第80話: 石清水八幡宮に着いたんやけど、なんかごっついお客さん増えてて、駅前に屋台がめちゃくちゃ出てるで。八幡宮は解散ちゃうのん?
「ぬははは!着きもうしたぞ、各々方!」
真っ赤な作務衣を着た広島焼……あ、広島の人に怒られる。お好み焼き屋の大将じゃなかった、平家一門の大将、清盛さんが甲板上で下の方を指さすと、淀川と石清水八幡宮がある男山が見えてくる。
「うわぁー……もう着いた。ごっつ早いなぁ~談山神社から30分くらいしかかかってないで?」
ウチがそう言うと、清盛さんは不敵な笑いを浮かべる!?いや、そないいちいちカッコつけなくて良いです。しかもお好み焼きのコテ振りまわしながら。それ軍配ちゃうし。
「ふふ……左に非ず!夏菜子殿!いまはみな搭乗しておる故、ゆるりと飛んでおるが、この天鳥船!戦闘速度はマッハ12である!米利堅(アメリカのことやで!)でも1時間で着き申すぞ!」
相変わらずテンション高いなぁ……ともかく、船は石清水八幡宮の広場に着いて、ウチらは船から降りると境内に入っていった。
「時におのおの方、腹が空いたであろう?この清盛、牡蠣入りスペシャルを焼いて進ぜる故、しばし待たれよ!」
せやけど、真魚さんが「いや」って言う。
「清盛、ごめんやけど広島焼はええわ。さっき談山神社でさんざんタコ焼きやらもんじゃ喰ったし、粉もんはなぁ……」
真魚さん…それヒドない?しかも広島焼きって。清盛さんが一番言われたない一言を。
でもな〜結局豚まん食べてもうたし、談山神社の屋台で鯛焼きとかりんご飴とか食べたしなぁ。
ちょっと今は要らんかも。でも清盛さんはショックやったみたいや。
「清盛さん、どないしたん?みんながお好み焼き食べてくれへんのんショックやった?」
ウチが聞くと、清盛さんはこの世の終わりみたいな顔で振り返った。
「諸行無常、盛者必衰じゃ…其方らに言われるのは致し方なきこととして……弘法大師 空海様があのように仰せになるとは……やはり、我らが一門は取り返しのつかぬ仏罰を犯したのであろうか……」
え?仏罰?清盛さん何いうてんの?真魚さん、アホみたいに屋台で食べたからお腹パンパンなだけやで?
せやけど、清盛さんは「大塔建立の折に交わした約定を破ったことを怒っておいでなのじゃ……」とかいうて、大きい身体を縮めてウンウン唸ってる。
「夏菜、清っち、八幡さんが全員集合だって……って、清っちどしたん?」
ウチが、清盛さんをどないして慰めようって思ってたら田島がやって来た。っていうか清っちって。いつのまにツレやねん。
田島の声を聴くと、清盛さんはハッと顔を上げる。
「み、美紗姫!……吾輩、空海様にお叱りを受けてしもうた!なんと致さば良いのじゃ!?粉もんは要らぬと……」
そやけど田島は、大きな体でオイオイ泣く清盛さんの背中をポンポンって叩くと、
「なーに言ってんだよ!真魚さんがんな事で怒るわけねーじゃん!気のせいだって気のせい!あの人無神経なんだからさ、いちいち気にしなくて良いって!」やって。
そしたら、清盛さんちょっと落ち着いたのか、「そうであろうか?……」って言う。
「あったりめーじゃん!そんなん良いからさ、早く行こうよ!ほら立って立って!清っち良いオッサンなのに、ときどき子供みたいになるからなぁー。あ!あと、あーしのこと姫とか言うのダメだかんね!キモイし!」
そう言って、田島はシュンとなってる清盛さんを本殿に連れて行った。
んん?どういうことや?ウチらがおらん間に何があったんやろ?だいたい美紗姫ってなんや?
◆
ウチが本殿に着くと、理沙ちゃんや花奈ちゃん、アレ君におっちゃんと真魚さん、法眼さんと十兵衛さんも集まってた。そして……
「あっ!ガム新さん、総司さんに半次郎さんや!お疲れ様!」
下座の方に三人が座ってて、ウチが手を振ると、半次郎さんがニッコリ笑った。
それだけやない、石清水の戦いで一緒やった義経さん、源次郎さん、楠木正成のおじさんと、西郷さんもいる。
あれ?なんか神職以外にも、明らかにフツーの人間っぽい人おらへん?京阪電車の駅員さんとか、駅前商店街の人らもおるけど、あれは氏子なんかな?
