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第96話: 石清水の戦い 第2幕! その② 『みんなで知ろう、八幡大菩薩!』?ちょっと待ってくださいよ、必殺技の名前ってなんなんです?

「あの~お理沙さんよぉ、その『みんなで知ろう、八幡大菩薩!』ってなぁいってぇなんなんだい?今から敵と一戦やろうってのに、ふざけてる場合じゃねぇだろうよ?」


 永倉さんが、首を捻って理沙さんに応える。

 まぁオレもこの、『星産みの儀 開催記念 スペシャルコンテンツ みんなで知ろう、八幡大菩薩!』って、両面コピーしたスライド?とやらを端から端まで読んでもイマイチぴんと来ませんや。


「理沙さん、こりゃどうも横文字が多すぎますよ。えーと……敵の作戦の本質はネガティブキャンペーンである……毒ガスをあたかも八幡宮の関係者が散布したように見せかける……まぁコイツは良いや……認知戦の一環であり、同時にSNSおよび動画配信によって、日本人の宗教に対する嫌悪感場を用いてポピュリズムを刺激し……ヘイトクライムを煽動して……?もうちょいと分かるように書いちゃくれませんかね?」


 オレが、呆れたように言うと、理沙さんが「あっ……!」っと言って顔を真っ赤にする。おい待ってくれよ、ずいぶんと可愛いじゃないか。


「ご…ごめんなさい!つい仕事のレポートみたいな感じで書いちゃって……そうよね。天津軍(あまついくさ)って、幕末や戦国時代、古墳時代とか、けっこう昔の人が多いのに、もっと分かりやすく書き直さないと……」


 いかんね……理沙さんは、アフリカ系が混ざってるとかで、肌が褐色で、脚が長くて、そんでもって胸も大きくて腰がキュってなっててよ……そんでこれ以上ねぇってくらいベッピンで、頭も良くて……なんだが、ときどきこうやってそこいらの生娘(きむすめ)みてぇに可愛くなっちまうんだよなぁ……そんな顔されちゃあ、これ以上言えないじゃないか。


「構やしませんよ、もう時間もねぇってのに、いちいち書き直してちゃ理沙さんが大変だ。ねぇ、半次郎さん、十兵衛殿。」


 オレがそう言うと、半次郎の旦那はにっと笑って大きく頷く。

「おいはどのみち薩摩んもんじゃで、どげん書き方をされたところでようわからん。理沙どんが説明してくれたやそいで十分じゃろ。」


 出たよ、この人斬りが。女には優しいんだよなぁ……幕末の時分は祇園(ぎおん)中の女が夢中になっちまって。そんで、その女たちがこの旦那の味方をするもんだから、やりにくいったらありゃしねぇ。

 で、十兵衛さんはってぇと……


「ヘイ、総司!オマエ保守的、理沙ちゃん素敵!オレは大好きモーマンタイ!」

 なんだそりゃ?まだラッパーとかってのをやってたのかい、この御仁(ごじん)は?永倉さんに言われて止めたんじゃねぇのか?そもそもイマイチなんだか言えてねぇし。

 昨日までオレたちに剣禅一如(けんぜんいちにょ)の稽古を付けてくれた剣豪はどこいったんです?


「まぁ、みんな異存ねぇってのは分かりました…で、理沙さん、何をすりゃいいんで?」

 オレが訊くと、また得意げな顔になって『すまほ』を取り出す。


「ふふっ!これですわ!南無沖田総司、来臨守護急々如律令!神鎧(しんがい)装着!」


 おー!ちょっと待った!いきなり神兵召喚するんじゃねぇよ!

 ……っておい、こりゃなんだい?


「くっ!しゃあぁぁー!完璧ですわ!…実はですね、先ほどアレクセイさんが、神兵召喚アプリ『しんぺー』のアップデートをしてくれましたのよ!なんと今回は!敵の呪力弾を一切受けつけない強化外骨格です!これさえあれば敵が100いようが200いようが楽勝ですわ!」


 理沙さんは、そう言ってはしゃいじゃいるが、永倉さんと半次郎の旦那、十兵衛殿が必死で口元を押さえて笑うのを堪えてるぜ…


「お、おい総司、そのド派手は鎧はなんでぇ?青一色の金ピカで、それじゃおめえ、なんとかセイヤってのに出てくる動物の形の鎧じゃねえか。そんな奇体(きたい)な風体で闘うってのか?」


 たしかにそいつは、ピカピカとよく光る青い金属でできた鎧みたいだった。しかも、肩やら背中やらに、トゲトゲだの羽根だのがついてやがる。


「皆さんには、この追加兵装 『神鎧』を着て戦っていただきます……キリッ!」

 いやいや、そんなメガネを直してカッコつけたってやらねぇよ?

