第91話: 姫と夏菜がマッパになるって?それ、動画にあげるんワンチャンあるかも。え?なんであーしも滝行なんだよ!?
「たしかこの辺と神功皇后が仰っていましたが……あ、いたいた。夏菜子さーん!姫さま~!」
プロモ用に動画の撮影をしようって話になって、あーしは、理沙っちと花奈っちょと一緒に滝行の場所に行ったんだけど、理沙っちが声をかけても、二人とも気が付かない。
あれ?なんか揉めてる?
「だーかーらー!神様パワーを鍛えるには筋トレと有酸素運動が一番なの!ほら、着替えて着替えて!」
「え〜!?ウチ走るん苦手やねん…だいたいこんなんお清めでもなんでもないやん!ただの部活やん!」
「どしたん、滝行するんじゃねぇの?なんで走り込みするみたいな話になってんの?」
あーしが聞いたら、姫が「もー聞いてよ〜!」だって。
「夏菜子ちゃんって、茅乃輪も開けられないのよ!神さまなのに!そんな初歩の初歩が出来ないようだと…!」
え?あーしもできないよ?ってか、よく考えたら、あーしも夏菜も神様っぽいことなんにも出来なくない?
「それなー…」
あーしが言うと姫が、
「ねぇ美紗ちゃん、ちょっと茅乃輪開けてみて。」って言ってきた。
「ちょっとやってみっか!えーと…パンパンッ!おっ!金色の扉ひらいよ!成功じゃね!?」
って思ったら…
金色のマルの向こうに、朱色の鳥居がいっばい並んでいて、外国人観光客がいっぱい…うん、これは常世じゃないな。京阪の駅見えてるし。
「美紗ちゃん…これは〜…うん、伏見稲荷だね、現世の。あっ、抹茶アイス食べる?…」
「あの~、姫さ。茅乃輪ひらけないって、割と致命的にダメなんじゃね?神様とか仏様の会議って、基本的に常世でするよね?そこに入れないウチらって、だいぶいけてない感じが……っていうかさ!やり方教えてもらってないのに出来るわけねーべ!ちゃんと教えてよ!」
あーしがそういうと、夏菜もウンウンっていう。
「そやそや!そんなちゃんと業務指導もせぇへんのに、成果だけ出せって、それが日本社会のアカンところや!」
ちょ、夏菜。あーしそんなスケールの大きい話してねーし。
「やり方?うーん、やり方って言われても……わたくし、こんなの父様から生まれた瞬間に出来たから、逆に良く分からねいのよね……えーと、パンパンッ!ほら開いたでしょ?」
確かにそこには、白く輝く輪っかができてて、向こう側には常世特有の光り輝く風景が見えてんだけど……
「いやだから、ウチらはやり方を教えて欲しーんよ。なんかコツとか、順番とかあんじゃねーの?」
あーしが訊くと、姫は一瞬考えて、
「だからぁ、これをこうしてガっ!って手を叩くと、茅乃輪が開くんだよ。ここでこういう感じでグッと!わかる?ギューッと開いて、ガッ!と行くんだよ?やってみて!」
なんだよそれぜんっぜんわかんないし!でもあーしがそういうと、姫はムッとして、
「ちょっと~……夏菜子ちゃんも美紗ちゃんも、根性が足りないんじゃない!?やりかたどうのこうのって言う前に気合いだよ!気合い!だからほら、まずはこの坂道ダッシュから行こう!階段は一段とばしね!」
えーまぁ、いっつもランしてっから、走るくらいいーけどさぁ~……って思ってると、理沙っちがあーしの肘をツンツンする。
「むしろ逆に……いいですわ……ヒルコ様のミッションは、3人の女神の日常を切り取った動画で好感度をアップすること。つまり!姫様と、夏菜子さん、美紗さんが、玉の肌を露わにしながら健康的な汗を流すのは、動画再生数爆上がり間違いなし!」
なんだこの変態!いよいよ本性あらわしたな!って思ったら、理沙っちがなんかラン用のウェアっぽいものを取り出した。
「一応、ヒルコ様のご趣旨を踏まえ、私の方で動画撮影用の衣装を用意しました。姫様、夏菜子さん、美紗さんはこちらに着替えて下さい……グフフ……」
おいちょっとまて、オマエ今、グフフっていったべ?
