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第58話: 激闘 談山神社!② 県道155号線 突破作戦!こっからの解説は銀次郎だべ!(標準語だよ)

 後鬼さんの号令とともに、PCモニターの地図上の光点がグリーンに変わる。

 各部隊が戦闘行動を開始した合図だ。

 法眼さんと十兵衛さんが神馬で疾駆し、敵のパワードスーツを翻弄する。


「なんだべあれ?敵のパワードスーツさ、こっちさ見えてる筈だども、あさっての方向さ、銃撃ったり剣さ振り回したりしでるでねが?さっぎも見だども。」

 僕が疑問に感じていると、法眼さんから通信が入る。「しんぺー」アプリは、霊的シンクロナイゼーションを通じて、神兵として召喚する修羅・神霊と召喚者が連絡を取り合うことが可能だ。


 僕は、しんペーアプリPC版のチャット画面を見る。

『夏菜子姫の所望ゆえ、誰の命も奪わぬ。あのカラクリ共の耳目(じもく)を奪った故、今のうちにあれらに捉われた人の子らを救って見せよ。』

 赤外線センサーの信号を見ると、法眼さんの術によるジャミングを受けているようで、こちらと敵の間に膜のようなものがある。


 敵は法眼さんと十兵衛さんの正確な位置が補足できないようで、敵が発するレーダー波が散乱している。ふたたび法眼さんからチャットが入った。


『式神からの通信を用いるのも良いが、それでは戦況を(せつな)那に解すること(あた)わぬ。心眼を開け。呪力の結界を通じて送られる皆の(こころ)、カラクリを通じてではなく氣を以て観よ。』

 なんだって?そんなのどうやってやれば良いんだ。僕が当惑していると、後鬼さんが叫ぶ!


「若様!十兵衛殿と心を一つにするのです!彼の姿を思い浮かべて!声を上げて彼に呼びかけるのです!」

「な、なんだべ!?……じゃ、じゃあ……十兵衛さ!オラの声さ聞ごえっか!」

 もちろん、戦場の喧騒の中で僕の声が彼に届くはずもない。だが……


「なんだこれ……十兵衛さの太刀筋、どこさ通るか感じる……」

 なんとなく、彼が感じているものが伝わってくる……「これは敵の呼吸?」正確には、敵はAIで制御されている機械なのだから、そんなものがあるはずが無い。しかし、敵と彼の間にある空間に水があって、まるでそれが敵の動きに合わせて揺らいでいるようだ……。


「これが、十兵衛さの感じでる世界だべか……なんも考えるこどさね(無い)、ああしようこうしようもね(無い)……ただ水の中で敵とつながっでるみてだべ……相手がどさ動こうとすっかも、何企んでっかも、全部分かるべ……」

 頭の中に十兵衛さんの声が響く…「銀次郎殿!我の念が聞こえた様じゃな!重畳(ちょうじょう)じゃ!」


「十兵衛さ!こらなんだべか!なして、オラの声さアンダさ聞こえる!?」心の中で応えると、また十兵衛さんの声が頭に響いた。

「それこそが明鏡止水(めいきょうしすい)、『空』と『(えんぎ)起』の悟りの果てにあるもの!今や其方(そなた)精神(こころ)は、骨肉を越えて万象に繋がっておるのだ!(かん)ぜよ!我らを!敵を!夏菜子殿を!鬼たちを!」


「万象と繋がる」だって?それは、僕と皆の心がつながり、相手の意図が分かるってことなんだろうか……?僕は、この場にいる仲間たち、夏菜子さん、美紗さん、真魚さんや太子様、鬼たち……皆の姿を思い浮かべた……

 その時別の声が響く!

「アレ君!どないしたん!?なんか今、アレ君の声が頭の中に聞こえたで!どないなってんの!?」


 それだけじゃない、山道を登る鬼たちの視界に映るもの、敵の邪霊たちの感情、果ては、敵のパワードスーツに囚われている人々の恐怖さえ伝わってきた。僕は、心の中で皆に向かって語り掛ける。


「みんな!オラはいま、みんなの心さ(じか)に語り掛けでる!その理由は後で話すだども……聞いでけれッ!

 この(いがさ)、ただこの道さ突破すれば良いわげじゃねぇ!敵のパワードスーツど邪霊さたおせば良いのでもねぇッ!

 あれ(パワードスーツ)さ囚われだ全での人だちさ……一人残らず、無傷で救い出さねばなんねぇだ!!

 それがでぎねぐれぇなら……これから先、この国の全での人さ敵の企みから救っで、滅びの宿命さ避げるこどなんて、でぎっこねぇべ!!

