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第95話: 石清水の戦い 第2幕! その① うっふっふ……今って、フェイク動画が氾濫しているじゃない?でもそれって使いようなのよね!

 あらら……皆様、ポカーンってお顔をなさってるわ……


「理沙ちゃん……ごめんな?おばちゃん、もひとつ言うてること分からへんねんけど?逆手ってあんた、毒ガス使うような悪もん、さっさと始末せなアカンやろ?」


 あら?そんなことは当然ですわ。でも……


「お方様、それだけでは面白くございませんわ……これほどの非道を為そうとする集団!内紛に見せかけて毒ガスで八幡宮の関係者を抹殺し、それをもってこちらの評判を失墜させるのです……百万倍返しだ!……この文化庁 文化財部 文化観光振興係の滝沢・バーキン・理沙にお任せください……!」

 わたしが大見得を切ると、八幡さんがすごーく嫌そうな顔をする。


「なんかアンタ、けったいなことをしようて思てるやろ?」


 ふ、ふふふ!よくぞ聞いて下さいました!わたしはPCをプロジェクターに繋いでさっき作ったばっかりのスライドを投影する。


「なんやコレ……『星産みの儀 開催記念 スペシャルコンテンツ みんなで知ろう、八幡大菩薩!』…またあんたこないわけの分らんもん作ってから……」


 まぁお方様!せっかく八幡宮を盛り上げるために作ったのに!……昨日デスマーチの合間にテキトーに考えたことだけど!


「コホン…我々には、敵には無い圧倒的なアドバンテージがあります!…それは、敵がどのように攻めて来るかが詳細に分かること!そうでしょう、アレクセイさん!」

 わたしがそういうと、若干引くアレクセイさん。え、いま引くところ!?地味に傷つくわ……何がいけないのかしら……


「いやまぁ……虚空蔵領域さアクセスしで、現在・過去・未来の相手の意図・記憶・知識を集めるんだがら、そりゃ何を、いつ、どうやるかまで全部わかるべさ。ただ、オラだづは八幡宮の神職さんや、商店街のおっちゃんやおばちゃんだけでねぐて、この辺一帯に住んでる人みんな守らねばねぇべ?敵さ、毒ガス使ってくるべ。いぐら十兵衛さんや法眼さんが無敵でも、毒ガスから市民全員守れねべ?」


「えっ?そうなん?いやー……うちはべつに、氏子以外はそないに気にしてへんけどなぁ~……いうて、戦争に犠牲は付きもんやろ?」


 うわっ、エグイ価値観ね。やっぱり八幡様は筋金入りの戦争屋だわ。でも次の瞬間、夏菜子さんがバって立ち上がって叫ぶ。

「アカン!そんなん絶対、ぜーったいアカン!ぜんっぜん関係ない市民の皆さんとか、たまたま来ただけの観光客の人らも、下手したら毒ガスで死ぬかも知れへんねんで!ウチはそんなんいやや!一人の犠牲も出さへん!」


 来たっ!夏菜子さんの……えーとなんだっけ?そう!幸魂(さちみたま)だわ!生きとし生けるもの全てを慈しみ愛する、イザナミの末裔としての彼女の力!

 その彼女がやる気になってくれて、あとは……わたしが姫様をちらっと見ると、姫様もウンウン頷いている。


「タラちゃん……じゃなくて、八幡大菩薩殿……ならびに天津軍 八羅将の諸卿……」


 姫様がそう言うと、お方様と八羅将……護良(もりなが)親王殿下、義経様、真田信繫様、楠木正成公、西郷南洲翁、平清盛公、土方歳三様、倭建命(やまとたけるのみこと)様が一斉に平伏する。

 わっ、これは皇大神(すめらおおかみ)モードだわ!……なんかお方様が「ずるい~」とか仰ってるけど。


「其方らの武威……この天照大いに頼りにしています。しかし此度(こたび)の戦は、ただ勝てば良いと言うものではありません。アルコーンなる邪神を追放し、悪魔の召喚を防いで、それによって我ら神々と人間が、この世界をより良いものと出来る、そのように証明せねばならぬのです。そうですね?樫原殿。」

