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第十話 見た目は、アルファドローン。

第十話 見た目は、アルファドローン。


「お兄ちゃん?」


「地下へ行く前に、もう一つ用意する。」


「地下は未知のエリアだ。」


「先に中を見られるなら、その方がいい。」


そう言うと、アイテムバッグからアルファドローンの素材を取り出した。


【Alpha Drone Frame ×20】


【Alpha Drone Core ×1】


変換装置へ投入する。


白い粒子がゆっくりと渦を巻き、一体の小さな機械が形になっていく。


数秒後。


ガコン、と排出口が開いた。


現れたのは、アルファドローンだった。


丸い装甲。


二本の短い脚。


ぎこちない歩き方まで、本物と変わらない。


シルヴィアが目を丸くする。


「えっ?」


「またアルファドローン?」


司は頭部の装甲を開き、小さなレンズを取り付ける。


さらに通信モジュールを接続し、ゆっくりと蓋を閉じた。


「見た目はアルファドローン。」


「でも中身は偵察機だ。」


「敵が見ても、不審には思われにくい。」


シルヴィアは感心したように頷く。


「なるほど……。」


「敵に化けさせるなんて、思いつかなかった。」


「ゲームなら死んでもリトライできた。」


「でも今は違う。」


「見えない場所へ先に入る理由はない。」


「慎重すぎるくらいでちょうどいい。」


続いて、再び変換装置を起動する。


今度はアルファドローンのコアだけを数個投入した。


【Alpha Drone Core ×5】


【Trap Kit】


変換開始。


光が消える。


排出口から現れたのは、手のひらほどの黒い円盤だった。


全部で五枚。


「これは?」


シルヴィアが一枚持ち上げる。


「スタントラップ。」


司は受け取りながら説明する。


「踏んだ相手へワイヤーを撃ち込む。」


「動きを止めるの?」


「完全には止まらない。」


司は首を振った。


「反応を半分まで落とす。」


「逃げる時間を作るための罠だ。」


勝つためじゃない。


生き残るため。


その一言だけで、シルヴィアは真剣な表情になった。


「うん。」


「ちゃんと覚えておく。」


準備を終えた二人は、再び隠し通路の前へ立った。


司は偵察ドローンを床へ降ろす。


「行ってこい。」


ギコ。


ギコ。


ギコ。


アルファドローンそっくりの足音を立てながら、偵察機は暗闇へ歩き出した。


司の端末へ映像が映る。


錆び付いた壁。


崩れた配管。


長い通路。


薄暗い地下施設は、驚くほど静かだった。


「何もいないね。」


シルヴィアが小声で呟く。


「油断するな。」


司は画面から目を離さない。


偵察ドローンは階段を下り、さらに奥へ進んでいく。


途中には朽ちた機械。


崩れたコンテナ。


埃だけが積もっている。


「本当に誰も……。」


その時だった。


画面が一瞬だけ乱れる。


ザーッ。


小さなノイズ。


すぐ元へ戻る。


「通信障害……?」


司は眉をひそめた。


地下だからか。


そう考えた瞬間だった。


ガギィン!!


突然、映像が激しく揺れた。


「!」


何かが偵察ドローンを弾き飛ばした。


映像がぐるぐると回転する。


その一瞬。


銀色の脚部。


細く、人型のシルエット。


赤く光る二つの瞳。


それだけが映った。


「なんだ……あれ。」


司が思わず呟く。


次の瞬間。


ザザザザッ――


【通信ロスト】


画面が真っ黒になる。


静寂。


司はゆっくり端末を下ろした。


「やっぱりいた。」


「見た目じゃ誤魔化せなかったってこと……?」


シルヴィアの声が震える。


「いや。」


司は静かに首を振った。


「多分、最初から見た目なんて見ていない。」


「もっと別の何かで、敵か味方かを判断してる。」


「偵察させて正解だった。」


その時だった。


カツン。


地下から乾いた金属音が響く。


二人は同時に顔を上げる。


カツン。


カツン。


一定の間隔で近付いてくる足音。


司は素早くスタントラップを三枚取り出した。


入口付近へ等間隔に設置する。


最後の一枚は通路の曲がり角へ。


「こっちだ。」


部屋の奥。


瓦礫が積み重なった死角へシルヴィアを誘導する。


二人は身を低くし、ビームガンを構えた。


「お兄ちゃん……。」


「喋るな。」


司の視線は入口だけを見据えている。


カツン。


カツン。


足音は止まらない。


ゆっくりと。


確実に。


こちらへ近付いてくる。


やがて、地下通路の暗闇から細長い影が姿を現した。


司は静かに息を呑む。


「来る……。」


暗闇の向こうから現れた"それ"は、ゲームでは一度も見たことのない存在だった。

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