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第七十四話 残された装置

光が消える。


司たちは、巨大な空間に立っていた。


「……ここが300階?」


シルヴィアが周囲を見回す。


「静かですね」


アルマも警戒する。


敵の姿はない。


広い空間。


そして、その奥には――。


「……ゲート?」


司が目を細める。


巨大な扉があった。


通常の階層とは明らかに違う。


まるで、この先に何かを封じているようだった。


「これがボス部屋か?」


「おそらく」


アルマが答える。


その時。


シルヴィアが別のものに気付いた。


「お兄ちゃん」


「ん?」


「あそこに何かあるよ」


ゲートの脇。


小さな台座の上に、一台の機械が置かれていた。


「……変換装置?」


司が近付く。


だが、これまで使ってきた変換装置とは違う。


小型。


持ち運べるサイズ。


「携帯型か」


アルマが端末を接続する。


「起動可能です」


「誰が置いたんだ?」


「記録を確認します」


しばらくして。


「製造者情報はありません」


「設置日時も不明です」


「ただし、製造データが大量に残っています」


司が画面を見る。


「製造データ?」


「はい」


「確認できるものから表示します」


画面に、いくつかの項目が並ぶ。


武器。


修理部品。


消耗品。


そして。


「……これ」


司が目を止める。


【ガス式デコイバルーン】


「データがある」


シルヴィアが画面を覗き込む。


「これ、レオンさんからもらったやつだよね?」


「ああ」


司は端末を確認する。


「でも、こいつを作る材料が足りない」


アルマが周囲を見る。


「この階層には、スクラップ素材が大量にあります」


その先には、大量のロボットの残骸が積み重なっていた。


破壊された機体。


折れた武器。


砕けた装甲。


まるで、何度もここで戦闘が行われてきたようだった。


「これなら材料は取れそうだな」


「はい」


「それに、装置には素材変換機能があります」


司は携帯変換装置を見る。


「つまり、ここで作れるのか?」


「はい」


司は少し考えた。


そして。


「作ってみよう」


携帯変換装置へ素材を投入する。


機械が低い音を立てる。


ゴウン……。


光が内部を走る。


そして。


ガコン。


小さな装置が排出された。


「完成しました」


アルマが確認する。


「ガス式デコイバルーンです」


司が手に取る。


「……本当に作れたな」


シルヴィアが嬉しそうに笑う。


「これでセンチネルを騙せるかもしれないね」


「ああ」


司はデコイを収納する。


その時。


ふと、携帯変換装置を見る。


「……なあ」


「どうしました?」


「これ、誰が置いたんだ?」


アルマが端末を確認する。


「不明です」


「製造データだけ残して、装置本体を置いていった?」


「その可能性があります」


司はゲートを見る。


「つまり、ここまで来た奴がいたってことだ」


シルヴィアが少し不安そうになる。


「センチネルを倒すために?」


「それも分からない」


司は携帯変換装置を見つめる。


「でも……」


この場所には、誰かがいた。


そして。


何かを残していった。


それだけは間違いない。


◇ ◇ ◇


ゴゴゴゴゴ……。


巨大なゲートが動き始めた。


「……!」


司たちが一斉に構える。


重い音を立てながら、扉がゆっくりと開いていく。


その奥。


巨大な影が見えた。


「……あれが」


アルマが呟く。


「センチネル」


巨大な機体。


固定された複数のアンカー。


全身を覆う反応装甲。


そして。


その周囲には、大量のロボットの残骸が転がっていた。


「……これ、全部センチネルが?」


シルヴィアが呟く。


「分からない」


司は周囲を見る。


「でも、使える遮蔽物はありそうだ」


近くには、破壊された大型ロボットの残骸が積み重なっている。


身を隠すことくらいならできそうだった。


だが。


「ただし、頼りにはするな」


司が言う。


「センチネルのレベルは300だ」


「この程度の残骸じゃ、攻撃を防げない」


アルマが頷く。


「装甲を貫通される可能性が高いですね」


「たぶん、紙切れみたいに抜かれる」


司はセンチネルを見る。


「隠れることはできる」


「でも、攻撃を防ぐ場所じゃない」


シルヴィアが息を呑む。


「じゃあ……どうするの?」


司はデコイバルーンを見る。


「当たらない」


「それしかない」


司の声が低くなる。


「センチネルの攻撃は、一発でもまともに受けたら終わると思え」


「絶対に攻撃に当たるな」


シルヴィアが頷く。


「うん」


アルマも武器を構える。


「了解しました」


アウラとステラも、それぞれ武器を握る。


「はい」


「……分かった」


司はセンチネルを見る。


レベル300。


固定された巨体。


圧倒的な火力。


そして、こちらの遮蔽物など簡単に貫通する可能性がある。


それでも。


「攻略法は分かってる」


司はビームガンを構える。


「まずは、あの反応装甲を剥がす」


シルヴィアも隣に立つ。


「いくよ、お兄ちゃん!」


「行くぞ!」


二人が同時に引き金を引く。


光線がセンチネルへ向かって走った。


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