ウェアを広げてみたら、ラン用のスポブラと短パン、ランニングシューズだった。
「あれ?なんだ……ただのウェアじゃん……これだったらあーしもプライベートで着てるし。まぁいんじゃね……って!?姫もう着替えてんの!うっわ~めっちゃ似合ってんじゃん……もう女優だよ、女優。」
姫、スゲーな……スタイル良いとは思ってたけど……スラってしてるし、色白だし、髪サラサラだし……案外胸おっきいし!
うーん、あーしも読モやってから自信はあるけど、ここまではなぁ~。
ん?夏菜どうした?さっさと着替えなよ?……
「こ、これ!下着やん!ブラやん!しかもこんな短い短パン……い、いやや!恥ずかしい!」
ええ?そーかなー、みんな着てるって。ともかく、このまんまだと話が進まないから、ウチらはタオルで隠して夏菜子を着替えさせたんだけれど……
「そっかー……ちょっと、ムチムチすぎるかな~……胸もデカすぎるし……ちょっと絵的に問題が……コンプラ上の。」
そうなんだよね、夏菜ってぽっちゃりで胸大きいから、この手のウェアはダメかもしれん……と思ったら、姫が親指をグッ!って立ててる。
「美紗ちゃん……駄目よ!光の神のわたくしがスポブラなのに、闇の女神の夏菜子ちゃんがジャージだったら、絵面がものすっごくカッコ悪いでしょ!?ダメ!そんなのなしなし!恥ずかしいとかないから!気合いと根性だから!」
え~、姫どうしちゃったの?そんなキャラだったっけ?
まぁしょうがないか……イベントプロモ的には、ジャージってあり得んし。
「……っていうわけで、夏菜子もそれ着るとして……あれ?理沙なにしてんの?さっさと着替えなよ?」
けど、そういうと理沙っちが真っ赤になる。
「い、いえ……わたしはアニオタなので、そういうリア充みたいなことは……」
「おいおい、なに言ってんだよ!理沙っちみてーなベッピンが出ないとか無いから!ほら、さっさと着替えな!」
「そやで理沙ちゃん!ウチかて恥ずかしい目にあうねんから、一蓮托生や!」
なに言ってんの夏菜子、それ意味ちがうんじゃね?
「ねーねー、美紗ねーちゃん、ボクのスポブラは?ボクも可愛いの着たいんだけど……」って、いやいや、花奈っちょ、それはダメだよ!未成年だろ!
「花奈ちゃんはダメです。どんな変態さんが見てるか分かりませんからね。はいこれ。」
そう言って、花奈っちょは、学校指定っぽいジャージとTシャツを渡される……まぁ、理沙っちがいちばん変態だけど、コイツは国家公務員だし、この種のプロモでリスクヘッジは大事だしね~
◆
そして、いよいよ姫の特訓だ!動画の主役は、姫と夏菜、あーしで、理沙っちはたまたま通りかかった美人のおねーさん、撮影は花奈ちゃんだ!じゃあスタート!
「こほん……えー、神様としての霊力の基本は……体力です!なのでまず、ここからケーブルカーの山上駅までの片道50mくらいの坂道を、往復で10本ほどダッシュしましょう。はい始め!」
でも、夏菜と理沙っちが早々に音を上げる。
「夏菜、ちょっとダイエットした方がよくない?あと理沙っちは運動不足だね。休みの日にアニメばっか見てるからだよ。……にしても、理沙っち本当にいいカラダしてるよね。脚ながいし巨乳で超セクシ―だし。ただの通りすがりのお姉さん役もったいないな……なんかキャラ付けする?星産みの儀のディレクター的なヤツとか。なんか、道真さんが文化庁に許可とったって言ってたから大丈夫だよ。」
そういうと、理沙っちが遠慮がちに首を振る。
「み、美紗さん……さっきも良いましたが、わたしは非リアなので……オタクらしく大人しくしていないと……」
「え~そんなことないですよ~、いま、理沙おねえさんにすっごいたくさん応援コメついてます!」
え?これライブ配信なの?まぁ良いか……えーなになに?
