第87話: やっぱ、姫はホンマもんの神様やわ~。で、このぶっちゃけ話が『灼熱の太陽が全てを焼き尽くす』ってことらしいで。
田島も、理沙ちゃんも、これ以上姫がしゃべらん方がええって言いたいんやと思うけど……
ウチは二人に「大丈夫や」って合図を送る。
「姫は、ウチらみたいなニワカとちゃう、正真正銘ホンマの神さんやで?イザって時は神様パワーで何とかなるって!」
それで、姫はアンチコメも全く気にせんと、話を続けた。
「地球が誕生すると、次に神々は命の創造に取り掛かりました。初めに、宇比地邇神と、須比智邇神という、夫婦の神が現れました。彼らは、海底で熱水と鉱物を混ぜ合わせ、そこに、宇摩志阿斯訶備比古遅神から受け取った物質を入れることで、生命の設計図、核酸を産み出したのです……」
核酸?あー、なんか高校の時に習った気がする。なんやったっけ?
「核酸からは単細胞生物が生まれましたが、そのときに、角杙神、活杙神という、やはり夫婦の神が現れました。これらの神が単細胞生物に働きかけると、単細胞生物がミトコンドリアを、さらにシアノバクテリアを獲得し、藻類が生まれました。さらに、単細胞生物が集まって、役割分業をするようになりました。多細胞生物の誕生です。」
「さらに、藻類、多細胞生物は、異なった生物種の間で、捕食・共生といった関係性を持つようになりました。これには、意富斗能地神、大斗乃弁神という夫婦神が関与しましたが、これにより生態系が確立したのです。」
な、なんかだんだん話がムズくなってきてるんやけど……田島の方を向くと、「さっぱりわかんねー」って顔をしている……あ、でも理沙ちゃんとアレ君は、すんごい勢いでウンウン頷いているな?
やっぱりカシコは違うわ~!
「そして、生命は更に進化し、脊椎動物や哺乳類、そして人類へと至ります。これにより、互いを認識し、感情や抽象性を理解する「心」が生まれたのです。このプロセスは、淤母陀琉神、阿夜訶志古泥神という夫婦神によってなされました。」
あ……おっちゃんと真魚さんがアタマ抱えてる。どういうことやろ?これって秘密やったんかな?
そして……
「そして最後に、わが父 伊邪那岐神、としてわが母、伊邪那美神が降臨しました。二人は地上に下り、国を生み、神を生み、それを通じて、人間たちに文化と文明を与えたのです……すなわち、精神圏、ヌースフィアの誕生です。」
おっちゃんが突然立ち上がって叫ぶ。
「あかん!そっから先を言うたら!」 え?なんでなん?
けど、姫はおっちゃんの制止をきかずに、話し続ける……
「しかし、この二人の業、国産みと神産みは完成しませんでした。皆さんは聞いたことが無いでしょうか?我が母 イザナミは、我が兄 火之迦具土神を産んだ際に、火傷を負い、それが元で病にかかり、命を落としたのです。そのため、神産みは完成しませんでした……そして、わが父イザナギは、この豊葦原中津国を治める神を、男女の交わりではなく、化生という神力の行使により誕生させました。それがわたくし、アマテラスです……」
姫がそれを言った次の瞬間、ライブ配信のコメント欄に、雪崩みたいにコメントが書き込まれた。
正直、口に出来ないくらい酷いコメントばっかりで、田島がとなりで拳を握りしめて震えてて……スタッフ席の理沙ちゃんとアレ君は、「あーあ」って感じで肩をすくめてた。
あれ?せやけど……
『言われてみたらそうかも?』とか、『まんま古事記に書いてあることじゃんね?』とか、『たしかに、神産みで生まれた神様が治めるのが正解だったんでは?』なんてコメントも入って来てるな?なんか外国の人っぽいコメントも……
なにこれ?英語?ちゃうな。『Es ist so elegant, fast wie Steiners Theosophie! Es passt perfekt zum evolutionären Prozess vom Saturn- zum Erdzeitalter!』
なんや?理沙ちゃんが昂奮してる……またいつもの変態オタク……でもないみたいやな。
「すごい!確かにこれはルドルフ・シュタイナーが提示した神智学的な進化論に酷似していますわ!」
なんのこっちゃ?わかる単語でいうて欲しい。
なんかそれからも、英語やったり、インドカレー屋さんの看板の字みたいなんとか、神戸モスクの入り口のとこに書いてある文字とか……あ、これはわかるわ。中国語やろ?なんやて?……「這跟老子和莊子的哲學思想簡直一模一樣!我們國家也有伏羲和女媧的傳說!他們真是太相似了!」
……うん、ウチはよう分からへんから、みんなググって調べてみてな!
