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第十七話 戦乙女

翌朝。


司はガレージ中央へ、地下施設から持ち帰ったヴァルキリーフレームを並べていた。


腕だけ残ったもの。


脚だけ残ったもの。


胸部だけ原形を留めたもの。


どれも激しく損傷している。


「全部壊れてる……」


シルヴィアが呟く。


「ああ」


司は残骸を見渡した。


「でも、修復はできる」


大量のアルファドローン素材を取り出す。


「設計データが残っていれば、不足した部分は別の素材で補える」


「ヴァルキリーの素材だけで全部揃える必要はない」


司はヴァルキリーフレーム、アルファドローン素材、スクラップを変換装置へ投入した。


白い粒子が渦を巻く。


やがて。


光の中から、一体のフレームが姿を現した。


白銀の装甲。


淡い青色に輝く発光ライン。


腰を覆うスカートアーマー。


背中には翼を思わせる放熱フィン。


地下で見た焼け焦げた残骸とは、まるで別物だった。


「……すごい」


シルヴィアが目を丸くする。


司も思わず息を呑んだ。


「これが……本来のヴァルキリーフレームか」


司はアルマのコアを胸部へ収める。


装甲が閉じる。


数秒後。


青い光が瞳へ宿った。


アルマはゆっくりと立ち上がる。


腕を握る。


脚を動かす。


そして、自分の身体を静かに見つめた。


「……これが」


「私の身体」


「ああ」


司は頷いた。


「これがお前の身体だ」


アルマは胸へ手を添え、小さく頭を下げる。


「ありがとうございます」


「似合ってる!」


シルヴィアも嬉しそうに笑った。


司は棚からビームガンを一本取り出す。


「じゃあ、装備確認だ」


アルマへ渡そうとした瞬間。


【ERROR】


【装備条件を満たしていません】


「やっぱりか」


司は苦笑する。


「原因はコアじゃない」


「ボディの規格だ」


司は表示を確認する。


「ヴァルキリーはモンスターフレームだから、通常の装備とは互換性がない」


アルマは静かに頷いた。


「私は、敵として作られた身体なのですね」


「ああ」


司が変換装置を操作すると、新しい項目が表示された。


【MONSTER EQUIPMENT】


・ラージチェインガン

・ラージブレード

・ラージシールド

・ラージランス


「やっぱりあるか」


司が小さく笑う。


「ヴァルキリー用の装備だ」


「試しに一つ作ってみよう」


司はラージチェインガンを選択した。


大量のスクラップが光へ変わる。


そして。


ゴトン。


排出口から、巨大な六連装チェインガンが現れた。


幾重にも重なる砲身。


巨大な冷却ユニット。


通常のビームガンとは比べものにならない威圧感。


シルヴィアが思わず後ずさる。


「でっか……」


司も持ち上げてみる。


持ち上げることはできた。


しかし。


「ぐっ……!」


一歩も歩けない。


「重すぎる……」


アルマが歩み寄り、巨大なチェインガンを軽々と抱え上げた。


司は苦笑する。


「やっぱりな」


「このフレームなら重量を気にする必要がない」


アルマはチェインガンを構えた。


六本の砲身が低い駆動音を立て始める。


ウィィィィン……。


「試し撃ちはできますか」


「ちょっと待て!」


司は慌てて両手を上げる。


「ガレージの中は駄目だ!」


「理解しました」


アルマは素直にチェインガンを下ろした。


ゴンッ。


鈍い衝撃音。


床の鉄板がわずかに沈み、小さなひびが走る。


「……」


「……」


司とシルヴィアは無言で床を見つめた。


シルヴィアが苦笑する。


「本当に重いんだね」


司も苦笑した。


「普通のフレームなら、武器より先に腕が壊れるな……」


アルマは床を見下ろした。


「……置き方を誤りました」


その一言で、重かった空気が少しだけ和らいだ。


司は咳払いをして話を戻す。


「ただ、強いからって万能じゃない」


「この武器は砲身が回転するまで時間が掛かる」


「撃ち始めも遅いし、止まるまでも長い」


「接近戦には向いてない」


シルヴィアが首を傾げる。


「じゃあ、一人で戦うのは難しい?」


「ああ」


司は頷いた。


「前衛が必要だ」


司はチェインガンを指差す。


「それでも、敵の装甲を無視して本体へ直接ダメージを通せる」


「普通ならダメージを減らされる相手にも有効だ」


シルヴィアが目を丸くする。


「強い……」


「ああ。だから真っ先に狙われる」


司はアルマを見る。


「火力はある。でも、自分一人で身を守る武器じゃない」


「俺とシルヴィアが前に立つ」


「アルマは後ろから制圧する」


アルマが静かに頷く。


「私は火力支援を担当する」


「ああ」


司も頷いた。


「それが一番向いてる」


シルヴィアも笑顔になる。


「私たちがアルマを守る!」


アルマは二人を見つめた。


「……分かりました」


司は変換装置の画面を切り替える。


その下には、さらに別の項目が表示されていた。


【VEHICLE】


・タンク

・ホバー

・ファイター

・シャトル


しかし、すべて灰色表示だった。


【Vehicle Frame 不足】


【必要素材不足】


「シャトル?」


シルヴィアが尋ねる。


「惑星間移動用だ」


司は画面を眺める。


「宇宙港を使わず、自前で移動するためのものだ」


「そんなこともできるんだ」


「ああ」


司は苦笑する。


「わざわざ自分で作る物好きもいた」


「でも、今の俺たちには必要ない」


「素材が足りないし、宇宙港を使えば済む」


アルマが画面を確認する。


「現時点では不要と判断します」


「その通り」


司は画面を閉じた。


「ただ、覚えておく価値はある」


「この変換装置には、まだ俺の知らない使い方が残っているかもしれない」


最後に司は、棚から装備を取り出していく。


スタントラップ。


煙幕。


閃光弾。


そして、簡易バリケードを百枚。


「それと、こいつだ」


司はバリケードをアルマへ渡す。


「お前なら大量に持ち運べる」


アルマは簡易バリケードを手に取った。


「敵を誘導」


「罠で足止め」


「チェインガンで制圧」


「この運用が最適です」


司は満足そうに頷いた。


「よし」


「三人目の役割も決まった」


司が前衛。


シルヴィアが近接戦。


そしてアルマは――


圧倒的な火力と罠で戦場を支配する、後衛火力。


念のため、防御用のラージシールドも一枚だけ作り、予備装備として登録しておく。


白銀の装甲。


巨大なチェインガン。


背中の放熱フィン。


その姿は、まるで戦乙女だった。


アルマは静かに二人の隣へ並んだ。


三人の新たな戦力が、ここで揃った。


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