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第54話: 外道のシステムと反撃の狼煙! 小角のおっちゃん合流で、いざ談山神社へ!

「電池って……嘘やん。ほんなら、花奈(はな)ちゃんは、どこに行くか、何をするかも知らんまま、こんなとこに連れて来られたん?なぁ花奈ちゃん、コレに乗ってたんは、みんなアンタみたいな子供やったんかな?」

 ウチが訊くと、花奈ちゃんは首を振った。


「えと……実際に乗ってる人がどんなかは知らないけど、施設には色んな人がいました。お年寄りや、フリーターっぽい人とか、キャバ嬢とか……あと、なんかずっと怒ってて、女の子にキモいこと言ったり、触ってきたりするおじさんもいました……すごく怖くて……あ、でも、お医者さんみたいな人が『若い方がエネルギーはあるが、負の感情が強い方が変換が楽』って……なんのことか分かんないけど、小さい子供はいなかったかも。」

 花奈ちゃんが言うと、アレ君もパソコンを操作しながら頷いた。


「あり得るべ。これ、たぶんSNSの投稿さデータ化したもんのバックアップだども、胸が悪くなるみてな言葉ばっかりだべ。」

 それは、さっきのパワードスーツから抜いたUSBメモリみたいやったけど、ウチが画面を覗き込むと、口に出来へんような言葉とか、そもそも日本語にもなってない罵詈雑言が並んでた。


「なにこれ……『あのオッサンマジキモい、しね』 『外国人追い返せ』 え?『痴漢するなら受験会場に行く女の子がねらい目』……って頭おかしいんか……」

 ウチがそういうと、花奈ちゃんがまた泣き出した。


「あ、あの……そういう投稿とか、怖いおじさんが嫌な言葉をいっぱい大声で言ってる動画を、ずっと見させられるんです……あの機械の中でもずっと。毎日毎日、頭がおかしくなりそうで……」

 ウチが慌てて抱きしめると、花奈ちゃんは必死でしがみついて来てわんわん泣き続ける。


「大丈夫、もう大丈夫やからな。お姉ちゃんはな、県庁で福祉の職員やってんねん。花奈ちゃんが安心して生活できるようにしたるからな。そや、ご飯食べよか?お腹すいていないか?えーと、お祖母ちゃん、なんか食べるもんない?簡単でええんやけど。」


「いーよ、あーしが作るから。夏菜はその子を抱いててあげなよ。ほら。」

 田島に言われて、花奈ちゃんの方を見ると、しっかりしがみついて離れそうにない。


「あ、確かに……せやけどええのん?アンタ料理苦手って……」

「何言ってんの?昨夜も今朝も夏菜の実家でやってたじゃん。いいからいいから。あ、お祖母さん、これって奈良漬けとお揚げですよね。調味料は……味噌と酒粕か……ちょっとアレンジレシピだけど、チャーハンかな?」

 そういうと、田島はあり合わせもので焼き飯を作った。


「なぁ、夏菜子。美紗ちゃんすごいな。この家、常世(とこよ)の家やからガスも電子レンジも無いんやけど、あの子、当たり前みたいにカマドで焼き飯作ってるで。しかも奈良漬けと味噌で焼き飯って、ちょっと高等テクニックとちゃう?」

 お祖母ちゃんが、田島の余りの手際の良さにびっくりしてる。たしかに、まるでいっつもカマドで料理をしてるみたいに慣れてる。どういうこっちゃ?


「はい、できたよ!奈良漬けとお揚げとキノコだけのチャーハンだけど、花奈ちゃんのお口に合うかな?あ、皆も食べてね!いっぱい作ったから!」

 花奈ちゃんは、奈良漬けが入っているという、ちょっと変わり種の焼き飯をまじまじと見てたけど、美味しそうな匂いに連れられてスプーンで一口食べると、ちょっとびっくりして、それからバクバク食べだした!


「すごい!これとっても美味しいです!」花奈ちゃんが食べ終わってニッコリすると、田島も優しく笑った。

「そう?良かった!奈良漬けなんて使ったことないからドキドキだったけど、気に入ってもらえて良かったよ。どう?少し落ち着いた?」


「あ、はい。えと、お姉さんは……?」

「あ、あーし?あーしは、その、えーと、田島美紗だよ!よろしくね!」ん?なんや今の間は?まぁええけど。でも、花奈ちゃんは田島をマジマジと見ると、ぼそっと言った。


「お姉さん、すっごく綺麗……女神様みたい。それに、すっごくいい匂いがします。」


 ◆


 アレ君と真魚さんは、一通り作業をすると、おやつ代わりに焼き飯を食べに土間に集まってきた。

「お?旨そうだべ。なんだこの黒いのは……え?奈良漬け!?いんや、オラ奈良漬けはちょっと……うんめ!何だべこら!え?美紗さんが作っだ?あれ、美紗さん、料理は苦手でねぇのが?」


「まぁそんなん旨かったらエエやないか。しかし、奈良漬けで焼き飯かいな……肉も魚も使うてへんし、こら御山の典座にええかも知れへんな。あ、ところでな、あのカラクリの仕組みが大まかに分かった。みんな聞いてくれるか。」


