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第74話: 夏菜子です。徹夜やし、お腹空いたから鯛焼き食べよって思ったら、カバンの中に冷めた豚まんが入ってたり、田島が船で飛んできてん。なんやろ?

「う~ん、あんまりちゃんと寝てないし、義経鍋もイマイチ中途半端にしか食べられへんかったから、お腹空いたなぁ……なぁ姫、なんか食べへん?」

 って言いつつ振り返ると、姫はもう唐揚げを食べてた。


「えへっ!この唐揚げ美味しいね!」

 なんでやねん!なんで自分だけ喰うてんねんな!おかしいやん!ウチら友達ちゃうん!?せめて「半分こしよ?」とか「食べる?」とかあるやろ!

 さっきまであんなに神々しく光ってたのに、今はただの食いしん坊の可愛い女の子やん!


「あっ!ごめんね、夏菜子ちゃんも食べる?」

 いやなんか、そうするとウチが催促したみたいで気ぃ悪いねん!

 ウチも回転焼とか食べよ、って思ったら、財布もカードもない。なんなら携帯もない。せや、後鬼さんにカバン渡したままやった。


 ちょうどその時、後鬼さんがこっちに手を振ってやってくる。

「あっ!姫様!夏菜子様!お疲れさまでした!素晴らしい神楽でしたわ!あれほど見事なものはここ1000年ほど見たことがなく……あら?姫様、お腹が空いてらっしゃるのですか?それはようございますけれども……あまり伊勢の皇大神(すめらおおかみ)が食べ歩きをしているというのは……夏菜子様、何を怒っておられるのです?ああそうでした、お預かりしていたカバンを……ときに夏菜子様、このカバン、やけにニンニク臭いですが、魔除けでも入っているのですか??」


 あっ!しまった!551の豚まん入ったままやった!

 えー、どうしようかな?昨日の朝レンジでチンしたまま、カバンに入れてたから、(いた)んでるかも?食べても大丈夫かな?恐る恐る開けてみると、


「あれ?全然大丈夫やな?何ならいつもより美味しい感じするな。なんやろう……?」

 そう思ってたら、そこに真魚さんがやってくる。


「おーふ、はにゃこひゃん(かなこちゃん)、にぃぶんらも(じぶんらも)はぁいぐいか(買い食いか)?」真魚さんは、アメリカンドッグとたこ焼きを同時に食べている。器用な人やな。ほんで何言うてるか分からん。


「真魚さん、食べるんか喋るんかどっちかにしぃや、行儀悪いで。っていうか、アメリカンドッグとタコ焼きって、同時に食べるもん?」

 ウチが言うと、真魚さんは慌てて口の中のものを飲み下した。


「あーごめんごめん!めっちゃ腹減ってたから!あれ?夏菜子ちゃん、それなに?」

 真魚さんは、ウチのカバンの中の豚まんを指さす。


「え?一昨日近鉄あべので買うてきた豚まんやけど?」

 すると、真魚さんは突然それを口に放り込んだ!?


「ちょっと!それ昨日の朝レンジでチンしたやつやで!夏場やのに(いた)んでたらどないすんの!?お腹こわすで!!」


「ちょっとー、夏菜子ちゃん、そんな大げさに言わんでええって!だいたい地面におちても3秒以内やったらオッケーなんやで?カバンの中とか楽勝やっちゅうねん……うっ!!」

 とたんにうずくまる真魚さん。ほら、言わんこっちゃない。お腹ピーピーなるわ。


「うっ……うまいっ!」えっ?なんやて?

「これめっちゃ旨いやん!夏菜子ちゃん!えっ?なにこれ……新作?いや、味はどう考えても普通の豚まんやねんけど、なんていうか、めっちゃ高級な豚まんって感じ?」



「え?いや、普通に駅で売ってるやつやで?美味しいとは思うけど、そんな感動するほどちゃうやろ……」

 ウチはそう思って、豚まんの端っこをかじってみる。


「!なにこれ!めっちゃう旨い!旨すぎる!なんなら傷んでる感じも全然ない!今作ったばっかりみたい!」

 ウチは思わず、豚まんにかぶりついた。


「うっ!旨いっ!一体何がどないなってんの!?」

 すると、当然のように姫が反応する。


「え?どうしたの……わっすごく美味しそう……まだまだたくさんあるよね……ジュル……」

 ちょっとちょっと、ぜんぶ姫が食べてええんとちがうよ?


