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第83話: えべっさんと天神さんまで合流?それって、日本のメジャーな神様の大半じゃないかしら?

「ヒルコ様!菅原先生!どうされたんですか!?こんな急に来られるなんて。」

 わたしが驚いて二人を迎えに境内に降りると、二人はさも愉快そうに決めポーズをする。


 まぁ……ヒルコ様は青スライムだから、なにがどう決めポーズなのかは分からないけど、菅原先生は腕を組んで指で眼鏡を上げ……って、それはよくある厨二病ポーズじゃないかしら?


 まぁ……日頃お世話になっているから、あんまり言いたくないのだけど、先生って、真魚様とか太子様ほどカッコよくも貫禄もないから、なんだかズレてるのよねぇ……


 お二人って、ちょっとふざけたこと言ったり、面白おかしいこと言ってても、やっぱり背負っているものの大きさが違うって言うか……はぁ……イケオジだわ。

 太子様なんて、いっつも関西弁だから分からないけど、何かの拍子でサングラスを外したお顔を見たときは、それはもう……あっ、いけないいけない。


 でもそこに行くと、どーしても菅原先生って……イケてないわ。変に童顔だから、カッコよくなりようもないし、それに「おれ、もと怨霊やし!」とか、「大宰府に飛ばされた我が悲しみ!」とか。言わなくていいこと言うのよねぇ。


 なんかこう、男として小さくない?あ、いけないわ。それはジェンダーバイアスだわ。気持ちを切り替えないと。


「特にどなたもご連絡を差し上げていなかったと思うのですが……」

 わたしがそういうと、菅原先生が厨二病ポーズのまま固まった。


「な……なんや、せっかく遠路はるばる大宰府(だざいふ)天満宮から来たちゅうのに!そんな言い方はないんちゃうのん!っていうか、あなた誰ですか?」

 え……なに言ってるの、この人。あっ、そうか。


「先生、わたしですわ。文化庁 文化財部 文化観光振興係の滝沢・バーキン・理沙です。ちょっとイメチェンをしまして。」

 わたしがそういうと、先生がものすごく固まる。


「い、イメチェンって……いやちょっと……美人過ぎるっていうか。そんなリア充みたいになられても困るやんか……滝沢君は、唯一僕の気持ちを分かってくれるオタク仲間やって思ってたのに……」

 もー!なにモジャモジャいってるのよ!わたしは思わず先生のネクタイを掴んで首を締めあげた。


「いつも言っているしょう!そういうこと言ってるから、女子学生からバカにされるんだって!先生は神様である前に准教授なんですよ!少しはしっかりして下さい!」


「い、いやぁ~、理沙さん。それはさすがに言い過ぎやし、道真君が可哀想すぎるやろ。この子はまだ神さんとしては若いんやから、あんまりギュウギュウ締めんといてあげてね、ね?」


 あ……すみません、ヒルコ様。どうにもこの人がグズグズ言うのにイライラしちゃって。

 もう、ヒルコ様はこんなに可愛くて人格者なのに。


 そんなことを言っていると、太子様や真魚様、姫様に夏菜子さん、美紗さんがやって来た。


「おぉ~ヒルコはん、エライ急やな。それと、『混ぜて』っちゅうのは?さてはアンタ、こないな話になるんを読んどったな、せやろ?」

 太子様がヒルコ様に向かってニヤリと笑うと、ヒルコ様もピョンピョン飛び跳ねる。


「ははは……お見通しなんはお互いさまっちゅうことだんなぁ……いやいやまぁまぁ、太子様とアマテラス、夏菜子ちゃんと美紗ちゃんがウチに来た時から、こないなるんちゃうか、と思てましたわ。」

 ヒルコ様がそういうと、怪訝な様子で真魚様が前に出てくる。


「こないなるて……ヒルコはん、そらどういう意味でんねん?ちゅうか太子よ、予想済みのことなんやったら教えてくれてもええやろ?」

 ただ、そういうと、ヒルコさんは首を横に振る……じゃなくて、左右に飛び跳ねた。ちょっとこの、スライムジェスチャー分かりにくいわね……


「真魚くん、まぁそない言わんといてぇな。僕かて、いついつに絶対そうなるて思とぅたわけやないねん。まぁ商人(あきんど)のカンやな……よういますやろ。東国から来た田舎もんが、(あきな)いのイロハも知らんと、力づくで物事を押し通そう思て上手いこといかへん。それと一緒ですわ。」


