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第十八話 最後の壁

翌朝。


三人は地下施設へ戻ってきた。


「アルファドローン、先行」


司の指示を受け、小型偵察機が静かに地下へ降りていく。


しばらくして、映像が端末へ送られてきた。


異常なし。


敵影なし。


昨日見つけた格納庫。


試験設備。


隠し部屋。


どこにも新しい発見はない。


「……全部見終わったね」


シルヴィアが呟く。


アルマも静かに報告する。


「未探索区域は確認できません」


司は頷いた。


「これで、この地下は終わりだ」


「持ち帰れる物も、ほぼ回収した」


司は踵を返す。


「次は宇宙港へ向かう」


三人は地下施設を後にした。


入口では、ガーディアン・アルファが再び巡回している。


シルヴィアがビームガンを構える。


「倒す?」


司は少し考え、アルマを見る。


「ああ」


「最後に、アルマをレベル三十まで上げる」


「俺たちは?」


「もう必要ない」


司は肩を竦める。


「この惑星で上げられるのは三十までだ」


「経験値を無駄にするくらいなら、アルマへ集めた方がいい」


数分後。


ガーディアン・アルファは静かに崩れ落ちた。


大量の経験値がアルマへ流れ込む。


「一体じゃ足りないよね?」


「ああ」


司は頷いた。


「何周かかかる」


「付き合わせて悪いな」


「気にしません」


アルマは静かに答えた。


一周目。


二周目。


三周目。


戦うたびに、アルマの動きが少しずつ変わっていく。


最初はぎこちなかったチェインガンの構えが自然になる。


照準を合わせる動作も速くなる。


敵の動きを読むのも早くなっていく。


十周目。


「……慣れてきました」


アルマが静かに言う。


「それでいい」


司は頷いた。


「経験だけじゃない」


「実戦の感覚も積んでおけ」


「次は屋外だ。環境が変わる」


十五周目。


最後の経験値が流れ込む。


【LEVEL UP】


【LEVEL 30】


アルマは自分の手を見つめた。


「……出力が安定しました」


「当然だ」


司は満足そうに頷く。


「これで、ヴァルキリーフレームの性能を本格的に引き出せる」


シルヴィアが驚いたようにアルマを見る。


「そんなに違うの?」


「ああ」


「レベル一とは別物だ」


アルマが拳を握る。


内部から、力強い駆動音が響いた。


「これで準備は終わりだ」


司は宇宙港の方角を見る。


「行こう」


三人はスクラップ平原を歩き始めた。


やがて遠くに巨大な施設が見えてくる。


崩れた管制塔。


錆びついた格納庫。


長い滑走路。


そして、その奥。


一機だけ残された惑星間シャトル。


「まだ残ってたんだ」


シルヴィアが嬉しそうに声を上げる。


「ああ」


司も頷いた。


「あれに乗れば、次の惑星へ行ける」


「この星ともお別れだね」


その瞬間だった。


ズズズズズ……。


大地が揺れる。


シャトル前に積み上がっていた巨大なスクラップの山が、ゆっくりと崩れ始めた。


鉄骨。


装甲板。


瓦礫。


無数の残骸が引き寄せられるように集まり、一体の巨大な竜を形作っていく。


両翼を広げた、スクラップの巨竜。


赤く輝く両眼が、三人を見据えた。


「ガラクタドラゴン……」


司は静かに呟く。


アルマが即座に解析する。


「フィールドボス」


「レベル三十」


「進路上に存在」


「回避は困難です」


「ああ」


司は頷く。


「こいつを倒さないと、シャトルには近付けない」


シルヴィアは巨竜を見上げた。


「強い?」


「飛んでる間はな」


司は翼を指差す。


「まず翼を壊して地上へ落とす」


「そこからが本番だ」


しかし。


周囲を見回した司の表情が曇る。


「……まずいな」


「どうしたの?」


「ここ、本来なら遮蔽物が残ってるはずなんだ」


司は荒野を見渡す。


見えるのは、何もない平地だけ。


「廃ビルも、スクラップの山もない」


「これじゃ隠れながら戦えない」


司は小さく息を吐いた。


村を焼いたあの日。


エンペラードローンは空から辺り一帯を薙ぎ払っていった。


その爪痕は、こんな場所にまで残っていたらしい。


「……ここまで焼き払われてたのか」


司は数秒考える。


そして。


「作戦変更」


アルマを見る。


「持ってきたバリケード」


「百枚、全部展開する」


シルヴィアが目を丸くする。


「全部使っちゃうの?」


「ああ」


司は迷わず頷いた。


「惜しいけど、命には代えられない」


「本来あった遮蔽物を、自分たちで作る」


アルマが即座に動き出す。


アイテムバッグから簡易バリケードを次々と取り出し、並べていく。


ガコン。


ガコン。


ガコン。


荒野へ金属音が響く。


一枚。


十枚。


三十枚。


五十枚。


そして百枚。


積み重ねられたバリケードは、三人を守る即席の城壁となった。


シルヴィアは思わず息を呑む。


「これ……もう要塞だよ」


司は満足そうに頷いた。


「これなら、多少は戦える」


アルマはラージチェインガンを静かに構える。


ウィィィィン……。


砲身がゆっくりと回転を始める。


司もビームガンを構えた。


「まずは翼」


「飛べなくすれば、勝機はある」


スクラップでできた巨竜が、大きく咆哮した。


この星を出るために。


三人は、最後の壁へ挑む。


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