 とはいえ、県道155線の作戦の後に食べるつもりやったのが、いろいろあってそれどころや無くなったわけで、今あってもみんな食べるかなぁ?

 振り返ると、修験者のみんなは焼きそばとかお好み焼きとかを食べてて、これからさらに豚まんが入る感じはしない。


 あ、アレ君や。アレ君食べるかな?「アレくーん!」彼が振り返ると、もんじゃ焼きを食べてた……あんだけウチが食べたらアカンっていうたのに!何してんねん、この浮気者!!


「あ、夏菜子さ。神楽(かぐら)お疲れ様だべ!太子様の法要、すごがったべな~!あれ?なに怒っでるだ?」


「アレ君、それ。」ウチがもんじゃ焼きを指さすと、アレ君はキョトンとした顔をする。っていうか、なんでもんじゃ焼きがあるねん。しかも食べやすいようにソースせんべいに挟んであるのが分からへん。何時の間にそんな商品開発されたん?


「アレ君、こないだいうたやん!もんじゃなんか食べたらアカンって!」


「?そんなの聞いてねぇべ?いつの話だべ?」


「アレ君!月島のもんじゃ屋で言うたやん!……そやのに、アレ君がウチのこと知らんって言うから、ウチ、アレ君にキスして、あっ……」

 お……思い出した……ウチ、夢の中で……


「どしたん?夏菜、顔真っ赤だよ?あれ、なんでアレ君も真っ赤なん?どゆこと?」

 なんやねん田島。要らんこと言わんでええねん……あれっ?なんで田島の声がすんねやろ?

 顔を上げると……


「えっ!田島やんっ!なんでアンタがここにおんねん!」


 ◆


 顔を上げた先に目に入ってきたのは、談山神社の境内に降り立った天鳥船(あまのとりふね)と、その甲板からこっちを見て手を振ってる田島やった。


 いきなり現れた空飛ぶ船に、観光客と妖怪さんたちが歓声を上げて大喜びしてた。

 中には、「なにこの巨大ドローン、スゲー!」とか言ってる人もいる。いやー、これドローンちゃうねんけどな、プロペラないし。


 ウチとアレ君、姫がビックリしたポカーンてしてると、ケモミミが頭についてシッポが生えて巫女服を着た田島と、鎧姿の八幡さんが降りて来て、そして……花奈ちゃん!?なんで花奈ちゃん乗ってるのん!?畝火(うねび)山口神社におるんとちがうん?


「夏菜子おねえちゃーん!」

 花奈ちゃんはタラップを降りると、ウチの腕の中に飛び込んできた!ううっ!可愛いっ!ホンマにウチの妹にしたい!


「どうしたん、花奈ちゃん、畝火山口神社のお祖母ちゃんのところにおったんとちゃうのん?」ウチが訊くと、花奈ちゃんはニコニコ顔で答える。


「あのね、お姉ちゃんたちが出たすぐ後に、大っきな空飛ぶ船がいっぱいやってきて、そこから美紗ねえちゃんが出てきたんだよ。ボク、あれ?夏菜子おねえちゃんと出て行ったばっかりなのになんで?って思ったら、鎧姿のお姉さんと、すっごくセクシーなお姉さんも降りてきて……」

 セクシーなお姉さん?誰やそれ?


 すると……船のタラップから、褐色の肌に、ウェーブかかった漆黒の髪をサイドでまとめて、胸元が開いたアンカラのマーメイドラインの、青いワンピースを着た、もんのすごいスタイルの良いスーパーウルトラ美人のお姉さんが降りてきた!!

 えっ!!誰っ!?こんな人知らんねんけど!


「夏菜子さん!姫様!ご無事でしたかしら!?」セクシーなお姉さんは、ウチと姫を順番にハグする。いやちょっと待って、こんな美人にハグされたらドキドキするやん……あれっ?このおねえさん、ウチらのこと知ってる?


「あのー……すみません、どちらかでお会いしましたっけ?お名刺は……」

 ウチが言うと、セクシーなお姉さんはショックを受けたようによろめいて2、3歩あとずさる。え?ウチなんか変なこと言うた?


