第七十五話 センチネル
司とシルヴィアのビームガンが、センチネルへ直撃した。
しかし。
装甲表面に光の膜が展開する。
「……防がれた?」
シルヴィアが目を見開く。
「反応装甲だ」
司が答える。
「普通に撃っても、ほとんど通らない」
「じゃあ、どうするの?」
司はセンチネルを観察する。
巨大な砲。
その周囲には、複数のアンカーが設置されている。
「まず、あれだ」
司が指差す。
「砲を固定してるアンカーを壊す」
アルマが大型チェインガンを構える。
「了解しました」
アウラとステラもスノーディスペンサーガンを構えた。
「私たちも狙います」
「……分かった」
センチネルの砲が動く。
「来る!」
シルヴィアが叫ぶ。
砲口から巨大な光が放たれた。
司たちは横へ散開する。
直後。
轟音。
背後の壁が吹き飛んだ。
「やっぱり威力が高すぎる!」
「だから、撃たせない」
司が走る。
センチネルの側面へ回り込む。
「アンカーを狙う!」
ビームガンを撃つ。
一本目のアンカーに直撃。
しかし。
「硬い!」
「なら、集中する!」
シルヴィアも同じ場所へ撃ち込む。
アルマのチェインガンも続く。
アウラとステラが雪玉を撃ち込む。
何度も攻撃を受け。
アンカーが少しずつ歪んでいく。
「もう少し!」
司が叫ぶ。
最後の一撃。
ガキィンッ!
アンカーが砕けた。
その瞬間。
センチネルの巨大な砲身が、大きく跳ね上がった。
「……!」
照準が崩れる。
砲身が激しく揺れる。
「発射時の反動を固定しきれなくなっています」
アルマが分析する。
「このままでは危険です」
センチネルが無理やり砲身を戻そうとする。
だが。
砲身が大きくぶれる。
砲口が天井を向く。
そして。
ドォンッ!
砲身内部で爆発が起きた。
「……自壊した?」
シルヴィアが呟く。
「固定を失った状態で撃とうとしたんだろ」
司はセンチネルを見る。
「これで、主砲は使えない」
センチネルがゆっくりと動き始める。
「……次は反応装甲だ」
司がビームガンを構える。
「同じ場所を狙う」
「同じ場所?」
「反応装甲そのものを壊すんじゃない」
司は装甲の一か所を見る。
「同じ場所に撃ち続けて、防御システムを誤作動させる」
「分かった!」
シルヴィアが隣に並ぶ。
二人が同じ場所へ照準を合わせる。
「撃つ!」
二つのビームが同時に命中する。
光の膜が弾ける。
だが。
すぐに復活した。
「戻った!」
「もう一度!」
再び撃つ。
同じ場所。
同じ角度。
何度も。
センチネルの装甲表面が赤くなる。
「まだだ!」
さらに撃つ。
バチッ!
一瞬だけ光の膜が消えた。
「消えた!」
シルヴィアが叫ぶ。
だが。
数秒後。
再び光の膜が展開する。
「……戻った」
「もう一度だ」
司は照準をずらさない。
「同じ場所に撃ち続ける」
ビームが何度も突き刺さる。
「熱が蓄積しています」
アルマが分析する。
「反応装甲の制御系にも異常が発生しています」
「なら、もう少しだ」
撃つ。
撃つ。
撃つ。
そして。
バチッ!