 姫様がそう言うと、八羅将が一斉に横に控えている崑崙山の戦士、清掃1課の樫原嘉幸氏に注がれる。


「なんじゃアイツ……ぱっと見その辺の人間やけど、俺らを遥かに凌駕する闘気をまとっとるぞ……」

 九郎義経様がそういうと、他の羅将も鋭い目つきで彼を凝視した。


 だけど、樫原さんは彼らの殺気を受けても全く動じることなく、無言で姫様に一礼する。


「皇大神、この源次郎、面を上げてもよろしゅうございますか?」

 信繁さまがそう言うと、姫はニッコリと頷いた。


「では、畏れながら……樫原殿が言われたこと……すなわち、夏菜子姫のお身内が傷つくようなことあらば、夏菜子様は無論のこと皇大神も荒神(破壊神)となること、更にはそれを救世観世音菩薩、聖徳太子様がお許しになり、世界は破壊しつくされることは承知いたしましたが、夏菜子姫が仰った『一人の犠牲も出してはならぬ』というのは何故にござりましょう?」


 すると、姫様は黙って夏菜子さんの方を向いた。

「えーと……源次郎さん?」


「源次郎、とお呼び捨てになさってくださいませ。」

 けれど、夏菜子さんは首を横に振る。


「源郎さん、ウチは姫や八幡さんみたいに、すーごーい昔から神さんやったわけでも、王族やったわけでもなくて、ただの農家の娘で、ペーペーの地方公務員です。いきなりよう知らん人を呼び捨てとかできません。」


「は?ですが、イザナミ大神に連なる方に対してそのようなわけには……」

 信繁さまがそう言おうとすると、夏菜子さんが手を振って制止した。


「源次郎さんがウチらの大親友になってくれたら、そのときは源さんって言うと思います。あとは、さっきの質問やね。」

 夏菜子さんがそう言って微笑むと、信繁様だけではなく、他の羅将も驚いたように彼女を見た。


「ウチはな、談山神社でここにおるアレ君が死んでもうて……ほんまに心がつぶれるくらい悲しかった。っていうか、潰れたんやと思います。

 怒りと憎しみが身体じゅうに充満して、法眼さんと十兵衛さんがおっきな鬼になって……気が付いた時には、たくさんの敵の兵隊さんが転がってて、ウチの身体から雷が迸ってて、それで燃えて動かなくなった人たちがたくさんいて……」

 辛そうに語る夏菜子さんの肩を、姫様が抱きしめる。


「すっごく怖かった……そんなんすごく嫌やのに、もう一人のウチが、それを楽しんでるみたいで……一人燃えるたびに大笑いして、法眼さんと十兵衛さんがでっかい剣で叩き潰すたびに大喜びして……イザナミお祖母ちゃんがウチに取り憑いて、『お前の愛しい人を殺した者らを、我が生贄とするが良い。黄泉の力を全て受け継がせてやろう』って語り掛けてきて。」


 みんなが、息を呑む音がする。いつもはふざけている九郎さまのお顔が蒼白になっていて、護良親王殿下の手が震えていた。


「あ、あの、ごめんなさいね、夏菜子ちゃん。僕よう分からへんねんけど、それやったらさっき源次郎くんが言うた通り、夏菜子ちゃんの身内だけ守ったらええと思うんやけど?」


 倭建命様がそういうと、夏菜子さんは「たぶん、ちゃいます」という。


「八幡宮の神職の人、商店街のおっちゃんおばちゃん、その家の子らを守るんは当たり前やけど、毒ガスまかれたら、その周りの人らも死ぬかもしれへん。

 そんな、何も悪いことしたわけでもなんでもないのに、明日学校行ってとか、仕事しに行ってとか、子どもの弁当作らなって思ってるときに、いきなりもがき苦しんで死ぬとかアカンやん。

 それだけやない。談山神社で分かったけど、敵の兵隊さんも、子どもがおるお父さんやったり、好きあってる恋人同士やったりするやん?

