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第75話: 美人でも理沙ちゃんは腐女子やし、八幡さんは姫にメロメロやし……って、ウチらが御朱印もらえる場所が無くなりそうやで!

 それを聞いた瞬間、真魚さんがふぅーっと溜息をつく。

「そう来よったか……そやけど、なんでや?アレ君の話やと、敵は神や仏を『うすらぼんやり』としか観測できてへんのやろ?人間と神が直に接触できる伊勢の結界内はともかく、アイツらにとって八幡っていう神は実在するもんや無い筈や。そやのに、なんで八幡(ねえ)さんの神威の源泉である各地の八幡宮を解体させようって思ったんや?そのーなんや、神国日本のなんちゃら議員連盟の連中が、そんな気の利いたこと思いつくもんか?」


 真魚さんがそういうと、理沙ちゃんがジッと真魚さんを見る。うわぁー……そんな表情もキレイってちゃうちゃう、そんなん言うてる場合やない。


「ええと……神功皇后(じんぐうこうごう)さまと同格の高位神霊とお見受けしますが、お名前を伺ってもよろしいですか?」

 理沙ちゃんが尋ねると、真魚さんは「ああ、すまんすまん」って言う。


「オレは真魚、またの名を弘法大師 空海ともいう。まぁ見ての通りの生臭坊主や。」

でも、それを聞いた瞬間、理沙ちゃんがワナワナしだした!?ちょっと理沙ちゃん、どないした?


「す、素敵……」えっ?なんやて?


「あ、やべ。理沙っち、アニオタと軍事オタだけじゃなくて、歴女で腐女子だったわ。真魚さんってスケベ親父だけど、まーまーイケメンだからハマったかも。」

 って、これは田島の解説や。う~んなるほど、そういうことかぁ……


「あ、あの……弘法大師様……あっ、真魚様ってお呼びしても良いのでしょうか?キャッ!幼名でお呼びするなんて、そんな馴れ馴れしいのダメだわっ!」

 ちょっとちょっと、理沙ちゃんいきなり真魚さんの手ぇ握ってますけど?で、なんか真魚さんも鼻の下伸ばしてるねんけど?シリアスな話どこ行ったん?


「な、なんや……えらい積極的なお嬢さんやな……いやしかし、いくら何でも歳の差婚すぎへんかなぁ~デへへ……まぁでも、人間のお嬢さんと結婚アリかなぁ~、オレもそろそろ独身貴族卒業かぁ~」

 何がデへへやねん。このセクハラ遍照金剛が!って思ってると、理沙ちゃんが、


「時に真魚様、真魚様はどなたとカップリングなのでしょう?あっ!太子様ね!いやぁ~ん、日本仏教の開祖と密教の天才のカップリングとか尊すぎる!」

 って……ここで、真魚さんが正気に返った。


「夏菜子ちゃん、ごめん、この子なにいうてんの?カップリングってなんや?」

 す、すみません……真魚さん。真言宗の開祖に向かってウチらの身内が失礼しました。


「ちょっと理沙っち、この場面でアンタの趣味出してこないでよ……ったく。っていうかさ、真魚さん。その『うすらぼんやりとしか観測できない』てなんなん?あーしら、石清水で敵のパワードスーツめっちゃ倒したじゃん?そりゃなんかちょっかい出してくるんじゃね?あと、神国日本のなんちゃらって何?」


 そうか、田島も八幡さんも理沙ちゃんも、鎌足さんが言うてた話は知らへん。ちょっと最初から説明要るよね、って思ってたら、不比等さんがやって来きて、八幡さんをすんごい目で睨んでる。


「……皇太后様……中臣家の霊域に何用にてござりましょうか?」

 えっ?どないしたん不比等さん。いつものイケメン爽やか笑顔はどこいったん?


 そしたら、八幡さんも全身から殺気を漂わして不比等さんを見返した!


「なんじゃ逆賊……霊域?墓所の間違いであろ。飾り物の神輿(みこし)担ぎ風情が、この八幡大菩薩に不敬であるぞ!控えぬか下郎!」


 八幡さんが、薙刀を取り出して天に突き上げると、さっきまで鮮やかな光に包まれていた空が、急に黒い雲に覆われていく!あかん!八幡さんの神風が来てまう!


