↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
60/79

第五十八話 止まった時間

アルカディア。


ネメシアで起きた事件について話を終えたあと。


司たちは、すぐに再調査の準備を始めていた。


「もう一度、ネメシアへ戻る。」


司が言った。


「暴走した軍人について、もっと詳しく調べたい。」


「封鎖区域も確認する必要があります。」


アルマが続ける。


「Black archについても、現地に何らかの痕跡が残っている可能性があります。」


「そうだな。」


だが。


「それが、今はできない。」


レオンが言った。


司が振り返る。


「どういうことだ?」


「ネメシア周辺の航路が閉鎖された。」


レオンが端末を操作する。


ネメシア周辺の宙域に、赤い警戒表示が浮かび上がる。


「エデンとの衝突が始まってる。」


「まだ全面戦争じゃない。」


「けど、今の状況で軍用船を飛ばすのは難しい。」


「民間船にも制限がかかってる。」


司は画面を見つめた。


「いつ戻れる?」


「分からない。」


レオンは首を振った。


「状況が落ち着くまで待つしかない。」


「……そうか。」


司は黙り込んだ。


Black arch。


ペネトレーションツール。


暴走した軍人。


そして、まだ調べられていない封鎖区域。


目の前まで来ていた手掛かりが、突然遠ざかった。


「……何もできないね。」


シルヴィアが小さく呟いた。


司は答えられなかった。


◇ ◇ ◇


数日が過ぎた。


一週間。


さらに二週間。


それでも、ネメシアへの航路は再開されなかった。


司たちは基地で情報を集めながら、いつでも出発できるよう準備を続けた。


装備の点検。


弾薬の補充。


資料の整理。


レイヴンの整備。


やれることは、すべてやった。


それでも。


「……まだか。」


司が端末を確認する。


航路情報に変化はない。


「まだです。」


アルマが答える。


「再開の予定も出ていません。」


司は椅子に背を預けた。


調べたいことは山ほどある。


だが、現地へ行けない。


時間だけが過ぎていく。


◇ ◇ ◇


その頃。


アルカディアでは、戦争を止めるための交渉も続いていた。


天使軍。


悪魔軍。


中立惑星。


それぞれの担当者が、停戦や捕虜交換について話し合っている。


「まだ交渉してるんだな。」


司が言った。


「戦争が止まってなくても、話すことはある。」


レオンが答える。


「捕虜を返す。」


「民間人を逃がす。」


「戦闘区域を少しでも減らす。」


「そういうところからだ。」


「でも、簡単には終われない。」


「ああ。」


レオンは苦笑した。


「失ったものが大きすぎるからな。」


「だからって戦い続ければ、また失う。」


「……難しいな。」


「戦争だからな。」


レオンはそれ以上、何も言わなかった。


◇ ◇ ◇


さらに数日。


司たちは、相変わらず基地にいた。


シルヴィアは以前ほど騒がなくなった。


アウラも時々、端末で航路情報を確認している。


ステラはいつも通り眠そうだった。


そんな三人を見て、レオンが言った。


「……少し休め。」


「休む?」


「ずっと基地に籠もってるだろ。」


レオンは苦笑する。


「戻れるかどうかは、俺たちが焦っても変わらない。」


「だったら、今できることをやっておいた方がいい。」


「それに。」


レオンはシルヴィアたちを見る。


「ずっと張り詰めてたら、戻った時に動けなくなる。」


司は少し考えた。


「……確かにな。」


シルヴィアが小さく笑う。


「じゃあ、今日はゆっくりしよう。」


「そうするか。」


アウラも頷いた。


「私も……少し休みたいです。」


ステラはすでに目を閉じている。


「……私はいつも休んでる。」


「それは休みすぎだろ。」


司が呆れる。


ほんの少しだけ。


基地に笑い声が戻った。


◇ ◇ ◇


そして。


さらに数日が過ぎた。


その日の朝。


司の端末に通知が入った。


「……ん?」


航路情報を開く。


赤かった表示が、一部だけ黄色へ変わっている。


「レオン。」


「ん?」


「これ。」


レオンが画面を見る。


「……再開に向けた協議が始まったな。」


「本当か?」


「ああ。」


レオンが頷く。


「まだ船を出せるわけじゃない。」


「安全確認も終わってない。」


「でも、完全に閉ざされたままではなくなった。」


司は画面を見つめた。


ようやく。


止まっていた時間が動き始めた。


「準備しておくか。」


「ああ。」


レオンが頷く。


「今度こそ、戻れるようにな。」


アルマも端末を確認する。


「装備と資料は、いつでも出発できる状態です。」


「シルヴィア。」


「うん。」


「買ったもの、ちゃんと整理しておけよ。」


「えっ?」


シルヴィアが慌てて袋を見る。


「まだ開けてないのもある!」


「帰ってからやれ。」


「はーい。」


アウラも小さく笑った。


「次にネメシアへ行く時は……。」


「うん。」


シルヴィアが頷く。


「ちゃんと調べようね。」


「ああ。」


司も頷いた。


ステラが欠伸をする。


「……次は寝てから行きたい。」


「それは今から寝ろ。」


「……そうする。」


司は苦笑した。


だが。


その視線は、再びネメシアへ向いていた。


Black arch。


ペネトレーションツール。


暴走した軍人。


まだ何一つ答えは出ていない。


だからこそ。


戻れる日が来たら、今度こそ自分たちの目で確かめる。


司たちは、その日のための準備を続けた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。