 そうすると夏菜子さんが、

「力づく?ヒルコさん、それって科学の力でも無理やり偽物の神様を作るっちゅう話のこと?」と言い、それに対してヒルコ様が「そやねぇ」と答える。


 いやぁ……ヒルコ様って、上品よね。太子様と真魚様って、いつもガハハって感じの河内弁だし、八幡様も夏菜子さんもチャキチャキ過ぎるから、やっぱり関西ってガラ悪いなって思っちゃうけど、ヒルコ様ってそうじゃないのよねぇ。


「実はなぁ、僕らもえべっさんネット……あ、僕ら(えびす)神社に祀られている神々を中心として、氏子の商売人とかで作ってる商工会みたいなやつね。それで、東京の氏子はんらに話を訊いてみたんやけどなぁ……なんや、寛永寺の辺に、急に国の施設が出来たんやて?しかも鬼道を封印してる要石(かなめいし)を開けてもうたとか?」


「そやねん、談山神社で鎌足さんに聞いてんけどな。なんか、そいつらが鬼道?の封印を開いて、そっから瘴気を汲み上げて、それで悪魔を呼びだすんか、その偽もんの神さんが自体が悪魔なんかは分らへんけど……」


 夏菜子さんがそういうと、菅原先生が、キリっとした顔でタブレットを取り出した。あ!ちょっと出来る男の顔になってる!そーよねー、先生はちゃんと学者として仕事をすれば良いのよ。それを変に真魚様や太子様みたいにしようとするからダサいのよね。


「これは、えべっさんネットと、僕ら天満宮の組織である『百鬼夜行 梅花会』で調べたんですが……」

 そう言いながら、先生が見せた画像には、驚くものが映っていた。


「なんですの……この人間離れした、美しい生き物は?」

 それは、雪のように真っ白な肌に、淡い紫の髪、赤い瞳の少年のようだったが、その周りには、どす黒い何かが映っていた。


「いや、実はこれ、寛永寺の近所に住んどる化け狸はんが撮ってきてくれたんやけど……ただスマホで写真撮っただけですよ?そやのに、こんなにくっきり瘴気が映り込むことなんかある?太子先輩、真魚さん、どないです?」


 それを見た真魚様と太子様が息を呑む。

「ちょ、太子これ……」

「ああ……これはアルコーンやな……」


「アルコーン?」姫様と夏菜子さんが首を傾げる。アルコーン?なんですの、それは?


 ◆


 しばらく、太子様が無言のまま押し黙る。代わりに、真魚様が説明し始めた。

「キリスト教……オレのころは、景教けいきょうって言うとったけど、それの初期の教派で、グノーシスって言うんがあると聞いたことがあった……これは、平たく言えば、人間を創造した神こそが邪悪な存在で、本当に至高な存在は、その邪悪な神が創造した世界を越えた先にあるっちゅう考えなんやが……」


 すると、美紗さんが口を挟む。

「なにそれ?いっつもおじさんが言ってることとちげーじゃん?だいたい姫も、イザナギのお爺ちゃんもやな奴じゃねーし。」


「真魚さん、それって『逆さまの樹』が呼び出そうとしている悪魔ではないの?」姫様がそういうと、真魚様は無言で首を横に振る。


「談山神社でも言うたけど、悪魔それ自体は、有史以来の人間の欲望、邪念、負の感情が積み重なったできた巨大なエーテル体や。もちろん、俺らの直接の敵である『逆さまの樹』が呼び出そうとしている悪魔ちゅうんはそれで間違いないやろが……」


「どういうことなん?真魚さん、悪魔とアルコーンは別もんなん?」

 夏菜子さんが訊くと、真魚様は「たぶん」と言った。多分?真魚様のような仏であっても、完全に把握できていないことがあるというの?


