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第76話: 美紗だよ!あーしがタイトルすんの初めてじゃね!?なんか理沙っちが4方面作戦とか言いだしてさ、あーしと夏菜、マジイミフなんだけど!

 なんか、夏菜が頭の上にハテナマーク付けて首を捻ってんだけど、そしたら鎌足さんがよろよろ立ち上がって……わっ!いきなり叫んだよ!このおじさん大丈夫?


「バッ!バカな!この日ノ本は、皇大神(すめらおおかみ)と、仏教、密教、陰陽道、修験道……諸々(もろもろ)の霊的装置を組み合わせることでかろうじて安定しているのだぞ!明治の廃仏毀釈(きしゃく)でさえ、甚大な影響が出たというのに!

 奴らは、この国の『要石(かなめいし)』を根こそぎ破壊するつもりか……ッ!」


「鎌足はん、言いましたやろ?あの連中は、あんたはんが考えた高尚な理屈なんか分かってまへんのや。」


 あっ、また関西弁の人でてきた。っていうかさ、関西弁の神様とか仏様多すぎない?夏菜の喋り方とビミョーに違うから、なに言ってんのかよく分かってないんだよね~。


「あっ?なんだ小角のおじさんじゃん。おひさー♪」

 振り返ったら、Tシャツに短パン姿でキャップを被った小角さんがいた。あれ?あーしを見て固まってる。なんでだろ?


「美紗ちゃんか?……なんやその、狐みたいな耳とフサフサの尻尾は?それになんで巫女さんの服着とんねん?」

 あ、そっか。みんなに説明してなかったわ。なんか、アレ君と真魚さんノーリアクションだったけど!


「実はあーし、豊受大神(とようけおおかみ)っていう神様の血を引いてるんだよ!イェーイ!」

 あれ?みんな反応薄くね?


「ふーん……まぁそうか……イザナミ神の玄孫(やしゃご)である夏菜子ちゃんもやけど、今は末法(まっぽう)の世やから、そういうことも起きやすいんかもなぁ……なぁアレ坊。」

「んだすなぁ……でも、ケモミミと尻尾ってな出来過ぎだべ、受け狙いだべ。いくら稲荷チームだからっで、豊受大神ってな狐さん関係なぐねぇが?」


 なっ!?なーんだよ!真魚さんと、アレ君、失礼だなぁ!!

「アレ君!分かってないよ!あーしはさ、京急の穴守稲荷のご近所さんなんだよ!ちゃんと狐要素あるし!」


「い、いやその、美紗さん?今大事な話の途中だからその話あとでもいいですか?ところで、あなた様は神変大菩薩さまでよろしいでしょうか?『高尚な理屈が分かっていない』というのは……?」

 うわー、理沙っち歴女だなぁ、そんな難しい言い方知らないって。


「ふふ……えらい勉強熱心なお嬢さんやな……いかにも、儂が神変大菩薩 役小角じゃ。それでのう、高尚な理屈やが……中臣氏の祖先、天児屋根命(あめのこねやのみこと)と高天原の智嚢である八意(やごころ)思兼神(おもいかねのかみ)は、どないかして姫がこの国の皇大神(すめらおおかみ)や、ということを認めさせようと思て種々(くさぐさ)考えはった。その辺の話は、鎌足はん、不比等くんから聞いたやろ?」

 小角さんがそういうと、鎌足さんっておじいちゃんと、不比等さんって呼ばれたイケメンのお兄さんが頷いた。


 すげ~、小角のおじさんってさ、短パンとTシャツなのに威厳っていうの?めっちゃあるよね!


 太子のおじさんとか、真魚さんって、エライんかもしれないけど、セクハラだったり時々アホっぽいこと言うから、イマイチえらいんだかどうだかって感じじゃない?


「は……それについては麻呂がご説明いたしました……あの手の連中が『高尚な理屈が分かってない』というのはその通りですが、それにしても余りにも『畏れ』を顧みないのではないでしょうか?武士はそうではなかったし、明治政府も、そこまで傲慢ではありませんでしたぞ?」


 不比等さんがそう言うと、夏菜がなんか言いたそうにしてる。あれ?夏菜のまわり、なんか紫色でキンキラのラメ入ったオーラっぽいの出てない?


