第86話: ウチ「なんかヒルコさん、最初っからこのイベント考えてたみたいちゃう?」 田島「オモロそーだし、なんでもいいんじゃね?」
「じゃなかった……えーと……ミタマちゃんだよ~ん!今日はね、あーしがすっごいイベントの告知しちゃうから最後まで見てね!」
ミタマちゃんて。トヨウケヒメノカミと違うんかい。だいたい「ちゃん」とかいう歳でもないやん。24歳やん。
なんやろーこの中途半端な年齢。若い子ぶるんもしんどいし、かといって大人の女のフリもでけへん。理沙ちゃんくらいセクシーやったらアリやけど、ウチは絶対無理や……せやけど、どうしよ!?田島がここでイベントの紹介した後で、姫とウチが神様っぽい感じで自己紹介せなあかんねん!
姫はホンマの女神さんやから慣れてるやろけど、ウチ、なんちゃって女神やん!?ただの太子町の農家の娘の県庁職員やん!
っていってるうちに、田島のイベント告知はどんどん進む……
「んでぇ、なーんか神社本庁だっけ?なんかちょっとムカつくんじゃーんって話になってぇ、みんなで話したんだけど、あ、なんかコメ入った。『みんなって誰?』だって。えー?そんなの決まってんじゃん。神様だよ神様!八幡さんでしょー、道真さんでしょー、あとヒルコさんと、あ、仏さまもいんだよ!真魚さんと太子のオジサンだけど!あ、またコメ入った……なになに?……『なに言ってんだこのバカ女、アタマ飛んでんじゃね?』むかっ!!んだこのクソリプ!……なーんて、炎上大歓迎だよっ!っつーか炎上するくらいの方が見る人増えるし!」
「ちょ、ちょっと!やめんかい!視聴者の皆さんに向かって!あ、あはは……すみません皆さん、コイツ、最近神様になったばっかしやから、ちょっと礼儀とかアカンのです、すみません、ホンマすみません。ほら、アンタも謝らんかい!」
ウチがそういうと、田島は「えー?」とか言う。いや、謝れよ!?ライブ配信やで!全国放送やで!?
「それなー!!わかりみある!ってことで……みんな、マジごめーん! そんでね、みんなで『これからどうするー?』って話し合ってさ。じゃあもう、今のとこスッパリ抜けて、新しいの作っちゃおっか!ってなったわけ。てか、それ言い出したのあーしなんだけどねっ! ほら、あーし一応、お稲荷さんだし? へへーんっ!」
あっ?なんかまたコメント入った。『ガラ悪いお稲荷様ウケるwww』わかる。ウチもそう思うわ。これ神さまやて言われても、みんな意味わからん過ぎるやろ。
他にもコメント入ってんな……なんやて?『髪黒いぽっちゃりの子、神さまやのにペコペコ謝ってんのオモロ。せやけど、この子どっかで見たことあるぞ?』やばい!バレてへんか?い、いや大丈夫や……課長には、これも仕事ですって報告してるし。
「そんでぇー、あたらしいハコつくったから、その記念イベントやろうってなったんだよね。
でもってさ、あーしら神さまじゃん?したら、イベントってやっぱ神事じゃね?あと、真魚さんと太子のおじさんもいっから、仏事?もやんなきゃだけど、じゃあ一緒にやろうって感じになって、どうせならあちこちの神社とかお寺でやって、みんなでライブ配信したらオモロくない?ってなったわけ。
そんでぇー!ここすっごい大事なんだけど、それぞれの神社とかお寺がある地元のアーティストとか、芸人さんもいっぱい出てくれるから、たぶんすっごい豪華イベントなるって思うんだよね!」
えっ!いつのまにそんな話になってんの!?っていうか、こんな短期間にどうやってスケジュール押さえたん!?