あ、また理沙ちゃんとアレ君が震えてるわ……
「これはまさにインテグラルにおけるスパイラルスダイナミクスそのものだ。我々の研究では、なにが進化を促したのか分からずじまいだったが、彼女がいう高次元存在の関与、というのは科学的に証明できなくても、状況証拠的には否定できない。- K.R.W.Jr -……ええっ!まさか発達論の大家がこれを見ているの!!.」
ほんで、コメント欄を見てた姫が、満足そうに微笑むと、もういっぺん、静かに、せやけど力強く語りだす。
「わたくしは、ずっと考え続けてきました……わたしくしはいったい何なのだろう?と。イザナギ……父様が黄泉の穢れの禊によって、わたくしや、弟のツクヨミ、スサノオを化生させたことは致し方ないことだったし、強い力を持つわたくしたちが、豊葦原中津国のために力を尽くすことも、やはり必然ではあったでしょう……しかし!その時々の為政者が、自らの正当化のために我らを祀り上げるだけなら、それは人形と変わらぬ…!」
ここで、姫はカメラの方を向き、力強い眼差しで見た。
「そのような欺瞞のために!妾はこの国の神々の王として君臨してきたのではない!……お父様とお母様の血を受け、誠の神産みによって生まれた神々、国津神を抑えてきたのも、わたくしが化生で造った神にこの国を統治させてきたのも、ひとえにそれがこの国の安寧に繋がると信ずればこそ!……それが、人の我欲の道具であったなどと……なんの神ぞ!左様なこと、わが父母の願いではない!さらに言えば、造化三神の計画でもない!」
わー……姫キレてるなぁ……たぶん、演技やと思うけど。でも背中の炎が燃え上がってて、効果は抜群や。
「妾は偽りの太陽たることを望まぬ!嘘と、欺瞞と、その場しのぎで其方らが時を費やすことを赦さぬ!
故に聴け!妾は真なる光の神として、これなる闇の女神、夏菜子と力を合わせ、一切の空事を焼き尽くし、神産みを再興する!
そしてそれはかつての神産みではない!光と闇を今一度混淆して、かつてあった宇宙の創造力をこの地上に顕現する!これぞ、天地人の再創造 『星産みの儀』である!!」
えっ……?ええーっ!!なになに?このイベントってそんなすごいことやったん!?なんかウチ、あたらしい団体作ったし、面白おかしいイベントして、敵?敵っていうか、『神国日本のなんちゃらかんちゃら』っていう議員さんらに一泡ふかせたろ、くらいにしか思てへんかったけど??
まぁでも、これって敵に向かってのメッセージやんな?なんかまだ演説つづいてるけど。
「そして!いざ聞け!わが日ノ本の子らよ!この企てはただ妾のみが為すに非ず!そなたら衆生を導く御仏の大いなる謀なり!星産みの儀 成就いたさば、幾億万の御仏地上に来臨し、一切の偽りを消し去り給い、浄土をもたらし給うであろう!これぞ、誠なる神仏習合の秘儀なり!!」
うわーなんかだんだんいうこと壮大になってるで……姫の気迫に押されて、コメント欄もお祭り騒ぎでヤバイ宗教みたいや。あ、でもホンマの神様やしええんか?だいたいウチも手伝わなアカンねんし……
あれ?何かおっちゃんが叫んでるで。
「ちょっと―!?ワシ、観音さんとしてそこまで言うてへんでぇー!」ええー?もうええやん。この際、姫の好きなようにさしたったらええねん。だいたい音声入ってるし、おっちゃんの声もライブ配信されてもうてるし。
せやけど、姫はおっちゃんの配信事故を華麗にスルーすると、最後にこう締めくくった。
「……これにて、妾からの『星産みの儀』の宣誓と致す。仔細は我が近習、豊受姫神(田島のことやで!)