「ひっ!酷いっ!いくら関東もんだからって!アウェーだからって!そんな言い方は無いのではなくてっ!?わたしたち友達じゃありませんの!?」

 えーっ?こんな美人の友達いたら絶対覚えてるって。


 そしたら田島が突っ込みを入れてきた。

「夏菜、それちょっとひどくない?いくら理沙っちがアニオタの軍事オタだからって、差別はダメだよ差別は。」って……


 えっ!?ウチが何度もお姉さんを見返す。これが文化庁の!スーパー国家公務員の!エリートの!せやけど見た目は牛乳瓶メガネで、地味なグレーのスーツの、死ぬほどダッサイかっこした滝沢・バーキン・理沙ちゃんなん!?


「どっ!どないしたん理沙ちゃん!?メガネは?っていうかスーツは?」ウチが訊くと、田島が「それなー」って言う。


「なんかさー、夏菜たちが出発した後にさ、あーしたち色々準備してたんだけどさ、商店街のオッサンとか、八幡さんの配下のお侍さんとか、理沙っちの言うこと聞かなくてさー!!あーし思ったんだよね、理沙っちってアタマ良いけど、見た目アレじゃん?『舐められてんじゃん!!』とか思って!ちょっとムカついて気合い入れちゃったんだけどさ……そしたらスーゲーベッピンなの!マジびっくりしちゃって!!」


「す、すご……もはや同一人物ちゃうし……あ、そや。理沙ちゃん、アレ君会うたことなかったやんな、紹介するわ。この人が……あれっ?」


 後ろを振り向くと、アレ君が、鼻血をだして固まってる!?ちょっと!!浮気はアカンってさっき言うたやろ!


「ウフフ……ねぇ夏菜子ちゃん、知ってた?男の人って『この人アタシのもの~ゲットした~』って油断してるとダメなんだって!クシイナダちゃんが言ってたわ!」

 ちょっと姫、余計なことは言わんでええねん!


「なんやなんや、えっらい騒がしいって思たら、なんでこんなとこに天鳥船(あまのとりふね)があんねん?ってアレ?八幡姐さんと、美紗ちゃん、花奈ちゃんやないか?なんかえらいベッピンさんもおるけど。」

 ウチらがわちゃわちゃしてると、焼きそば食べながら缶ビール飲んでる真魚さんがやってくる。

 すると、鎧姿の八幡さんが前に出て来た。


「いや……なんかえっらい巨大な気を感じてな……急ぎ来たんやけど、この様子やったら大事ないみたいやな……実はな、うちらも相談したいことがあったんや……真魚ちゃん、ウマちゃんどこにおるんやろ?」


 すると、全員に緊迫した雰囲気が伝わり、理沙ちゃんが急に真面目な顔になる。


「夏菜子さん、姫様、よくお聞き下さい。神社本庁が各地の八幡宮の解散命令を発出しました。」


第74話、最後までお読みいただきありがとうございます!


今回は、徹夜明けの空腹に響く奇跡の551豚まんからの、ドタバタな朝の風景をお届けしました。

もんじゃって、もちろん大阪ではほぼ食べられません。でも、東京でも屋台もんじゃって見たことないけど、あったら楽しいかも?と思って、ソースせんべいに挟んだもんじゃを創作してみました。

うん、今度作ってみよう。


美紗ちゃんにケモミミが生えてたり、理沙ちゃんが超美人になったりしている、平和な日常パートから一転、最後に理沙ちゃんの口から語られた「神社本庁による解散命令」。 ミサイルという物理的な攻撃の次は、まさかの「法律と行政システム」による包囲網です。果たして夏菜子たちや神様たちは、この前代未聞のピンチにどう立ち向かうのか……!?


少しでも「理沙ちゃんの変身に驚いた!」「続きが気になる!」と思っていただけましたら、ページ下部の☆☆☆☆☆から応援(評価)やブックマークをいただけますと、今後の執筆の大きな励みになります! 次回もどうぞお楽しみに!


あっ、よい子の皆さんは、真魚さんみたいに地面に落ちたものは食べないようにして下さいね!3秒ルールを実践しているのは昭和のおじさんたちだけなので!

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