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第二十三話 機械都市アルカディア

シャトルはゆっくりとアルカディアへ降下していく。


窓の外には、どこまでも続く巨大都市。


無数の工場。


採掘施設。


宇宙港を行き交う輸送船。


デソラとは、まるで別世界だった。


「すごい……。」


シルヴィアは窓に張り付いたまま、目を輝かせる。


「こんなに人がいるんだ……。」


司も黙って都市を見つめていた。


「着陸シーケンスを開始します。」


アストラの声が響く。


数分後。


シャトルは宇宙港へ静かに着陸した。


その直後。


甲高い警報が港中へ鳴り響く。


『所属不明機を確認!』


『警備部隊は至急現場へ!』


「……え?」


シルヴィアが振り返る。


格納庫のシャッターが開き、武装した兵士たちが一斉に駆け込んできた。


対装甲ライフル。


大型シールド。


さらに奥では、二脚砲台まで砲口を向けている。


あっという間にシャトルは包囲された。


司は腰のハンドガンへ手を伸ばしかけ――止めた。


視界に映る兵士たちのレベル。


Lv18。


Lv21。


Lv20。


Lv22。


(……デソラとは桁が違う。)


数も百人を超えている。


ここで戦うのは論外だった。


兵士たちの中から、一人の隊長が前へ出る。


「所属を名乗れ。」


その瞬間、アストラが司の前へ進み出た。


「本艦所属支援AI、アストラ。」


「識別コードを送信します。」


青い光が端末へ流れ込む。


隊長の表情が変わった。


「……識別一致。」


「そんな馬鹿な。」


周囲の兵士たちもざわめく。


「その識別番号……。」


「四百年以上前に消息を絶った船だぞ。」


隊長はシャトルを見上げる。


「本物なのか。」


「はい。」


「本艦は第一惑星デソラより帰還しました。」


しばしの沈黙。


やがて隊長はゆっくりと敬礼した。


「警戒解除。」


兵士たちが一斉に武器を下ろす。


隊長は苦笑した。


「驚かせて悪かった。」


「デソラから船が帰ってくるなんて、誰も思わない。」


「資源もなく、補給路からも外れた惑星だ。」


「悪魔軍に制圧されたものとばかり思っていた。」


司は肩をすくめる。


「色々あった。」


◇ ◇ ◇


宇宙港を抜けると、景色は一変した。


巨大な輸送車両が行き交い、無人搬送機が頭上を飛び交っている。


工場から規則正しい駆動音が響き、整備兵たちは大型兵器の点検に追われていた。


「……活気があるな。」


デソラでは聞こえなかった、人の営みの音だった。


シルヴィアも辺りを見回す。


「みんな普通に暮らしてる……。」


「ここなら安心できそう。」


隊長が苦笑する。


「安心、か。」


「最近じゃ、その言葉もあまり聞かなくなった。」


司は横目で隊長を見る。


「前線は、そんなに厳しいのか。」


「ああ。」


隊長は、それ以上語らなかった。


◇ ◇ ◇


やがて一行は、巨大な建物の前で足を止めた。


厚い装甲扉には、大きくGARAGEの文字が刻まれている。


扉が開く。


内部には工作機械と製造装置が並び、多くの整備兵が忙しく作業していた。


「ここが共同ガレージだ。」


「天使軍所属なら誰でも利用できる。」


司は迷わず製造端末へ向かった。


目的の項目を開く。


【リミットキー】


設計データは残っている。


「やっぱりある。」


しかし、素材一覧を確認した瞬間、表情が曇った。


【在庫 0】


【在庫 0】


【在庫 0】


「……材料がない。」


近くで作業していた整備兵が苦笑する。


「そりゃそうだ。」


「今じゃリミットキーなんて作る奴はいない。」


「全部、前線へ回されてる。」


「作っても作っても足りないんだ。」


司は振り返る。


「他に入手方法は?」


整備兵は少し考えた。


「……ないこともない。」


「おすすめはしないがな。」


「聞かせてくれ。」


「フォージ・アーカイブ。」


その名前を聞いた瞬間、司の記憶が蘇る。


アルカディア地下深くに眠る巨大な製造施設。


無数の機械獣が徘徊する危険区域。


そして最深部に存在するボス。


「……そこなら、リミットキーが手に入るのか?」


「可能性はある。」


整備兵は肩をすくめた。


「ただし、あそこは野生エネミーの巣だ。」


「毎年、腕試しに潜った連中が帰ってこない。」


隊長も口を挟む。


「一般人は立入禁止だ。」


司は端末から目を離した。


「それでも行く。」


ここで止まれば、レベル三十のままだ。


黒いデバイスの情報にも届かない。


可能性があるなら、行くしかない。


「シルヴィア、アルマ。」


「準備しよう。」


「うん、お兄ちゃん。」


「探索任務を開始します。」


その時だった。


整備兵がアルマへ視線を向けた。


「……ちょっと待て。」


アルマが振り返る。


「何でしょうか。」


整備兵は、その姿をじっと見つめていた。


「そのフレーム……。」


「どこで手に入れた?」


「デソラだ。」


「そうか……。」


整備兵は頷いた。


だが、すぐに眉をひそめる。


「いや。」


「おかしいな。」


「その型、軍のデータベースに登録されてないぞ。」


司の表情が僅かに変わった。


アルマも何も答えない。


整備兵はしばらくアルマを見つめていたが、やがて肩をすくめた。


「まあ、珍しいフレームなんだろ。」


そう言って作業へ戻っていく。


司はアルマを見る。


アルマも司を見つめ返す。


(やっぱり……。)


アルマは、この世界の既存兵器ではない。


その可能性が、また一つ高まった。


司はアイテムバッグへ意識を向ける。


【Penetration Tool】


ガラクタドラゴンを倒した時に手に入った、正体不明のデバイス。


アストラですら、権限不足を理由に詳細を語れなかった。


フォージ・アーカイブ。


そこなら、何か分かるかもしれない。


「行こう。」


「フォージ・アーカイブへ。」


三人は共同ガレージを後にした。


文明と戦争の中心、アルカディア。


その地下には、四百年以上も眠り続ける製造施設がある。


そして司たちは今、その奥へ足を踏み入れようとしていた。


そこに何が残されているのか。


まだ、誰も知らない。


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