「こら!」

 みんなが、声のした方を一斉に振り返った。


 姫が、つかつかっと八幡さんに寄っていって、ほっぺたをつねる!?

「タラちゃん!何してるの!」


「えっ?ええっ?姫、うちはやな、この生意気な中臣家のボンボンにちょっとお灸をすえたろって……」

「謝りなさいっ!」

「い、いや、先に謝らなかアカンのは皇祖神であるウチにクソ生意気な口ききよったこのボンボンであって……」

「そうじゃなくて、ここにいるお客さんとか、妖怪さんたちに謝るの!」


 そう言われて、キョトンとする八幡さん。あ、タラちゃんっていうのは、八幡さんの本名、気長足姫尊おきながたらしひめのみことから来てるんやで。


「みんな!みんな!このお祭りを楽しみに来てるんだよ!四天王のお札もらって、美味しいもの食べて!わたくしと夏菜子ちゃんなんか、子供たち抱いて踊ったんだからね!」

 そう言われると、八幡さんは、気勢を削がれたみたいにフフッて笑って、薙刀をしまい、黒雲が消えて、元の五色の光に覆われた空に戻った。


「そやな……この子らの幸せのために頑張ってんのに、アホなことしとったらあかんわ……夏菜子ちゃん、みんな、堪忍な。」

 八幡さんが謝ったんで、不比等さんも自分が恥ずかしくなったらしく、頭を下げた。そこに、鎌足さんがやってくる。


「皇太后さま……我が愚息が無礼を致しました。平にご容赦を……ときにそこなる姫は、豊受大神(とようけおおかみ)の化身にございますな?されば、最初からご説明いたさねばなりますまい。太子様もお目覚めになられましたゆえ……」


 鎌足さんは、そう言うと全員を本殿に案内した。


 ◆


 本殿に入ると、おっちゃんが観音さんルックのまま座禅を組んで瞑想してた。どないしたんやろ?


「おっちゃん、よう寝れた?あれ?おっちゃん?」

 ウチが声をかけても、おっちゃんは全然反応せえへん。不思議に思ってると真魚さんが、「いま上に行ってるからそっとしといたって」っていう。上?上って何?


 しばらくすると、おっちゃんがパチって目を開けた。

「おお……姐さんか……ま、そろそろ来るて思たわ。あと、美紗ちゃんに理沙ちゃん、お?花奈ちゃんもおるんか?まぁ、ちょうどええな。鎌足、アレ君、さっきの話、もう一回姐さんにしてくれへんか?」


 すると、鎌足さんとアレ君は、ここまでの出来事と、八幡さん達に『神国日本の新しい姿について考える会』、インキュベーションセンターKANEIJI、日枝礼二、Homines creavit corp.について説明した。


 八幡さんはしばらく目を瞑って腕を組んでたけど、

「……なるほど……こら、ただ呪術を弄んで、神様もどきを創る話とちゃうってことみたいやね……その『逆さまの樹』っちゅうんが本丸な気がするけど……それにしてもウマちゃん、これどないなってんの?なんでアンタの必殺技、四天王供がここで炸裂してんねん?石清水からも見えたけど、朝方にピカって光って、オーロラが出とったな?みんなで朝ごはん食べながらテレビみとったけど、大騒ぎやったで?NK国の弾道ミサイルや!とか言うて……」


 え?ウチと姫は思わず顔を見合わせた。弾道ミサイル?そしたらアレ君が……


「すまね……ふたりには言わねぇ方がよかべって思ったども……戦術核ミサイルが飛んで来たべ。極超音速滑空体って言うんだども……あの、儀式の最後にピカって光った花火見てぇなヤツ。」


 うそ……あれって、核ミサイルやったん?

