞ぐ。


回避した先には、すでに別の首が待ち構えていた。


「……連携が厄介ですね」


アルマが大型チェインガンを構える。


「一体ずつなら、対処できるんだが……!」


司は横へ飛び退き、迫る首をかわした。


直後、別の首が床を叩く。


衝撃で破片が飛び散った。


「お兄ちゃん!」


「大丈夫だ!」


司は体勢を立て直し、ビームガンを構えた。


「まずは一体ずつ、動きを止める!」


シルヴィアがビームを放つ。


アウラとステラも、スノーディスペンサーガンから雪玉を連射した。


しかし、七体のHydraは攻撃を分散させながら、互いの隙を補っている。


一体を狙えば、残りがこちらを攻撃する。


防御に回れば、別の首が間合いを詰めてくる。


「……七体で一つの生き物みたいだな」


司が呟いた。


そのとき。


司の視界に警告が浮かんだ。


【浸食】


「……!」


見覚えのある表示。


だが、警告は一瞬で消えた。


「……前回と同じだ」


司は眉をひそめる。


「レベル60を超えた俺たちには、侵入を確立できていないのか」


アルマが頷く。


「その可能性が高いです。ただし、現時点では断定できません」


「分かってる。今は目の前の敵に集中するぞ!」


司は再びビームガンを構えた。


◇ ◇ ◇


戦闘は続いていた。


「アウラ、ステラ! Hydraの足元を狙え!」


司が叫ぶ。


「はい!」


「……分かった」


二人が銃をチャージする。


巨大な雪玉が床へ向かって放たれた。


Hydraの足元で雪玉が砕け、凍った破片が広がる。


「そのまま撒いてくれ! 足場を悪くするんだ!」


アウラとステラは、Hydraの進路を塞ぐように雪玉を撃ち込んでいく。


Hydraが突進する。


だが、凍った床に足を取られ、巨体がわずかに傾いた。


「今だ!」


シルヴィアがビームを放つ。


Hydraが体勢を立て直そうと首を引いた。


その隙に、アルマの大型チェインガンが火を噴く。


装甲が砕けた。


「効いてる!」


「そのまま押し切る!」


司たちの攻撃が、一体へ集中していく。


損傷したHydraは体勢を崩し、複数の首を床へ垂らした。


だが、倒れる直前。


その機体が不自然に震えた。


◇ ◇ ◇


同時刻。


離れた場所で作業を続けていたKaliの端末に、警告が走った。


損傷したHydraの状態表示が急激に変化している。


「……まずい」


Kaliは端末を操作した。


だが、損傷の進行は止まらない。


彼女はすぐに通信を開いた。


『撤退』


短い命令が送信される。


◇ ◇ ◇


「Kaliが逃げる気だ!」


司はHydraの隙間を抜けようとした。


だが、残るHydraが一斉に動き、追跡を阻む。


その直後だった。


損傷したHydraが最後の力を振り絞る。


長い首が、司の脚へ向かって伸びた。


「しまっ――!」


牙が脚部に食い込む。


「お兄ちゃん!」


シルヴィアの声が響いた。


次の瞬間。


閃光。


轟音。


Hydraが自爆した。


爆風に吹き飛ばされた司は、床へ叩きつけられた。


「ぐっ……!」


脚部が大きく損傷している。


立ち上がろうとしても、力が入らない。


「司!」


アルマが駆け寄る。


司は歯を食いしばり、どうにか顔を上げた。


「……Kaliは?」


視線の先には、残るHydraが立ち塞がっていた。


その向こうにいたKaliの姿は、すでに消えている。


「……逃げられたか」


司は拳を握ろうとした。


だが、腕にも力が入らない。


「まだ……死ねないからな……」


声を絞り出す。


「司、無理をしないでください」


アルマが損傷を確認する。


「この状態では追跡できません。撤退しましょう」


司は悔しそうに顔を歪めた。


「……分かった」


シルヴィアたちが司を支える。


Kaliを逃がした。


しかも、Hydraの一体は自爆した。


何もかもが、思い通りにはいかなかった。


◇ ◇ ◇


一方、その頃。


クロム・ラビリンス十八階。


