第三十四話 五人の限界と新たな目的
アルカディアのガレージ。
五人は休憩室に集まっていた。
おげれつ大百科、田中ひろし、東雲八雲。
三人とも、完全に修理を終えている。
だが、その表情には前線で受けた恐怖が残っていた。
「……あの場所には、もう戻りたくない。」
田中ひろしが呟く。
「分かる。」
おげれつ大百科も頷いた。
「死ぬかと思った。」
東雲八雲は黙ったまま、両手を握っている。
司は三人を見た。
そして、少しだけ考える。
「怖いのは分かる。」
「でも――」
三人が司を見る。
「怯えてたら、この世界じゃ殺されるのを待つだけになる。」
厳しい言葉だった。
「俺だって怖い。」
司は続ける。
「シルヴィアも同じだ。」
シルヴィアが静かに頷く。
「私たちの両親も、エンペラードローンに殺されたから。」
三人の表情が変わる。
司は拳を握った。
「だから、逃げるだけじゃ終われない。」
「生き残るために、強くなるしかない。」
しばらく沈黙が続いた。
やがて、定刻で帰りますが口を開く。
「……分かってる。」
「ただ、まだ怖いんだ。」
「それでいい。」
司は答えた。
「無理に前線へ出ろとは言わない。」
「まずは自分たちが生き残れる力をつければいい。」
◇ ◇ ◇
話は、エンペラードローンについてへ移った。
「前線でも、あれを見たことがある。」
定刻で帰りますが話す。
「エンペラードローンか?」
「ああ。」
「悪魔軍の攻撃だと思ってた。」
司は眉をひそめる。
「天使軍も、あれを悪魔軍だと言ってる。」
「でも……。」
保険未加入が続けた。
「悪魔軍にしては、技術が凄すぎるんだ。」
「俺たちも前線で見た。」
「悪魔軍の部隊と戦ってるところを。」
司の表情が変わる。
「……何?」
「エンペラードローンが?」
「悪魔軍も攻撃してた。」
「じゃあ、あれは悪魔軍じゃない?」
シルヴィアが呟く。
「それとも……。」
アルマが淡々と答える。
「所属不明兵器という可能性があります。」
司は腕を組む。
デソラを破壊した存在。
アルカディアを襲った存在。
天使軍も悪魔軍も攻撃する。
それなのに、天使軍は悪魔軍だと認識している。
「……一体、何なんだ。」
答えは出なかった。
しかし、司たちには新たな問題が生まれていた。
「シャトルも危ないな。」
司が呟く。
「エンペラードローンがシャトルまで襲うなら、逃げる手段そのものを守らないといけない。」
シルヴィアが頷く。
「シャトルに何かあったら、帰れないもんね。」
「だから――」
司はレオンを見る。
「戦闘機を作りたい。」
「戦闘機?」
「名前はレイヴン。」
司は端末に簡単な設計図を表示する。
全長三メートル。
シャトル内部へ搭載できる限界の大きさだ。
「これ以上大きくすると、シャトルに積めない。」
「でも、材料が大量に必要になる。」
司は考える。
「……オイル・クレイドルに入れないか?」
レオンの表情が曇った。
「無理だ。」
「やっぱりか。」
「軍の採掘地だからな。」
「俺の権限では許可できない。」
「確認を取るだけでも三か月ほどかかる。」
「三か月……。」
司は絶句する。
エンペラードローンがいつ来るかも分からない。
三か月も待っている余裕はない。
「そんなに待ってられない。」
司はアルカディアの遺跡一覧を開く。
十二の遺跡。
フォージ・アーカイブ。
グレイブ・ファクトリー。
クロム・ラビリンス。
そして――。
「……ネビュラ・ヴォルト。」
司の指が止まった。
「ここなら、資源がある。」
「しかも、俺の知ってる世界なら、攻略できる。」
シルヴィアが画面を覗き込む。
「ああ、ここかぁ。」
「スクラップ遺跡以来だね。」
「何周もしたな。」
司は懐かしそうに笑う。
「資源効率がいい。」
「レイヴンを一機作るなら……。」
少し計算する。
「三十周くらいか。」
「三十周!?」
レオンが思わず声を上げた。
「そんなに回るのか?」
「まあ、必要な分だけだ。」
「……狂ってやがる。」
定刻で帰りますが呟く。
「俺もそう思う。」
司は真顔だった。
◇ ◇ ◇
しかし。
レオンは端末を操作しながら首を横に振った。
「ネビュラ・ヴォルトも現在は封鎖されている。」
「ここも?」
「危険だからな。」
「内部にはガーディアン・ベータがいる。」
「電磁パルスを使う個体もいてな。」
「封鎖してでも管理する価値がある場所、ということだ。」
司は頷く。
「ベータドローンも出る。」
「電磁パルスを使う敵が厄介だった。」
司が説明する。
「攻撃力は大したことない。」
「でも、一定時間動けなくされる。」
「……それは嫌ですね。」
シルヴィアが苦笑する。
「かなりストレスが溜まる。」
「そういう場所だった。」
レオンは少し考える。
「それなら、戦力的には問題ないかもしれない。」
「だが――。」
レオンの表情が変わった。
「実は、もう一つ問題がある。」
「何です?」
「ネビュラ・ヴォルトを警備している部隊から、連絡が来ていない。」
司が黙る。
「……連絡が?」
「ああ。」
「何日も戻ってこない。」
レオンは司を見る。
「許可を出す代わりに、様子を見てきてほしい。」
司は固まった。
嫌な予感がした。
記憶では。
ネビュラ・ヴォルトの入口に、天使軍の警備ロボットが二機いた。
ただの会話イベント。
『オイルに隠れてるが、ここはお宝の山だ』
そんなことを話しているだけだった。
戦闘もない。
イベントもない。
ましてや、警備部隊が消息を絶つなんてことは――。
「……俺の知ってるネビュラ・ヴォルトじゃない。」
司が呟く。
シルヴィアが見る。
「何が?」
「いや。」
司は立ち上がった。
「行こう。」
「何か起きてるなら、確認するしかない。」
アルマも立ち上がる。
「了解。」
レオンは頷いた。
「頼む。」
司は装甲車へ向かう。
その背中を、五人が追った。
目的はレイヴンの材料。
そして、ネビュラ・ヴォルトの資源。
だが――。
かつて何度も訪れた場所で。
今まで存在しなかった異変が起きている。
司は嫌な予感を抱えたまま、アクセルを踏み込んだ。




