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第55話: おやつ食べたいだけやん、と思ったらそうじゃなかったり、皆の前で演説せなアカン話

「ところで、小角はん、あんたのとこの鬼どもを付けるって言うても、敵は見ての通り奇怪なからくりを使う。すまんが、鬼の力では退けられへんのやおまへんか?」

おっちゃんが訊くと、小角さんはにやりと笑った。


「もちろん、じかに攻撃っちゅうんは出来へん。せやけど、ウチのもんが得意なんは、そもそも幻術や忍術。目くらましはお手のもんや。それに、人間の手練れやったら目が見えんでも「氣」だけで追ってきよるが、これはただのカラクリ。人間が動かしてるわけでさえない。それに、人間が動力源やっちゅうなら話は早い。九字神刀で魂魄を斬り、霊の働きを狂わせたら、おそらく追っては来れんはずや。」


「なるほど、それやったら……」おっちゃんは頷いたけど、ウチは少し気になることがあった。

「なぁ、小角のおっちゃん。このパワードスーツの中の人、なるべく助けられへんかな?」


「ん?なんでや?」そう尋ねる小角さんやけど、ウチは花奈ちゃんの肩を抱きながら言うた。


自凝島(おのころしま)神社と石清水で敵に会うた時は、ただの悪もんやと思ってた。そやから、そいつらが天津軍(あまついくさ)に命を絶たれても、特に気にはならんかった。せやけど、この花奈ちゃんみたいな子が、むりやりアレに乗せられて、恐怖に怯えながら命を吸い取られて、それで、ウチらに殺されるってアリ?ウチは無しやと思う。」

そう言うと、小角さんは、「ふむ」と言って腕を組んだ。


「確かに、それも道理や。何より……」そういって、小角さんは花奈ちゃん方を見た。

「こないにおぼこい(幼い)子の命は奪えん、当たり前や……ただ、そこまで加減をするとなると、こちらも相応の力が無いとアカン。アレ坊、その『しんぺー』っちゅうんは、天津軍しか召喚でけへんのか?鬼はどや?」


「鬼?鬼だべか……ちょっと待ってけれ……」アレ君がそう言って、何かカメラみたいな物をかざすと、PCの画面に「霊波動周波数測定中」って言うのが表示されて、次に「error、対象はシンクロ範囲外です」って表示された……

「小角のじっちゃ、このまんまだと難しぃべ。ちょっと大幅に調整しねぇと……」

ん?どういうことなん?鬼とガム新さんって何がちゃうのん?ウチが聞くと、


「『しんぺー』は、人間の感情回路のうち、共感回路ってのを使ってるべ。えーど、高野山の大学の先生さ訊いだ時に、アナハタチャクラっていってたんだども、今スキャンした感じだと、赤か琥珀色だはんで、このままじゃ接続できね。」


「そっかー……じゃあやっぱり、十兵衛さんとか、鬼一法眼(きいちほうげん)さんに頑張ってもらうしかないんかな?」

すると、アレ君はふふん!と言って胸をはる。

「夏菜子さ、『このままじゃ』って言ったべ?『できねぇ』とは言ってねぇべ! 談山神社行ぐまでにアプリ更新すべ!」


「せやけど、アレ坊。アナハタチャクラを基点にして人と霊的存在をつなぐんやろ?それが無い鬼とどうやって繋がんねん。」

真魚さんが言うと、『真魚さん、難しく考えすぎだべ』ってアレ君が言う。


「そんたらごど、簡単でねが?ムーラダーラチャクラとスヴァディシュターナチャクラに結節点作ればいいべ?」

なにそれ?意味わからんねんけど?ウチが聞くと、真魚さんが補足してくれた。


「夏菜子ちゃん、鬼っていうのはな、修験道の戦士たちのことで、生者の鬼と、死者の鬼がおる。死者の鬼っていうのは、かつて生者の鬼やったものが、死後もその役目を果たしてる者のことや。生者の鬼が、しんペーを使ったら死者の鬼に強力な力を付与できる、ってことなんやけども……アレ坊、そない簡単にできるんか?」