 悪い奴に騙されて、無理やり人殺しさせられて、オマエ人殺しやから地獄行きって、ええんかな?こないだ八幡宮に攻めてきた人たち、全部地獄行きやったやろ?」


「し、しかし、夏菜子姫様、それは理想論であって、現実の戦は左様なものでは……」


「それがアルコーンの狙いです。」

 護良(もりなが)親王殿下が異議を唱えようとすると、姫様がきっぱりと否定する。


「皆聞きなさい……悪魔召喚の生贄とは、なにもこちら側の犠牲である必要はないのです……」

 姫様がそういうと、皆ギョッとする。


「悪魔召喚の生贄とは、恐怖、憎悪、絶望、悲しみ……八幡大菩薩、そして羅将よ。卿らが敵を八つ裂きにするたびに発せられる阿鼻叫喚と、その者らの家族が感じる怒り、憎しみ、悲しみ……また、第三者であっても、その戦いぶりを見て、この日ノ本の武の神々に恐怖する者らが大勢いれば、それが供物になります。

 それだけではありません。その時アルコーンはこういうでしょう。『この恐るべき魔神達からお前たちを救うのは、唯一の神である我だけだ』と。樫原さん、そうなったら、千手観音クマラ様はどのような決を下されますか?」


 姫様がそう言うと、樫原さんはゆっくりと、しかしよく通る声でハッキリといった。

「この地球83億人の霊核を、サイバー攻撃とナノマシンで一気に洗浄します。例外はありません。むろん、首謀者は、我ら自身の霊験でその邪心の一切を焼き尽くします。中には存在そのものが消えるものもいるでしょう。」


 一瞬、皆が無言になる。そして……姫様がサッと扇子を開いた!


「結論は出ましたね……八幡大菩薩、そして八羅将の諸卿、今ひとたび申し渡します。敵味方誰一人死することなく、敵の企みを挫きなさい……そして、滝沢バーキン理沙、高橋アレクセイ銀次郎。其方らは作戦参謀として八幡大菩薩を補佐するのです、よいですね?」


 八幡様と八羅将の皆様が再び平伏し、わたしに全員の視線が注がれる。


「お任せを……この滝沢バーキン理沙!皆様に完全なる勝利を献上申し上げます!」

 くうぅ~~!一度言ってみたかった!


 ◆


「でぇ~……お理沙さんよ、俺たちゃ何をするんでぇ?」

 わたしが羅将の皆様とアレクセイさんに各々の作戦を説明していると、土方隊の突撃隊長、永倉新八さまが声をかけて来る。


 お理沙……良いわ。こんな幕末の勇士に頼りにされる日が来るなんて……「いしゃあ」とか言って欲しい。最初は沖田様とか、土方様みたいなイケメンが良いって思ってたけど……


 ガム新様、断然いい!

 ほんとこう、熱血なのよね!某ジャンプ的な少年誌のキャラそのもの!「強敵と書いて友と呼ぶ」まんまあれ。


 気さくで豪快でユーモアのセンスがあって皆を笑わせるのが大好き、それで曲がったことは大嫌い……ええ男すぎるやろ!あ、いけない。八幡様の口癖が移ってしまったわ。


「永倉様、皆様には初戦を飾っていただきます。あなた様と、沖田様、半次郎様、十兵衛さまの4人でババっと派手にやっちゃってくださいませ!」


「派手にだぁ?」4人が一斉にわたしの方を向く!

 ふふふ!行きますわよ!『みんなで知ろう、八幡大菩薩!』作戦!


 最後までお読みいただき、ありがとうございます!

 今回は理沙ちゃんのオタク全開な暴走プレゼンから始まりましたが……


 ちょっとねー、八幡姐さんリアルな戦争屋さんすぎて。

 そこで入った夏菜子ちゃんのダメだし。「アカン!ぜーったいアカン!一人も殺したらあきません!」

 こういう風に言われたら、関西ではホンマにアカンのですよ。覚えておいてくださいね。

 ゴリ押ししたらワンチャンいけるとかありませんからね。


 でぇ……それはいったいなんでやねん?に対する姫の答え合わせ。

「敵が死んでも悪魔召喚の生贄になるんやで。」おいそれ無理ゲーやん。

 しかもそれをネタにアルコーン永琉がこっちをディスってくるとかクソすぎる。


 次回!この無茶振りに応えるべく、「ガム新」こと永倉新八、沖田総司、中村半次郎、そして……最強の剣豪 柳生十兵衛が一番槍として突撃するんやけど?…… 『みんなで知ろう、八幡大菩薩!』 作戦ってなんやのん?なんかの紹介動画?


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