っていうか、本殿が大きくなってるで?50人以上おるのに余裕で収まってるし。
ウチが、不思議に思ってると、上座に八幡さんが現れた。鎧姿やなくて、むかーしの偉い女の人が着るような衣装を着てる。
その八幡さんが、ウチと田島を手招きする。えっ?こっちに来いってこと?
すると、田島がウチの手を引いてみんなの前を通り過ぎ、八幡さんが座ってる上座に連れて行って、その隣に座るように言った。
(どういうことやろ……)
ウチが不思議に思ってると、八幡さんが上座の奥にあるスダレ……じゃなかった、御簾をあげる。
そしたら……そこには正装した姫、天照大神が座っていた……
「えっ!どうしよ!ウチTシャツとジーパンやん!」って思って手元を見ると、いつの間にか田島と同じ巫女服になってる!?
ビックリしてると、八幡さんが無言で手を挙げ、それを見た天津軍(武士たちのこと)と、神職の人たち、駅前商店街の氏子の人らが一斉に頭を下げた。
すると、それを見た姫が厳かな雰囲気で話し始める。
「皆、わたくしが留守の間の、この石清水八幡宮の守り、誠に大儀でした……」
えっ?留守の間の守り?どういうことやろ?理沙ちゃんがいうてた『神社本庁が各地の八幡宮の解散命令を発出した』って話と関係あるのかな?
でも、姫はその後に「ですが」っていう。
「ですが、先ずは皆に、わたくしたちが石清水を立ったあと四天王寺、畝傍山、談山神社でなにが起きたかを話さねばなりません。ここで起きたことにも大いに関係することです。心して聞く様に。ではアレクセイ殿、よろしいですか?」
姫がそう言うと、アレ君がプロジェクターにパワポを映して、どんなことがあったかを説明した……
すぐにみんながザワザワし始めて、それを見た八幡さんが「者ども控えよ。皇大神ならびにイザナミ様の孫神、夏菜子姫の御前である」って言った……
ウチはちょっとショックを受けて思わず八幡さんを振り返ったけど、田島がウチの巫女服の袖を引っ張って合図し、首を横に振った。な、なんでやのん……
ほんで、アレ君が説明を続ける。
「この話さ、幾つかポイントがあるべ。まんず、敵はただの政治家連中でも、偽もんの神つぐろうって思っでる民間企業でもねぇ。悪魔を呼ぼうって思っでるヤツいるべさ。次に……」
そういうと、アレ君は大きく息をつく。
「もし、そいづらの企みどおりになっだら、この世界に悪意が蔓延すべ。そうなっだら仏さんたづが、ブラックホールで太陽系ごと消すか極端な温暖化で全人類の八割焼き殺すべ。そうでなぐでも、アタマ洗脳されるべ。」
これを聞いた瞬間、神職と駅員さん、商店街の人らが息を呑むのが聞こえた。手足が震えてる。
でも、それは次にアレ君が言うたことよりは、まだマシやった。
アレ君は、姫を振り返って、「言っでもえがすか?」っていう。
すると、姫は無言で頷いた。それってまさか……
「みんな、落ち着いで聞いでけろ。姫、天照大神を祖神とする天孫ってな、本当の神ではねぇ。神としての力持っでるのは姫さんだけだべ。その子孫は神とは言えね。神の力ねぇの誤魔化すために、太子様の力だどか、真魚さんの力さ利用したべさ。姫さんが真の力さ発揮するには、対になる闇の力さ必要だべ。それが……」
そこまで言うと、みんなが一斉にウチを見る。そして姫が……
「そう、イザナミ神の血を引く夏菜子姫です。彼女こそは、わたくしの太陽の光と呼応して創造の根源力を産み出す闇と星空の神。わたくしは宣言します。わたくしは、これなる夏菜子姫と力を合わせ、人の政の都合が作った空事ではなく、真なる神の力による『国産み、神産み』を再興します。そして黄泉の国より我が母イザナミ女神を救い出し、この世の一切から悪しきものを追放します。」
その姫の言葉を聞いて、その場がシーンって静まり返る。
みんな、神職の人らも、駅前商店街の人らも、天津軍のみんなも、明らかに混乱してて…ほんで、ウチも震えて泣きそうになった。
う、ウチはただの人間やのに…
そしたら、田島がスッて立ち上がり、シッポが9本に別れて輝き出した!?