って思ってたら、カメラのだーいぶ外の方で、理沙ちゃんとアレ君が顔面蒼白になりながら、ずーっとパソコンのキーボードをカタカタやってるわ……うん、なんか大変そうやな。ヒルコさん、可愛いけど、ブラック企業の社長みたいやわ。
「ヒルコさん、めちゃくちゃだべ。色んなアーティストの枕元に神のお告げみでなやづ、式神で送っで、そのあとで、偶然装ってメールとか電話とか、やっでるこどが詐欺だべ!」
「ほ、本当ですわ……し、しかも……出演を快諾すれば、今後50年分の金運と心願成就の特盛って……それってちゃんとした対価として成り立つのかしら?あ、ストックオプションみたいなものって思えば……そもそもどういう契約書にすれば?っていうか、文化庁のわたしが直接やったらダメじゃない!!」
あ、でもなんか、ヒルコさんが大丈夫大丈夫って言うてる。
「アレく~ん、理沙ちゃ~ん……そんなんは気にせんでええんやでぇ……ぼく、法務省とか、経産省にもいっぱい友達おるからな~うふ、うふふ……」
あ、聞かんかったことにしとこ。うん、ウチは知らん。せやせや、ウチかて神様なんやし、そういう俗事には関わらへんねん。あ、田島のイベント案内終わりそう。
「そんでぇー!イベントの最後に、ここにいる二人の神様が踊って、みんなの願いを叶えてくれるんだよっ!昨日のめっちゃ朝早くに、奈良の南の方の神社ですっごいイベントあったん知ってる?超特大の花火上がったヤツ!それに参加した人、めっちゃラッキーになって、金運とか恋愛とか受験とかウハウハなんだけど、その時に踊ったのがこの二人なんだよねっ!!ってなわけで、自己紹介してみようか!はい、じゃあ夏菜から!」
うわっ!こいついきなりウチに振ってきよった!ちょっと待て心の準備が……!せやけど、田島はウチにマイクをグイグイ押し付けてくる。
「え、えーと……ウチは、夏菜子って言います……あ、苗字はすみません。ちょっと内緒で……ほんでそのー、このあいだ神様になったばっかしっていうか、ウチのお祖母ちゃんが神様で、そのお祖母ちゃんが、イザナミって言う日本で一番ふるーい女神様で、なんでウチも、その女神様の力を受け継いでいるとかなんとかで、夜とか、えーなんやろ?大地?とかを司っているみたいです……得意なんは、料理と子どもの相手と、畑仕事で……あっ、コメ入った。『自分で女神って言うのイタイ。あと神さまの割に自信なさ過ぎ』い、いやぁー!ホンマにそうで……いやマジで、ウチもなんで自分が神様なん?って感じなんですけど……なんか、ウチがおらんと……」
といって、ウチは姫の方を向いた。
「この子が、超特大の奇跡を起こされへんみたいなんです。なんで、一緒に頑張るのでよろしくお願いします!」
そういって、カメラに向かってお辞儀をすると、なんかいっぱいコメントが入って、理沙ちゃんが昂奮してる。あ、また出た、変態やで、理沙ちゃん。
「すっ……すごっ! ネット民の手のひら返し早っ! さっきまで叩いてたアンチが全員 『健気すぎて泣いた』とか『素朴可愛い』って鬼萌えしてますわ! ああっ!コメ欄の尊死で、見ろ!人が〇〇のようだ!!」
うわー……理沙ちゃんが実況やなくて良かった。〇〇ってなんやねん、ピーってなるやん。まだ田島の方がマシかも?
そんなことを思いつつ、ウチは姫にマイクを渡す。
なにを言うんやろう……ちょっとドキドキなんやけど……
マイクを手にすると、姫は深呼吸をして手を開き、パンパンと、2回柏手を打つ。
そしてそのまま、鈴を転がすようなきれいな声で祝詞を唱えだした……
「掛けまくも畏き 伊邪那岐大神 筑紫の日向の橘の小戸の阿波岐原に 禊ぎ祓へ給ひし時に 生り坐せる祓戸の大神等 諸々の禍事 罪 穢 有らむをば 祓へ給ひ清め給へと 白すことを聞こし召せと 恐み恐みも白す……」
そう言ったとたん、ウチらのまわりの空気が、地面が、木とか花とかが、一斉に輝きだして、姫の背後に金色に輝く炎みたいなんが現れる!