真魚さんが聞くと、アレ君は一言「んだ」っていう。


「夏菜子さんががんばるって言ってんだべ?(あぶ)ね所さ行ぐって言ってるべ?オラにできることは何でもせねばなんね!それに、敵さ、デジタル技術使って悪いことしてるべ!おらそんたらごど許せね!技術は人さ幸せのためのもんだべ!」


アレ君がそう言うと、みんな無言で頷く。

そして、ウチらは談山神社にむかって出発した。



クルマで移動すると、ウチ、アレ君、田島はそのままやけど、おっちゃん、真魚さん、十兵衛さん、そして鬼一法眼さんがヌイグルミで……「おじゃる」っていうアニメキャラみたいになってた。

「まったりまったり……おや?あれは飛鳥の宮ではないか?雅よの~」何この人?ホンマに強いの?


「なぁなぁ、十兵衛さん」

「ん?何にござるか?夏菜子殿」うちは、猫のヌイグルミ姿の十兵衛さんにヒソヒソ声で話しかける。

「この、鬼一法眼さんってホンマに強いの?なんか、ちっさいし、さっきからお茶ばっかりのんで、『雅よのぉ~』ってそればっかりやし。」そしたら、十兵衛さんは「否!」って叫ぶ。


「某、空の利剣などと、驕慢になっておった……上には上がいるものじゃ……」そうしてると、おじゃ……じゃなくて法眼さんが十兵衛さんに声をかける。

「これ十兵衛よ……麻呂は甘いものが所望じゃ。茶には甘いものが欠かせぬ……」


「え?はっ!法眼殿がご所望とあれば!……夏菜子殿、済まぬがお菓子はござらぬか?かりんとうでも、回転焼でもようござるが……」

なんやそれ……お祖母ちゃんがせっかく人数分持たしてくれたのに……


「はい!法眼さん!一個だけやで!今食べたら後で無いで!」そう言って、法眼さんに渡すと、

「ゆく川の流れは絶えずして、しかも元の流れに非ず……我ら芸者(武芸者)は明日をも知れぬ命じゃ……これよと思うた時に為す……秘伝なり。十兵衛、心せよ……」


「ははっ!この十兵衛、法眼殿の教えに浴し、まさに恐悦至極!」

えー?わからーん?武士の考え方わからーん。だいたい何が秘伝やねん。単に「今すぐおやつたべたーい」って言うてるだけちゃうん?


そう思ってると、車の廻りに怪しい赤い光が群がって来て、化け物になった!

「わ!わわっ!化け物や!どないしょ!鬼さんたちと合流できてないし!」

でも、法眼さんは全く慌ててない。十兵衛さんは慌てるどころか、法眼さんの一挙手一投足をみて、一生懸命ノートになんか書いてる。

そしたら、法眼さんが、ボソッと何か言った。

「その一、虎韜(ことう)。」


すると、赤い化け物たちが、次々と見えない刃で切り刻まれていく……なにこれ?どういうこと?

「お見事!法眼殿!今のは真空の太刀ですな!」

そしたら、法眼さんは、にっこりと笑う。


「十兵衛、空の利剣を得たばかりでは、十全とは申せぬ……色即是空(しきそくぜくう)空即是色(くうそくぜしき)。空を知らば、色も自ずと分かろう……ならば、空の悟りをもって、アビラウンケン(世界の5大元素のこと)を操るが良い……其方(そなた)なら造作もなかろう……」


「お……おぉっ!なんと!斯様(かよう)な剣理があろうとは!さらば(それがし)も……」十兵衛さんが、お経みたいなものを唱えると、彼の廻りの空気がだんだん冷たくなっていく……


依般若六波羅蜜多(えはんにゃはらみった)……天狗抄……」そういって、太刀の鍔をカチンと言わせると、車の廻りにおった化け物が、ぜんぶ氷漬けになって粉々になった!えっ!何したん!?法眼さんがケラケラ笑ってるし!