「不比等さん、それ、さっきおっちゃんが言うてた『貪瞋痴(とんじんち)、三つ数えたらアホになる』っていうヤツやろ?っていうか、おっちゃん、ウチいまだに分からへんねんけど、なんでアホになるん?」

 なにそれ夏菜、そのギャグ古くない?


 ……って思ってたら、なんかマジな話みたいで、太子のおじさんが珍しく真面目な顔してる。あれ?割とイケオジかも。


「ワシ言うたっけなぁ?仏教では人間をアホにしてまう三要素っちゅうんがあってな、それを『(とん)貪欲(とんよく)』、『(じん)=怒り』、『痴=無知』っていう。夏菜子、この意味わかるか?」


「え?ええー……三流私大出身のウチがそんなん分かるわけないやん。あ、せやけど子供のころ、お祖母ちゃん言うてたな。『回転焼2個要らんやろ、1個でお腹パンパンやのに』って。」


 そしたら、太子のおじさんズッコケてたけど、「一応正解や」っていう。ってか回転焼って。


「さすが、石長比売(いわながひめ)はん、上手いこと言わはるなぁ……ま、そういうこっちゃ。人間喰わな死んでまう。せやから『腹減った飯食いたい』っちゅうのは普通のことや。せやけど、自分が食われへんほど欲しがったり、ほんまに美味いかどうかも分からんのに高級なもんばっかり喰いたがるんはどないや?A5ランクの和牛しか食わへん、みたいな。」


「え?バイキングとかで、食べられへんのにいっぱい取って残すんやろ?怒られるやん。もったいないお化け出るで。それに、A5ランクの和牛みたいなんばっかり食べとったら胆石たまってお腹イタイイタイってなるで?」


 そういうと、おじさんはニッコリ笑った。

「そらそうやな。食べられへんほどの量欲しがってもしゃーない。贅沢なもんって、たいがい身体に悪いから、そんなもんばっかり喰うとったら病気になる。そやけど、欲しい!欲しい!ってなったらそう言うん分からんようになるやろ?」


「あ!おじさん、それ分かるかも!知ってる子でいたよ!SNSでいっぱいイイね!欲しくてエロい投稿しちゃうヤツ!」

 あーしがそういうと、おじさんはちょっと首を捻ったけど、うんうんって頷いた。


「太子様、小角様、なんとなく……ですが、今のお話から察するに、貪瞋痴というのは、エゴや感情に振り回されて冷静な、あるいは本質的な判断が出来なくなる、ということでしょうか?貪は欲望に振り回されること、瞋はアンガーマネジメントの欠如、痴、これは無知ですから、的確な判断など出来るはずもありません。」


 うわなに?理沙っち難しいこと言い過ぎじゃない?……でも、太子のおじさんも、小角のおじさんも、真魚さんも鎌足さんも、なんならアレ君まですんごい頷いてる!?


「これはなんとも……実に見事じゃ……三毒の考え方を見事に現代の学問的知見で言い当てなさった。見たところ異国の女御(にょご)のようじゃが……お嬢さん、名は何と申される?」


 鎌足さんがそういうと、理沙っちは、よく悪役令嬢もののアニメで貴族のお嬢様がやってるような、膝を曲げてスカートの裾を持ち上げる挨拶をした(カーテシーっていうらしい)。


「日本国創世の立役者、中臣の鎌足様・不比等様へのご挨拶、申し遅れましたことお許し下さい。わたしは文化庁の職員で、滝沢・バーキン・理沙と申します。以後、お見知りおき下さいませ……」


「ふぇぇ……」なんか、スゲーカッコいい!優雅?ってかマジで貴族のお姫様みてぇーー!!あ、なんか夏菜も、姫も、ポカーンって見とれてるし。

 ちょっと理沙っち、カッコ良すぎない?なんか、あーしの影薄いし、ケモミミの割には。


「ふふ……理沙ちゃん、その通り。120点満点や。ほんで、『貪瞋痴、三つ数えたらアホになる』っていうんはな、エゴや感情に振り回されることを『自由意思』って言い換えてもうたこと、怒りに飲み込まれるんを『強さ』って勘違いしてもうたこと、ほんで……科学によって自分らが万能やって、『神は死んだ』って思い違いしたこと。これが現代の社会構造に組み込まれてもうてる、っていうことよ。不比等よ、そんな社会の政治家どもが『畏』れなんか考えるか?」


 あ!なんか、あーしも分かって来たかも!