「はいはーい!みんな大丈夫だよー!」
えっ、田島何言うてんねん?そんな軽いノリで喋ったら八幡さんに怒られるで!
せやけど、八幡さんも姫も、田島を全然注意せんと、どっちかっていうと任せてる。
「なんかさー、話がいきなり飛んじゃって、みんなびっくりしちゃうよね!でもー、あーしが談山神社ってとこで、鎌足さんって偉い人に聞いた感じだと、この国のなんだっけ?コート―っての?それってフィクションなんだって!
なんかさ、昔はそういうことにしとかなきゃだったんだけど、今それどーでも良くない?ってことらしくて!それに、わるい奴いるからホントの神さま復活させないとダメみたいな?」
んん!?なんやそのめっちゃ端折った説明!
そやけど、田島が話すと、不思議なことに今まで緊張してた場の雰囲気が緩んで、みんな自然に頷いてる。
あ、なんか駅前の喫茶店の奥さんが手ぇあげてる。なんやろ?
「美紗ちゃん、なんかいきなり難しい話で、おばちゃんよう分からへんわ。その可愛らしいお嬢さんが闇の女神で、アマテラス様と一緒に『国産み、神産み』って、何がどないなるんな?ウチらは、こないだいきなり神社本庁から偉そうなんが来て、石清水八幡宮が解体とかヘチマとかいうてるさかい、どないかせなって思って来ただけやで?」
奥さんがそういうと、田島は「それなー」って言いながら、両手の人差し指をおばちゃんの方に向ける。なんやそれ?子ども刑事かいな。むかしお父ちゃんの秘蔵マンガコレクションにあった、お下劣昭和マンガの。
「おばちゃん!すっごくいい質問だよ!でもさ、そもそも神社本庁は解散命令なんて出せないわけ!ブラフってヤツ?だからぶっちゃけシカトしてオッケー!だよね?宮司さん。」
田島が、こんどは八幡宮の宮司さんに言うと、宮司さんも頷く。
「そらまぁ……小っちゃいところやったら本庁に睨まれたら神職が来んようになるさかい困るけど、ウチくらい大きかったら関係おまへんわ。」
「でしょー!だから、なーんも心配ないわけ!でもほら、これって、さっきいった悪い奴らをやっつけるすっごいヒントになるんだよね!今からその話すんだけど、その前にみんなで夏菜の話きこうか!じゃ、そゆことで夏菜、シクヨロ!」
なんやコイツ!いきなり振ってくんなや!だいたいシクヨロって……あっ、コイツのお母ちゃん元ヤンやったわ。
第80話をお読みいただき、ありがとうございます!
さて、前半の清盛さんが泣いて、それを美紗が慰めるところ、なんとなく美紗の優しさが分かっていいシーンですが、実はこれ、79話との対比です。
平清盛が生きいていた時代は、神仏と人の関係が今よりももっともっと濃い時代で、だから真魚さんから拒絶された(といってもお好み焼きだけど)ことで清盛さんは激しくショックを受けているんですね。
そしてそれから一転、石清水八幡宮での壮大な神議。
姫(天照大神)からの重すぎる宣告や、全人類の危機という絶望的な事実に完全にフリーズする駅前商店街の氏子たちと、死して天津軍となった武士たち。
そして、いきなり重い責任がのしかかって泣きそうになる夏菜子。
でも、そこはさすがの美紗ちゃんです!
彼女が放つギャル語のノリ。これ、ただ軽いのではなく、みんなの様子を見ながら緊張を解き、パニックを起こさずに真実を受け入れられるようしているんですね。それが彼女の魂の力である和魂なのです。
そして最後に美紗が語った、『神国日本の新しい姿について考える会』が仕掛けてきた「神社本庁からの解散命令」という政治的な圧力。
美紗が思いついたのは、これを敵の真の狙いである「悪魔召喚」を防ぐためのカウンターにすること。
どうやってやるんでしょうか?
でもその前に、美紗が夏菜子になんか話せと無茶ぶりしました!?
夏菜子は何を語るのでしょうか!
次回、いよいよ夏菜子の女神としての力が炸裂します!
待て!81話!