突然、光の膜が大きく弾けた。
「……!」
装甲表面の光が消える。
今度は戻らない。
「消えた!」
シルヴィアが叫ぶ。
「誤作動したんだ」
司はすぐに攻撃を切り替える。
「今だ!」
アルマの大型チェインガンが火を噴く。
アウラとステラが雪玉を連射する。
シルヴィアのビームも装甲へ突き刺さる。
しかし。
「……効きが悪い」
司が眉をひそめる。
反応装甲の下にある内部装甲は、熱に強い。
ビームの効果が大きく落ちている。
「なら、物理攻撃だ」
アルマのチェインガンが集中砲火する。
アウラとステラが巨大雪玉を叩き込む。
装甲が少しずつ削れていく。
センチネルが腕を振り上げた。
「来る!」
巨大な腕が振り下ろされる。
司たちは散開する。
床が砕ける。
「近接戦に切り替えたか」
センチネルが再び腕を振るう。
「速い!」
シルヴィアが飛び退く。
司が反対側へ回り込む。
「足を狙う!」
アルマのチェインガンが脚部へ集中する。
アウラとステラが雪玉を撃ち込む。
センチネルの動きが少しずつ鈍る。
「あと少し!」
司が叫ぶ。
だが。
センチネルの腕が再び迫る。
「避けろ!」
巨大な腕が床を薙ぎ払う。
司たちは逃げる。
「このままじゃ近付けない!」
シルヴィアが叫ぶ。
司は周囲を見る。
そして。
「あれを使う」
取り出したのは、レオンから渡されたガス式デコイバルーンだった。
「デコイ?」
シルヴィアが尋ねる。
「ああ」
司が装置を起動する。
ガス式デコイバルーンが膨らむ。
その周囲に、特殊な反応が広がった。
センチネルの視線がデコイへ向く。
「……こっちを見てる?」
シルヴィアが呟く。
だが。
司は違和感を覚えた。
「……おかしいな」
「どうしたの?」
「レオンから聞いた仕様とは違う」
司はデコイを見る。
「熱源に近い反応を作って、敵の注意を引く装備だったはずだ」
「でも、これは……」
センチネルのセンサーがデコイ周辺を認識しなくなっている。
「デコイの後ろにいる俺たちが、背景扱いされてる」
「つまり、見つからない?」
「ああ」
司は眉をひそめる。
「300階で見つけた製造データが関係してるのか?」
「同じ装備でも、製造データによって仕様が違う……?」
シルヴィアが首を傾げる。
「分からない」
司は短く答えた。
「……また謎が増えたな」
だが、今は考えている場合ではない。
「デコイが効いてるうちに行くぞ」
「うん!」
司たちはデコイの後ろを通り、センチネルへ接近する。
アルマが脚部へチェインガンを叩き込む。
アウラとステラが巨大雪玉を撃ち込む。
シルヴィアもビームガンを連射する。
「倒れろ!」
センチネルの脚部装甲が砕ける。
巨大な機体が大きく揺れる。
「今だ!」
司が最後の一撃を叩き込む。
センチネルが膝をつく。
「まだ動く!」
「なら、もう一度!」
全員の攻撃が集中する。
脚部が完全に破壊される。
センチネルが倒れる。
巨大な機体が床へ叩きつけられた。
轟音。
そして。
静寂。
「……終わった?」
シルヴィアが恐る恐る尋ねる。
司はセンチネルを見る。
動かない。
「……倒したみたいだな」
アルマが端末を確認する。
「敵性反応、消失しました」
アウラが息を吐く。
「……勝った」
ステラも小さく頷く。
「……疲れた」
「お前、ほとんど寝てただろ」
「……戦闘中は起きてた」
「それならいい」
司は苦笑した。
その時。
全員の端末が同時に鳴った。
「……?」
司が画面を見る。
レベル表示が変化していた。
「レベル100……?」
「私もです!」
シルヴィアが驚く。
アルマも確認する。
「私も100です」
アウラも頷く。
「……私も」
ステラが画面を見る。
「……100」
司は全員を見渡す。
「全員、100になったのか」
「センチネルの経験値によるものと考えられます」
アルマが答える。
「……一気に?」
シルヴィアが目を丸くする。
「相当な経験値だったんだろ」
司は倒れたセンチネルを見る。
「これで、上限まで来たな」
その時。
センチネルの残骸から、黒いアイテムが転がり落ちた。
「……何だ、これ?」
司が拾い上げる。
黒い鍵。
だが、見覚えがない。
端末で確認する。
【????キー】
「……?」
説明欄には、名前も効果も表示されない。
「リミットキーじゃないの?」
シルヴィアが尋ねる。
「分からない」
司は黒い鍵を握る。
「今まで見たことがない」
アルマが確認する。
「既存のアイテムデータにも一致しません」
「……また謎か」
司は鍵を見る。
黒い鍵。
正体不明。
それでも。
「持っていくしかないな」
収納欄へ入れる。
その瞬間。
センチネルの背後で、巨大な音が響いた。
ゴゴゴゴゴ……。
「……何だ?」
床が震える。
倒れたセンチネルのさらに奥。
巨大なゲートがゆっくりと開いていく。
「まだ先があるのか……」
シルヴィアが呟く。
ゲートの向こうには、暗闇が広がっていた。
「行くぞ」
司が立ち上がる。
アルマ、シルヴィア、アウラ、ステラも続く。
五人は、ゆっくりとゲートの向こうへ進んでいった。
その先に何があるのか。
まだ、誰にも分からなかった。