 だいたいこの羽根はなんだい!こんなものつけて戦えるかっての!


 しかしオレがそう言うと、

「なんですの?これは沖田様の潜在意識が顕現したものですわ。わたしに言われても…あ、あとその翼ですが、空を飛ぶ様をイメージしてください。」


 おい、それじゃあまるでオレがこの恥ずかしい成りをしたがってるみたいじゃないか…しょうがねぇな。

 オレは自分が宙を浮いて歩いているところを想像した。


「おおっ!こいはすごかっ!まるで空を自在に舞っているようではごわんか!」


 気がつくと、オレは宙を飛んでいた。

 いや、飛んでいたと言うより、空中に見えない床があって、そこを歩いているような感じだ。


「驚かれまして?これはウィングバインダーと言って、重力の影響を受ける現世での戦闘に対応するために、四天王寺のITチームが開発したんですって!」


 おおっ…こいつぁすげぇな…見た目はともかく。

 するってぇと、永倉さんや半次郎の旦那も、このこっぱずかしい鎧を着るってのかい?


「永倉さん、半次郎の旦那。あっ、十兵衛殿も。いっちょ神鎧装着ってのをやってみて下さいよ。」


「えっ?いまやらなくても良いだろ。だいいちお理沙さんしかいねぇんだから召喚できねぇじゃねぇか……」と、永倉さんが言おうとすると、そこに美紗さんと、銀さん(アレクセイのこと)がやって来て……あれ?お花奈ちゃんもいるじゃねぇか。


 そう思ってると、お花奈ちゃんが半次郎の旦那の腕にしがみつく。

「神兵召喚するんですよね?ボクが召喚者でも良いですか?」


「おお……お花奈どんではごわんか。よかよか、召喚してたんせ。夏菜子さぁは太神楽(おおかぐら)の稽古で忙しかじゃっで。」


「え?半次郎さん、それムリじゃね?神兵召喚って友達にならないと出来ないっしょ?」

 美紗さんがそういうと、お花奈ちゃんが『すまほ』をとりだす。


「ダイジョーブです、もうボクたち友達だもんね!南無半次郎さん来臨守護急々如律令!神鎧装着!」


 半次郎の旦那がいきなり黒い光に包まれていく!いや、いつのまに友達なんだい、こんなオッサンと…って、なんだこりゃ?


「おお、これは普通の胴丸のようじゃが…なんじゃこいは!?まるで蝶の羽根のようでごわんか!」


 半次郎の旦那は、胴丸っていうか、まるでカブトムシだかクワガタみてえな鎧を着て、背中にでっけえ羽根がありやがるぜ…こりゃ蝶かい?いや蛾だろ。


「こいは…こいはすごか!まるで桜じゃ!桜花王…うむ!こん鎧ば桜花王じゃ!」

 なに言っちゃんでぇこの旦那は……あ、理沙さんも震えてるぜ、どうした?


「お、オーカオー!!それはわたしも気が付きませんでした……!あれかしら?ハイパー化とかするかも?どうなのアレクセイさん?」


「え?ハイパー化?なんだべそれ、そんな機能ないべさ。理沙さんはときどき(わげ)わがんねこど言うべ。」


「いーよアレ君、どーせアニメのネタだから。っていうかさ、そろそろ敵さん来るんじゃね?パパっとやっちゃおうよ。ってことでガム新さんよろー。南無ガム新、来臨守護急々如律令、神鎧装着!」


 ◆


「なぁ総司、なんか俺だけ扱いが雑じゃねぇか……?」


 理沙さんによると、敵の作戦の意図ってのは単に八幡宮の神職を殺すってことじゃなく、石清水八幡宮を支えている氏子(うじこ)にも被害を及ぼし、全国の八幡宮の氏子や後援者に対して、八幡信仰そのものへの不信感や恐怖心を植え付けるってことらしい。

 だから、まず手始めに駅前商店街を中心に毒ガス(硫化水素)を撒くってことらしいが……


 永倉さん、全身にトカゲの鱗が生えて蝙蝠の羽が生えたバケモンになってるぜ。


「なんだよこりゃ。俺だけ悪人みてぇじゃねぇか……だいたいお美紗さんの召喚は雑過ぎるぜ。いくら淡路島からの付き合いってもよ、もうちっと気ぃ遣ってくれても良いんじゃねぇか?いくらなんでもトカゲってことぁねぇだろ。」