「ほっほっほ!さすが柳生の御曹司よの!麻呂の技を見ただけで五輪を操りおるとは!いや、愉快愉快、幕末や戦国より来た天津軍どもは、何かと技を高める心持が無い故、つまらぬと思っていたところじゃ!」

それを見て、アレ君やうちだけや無くて、太子のおっちゃんや真魚さんも青ざめる。

「な、なんじゃコイツ……ただの修羅のクセして……完璧に悟っとるやんけ……いったい、この国の武ってなんやねん……」


「それよが、太子さ、あの化け物さ、やっぱり敵の放った式神だべ?真魚さんや小角のじっちゃが使うものと全然違ぇべ? たぶん、さっきのパワードスーツの応用で、SNSで練った邪念さ、呪力にしたもんだべ。はやぐ鬼さんたちと合流せねば。あ、来たべ。大峰山の修験……生きた鬼たちだべ。」

アレ君がそういうと、LINEで連絡が入る。


だいたい、明日香村を過ぎて、石舞台古墳のあたりで、その人たちに合流した。

皆、鋭い目をしてて、なんか足が三本ある鳥のマークが入った忍者みたいな服を着てる。

「この人たちが、生きた鬼?」ウチが言うと、その中の一人がウチを見て、真魚さんに質問した。


「弘法大師様、このお嬢さんでっか?武流(たける)はんの霊験を受け継いだ、っちゅうんは?」



ウチが一瞬意味が分からんで固まっていると、真魚さんは「そや」っていう。

「オレかて……まさか熊野の戦士の筆頭が、あんなとこに隠れとったとは思わんかった……それだけやない。武流はんは、石長比売さんの息子やった……そら、あんだけえげつない力を持っとったんもなるほどや……」

真魚さんがそういうと、鬼さんたちが「おぉっ」とどよめく。


「ほいたら……このお嬢さんは、石長比売様の孫……いや!イザナミ様の直系の子孫!やった!これやったらワシらを山に追いやった天津神(あまつがみ)どもを追放出来るで!」

鬼さんたちが口々に叫ぶ。ウチが怖くなってなにも言えんでいると、太子のおっちゃんが叫んだ。


「やかましいわ!アホンダラ!」皆がシーンとなり、おっちゃんがそのまま続ける。


「ホンマにもう……小角はんも躾がなってへんな……あのなぁ、ワシは誰や?観音や!この世界の全員を救うんがワシの仕事や!お前らもそれは分っとるやろ!せやのに、なんじゃ……天津神に復讐やとか、ヘチマとかぬかしくさって……そんなもん、今回の敵と、政治家共と変わらんやろ!夏菜子、このアホどもに分かるようにバシって言うたれ!」

え?なにおっちゃん?いきなり無茶ぶりすぎへん?っと思たけど、なんとなく、ここまでの道のりで、ウチが何せなアカンか分かった気がする。

ウチは皆の前に出ると深呼吸した……


「あの、ウチ小路夏菜子っていいます。みなさんが、ウチのお父ちゃんを武流っていうのが、なんでか分かりません。お父ちゃんの名前は、恵寿よしひさやったから。せやけど、さっき真魚さんが言わはったことは、お祖母ちゃんから直に聞きました……それで、ウチがなんなのかも知りました。ほんで、ウチがそもそもここに来たのんは、たまたま出会った、姫……アマテラスさんが、可哀想やって思ったからです……」


そこで、ウチはもう一回深呼吸して続けた。


本日も読んでいただき、ありがとうございます!

シリアスとギャグの寒暖差が激しい第55話、楽しんでいただけたなら嬉しいです。


個人的な見どころは、法眼さんと十兵衛さんの「達人コンビ」です。化け物に襲撃されている絶体絶命の状況で、一歩も動かずに真空の刃を放つ法眼と、横でメモを取りながら即座に五輪の太刀を習得する十兵衛……。夏菜子ちゃんの「おやつ食べたいだけやん」というツッコミが、実はそうではないという……


しかし、最後に待ち受けていたのは「イザナミの直系」というハードな事実と、天津神への復讐しか考えていない鬼たち。太子のおっちゃんの粋なアシストを受けて、夏菜子が何を語るのか。


次話からは談山神社での激闘が始まります!引き続きお付き合いよろしくお願いします!

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