姫は、一瞬うちの方を向いてウィンクすると、小声で「どうせ配信するなら、思いっきり神様っぽくしないとね!」って言うて、それから厳かに語りだした……
「このライブ配信をご覧になっている皆様、わたくしは、アマテラス。この国の光の神です……」
って……
「ええぇ!――――――」
田島が、カメラを回している側の、おっちゃんや真魚さん、八幡さんやヒルコさん、道真さん、アレ君、理沙ちゃん、全員がビックリして絶叫してる。
配信のコメント欄も、パニック状態や。
「ちょっと!姫アカンって!そこはオブラートに包んで言わな!いろいろその~なんや!エライことになるで!」
オッチャンが言うとアレ君も、
「そ、そうだべ!だいたい敵が狙っでるのは姫でねが!?正体ばらしでしまっだら襲っでくるべさ!」
って言うけど、姫はぜんぜん気にとめる風でもなく、話を続ける。
「みなさんは、古事記というものを読まれたことがありますか?書いていることは、全てが真実というわけでもありませんが、概ね、この世界がどのようにしてできたか、神々がどのようにして生まれたか、そして、この豊葦原中津国……皆さんが日本と呼んでいるこの国です。それがどのようにして生まれたかが書いています……」
「はじめは、他の国の神話にもあるように、この世界にはただ無限の混沌がありました。
それが、天と地に分かれ……やがて原初の神、天之御中主神、高御産巣日神、神産巣日神という神が現れました。これらを造化三神と言い、この宇宙を創造した神々です……
そして次に、宇摩志阿斯訶備比古遅神、天之常立神という神が現れました。この二柱の神々は、地球を創造しました。天之常立神はこの惑星そのものを、宇摩志阿斯訶備比古遅神は、この星の命の根源……あなた達が遺伝子と呼ぶものの起源となる物質を産み出しました。これら、五柱の神を別天津神と言います。」
姫はそこでいったん区切り、言葉を強めてこういった。
「子供たち、このことは他の国々の神話にも含まれる、この世界の創造の秘密です。よく覚えておきなさい。」
うわぁー……姫、言うてもうたぁ……これ、最後まで言い切るヤツやな。なんか、真魚さんが顔面蒼白になってるし。
「ヤバいってこれ……ヘタしたら、この国だけやのうて世界中がひっくり返ってまうって……」
「そして次に、神世七代と呼ばれる神々が生まれました……まず初めに、国之常立神が現れ、あなたたちが住まう世界である大陸や島々が産まれました。次に、豊雲野神が生まれ、海の水が雨となって降りそそぐサイクルが生まれました。ここまでが、命を育む星、地球の誕生です……そして」
なんか、田島がヒソヒソ声で言うてくる。
「夏菜、コメ欄やべーよ……『ウソ言うな!』とか、『ひっこめニセ女神』とか、『我々の神こそ唯一の神!』とか……これ、さすがにやばくね?」
なんか、理沙ちゃんも手ぇ振り回して、バツのマーク作ってるし……
ここまでお読みいただき、ありがとうございます!
いやー、美紗ちゃんのイベント告知、まったく神様らしくないのどうなんでしょう?そもそも公務員だってことを忘れているんじゃないでしょうか?この人。まあでも、ガラ悪い神様、わりと好評みたいですね。
それに対して平謝りの夏菜子ちゃん、せやせや、いちおう仕事で出張やのに、いきなり動画出て大丈夫なんですか?副業禁止規定に引っかかりませんか?って思ったら、いちおう手は打ってあるという……
あと、「どうやってアーティスト押さえてるんやろ?神様パワーかな?」って思ったら、だいーぶグレーな力技で、神のお告げの捏造って……まぁ確かに神のお告げやけども。しかもその報酬が幸運の現物支給って。さすが商売の神様、ヒルコさん。しかも実務はアレ君と理沙ちゃんのデスマーチ!
等身大の神様、夏菜子に視聴者のみんなが萌えてるな~って思ったら……なんと姫による爆弾発言!
いろいろあーやこーや気にせなアカン立場のおっちゃんと真魚さん、大慌てです!
でも!姫の口から語られるのは、今までの旅で明らかになってきた、たんなる神話を越えた、宇宙と人類創造の秘密、そしてこの国の成り立ち!
「それ言うたらアカンって!」
もし、「夏菜子ちゃんの公務員魂ウケる!」「姫のスケールでかすぎ!(笑)」と少しでも楽しんでいただけましたら、ぜひページ下部の【☆☆☆☆☆】から評価やブックマークで応援いただけますと、今後の執筆の大きな励みになります!
次回!怒涛の87話を見逃さんといてや!引き続きよろしくお願いいたします!




