第十五話 お前は一体、何者なんだ。
地下施設を後にし、司たちは慎重に地上への階段を上っていく。
先頭を歩くのは偵察用アルファドローン。
その後ろを司。
最後尾をシルヴィアが警戒しながら続く。
「異常なし」
司は端末の映像を確認する。
「よし。帰ろう」
やがて、ボス部屋へ戻る。
その瞬間だった。
ギギギギ……
重い駆動音が響いた。
「……!」
二人は同時に武器を構える。
部屋の中央。
巨大な機体が、ゆっくりと立ち上がっていた。
「ガーディアン・アルファ……」
数時間前、確かに倒したはずのボス。
それが何事もなかったかのように、再び立っている。
一瞬、司の頭が真っ白になる。
(……倒し損ねた?)
反射的に銃を構え直す。
だが。
巡回するタイミング。
頭部の光。
立ち上がる動作。
すべてが以前と同じだった。
「……そうか」
司は一つの可能性に気付く。
「地下へ入った時点で、遺跡を離れた扱いになったのかもしれない」
「ボスが、また出てきたってこと?」
「ああ」
司は銃を下ろす。
今ここで戦う必要はない。
「今日はここまでにしよう」
「十分、情報は集まった」
シルヴィアも頷いた。
「うん」
二人は再びガレージへ向かった。
◇ ◇ ◇
ガレージへ戻ると、二人は戦利品を作業台へ並べた。
【Valkyrie Frame ×30】
【壊れた自立型コア ×1】
司はコアを手に取る。
「まずは、これだ」
壊れた自立型コアを変換装置へ投入する。
白い光がコアを包み込む。
数秒後。
排出口から、一つのコアが転がり出た。
【自立型コア】
「……修復された」
シルヴィアが覗き込む。
「使える?」
「ああ」
司は状態を確認する。
「問題ない」
続いて棚を確認する。
スタントラップは残り二枚。
「これじゃ足りないな」
司はアルファドローンのコアを三つ取り出した。
【Alpha Drone Core ×3】
【Trap Kit】
変換が始まる。
白い光が収束し、三枚のスタントラップが排出口へ現れた。
「これで五枚」
「これなら入口にも置ける」
「うん」
シルヴィアも頷く。
司は次に、ヴァルキリーフレームを一体取り出した。
「こいつも確認しておくか」
変換装置へ投入する。
光が収束する。
排出口から現れたのは、一本の腕部だった。
【Valkyrie Arm】
【Quality:MAX】
【Memory:MAX】
「やっぱりな」
司は腕部を持ち上げる。
「パーツの性能は問題ない」
「じゃあ、すぐ使える?」
「パーツだけなら」
司は自立型コアへ視線を移す。
「機体を動かすのはコアだ」
「今はレベル一だから、ヴァルキリーに載せても性能を引き出せない」
シルヴィアが少し安心したように笑う。
「じゃあ、もし暴走しても……」
「ああ」
司も頷く。
「今の俺たちなら止められる」
それでも、司はヴァルキリーのパーツへ手を伸ばさなかった。
「……だが、まだ載せない」
「え?」
「いきなり未知の機体で試す必要はない」
司が棚から取り出したのは、一体のアルファドローンだった。
丸い胴体。
短い二本脚。
先ほどまで偵察に使っていたものと同型の量産フレーム。
「まずは、これで試す」
シルヴィアも納得したように頷く。
「安全確認だね」
「そう」
司はアルファドローンを作業台へ固定する。
胸部装甲が、ゆっくりと開いていく。
「万が一、何かあっても対処できる」
司は自立型コアを手に取った。
「ヴァルキリーは、その後だ」
コアを握り締める。
目の前にあるのは、ただの部品ではない。
何百年もの間、地下施設に眠っていたもの。
そして、あのヴァルキリーを動かしていたかもしれないもの。
司は、それをゆっくりと機体へ差し込んだ。
「さて……」
小さな駆動音が鳴る。
「お前は一体、何者なんだ」
静かなガレージに、機械の起動音が響き始めた。