「オレはもともと人間やから、はっきりしたことは言えんけど……おい、太子よ。おまえ言うとったな。クマラはんが金星から地球に来た時、そこを支配していた霊的存在がおった、って。」


 そこで、漸く太子様が口を開く。

「まだ、人類が現れてなかった頃のことや……ある霊的な存在が、好き勝手に地球上の命を弄んどった、ってクマラから聞いたことがある。そいつは、極端な寒冷化や、海洋の無酸素化、大規模な火山噴火、巨大隕石を使って、自分たちの利益になりそうな生き物を作っては滅ぼす、ちゅうことを繰り返しとった。クマラとサナンダの兄弟は、そいつらを地球上から追放して、生き物がおのずから進化するに任せた。それが、約6600万年前のことやが……」


 そこで、太子様は言葉を切ったが、続けて驚くようなことを言った。

「そいつらは、紀元前12世紀ごろに中東のごく小さな民族に霊的に干渉し、自分こそが唯一の神や、って言うた。」


 そういうと、美紗さんが「ちょ、まってまって、おかしくね?」という。

「神様、めっちゃいっぱいいんじゃん?なんなら、あーしと夏菜も神さまじゃん?そんで、太子のおじさんとか真魚さんって、神様の上にいる仏様っしょ?その、千手観音のクマラさん、ってのも含めて。そいつ、アタマいかれてんじゃね?」


 美紗さんがそういうと、太子様は「そうや」という。

「確かに、いかれとる……そやけどな、上には上がおるっちゅうんが分かってへんかったら、そないなるんちゃうか?そいつらは、自分ら以外にも神がおること、そして、神より上位の存在……仏がおることが分かってなかった。ワシら観音チームはな、そいつらが干渉してるて分かったとき、見つけ出して消滅させようと思った。ところが、阿弥陀さんがな、それはアカン、やめとけって言わはったんや。ワシも、クマラも、サナンダも、あんなんを野放しにしとったら、地球だけやのうて宇宙全体が汚染される、って言うたんやけど……」


 そこから先は、真魚様が引きついだ。

「なんでも、末法の世になるころ、自ずと結論が出るとかでな……オレも、これは中台八葉院の決定や、手を出すな、って言われたわ。」


 こう言われて、姫も、夏菜子さんも沈黙する。一体どういう意味なのかしら……?

 すると、美紗さんが「はーい」と手を挙げる。


「ねぇ、おじさん。ソイツって強ぇーの?」すると、太子様は、「いや、そういうわけやないけど……」と言った。


「そうやないんや……そいつはな、長い長い時間をかけて、その少数民族を洗脳した。それだけやない。それ以外の国の人々も、奇妙な新興宗教のような形で洗脳した。その中心的考えは、『自分たちの信じる神だけが正しくて、他は全部ウソ。それを信じているものだけが救われる』って言うもんや。」


 そ、それって……ひょっとして……


 いつもお読みいただき、本当にありがとうございます!


 前半の、理沙ちゃんによるキレッキレな「限界オタクのツッコミ」と、相変わらずどこか不憫でイケてない(?)菅原先生のやり取り。そして、青いスライムのままのスライムジェスチャー……からの!


 後半の、一気に宇宙的・神話的スケールへと視界が開ける怒涛の展開! この凄まじい温度差、皆様いかがだったでしょうか?あ、よく分からん?これは失礼……

 ヒルコさま、菅原道真さまも加わって、さぁフェスの準備やで!と思ったら、道真さんが見してくれはったんは、なんかとってもヤバそうなヤツ……あ、これって、79話で出て来たんちゃう?

 アルコーンてなにもんやねん?

 悪魔召喚を防いだらええねん!って思ってたら、敵はそれだけやないんやで、っていうことが分かって……大丈夫か!?あと4日しかないんやで! 果たしてフェスは無事に(物理的にも)開催されるのか!?


 ここまで読んで「理沙ちゃんのツッコミ最高!」「アルコーンってヤバそう!」「フェス本番がどうなるのか気になる!」と少しでも思っていただけましたら、ぜひページ下部の【☆☆☆☆☆】をタップして、星評価での応援をよろしくお願いいたします! 皆様からの温かい応援が、夏菜子たち、そして神様たちと一緒にこの壮大な物語を紡いでいくための、何よりのエネルギーになります!


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