 オラに……力さ貸してけれェッ!!!」


 僕の叫びに応えて、皆の熱い想いが伝わって来る……!


「ふっ!わずかこの一合で他心通力(たしんつうりき)を得おったか!アレクセイ!今から其方(そなた)が我らの軍師じゃ!一切を見通し、みごと勝利に導いて見せよ!」法眼さんが哄笑する。


「さすが我らの若様や!よろしゅうたのんまっせ!」これは鬼たちだ。そして……


「アレ君……みんな、聞いた!? ウチらの軍師さん、めっちゃカッコええやん!?こんなんウチらで力合わせて、パパッと終わらしたろやんか!!

 アレ君、指揮は任せた!全力で暴れたってや!

 これが終わったら、551の豚まんでおやつタイムや!みんな、信じてるでッ!!」


 全員の咆哮が伝わって来る!

「行ぐべ! 県道155突破作戦、まずは敵のパワードスーツさ、全部引っぱり出しでやっど!」

 いま、サイは投げられた!


 ◆


 太陽が傾き、茂古(もうこ)の森の木々が道路に黒い影を落とす。目視が最も困難になる黄昏時、「逢魔がおうまがとき」だ。

「最初のカーブさ見えでぎだべ。オラだづ、この時間さ有効に使わねばなんね……法眼さん!十兵衛さ!行っでけれ!!さっきの幻術で、敵のAIさこっちの正確な位置見えでね!ひっかきまわしてけれ!」


 敵を油断させて、なるべく多くのパワードスーツを引っ張り出す必要がある。こちらの攻撃が強すぎてはいけない。

 法眼さんと十兵衛さんは、カーブを凄まじい速度で走り抜けると、無数の呪力弾が襲い掛かる中、敵を翻弄するように薙刀で斬りかかってゆく!


「敵を一人も殺すなとは!無茶を言うものよな!」十兵衛さんが哄笑しながら、薙刀で一体のパワードスーツの脚を斬り飛ばすと、法眼さんも別の機体の銃を切断する。

「はっはっは!惚れた女子(おなご)のためじゃ!麻呂(まろ)も力を貸してやろう!」


 敵の射撃は、幻術の影響で正確さを欠き、幻影のように疾駆する法眼さんと十兵衛さんにはかすりもしない。

 なんとか彼らを食い止めようと、パワードスーツが徐々に集まって来るが、あまり時間を掛けていられない。


「後鬼さん、茂古の森のカーブさ、突っ込んでけれ!カーブさ抜けだらすぐ戻すど!」

「御意ッ!」

 タイヤが焦げる悲鳴を上げ、ハイエースがカーブに突っ込み、即座にバックする。

 直後――ドガガガガガッ!!と、元いた場所に雨あられの如く敵の呪力弾が降り注ぐ!

 数発が車体を直撃したが、車を覆う『鎧魂(よろいだま)』の結界が、敵の弾丸をかみ砕いた!


「よし……!敵の狙いさ、完全にこっちに向いたべ!」

 PCのモニターに映る敵の光点パワードスーツが、一斉にハイエースを狙って森の斜面から、上地区の棚田から、身を乗り出し集まって来る。その時、敵の通信が直接頭に飛び込んできた!


「敵の回避行動、防御能力に留意。敵の装甲車2台に通信の集中を確認。指揮車両と思われる。飽和攻撃を推奨。火力を集中せよ。」

 狙い通りだ!僕は、呪力通信を用いず、皆に直接思念を送った。


「来たべ!狙い通りだ!法眼さ、十兵衛さ!出来るだけ暴れてけれ!」

「後鬼さん!ハイエースはなるべく、カーブさ出たり入ったりして、パワードスーツさ一ヵ所に集めっど!鎧魂の結界マックスまで上げて、被弾さ何とか耐えてけれ!」


「承知……!?若様、あれをご覧ください!」後鬼さんが指す方を見ると、道の脇の森や棚田から赤黒い影が無数に湧き出てくる。邪霊だ。皆一様に鬼の面を付け、歯車やゼンマイが飛び出したオートマトンのような姿をしている。


「来たかッ!……えれぇ数でねが!?鬼部隊!あいつら迎撃してけれ!」

 山道を登る生者の鬼と死者の鬼の混成部隊が、闇から湧き出る邪霊を攻撃する。しかし、敵は雲霞の如き大群だ。鬼たちが徐々に押し込まれ、茂古の森まで後退していく……


「若様!敵が車体にッ……!これはっ!ハンドルが取られて身動きが効かないっ!」

 邪霊たちがハイエースに取り憑き、まるでコールタールのように粘りついて機動を奪っていった。

 完全に停止したところに、容赦なく敵の呪力弾が降り注ぐ。


「いぐら『鎧魂』って言っても、連続で攻撃さ受けだら、呪力が尽きで、ハチの巣にされちまうべ!」

 その時――ガギンッ!!と、ひときわ嫌な音が響いた。


「きゃあっ!?」

 別の車両に乗った夏菜子さんが悲鳴を上げる。呪力弾の一発が鎧魂の結界をすり抜け、ハイエースの装甲を貫いたのだ!

