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第三十一話 ガラクタが五人を救う

アルカディアの医療区画。


迎撃戦からしばらくして、司たちは一室へ案内されていた。


あの二人は、アルカディアの防衛砲台に守られ、なんとか生き延びることができた。


「良かった……」


司は小さく息を吐く。


助けられなかったわけではない。


それでも、自分の力だけでは守れなかったという事実が、胸に残っていた。


室内には、救助された五人がいた。


「定刻で帰ります」――レベル二十五。


「保険未加入」――レベル二十三。


その後方には、三つの修理台が並んでいる。


「おげれつ大百科」


「田中ひろし」


「暗黒姫」


三人は辛うじて人型を保っていた。


装甲は大きく損傷し、四肢の一部は失われている。


内部機構も露出していた。


それでも、生命維持装置だけは動いている。


「……酷いな」


司が呟く。


整備兵が苦い顔で答えた。


「前線でやられたらしい。」


「二人は自力で帰還できたが、残り三人はこの状態だ。」


「今は生かすだけで精一杯だ。」


定刻で帰りますが口を開いた。


「俺たちも前線で死にかけた。」


「その時に、全部思い出したんだ。」


保険未加入も頷く。


「自分たちが何者だったのかもな。」


司は二人を見つめた。


レベルは二十五と二十三。


自分たちと大きく変わらない。


それでも、装備には明確な差があった。


自分たちがここまで生き残れたのは、偶然も大きい。


装備の使い方を知っていた。


施設の機能を活用できた。


そして、必要な物資を持っていた。


その差が、生死を分ける。


「修理はできないのか?」


司が尋ねる。


整備兵は首を横に振った。


「できる範囲ではやっている。」


「だが、資材が足りない。」


「前線への供給が最優先だからな。」


「粗末なスクラップですら不足している。」


司は少し考えた。


「……スクラップなら、あるけど。」


整備兵が顔を上げる。


「ある?」


司はアイテムバッグを開いた。


ドサッ。


大量の金属片が床へ落ちる。


さらに。


ガシャァン!


巨大な機械部品まで転がり出た。


「……」


整備兵たちが固まった。


「これは……?」


「アルファドローンの残骸です。」


司は淡々と答える。


「他にも色々あります。」


「まだかなり余っています。」


整備兵が金属片を拾い上げる。


「……待て。」


表面を確認する。


「これ、ただのスクラップじゃないぞ。」


別の整備兵が部品を調べる。


「アルファドローンの装甲材……?」


「純度が高い。」


レオンも歩み寄ってきた。


「アルファドローンだと?」


「はい。」


司は頷く。


「倒せば手に入ります。」


レオンは積み上がった資材を見る。


「……これほどの量を?」


「倒した数が多いので。」


司にとっては、それだけの話だった。


だが、レオンたちの反応は違った。


「……司。」


「はい?」


「これを、ただのスクラップだと思っているのか?」


司は少し考える。


「まあ……使わないので。」


レオンは絶句した。


アルカディアで不足している資材。


しかも、軍用機体の修理にも使える高品質な素材。


それが、目の前に山積みになっている。


「余っているのなら……売ってくれないか?」


司は積み上がった部品を見る。


アルファドローンの残骸。


自分たちにとっては、いくらでも手に入る資材だ。


しかし。


「必要な分だけなら、いいですよ。」


レオンの表情が緩む。


「助かる。」


整備兵たちはすぐに資材を運び始めた。


その時、レオンが一つの部品を手に取る。


「これが……デソラから?」


「そうです。」


レオンは黙って部品を見つめる。


宝石。


古い資料。


ヴァルキリー。


そして、アルファドローン。


四百年以上前に放棄されたはずの惑星から、次々と不可解なものが出てくる。


「……ますます分からなくなってきたな。」


レオンが呟く。


「一体、あの星には何が残っている?」


司は答えなかった。


自分にも分からない。


ただ一つだけ、確かなことがある。


この世界では、自分たちにとって価値のないものが、誰かにとっては命を繋ぐための資源になる。


司は修理台へ目を向けた。


「まずは、この五人を助けましょう。」


「デソラのことは、その後です。」


レオンは頷いた。


「そうだな。」


「整備班、修理を開始しろ。」


「使える資材はすべて回せ。」


「了解!」


整備兵たちが一斉に動き始める。


アルファドローンの装甲材が加工され、壊れた機体へ取り付けられていく。


失われた部品が補われ、露出していた内部機構が次々と覆われていく。


その光景を、司は黙って見つめていた。


ガラクタだと思っていたものが。


今、誰かの命を繋いでいる。


そして同時に。


デソラという惑星の謎は、ますます深まっていた。


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