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第三十八話 改竄された遺跡

整備を終えた装甲車に、司たちは乗り込んでいた。


「準備はいい?」


シルヴィアが確認する。


「問題ない。」


司が答える。


アルマも端末を確認した。


「装甲車、正常です。目的地までのルートも確保されています。」


「よし。ネビュラ・ヴォルトへ向かおう。」


装甲車がガレージを出る。


そのまま基地を離れ、ネビュラ・ヴォルトへ向かった。


◇ ◇ ◇


ネビュラ・ヴォルト。


装甲車は、薄暗い遺跡の内部を進んでいた。


司は周囲を見回す。


「……おかしい。」


「何が?」


シルヴィアが尋ねる。


「構造が違う。」


司は即答した。


「前に見た時と、明らかに変わってる。」


アルマも周囲を走査する。


「内部構造に複数の差異を確認。」


「自然な経年変化とは考えにくいです。」


司は黙った。


フォージ・アーカイブでも、同じような異常が起きていた。


敵の性能が変わり、存在しないはずのものまで現れた。


そして今回も。


「……また、何かが入り込んでる。」


◇ ◇ ◇


上空を、小型機が飛んでいる。


ベータ・ドローン。


司が見上げた、その瞬間だった。


光線が走る。


「避けろ!」


装甲車が急旋回する。


直後、車体を光線が掠めた。


「装甲損傷。」


アルマが報告する。


司はベータ・ドローンを睨む。


「……ビームを撃つなんて聞いてないぞ。」


もう一発。


今度は正面から飛んできた。


司はアクセルを踏み込む。


「無視する!」


「本体まで一気に行く!」


◇ ◇ ◇


最奥。


巨大な機体が立っていた。


ガーディアン・ベータ。


その装甲には、赤黒い変色が広がっている。


周囲では、ベータ・ドローンが不規則に飛び回っていた。


「やっぱり、こいつもか。」


司が武器を構える。


「アルマ!」


「了解。」


ラージチェインガンが火を噴く。


飛び回るベータ・ドローンが次々と撃ち落とされる。


「シルヴィア!」


「任せて!」


シルヴィアが残ったドローンを引きつける。


その隙に司はガーディアン・ベータへ接近した。


「こいつを止めれば……!」


ビームガンを撃ち込む。


硬い。


だが、アルマの援護射撃が装甲を削る。


「今!」


司とシルヴィアが同時に攻撃を叩き込む。


轟音。


ガーディアン・ベータが崩れ落ちた。


周囲を飛んでいたドローンも、一斉に沈黙する。


「……終わった。」


司は残骸へ近付いた。


だが。


「……何もない。」


ドロップアイテムがない。


残骸を調べる。


装甲。


内部パーツ。


破損した機械部品。


それだけだった。


「おかしい。」


司が眉をひそめる。


その時。


瓦礫の隙間に、黒い金属が見えた。


拾い上げる。


【Penetration Tool】


「……また、これか。」


司はそれを見つめた。


◇ ◇ ◇


遺跡の外。


回収したツールを、司は黙って眺めていた。


シルヴィアが尋ねる。


「どうするの?」


「分からない。」


司は答えた。


「でも、一つだけ確かめたい。」


「何を?」


「これを持ち出した状態で、もう一度入る。」


司はツールをバッグへしまった。


「何か変わるかもしれない。」


◇ ◇ ◇


再び遺跡内部へ。


装甲車を進める。


しばらくして。


シルヴィアが声を上げた。


「あれ?」


前方から、一体のベータ・ドローンが飛んでくる。


司は身構えた。


だが。


光線は飛んでこない。


ただ、宙を漂っている。


「……ビームを撃たない。」


アルマが確認する。


「追加武装は確認できません。」


司は黙った。


さらに奥へ進む。


そこには、ガーディアン・ベータがいた。


赤黒い変色はない。


異常な武装もない。


ただ静かに、そこに存在している。


「……戻った。」


シルヴィアが司を見る。


「何が?」


司はバッグの中のPenetration Toolへ手を添えた。


「さっきまで、全部おかしかった。」


「でも、今は違う。」


アルマが続ける。


「異常状態が消失しています。」


司は遺跡を見回した。


「つまり……。」


言葉が止まる。


ここで何が起きていたのか。


まだ分からない。


ただ。


異常が発生していた時には、あのツールが存在していた。


そして、ツールを持ち出した後。


異常は消えた。


「偶然じゃない。」


司は呟いた。


「誰かが、この遺跡に干渉してる。」


シルヴィアが周囲を見る。


「じゃあ……あの黒い機体も?」


司は答えなかった。


メタトロンフレーム。


ネビュラ・ヴォルトで一瞬だけ確認された、あの黒い機体。


しかし。


今はどこにもいない。


痕跡すら残っていない。


「……何者なんだ。」


司は暗い遺跡の奥を見つめる。


フォージ・アーカイブ。


ガラクタドラゴン。


侵食された警備ロボ。


そして、ネビュラ・ヴォルト。


すべての異常の近くに、同じツールが存在していた。


「この世界で起きてることは……。」


司はPenetration Toolを握る。


「誰かが、意図的に起こしてるのかもしれない。」


返事はなかった。


ただ、静まり返った遺跡の奥から。


どこか遠くで、金属が擦れるような音が響いた。


ギィ……。


司は振り返る。


しかし。


そこには、何もいなかった。


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