が伝えるであろ。日ノ本の子らよ、よくよく心せよ……『炎の日』は近い……」
姫はそういうと、ひと際強く輝いて、その光が消えたと思ったら、フッと消えた……
「うっわー……姫チョットやり過ぎじゃね?コメント欄見なよ、なんかみんなビビっちゃってるし……」
田島に言われてみてみると、確かに『これって生成AIじゃなくてマジもん?迫力ありすぎorz』とか、『ど、どうしよう……神罰あたるかも……』とか書き込まれてる。
「ちょっと田島、この重い雰囲気ヤバない?どないかしてぇな。」ウチがフォローを頼むと、田島はウーンと言いながら、マイクを握った。
「い、いやー!びっくりしちゃったよね、みんなごめんね!!実はさぁー……アマテラス様って、何気にめっちゃ気ぃ短いんだよねー!」
おい、嘘つけ。
「なのでぇー!みんなはいい子になって、とにかくライブ配信見てね!あ!会場参加もまだチケット余ってるよ!予約はこの画面に映ってるQRコードからよろしくね!じゃあ最後に、星産みの儀で加持祈祷するビッグなお二人にインタビューしちゃおうか!」
えぇ?なにそのアドリブ。おっちゃんと真魚さんだすの?いや、あの二人って、確かに一番エライかもしれんけど、ぱっと見た感じかりゆし着たオッサンと、作務衣着た髭面のオッサンやで?絵面サイアクやし。
けど、ウチがそういうと田島は、
「この雰囲気のまま終わるのヤバいって!二人に笑い取ってもらお。」やって!?ちょっとまて!罰当たりにもほどがあるやろ!ウチらただの新米の神さんやで!?
って言ってる間に、おっちゃんと真魚さんが、カメラの前に出て来る。
「い、いやぁー!!すごい迫力やったね!さすが太陽の神さんやね!」ってこれは太子のおっちゃん。
「ま、まぁねー、僕らがアマテラスさんが言うてはった、仏なんよね。まぁ言うたらオブザーバーみたいなもんですわ。あ、コメント欄になんか書いとるで?『オッサンらなんやねん』あ、せやせや!自己紹介せな!」
「えー、ワシがウマヤド、またの名を聖徳太子とか、救世観世音菩薩でーす!」っておっちゃん。
「僕が空海やでー。あ、弘法大師の方が有名?どっちでもええでー♪」って真魚さん。
「二人合わせて、太子&大師!よろしくお願いしまーす!あ、滑った……」
なに言うてんのこの人ら。アホちゃう?
第87話、お読みいただきありがとうございました!
今回は、談山神社編で明かされた、日ノ本創世に秘密からの、物語の核となる「世界創造の真理」をぶちまける回となりました。
まあなんていうか、こっからが敵との本格的な戦いに突入するところなので、古事記と古生物学、そしてルドルフ・シュタイナーの神智学や老荘思想、発達論まで詰めに詰め込んでみましたが、『わけ分らん』場合はご容赦を!
さてさて、夏菜子も田島も、何気に何のためのイベントなのか、のほほーんとして理解してませんでしたが、なんと!『世界の再創造』だという姫の超爆弾発言!しかもビビらすだけビビらすから、コメント欄がガクブルという……
あっ、もちろんそういう体ですよ?飽くまで演出ですからね。今ごろ姫は、本殿の休憩所で食べかけのフムス味の回転焼を食べているでしょう。
さて!こっから太子のおっちゃんと真魚さんが、漫才仕立てで、星産みの儀の解説をしてくれる……のかな?知らんけど。
次回も見逃さんといてや!
ぜひ、ご感想・ブクマ・評価などいただけると、私のエネルギーになります!