「うそやん……そしたら、なんでウチら大丈夫なん?それに放射能とか!避難せなあかんのんとちがうん!?」


 でもそういうと、真魚さんが首を横に振る。

「夏菜子ちゃん、太子の四天王供で召喚した四天王はな、いかなる兵器をも無力化する。まして、姫とあんたの光と闇の力の対消滅によって生じた混元力が、この術にほぼ無尽蔵のエネルギーを供給したんや。あんなもんは何でもない。そやけど……」


 でも、おっちゃんは分かっていたように、言葉をつないだ。

「物理的暴力では通じひんから、制度的な現状変更でどないかしようとしている……理沙ちゃん、『神社本庁が各地の八幡宮の解散命令を発出した』っていうんは、そういうことやと思うんやけど、合うてるか?」


 おっちゃんが言うと、理沙ちゃんはびっくりした顔で訊き返した。

「そう……ですが、まだ説明してもいませんのに……なぜお分かりになるのですか?」


 理沙ちゃんが言うと、おっちゃんはふぅーって溜息をつく。

「まぁ、さっき上でそんな話をしててな。聖観音はんが言うてはったわ……『なにゆえ人間どもが神仏の姿を正確に追えるのか?』ってな……真魚よ、どない思う?」


 真魚さんも腕を組んで考えてたけど、

「アレ坊が言うように、『敵は神仏をうすらぼんやりとしか観測できてへん』わけやないってことか?そのー、神国日本のなんちゃら議員連盟の連中には、オレらの姿が見えとるとでも?」

 っていう……


 せやけど、これをおっちゃんは「いや」と言って否定した。

「仮にそうやったら、ホンマに面と向かってワシらと対立するやろか?ワシやオマエはともかく、千手観音クマラみたいにヤバイ奴もおるんやぞ?アイツやったら分かった瞬間に戦士を派遣して霊核を強制洗浄しよるわ。アイツだけやない。ハヤグリーヴァ(馬頭観音)みたいに、『人間の教化を積極的に行うべきや』って言うてる奴もおる。仏がホンマに介入したら、偽物の神を用意しようが何しようが、人間は絶対に勝てん。ワシらの姿がホンマに見えとったら、今みたいに舐めた真似せんやろ。」


「太子様、ってこどは、『逆さまの樹』の奴らが政治家連中を操っでるってこどでねぇのけ?そいづらだったら、米軍さ動かして核使えるんでねぇが?」

 って、これはアレ君や。


「アレ君!?ちょっと待ちいや!核ミサイル撃ったんはNK国とちゃうんかいな!」

 八幡さんが驚いて叫ぶと、アレ君は「いんや」って言った。


「あのPMC達の通信回線に枝さつけたべ……それを追っていっだら……あのミサイルさ、第2列島線から発射されでるって分がったべ。八幡さん、NK国はそんなとごがらミサイル撃てね。」


「まぁまぁ……ミサイルについてはアレ坊の言う通りやけど、ようはその『逆さま連中』も道具に過ぎへんのやないかって思ってな……どうもいらん入れ知恵しとる奴がおる。ワシは、それが饒速日(にぎはやひ)はんが会うて、夏菜子が夢の中で見た黒服の男とちゃうかって思うとる。」

 おっちゃんがそういうと、みんな納得したように深く頷いた。


「あの、太子様。よろしいでしょうか?」理沙ちゃんが手を挙げた。

「ん?どないしたん?」おっちゃんが言うと、理沙ちゃんがホワイトボードに何か書き出した。


「今までお聞きした内容だけでは、果たして何が、敵の真の狙いか分かりませんし、敵というのが何者かも分かりません。しかしながら、今八幡宮に対して行ったことから類推されるに……次の標的は、おそらく、四天王寺、高野山、出雲大社、天満宮、戎神社、稲荷神社です。」


え?それってどういうこと?ちょっと理沙ちゃんが美人過ぎて言うてることが頭に入ってけぇへんねんけど?

第75話、最後までお読みいただきありがとうございます!


今回は、あの空海を前に限界オタク化して推しカプを語り出す理沙ちゃんや、姫に怒られてシュンとする「タラちゃん」こと八幡大菩薩など、神様たちの意外すぎる素顔をお届けしました(笑)。


しかし、和やかな空気から一転。敵の真の狙いが「現代の廃仏毀釈」とも言える、日本の宗教インフラの完全破壊であることが見えてきました。ミサイルよりも厄介な「法律と制度」の包囲網。果たして、この前代未聞の大ピンチに夏菜子や理沙たちはどう立ち向かうのか!?


少しでも「タラちゃん可愛い!」「続きが気になる!」と思っていただけましたら、ページ下部の☆☆☆☆☆から応援やブックマークをいただけますと、今後の執筆の大きな励みになります!次回もお楽しみに!

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