「夏菜子さん!……ケガはねがっ!」とっさに思念を返すと、辛うじて彼女の思いが返ってきた。

「だ、大丈夫!床に穴開いただけやから!せやけどこのままやったら……!」


 皆が絶望しかけたその瞬間。

「間に合ったど!……今だべ!」おそらく、その時の僕は、最高に楽しそうに笑っていたと思う。


「……アップロード完了!!オラ、こっちが本職ほんしょくだはんで!」

 僕は、弾く様にエンターキーを叩いた!


 車体に張り付いていたコールタールのような邪霊たちが一斉に動きを止め、車から離れていく……

『全機、目標ヲ変更――敵パワードスーツ群に憑依せよ。』

 次の瞬間。群がっていた何百という邪霊たちが、『味方』であるはずのパワードスーツたちに襲い掛かっていく!


『システムエラー発生。邪霊群、標的を再度変更せよ、最後変更せよ、再度変更ォオワァァ……』

 敵の戦術AIが張っている強力な攻性防壁が完全に崩壊し、完全なハッキングに成功した!


 僕が狙っていたのはこれだった!

 法眼さんと十兵衛さんによるかく乱、僕たち自身を囮とした敵の誘き出し、そして、劣勢と見せかけた鬼たちによる攻撃に、呪詛ウィルスを仕込んだ式神を忍ばせ、邪霊どもに食わせる!

 これによって、敵のシステムを乗っ取るのが、今回の作戦だったのだ!


「名付げで、『逆トラシメヌス湖畔の戦い』だべ!」

 狂乱した邪霊の大群がパワードスーツに群がり、銃口を塞ぎ、関節の駆動系を次々と腐食させていく……気が付くと、あれほどいた敵のパワードスーツは完全に沈黙していた。


 闘いの喧騒は消え、月明かりが照らす静寂の中、僕たちは車から降りて動かなくなったパワードスーツを見つめていた。

 夏菜子さんが言った。「アレ君、なんかおかしい……花奈(はな)ちゃんの時みたいにハッチが開かへんで?なんか、中からうめき声みたいなんが聞こえてる。」


 そうだ、このパワードスーツにある『命を吸い取る呪力回路』を止め、人間電池にされている人々を救い出さない限り、本当の勝利とは言えない。


 だが、どうやって? 僕のハッキングで敵の行動自体は止められても、この回路の仕組みまでは……


【あとがき・用語解説】

今回は少し専門的な言葉や戦術が登場したので、ちょっとだけ解説をば!


他心通たしんつう

仏教における「六神通(りくじんつう/悟りを開いた者が得る6つの超能力)」の一つで、他人の心の中を読み取る力。本作では、アレ君は呪術とインターネットを融合して電波を用いずに通信を行っていますが、今回はそれが一歩進んで「意識のネットワーク(シンクロナイゼーション)」となり、単なる通信技術を超えて他者と直接リンクしたことを指しています。


くう」と「縁起えんぎ

仏教の根本思想。「空」は固定された実体(自我や執着)がないこと。「縁起」は全ての存在が互いに関係し合い、繋がって成り立っていること。今回アレ君は、十兵衛とリンクすることで彼の無心の剣『剣禅一如』の極意を体験し、それによって敵とさえも完全に意識共有するレベルに到達したことを意味します。


逢魔がおうまがとき

昼と夜の境界である夕暮れ時。古来より「魔物に出会いやすい(魔が差す)」とされるオカルト的な時間帯ですが、アレ君たちはこれを「カメラによる目視が最も困難になり、AIの視覚を封じやすい」という、極めて合理的なタクティクス(軍事戦術)として利用しました。


トラシメヌス湖畔の戦い

紀元前217年、カルタゴの天才戦術家ハンニバルが、濃霧と狭い一本道(地形)を利用して、ローマの大軍を完全に包囲・殲滅した戦史に残る芸術的な奇襲戦。

今回、敵のAIはこの陣形を県道155号線に敷いて待ち構えていましたが、アレ君はその「死地」にあえて飛び込み、内側からシステムごと乗っ取るという『逆・トラシメヌス』をやってのけました。


さて!激闘 談山神社!まだまだ続きます!気になる方は、引き続き応援よろしくお願いします!

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