↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

43/50

第四十一話 雪原の補給基地

シャトルは、ノルドの大気圏へ突入していた。


窓の外を白い雲が流れていく。


その下に広がるのは、海と雪。


陸地は少なく、ところどころに岩場が覗いている。


「……本当に何もないな」


司が呟いた。


「海と氷ばかりですね」


アルマも窓の外を見る。


「それがノルドだよ」


シルヴィアが窓へ顔を近付けた。


「雪、いっぱい」


「まあ、ノルドだからな」


司は惑星情報を確認する。


第三惑星ノルド。


資源には乏しいが、天使軍にとっては重要な惑星だった。


ここを通る補給航路を維持するため、最低限の軍事施設が置かれている。


「前線へ物資を運ぶなら、この航路は外せない」


「だから基地があるんだね」


「ああ」


シャトルは高度を下げていく。


雪雲を抜ける。


眼下に白い大地が広がった。


その中に、いくつかの人工物が見える。


発電施設。


居住区。


そして、小規模な軍事基地。


「……あれが天使軍の基地か」


防壁や監視塔、補給施設は備えている。


だが、大規模な要塞というほどではない。


「思ったより小さいな」


「前線へ兵力を集中させていますから」


アルマが答える。


「ここまで大規模な戦力を置く余裕はないのでしょう」


「なるほどな」


その時。


通信装置が鳴った。


「通信です」


アルマが受信する。


「誰から?」


「レオンです」


司が画面を見る。


「ちょうどいいな」


通信を開く。


レオンの顔が映った。


『司、聞こえるか?』


「ああ。今、ノルドに降下中だ」


『そうか。なら、ちょうどいい』


レオンが端末を操作する。


『少し前に別の惑星へ派遣していた部隊が戻ってきた。戦力に余裕ができた』


「本当に?」


『ああ。お前たちはノルドの調査に集中してくれ』


司の表情が変わる。


「フォージ・アーカイブは?」


『こちらから人員を出す』


「待ってくれ」


司は眉をひそめた。


「あそこは、まだ安全とは言い切れない」


「ラビーやボムボムだけじゃない。Penetration Toolも残ってるかもしれない」


『分かっている』


レオンの声は落ち着いていた。


『だから装甲車を持たせる。お前たちが記録した戦闘データも共有した』


『危険を感じたら即座に撤退させる。無茶はさせない』


司は少し考えた。


今の自分たちには、ノルドでやるべきこともある。


「……分かった」


「くれぐれも慎重に」


『了解した』


『何か見つけたら連絡する』


「ああ。頼む」


通信が切れる。


司は小さく息を吐いた。


「これで一つ、気にしなくてよくなったな」


「お兄ちゃん、フォージ・アーカイブは任せて大丈夫?」


「ああ」


司は窓の外を見る。


「レオンたちなら任せられる」


「じゃあ、私たちはノルドだね」


「ああ。俺たちは俺たちの仕事をする」


◇ ◇ ◇


シャトルが着陸する。


雪が舞い上がり、着陸脚が雪面へ接地した。


「着陸完了」


アルマが報告する。


ハッチが開く。


冷たい風がシャトルへ吹き込んできた。


「寒っ」


シルヴィアが身を縮める。


「ノルドだからな」


司も外へ出る。


その瞬間。


白い影が、雪原の向こうから走ってきた。


白い外装。


長い耳。


小型の機体。


司の目が輝く。


「……スノーラビー」


「うさぎ?」


「ああ」


司はビームガンを取り出した。


「狩るぞ」


「え?」


「経験値稼ぎだ」


司が走り出す。


「お兄ちゃん!?」


アルマも武器を構える。


「戦闘開始と判断します」


「いや、違う」


司は笑っていた。


「ボーナスタイムだ!」


◇ ◇ ◇


スノーラビーの群れが白い大地を駆ける。


司たちが追う。


一体。


二体。


三体。


次々と倒していく。


「逃がすな!」


「お兄ちゃん、基地は?」


「後回し!」