『アフリカミックスのおねーさんめちゃキレイ!かっこいい!』
『すごいスタイル良くて素敵です!』
マジか!いいねぇ!そういう裏方っぽい人が動画に出て来るのアリだよ!じゃあ一発……
「はーい!ミタマちゃんだよ~!今日はね~あーしらの、頼りになる裏方紹介しよう!今回のイベントディレクターのおねえさん、理沙っちだよ!はーいパチパチ!」
そうしたら、いっぱいイイねが付いてきてPVも伸びて来る!うん、イイ感じじゃん!
そんな感じで、その後もうさぎ跳びとか、亀歩きとか、聞いたことのない謎のトレーニングが続いたけど、配信自体は好評で、花奈っちょがピョンピョン飛び跳ねてる!
「すごーい!いまアレクセイ兄さんから連絡ありました!チケットの売れ行きも順調だって!今の配信が良かったみたいです!」
「おっ!スゲーじゃん!ウチら頑張ったね!じゃあ、あとはシャワー……じゃなかった、滝浴びて汗流して帰ろっか!」
「そやな~、めっちゃしんどかったわ……あっ、理沙ちゃん、花奈ちゃん、先に本殿に戻っといてくれる?ウチと田島は、姫と一緒に滝行してくるから。なんか、チョロチョロの滝やし、シャワー代わりにちょうどええわ。」
夏菜がそういうと、二人はオッケーです、といって、八幡宮の本殿に戻っていった。
「さてと……じゃあ姫、ちゃっちゃと滝行終わらそうよ。滝小さいから順番決めなきゃだけど……」
ってあーしが言うと、姫が、
「なにいってんの?現世の滝のわけがないでしょう?滝は滝でも、常世の滝です。ほらっ!」
っていって、茅乃輪を開けると……
「なっ……なんやこれっ!めっちゃでっかい滝やん!」
姫が開けた茅乃輪の向こうに見えてるのは……なんだこれ!雲の上から水が落ちて来てんじゃん!落差なんぼあんのよ!?
「ちょ……姫、これどないなってんの?勝浦の那智の滝くらいの落差あるで!そもそも雲の上からって……こんなん当たったらしぬやん!」
でも、姫は全然気にせず滝つぼに入っていって、滝を浴びるとすんごいすっきりした顔で出て来た。
「ふわぁー!やっぱり穢れを祓うにはこのくらいの水量じゃないとだめよね!うん、最高!夏菜子ちゃんも美紗ちゃんもおいでよ!」
「ムリムリムリムリ!なに言ってんだよ!水の衝撃だけで圧死するっての!」
「えー?そんなことないよ!ここは常世だし、あの水も物質界の水じゃないから!それに二人とも神様だから、あのくらい浴びないと霊力がアップしないよ!」
「ちょっと待ってぇな!そんなん言うたって……100mくらいあるで!アカンって!」
夏菜も必死で抗議してるけど、姫が滝つぼから上がって来ると、
「もーさー、わたくしのほうが神様的にはぜんっぜん先輩なんだから、ちゃんと言うこと聞いてもらわないと困るよ!入って入って!」
って言って、あーしと夏菜子を、滝つぼに突き落とした!?
「あかーん!しんでまうーーー!!」
お読みいただきありがとうございます!
えーとですね、前回で八幡さんに「斎戒してこい」って言われましたので、滝行することになったんですよ。
神道では、大事な神事をする前にはお清めってするものでして、お参りするときも、両手を洗って口を漱ぐでしょう?
実際に神職の皆さんは、大きな祭りの時に、滝に打たれる、川や海に入る、肉や魚、ネギやニンニクなどを避ける、といったことをされます。
ところが、姫曰く、「斎戒以前に体力だよ!」ということで……
そこに、本性を現した(?)理沙が、イベントプロモと称して、妙なウェアを持ってきたり。
そんな脱線をしつつ、さぁいよいよ滝行。
ちっさいし楽勝だと思ったら……常世の滝は、那智の滝レベルの大瀑布でした!
「理沙っちのバズり笑った!」「夏菜子ドンマイ!」と思っていただけましたら、ぜひ下の【☆☆☆☆☆】から応援の星やブックマークをいただけますと、毎日の執筆の大きな励みになります!