レオンと十二人の天使軍兵士は、Kaliの動向を監視していた。


「隊長、反応が動きました!」


兵士の報告に、レオンが端末を見る。


「Hydraか?」


「はい。こちらへ接近しています」


通路の奥から、一体のHydraが姿を現した。


「……一体だけか?」


「周囲に、ほかの機体は確認できません」


レオンは武器を構えた。


「警戒しろ。相手はレベル75だ。無理に正面から押し切ろうとするな」


「了解!」


Hydraが首を伸ばし、兵士たちへ襲いかかる。


「散開!」


レオンたちは左右へ分かれた。


長い首が床を叩く。


兵士たちは攻撃を避けながら、少しずつ距離を取った。


「一体だけでも、十分に厄介だな……!」


レオンが銃を撃つ。


弾丸が装甲に当たるが、決定的な損傷には至らない。


Hydraが再び首を振り下ろす。


兵士の一人が吹き飛ばされた。


「負傷者を後退させろ!」


「隊長、こいつの動き……!」


別の兵士が叫ぶ。


「前回の戦闘記録にあった集団戦とは違います!」


レオンはHydraの動きを注視した。


確かに、記録にあった集団戦とは違う。


攻撃の間に、わずかな間が生まれている。


ほかの首が退路を塞ぐこともない。


「……単独なら、動きに隙がある!」


「そこを狙え!」


兵士たちが一斉に攻撃を集中させた。


Hydraの脚部が損傷する。


動きが鈍ったところへ、別の兵士が拘束用の装備を撃ち込んだ。


ワイヤーが絡みつき、Hydraの動きを封じる。


「今だ! 拘束しろ!」


複数の兵士が駆け寄り、残る首を押さえ込む。


Hydraは激しく抵抗した。


だが、連携する相手がいない。


そのわずかな隙を突き、兵士たちは拘束を完成させた。


「……捕獲成功」


レオンが息を吐く。


「負傷者の確認を急げ。こいつは慎重に運ぶぞ」


「了解!」


兵士たちが負傷者を搬送し、捕獲したHydraを固定する。


レオンは動かなくなった機体を見つめた。


「……これで、少しは手掛かりが得られるか」


◇ ◇ ◇


司たちは、負傷した司を支えながら階段を降り、三十階から地上へ向かった。


一階へ戻る頃には、司の脚部は応急修理が必要な状態になっていた。


装甲車へ戻ると、アルマがすぐに損傷の確認を始めた。


「司、脚部の損傷が大きいです。応急修理を行いますが、しばらく無理に動かさないでください」


「分かってる」


司は座席に身体を預け、通信端末を起動した。


「レオンに連絡する」


通信が繋がる。


『司、こちらはHydraを一体捕獲した』


「捕獲できたのか?」


『ああ。負傷者は出たが、拘束には成功した』


「こっちも報告がある」


司は一度息を吐いた。


「Kaliには逃げられた。七体のHydraと交戦したが、一体が自爆した」


『自爆だと?』


「ああ。アルマがKaliの通信を傍受した。自爆の直前、Kaliが撤退を指示していたらしい」


アルマが補足する。


「その指示に連動して自爆した可能性があります。ただし、因果関係はまだ確認できていません」


『分かった。こちらでも捕獲した個体を慎重に調べる』


「頼む」


アルマが続けた。


「そちらの個体が自爆しなかった理由も気になります。Kaliの指示が届かなかった可能性はありますが、現時点では推測です」


『了解した。通信記録も含めて調査しよう』


通信が切れた。


司は息を吐いた。


Kaliには逃げられた。


Hydraの自爆によって、自分も追跡を続けられる状態ではない。


それでも、レオンたちは一体を捕獲した。


「……少しずつ、分かってきたな」


司は顔を上げた。


「次は、逃がさない」


いつも作品を読んでいただき、ありがとうございます。


リアルの都合により、しばらくの間、更新をお休みさせていただきます。


再開時期は未定ですが、落ち着きましたら改めて更新を再開したいと考えております。


読者の皆様には申し訳ありませんが、何卒よろしくお願いいたします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。