「ええ……」


司は完全に狩りへ入っていた。


その理由は単純だった。


こいつらは強くない。


そして、経験値が高い。


「こいつら、普通だ!」


司が叫ぶ。


「何の異常もない!」


ビームが雪原を走る。


スノーラビーが次々と倒れていく。


「最高だ!」


「お兄ちゃん、楽しそう」


「当然だ!」


さらに先へ進む。


すると。


上空から影が降りてきた。


「今度は何?」


シルヴィアが見上げる。


白い翼を持つ鳥型の機体。


「スノーバード」


司が端末を確認する。


「こいつも狙う」


「何かいいものが出るの?」


「ああ」


司はシルヴィアを見る。


「クリスタルウィング」


シルヴィアが装備を確認する。


「あ」


「うさケの効果がある」


「じゃあ……」


「通常なら一パーセント」


司が笑う。


「今なら五十一パーセントだ」


「そんなに?」


「ああ」


司はビームガンを構えた。


「狩るぞ」


◇ ◇ ◇


予定していたルートから、少し外れた。


さらに外れた。


そしてまた、敵を見つけた。


スノーラビー。


スノーバード。


見つけるたびに倒していく。


「一個」


司がクリスタルウィングを拾う。


「二個」


さらに一つ。


「三個」


シルヴィアも拾い上げる。


「これ、綺麗だね」


「綺麗だけど、今は素材だ」


「そうなんだ」


さらに進む。


「四個」


「五個」


「……六個」


アルマが現在位置を確認する。


「司」


「なんだ?」


「基地から予定以上に離れています」


「分かってる」


「このままでは到着予定時刻が大幅に――」


「でも素材が増える」


「……了解」


アルマも諦めた。


七個。


八個。


九個。


十個。


十一個。


そして。


「十二個!」


司がクリスタルウィングを掲げる。


「十二個だ!」


「いっぱい取れたね」


「ああ」


司は満足そうに頷いた。


その時。


端末に表示されたレベルが更新される。


【LEVEL 38】


「…………」


司が固まる。


「三十八?」


アルマも確認する。


「三人ともレベル38です」


「……上がりすぎだろ」


司は思わず笑った。


ネビュラ・ヴォルトでは素材集めに苦労した。


だが、ここでは敵を倒すだけで面白いように経験値が入る。


「ノルド、最高だな」


「そんなに?」


「ああ」


司は満面の笑みを浮かべた。


「ここなら育てられる」


◇ ◇ ◇


それからしばらくして。


ようやく三人は天使軍基地へ到着した。


雪原の向こうに、小規模な基地が見える。


防壁。


監視塔。


補給施設。


そして、その奥には大きな発電設備が建っていた。


「発電所?」


シルヴィアが尋ねる。


「ああ」


司が答える。


「地下の熱源を利用してるんだろう」


発電された電力は基地だけでなく、周辺の居住区にも供給されているらしい。


軍事拠点でありながら、周辺住民の生活も支える施設だった。


基地周辺には雪が積もっている。


しかし、発電施設から伸びる配管の周囲だけは凍っていない。


「温かい水が流れてるんだね」


「そのおかげだろうな」


司は周囲を見渡した。


ノルドは雪と氷に覆われている。


それでも、人が暮らせる環境は維持されている。


「軍だけの基地じゃないんだな」


「補給路を維持するには、周辺の生活基盤も必要です」


アルマが答える。


「なるほどな」


司は基地の奥を見る。


そして端末を開いた。


「さて」


次に調べる場所は決まっている。


ノルドにある遺跡は一つだけ。


その名称は――。


【フリーズ・サンクタム】


「フリーズ・サンクタム……」


司が読み上げる。


ここが、ノルドで最初に調査する場所になる。


「まずは、この遺跡について聞いてみるか」


司たちは、雪に覆われた天使軍基地へ足を踏み入れた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。