「はーいはーい!こういうことだよね!その『畏れ?』っていうんが分かんないから、高尚な理屈が分かんないってことじゃね!?」


「ちょ!田島やめときぃや!アンタが知ったかして、ええかっこしても恥かくで!」


 あっ、夏菜がいきなり抱きついて来て、あーしが手を挙げようとするの必死でやめさせようとする。なんだよ恥って!あーしがアホの子みたいじゃん!あっ、でも夏菜に抱きつくの久しぶりだからうれしーかも!


「こらこら夏菜子、おまえが美紗ちゃんと一番仲良しなんは分っとるから。だいたい、いまので正解や。アホになった結果、畏れを失う。それをフラットランド化という。これが起きると、人間はより善くあるにはどうするべきか、っていうことを考えんようになる。そうすると、更に欲望や怒りに飲み込まれるようになる。するとさらに畏れを忘れ詰まらんことしか考えんようになり、すると更に欲に嵌って……ま、負のスパイラルってやつよ。」


 えっ?……


「ねーねー、太子のおじさん。それサイアクじゃね?やべーホストにハマるみたいな?それって、結局どうなっちゃうの?」

 あーしがそういうと、太子のおじさんと真魚さん、急にむずかしい顔で無言になった。そんで……え?なんで姫、夏菜のこと抱いてんの?っつか、夏菜泣いてるし。あーし、なんか変なこと言った?


「美紗さ……それが、オラだつがここで、実際に敵と戦っで起きかけだこどだべ……この太陽系がブラックホールに飲み込まれて無くなるだ……」


 ちょ、なに言ってんのか良く分かんないってば……え?マジで?


「あ、アレ君なに言ってんの?っていうか、夏菜どしたん?え、そんな泣かなくて良いじゃん……やめてよ……ごめんってば……」

 あーしが言うと、夏菜がブンブン首を横に振る。


「ちゃうねん……田島は悪ないねん……ウチな、イザナミっていう死者の国の怖い女神さんの化身やねん……ほんで、昨日の晩、怒ってその女神さんになってもうて、ほんまに世界が滅びかけてん……空が真っ赤になって怖い仏さんたちが降りてきかけて……」


「グフフ……姫様に抱かれて泣いてる夏菜子さん、可愛い……GL案件だわ……じゃなかった!すると、昨夜石清水八幡宮の空が赤黒く変色し、恐ろしい魔神のビジョンが浮かび上がったのは、その兆候だったの!?」

 おいちょっと待て、理沙っち。いま変なこと言おうとしただろ!もう絶対コイツには夏菜を近づけないようにしよ。結局ただの変態だし!


「そういうことや……実際にそれをもたらすのは夏菜子かも知れんが、結局、敵の愚行の一つ一つが、夏菜子の中にある恐ろしい女神を呼びさますトリガーになってしもうとる。そやからそれを回避するには……」


「分かりました。太子様、皆まで仰らないでください。」

 なに、理沙っちどしたん?また良い女バージョンになってるし。


「四正面作戦ですわ。太子様、この世界に巣くう三毒を逆転させる妙手、お教えくださいませんか?」


第76話、最後までお読みいただきありがとうございます!


前回に引き続き、理沙ちゃんが大活躍です(?)。

すんごい知識で仏さんたちを唸らせたかと思うと、優雅にカーテシーを決め、最後には変態オタクと化す!


彼女が宣言した「四正面作戦」いったいどんな作戦でしょう?


さてさて、田島美紗ちゃんです。

仏教の「三毒」や「フラットランド」といった小難しい話も、美紗ちゃんのおかげで、ちょっとは分かりやすい?知らんけど。

とはいえ、本人は理沙ちゃんに活躍の場を奪われてちょっとご不満ですね。


でも大丈夫!次回は美紗ちゃんが大活躍(?)してくれるに違いない!


失われた世界の「要石」を守るため、いよいよ夏菜子たちが反撃に打ってでます!


少しでも「理沙ちゃん変態カッコいい!」「美紗ちゃんのシッポが気になる!」と思っていただけましたら、ページ下部の☆☆☆☆☆から応援やブックマークをいただけますと、今後の執筆の大きな励みになります!次回もお楽しみに!

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