『あっ!ガム新さん、あーしの悪口いってる!トカゲじゃないよ、ドラゴンだよ!マジカッコよくない!?それ、稲荷大神の霊力突っ込んでブーストしてんだぜ、イェーイ!』


『永倉様、美紗さん。雑談はそのくらいにして下さいませ。そろそろ敵の部隊がやってきますわよ。』

 理沙さんからの霊子通信で、オレたちは木津川に掛かってる橋(御幸橋っていうらしい)の方に意識を伸ばす。


「へぇ……こんな小っこい駅前商店街に、よくもあんだけ部隊を投入しやがるな。Homines creavit corp.ってのは暇なのかよ?歳さんが見たら大笑いするぜ。」


 どうやら敵は、1個小隊ほどで、輸送用のトラックに小銃で武装した兵士と、なんだかよく分からんが、ガスボンベみたいなものを積んでるらしい。オレがそういうと、


『おそらくそれが毒ガスでしょう。敵が散布する前に速やかに排除してください。よろしくて?』って理沙さん。


「そりゃ、神兵召喚したオレと永倉さんなら、あんな小銃で武装した兵士くらいわけはないが……一人も殺すなってのが面倒だなぁ……」


『なにを仰ってるの?そのための神鎧装着ではありませんか。それを着ていれば、敵の呪力弾を千発浴びたって痛くも痒くもありません。圧倒的な武力で!敵の皆さんを峰打ちにして下さいませ!でね永倉様、沖田様、この戦いの模様はドローンで撮影してライブ配信しますの。ですので、ひとつ正義の味方っぽく、お願いしますわ。あ、あと必殺技を使う時は、ちゃんと技の名前を叫んで下さいね!』


「おおいちょっと待ちなよ、お理沙さん。その正義の味方ってのはなんでぇ?あと、必殺技って?」


『ですから、皆さんは一般市民を攻撃する悪の軍隊をやっつける、神様が遣わした特撮ヒーロー……じゃなかった、神様の戦士って脚本なんですから、ちゃんと敵と対峙するときには名乗りを上げて、カッコいい技でフィニッシュを決めて欲しいんです!』


 はい?なんだそりゃ?まるで日曜日の朝にやってる何とかライダーとか、何とか戦隊じゃねぇか!?


「あの~、理沙さん。ちょいと聞いても良いですか?作戦名の『みんなで知ろう、八幡大菩薩!』ってのはひょっとして……」


『あら?わたし言ってませんでしたか?これは星産みの儀のチケット販促のためのPVですわよ!夏休みで家にいるチビッ子たちの眼をくぎ付けにして、お父さんお母さんに会場参加をおねだりしてもらうための一大プロモーションです!』


「「なんだってぇーーー!!!」」

 思わず絶叫する永倉さんとオレ、ちょ、まってくれよ!おりゃ芝居なんて出来ねぇって!せめて台本くらいくれっての!


 いつも『左遷先が神域でした。』をお読みいただき、本当にありがとうございます!


 ついに幕末の英傑たちが出撃だ!……と思ったら、なんだか理沙ちゃんが妖しいことを言っている……。

 なんかもー、クロスだか、モビルスーツだか分らん鎧を着せられて、そもそもそんなオーバースペックな装備はいるんかいな?と思ったら……。


 なんと理沙の真の目的は、防衛戦にかこつけた『星産みの儀』のイベントチケット販促用PV撮影でした!しかも、こっぱずかしい鎧を着せられるだけでなく、必殺技も連呼しろって……いやそれ、ただの理沙ちゃんの趣味やん!?(あ、ちなみに、3人の鎧の元ネタが分かった方はぜひコメントくださいませ……!)

 「俺だけトカゲかよ……」とぼやくガム新さん。しかし、豊受大神の化身である美紗ちゃんの霊力をぶっこんでブーストしているみたいだし、次回はどんな活躍をしてくれるのか?


 【ちょっと豆知識】

 ちなみにですが、敵が撒こうとしている「硫化水素」は毒ガスではありますが、いわゆる軍事用の毒ガス兵器ではありません。

 ただし、ふるーい下水配管や温泉などでは高濃度で噴出していることがあるぞ!廃墟ツアーとか、温泉地で「卵の腐ったような匂い」がしたら、危険なサインなので迷わずすぐ引き返そう!


  さて、次話はいよいよ敵の小隊との激突!……なんだけど、台本なしで正義のヒーローを演じなアカンのですよ。どうするガム新、そして沖田総司!


 ※もし「面白かった!」「元ネタわかったぞ!」「沖田様が不憫すぎる!」と思っていただけましたら、下部の【☆☆☆☆☆】から応援していただけると、執筆の最高の励みになります!引き続きよろしくお願いいたします!

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