 真魚さんがそういうと、みんな焼き飯の皿をもって集まってくる。

「ほんで真魚よ、仕組みっちゅうのは?」おっちゃんが言うと、アレ君がパソコンの画面で簡単な図解をみせる。


「四天王寺で、蟲毒(こどく)の話さしたべ?人間の負の感情を刺激するって。花奈ちゃがさせられたのはそれだべ。人間は、若ぇ方が元気でエネルギーもあっけど、敵さ使うのは呪いでねが?呪いに霊的な力さ込めるには、強い恨みとか恐怖、怒りが必要だべ。でもそういうのは、年寄りの方が強いべ。変換が楽ってのはたぶんそういうことでねが?それで、さっきのパワードスーツのシートの、呪印とトランスだども……」

 そういうと、アレ君はシートの頭の部分の、配線とか電気部品を見せた。


「この呪印、導電体で出来てるべ。それの両端にパワーデバイスやらコンデンサやらついてで、たぶんだけど、人間から吸い上げたエネルギーで電流の増幅が出来るんでねが?あと、同じ原理で、電力を呪力にして結界はったりする部品もあったべ。詳しいことさ、式神使って回路やプログラムを調べねばならねっけど。」


 どういうこと?ウチが訊くと真魚さんがいう。

「おれは、これが敵の技術の基本的な考えやと思う。奴らは、人間の霊的エネルギーを電気にしたり、逆に電気を霊的エネルギーに変えたりできるんや。ほんでそれは、人の負のエネルギーの方がやりやすい。そう考えると、アミノ酸合成で作った人造人間ホムンクルスに呪力を流し込んで偽りの神にするのも、皆が石清水で見たポリゴンみたいな邪霊の群れ……魔軍も、ほんでこのパワードスーツ共も、全部同じ技術の系統や。

 ほんで、こんなことを思いつくやつは、間違いなく外道も外道、ド外道や。」


「ま、外道ってのは仕方ね。悪い奴は何処にでもいるもんだべ。ただ、問題は、敵が金烏玉兎集(きんうぎょくとしゅう)さ書いであるごど、相当理解して現代のテクノロジーと融合させてるってことだべ。こら、こっちも頑張んねと負けるべ。たしか、小角のじっちゃが、大峰山にもITチームがいるっで言ってたべ?高野山、四天王寺、大峰山の合同チームで、急いでシステム開発さすべ。あと、技術だけじゃいげね。人間も、修羅も、神さん達も頑張らねば。十兵衛さ、手練れの天津軍にアンダの「空の利剣」さ教えてやってくんろ。」


「お、おいアレ坊、一気に言いよったけど、人間も神も頑張るっちゅんはどういうこっちゃ?」おっちゃんがそういうと、アレ君はしんぺーアプリを見せた。


「敵が、人間の負のエネルギーさ吸い取るってんなら、こっちは人間と神さんが力合わせるだ。天津軍ってのは霊界の兵士だはんで、現世のもの、例えばあのパワードスーツとか倒せね。だども、人間が召喚すれば現世でも力を使えるべ。それが『しんぺー』だべ。でも真の力さ発揮するには、人が天津軍と心を一つにせねば!」


「そういうことや。アレ坊はな、高野山で密教の神髄を一瞬で理解しよった!コイツはホンマの天才や!この『しんぺー』はな、人の仏性を触媒にして絆を結んだ天津軍に曼陀羅の力を注ぎ込む。それが、軍たち自身の魂魄を開いて空の悟りに至らせる。もし十兵衛が多くの霊界の剣士たちに『空の利剣』の奥義を伝えてくれたら、ほんで、四天王寺や、大峰修験、石清水の神職や氏子が、剣士たちの召喚者となってくれたら、たかが恨みで作った呪いの力なんぞ、畏れるに足らん!」

 真魚さんがそういうと、ガム新さんも、十兵衛さんも、田島も、アレ君も、そして、太子のおっちゃんも大きく頷いた。


「まぁ、これで敵の狙いも、その力も、ワシがするべきことも分かってきた。先を急ごやないか。ちょっと日も傾きかけとるけど、今日の内に出発しょう。」

 おっちゃんがそう言ったとき、家の外で茅乃輪(ちのわ)が開いて、「ごめんくださーい」と声がした。


「太子はん、真魚、どうも大変なようやな。あ、オオヤマツミはん、石長比売(いわながひめ)はん、ご無沙汰でございます……ワシも全国の修験と鬼のネットワークで調べて見たけど、まぁまぁアホなことを考えよるもんやで。」


小角(おづね)のおっちゃん!」ウチが言うと、小角さんはニコニコしながら、家の土間に入ってきた。

「おぉ、夏菜子ちゃんか……ようやっと自分の使命が分かったみたいやな。これからはアンタが切り札やで?きばりや。」

 ウチが「どういうこと?」って聞くと、小角のおっちゃんは「まぁ、それは道々な」とだけ言った。


「太子はん、見たところ、天津軍が二人しかおらんでは、夏菜子ちゃんと美紗ちゃんを護るんは難しい。ウチの鬼どもを付けるさかい、気を付けて行ってきなはれ。ちょうど今から黄昏時や。ワシらにとっては都合がええ。人間どもも容易に手出しは出来へんやろ。ほんで、石長比売はん、大山津見神(おおやまつみのかみ)はん、あんたらは、夏菜子ちゃんの身内や。当然敵が狙うてくる。護衛としてウチの手練れを置かさしてもらいまっせ。よろしな?」


「え?小角のおっちゃんは一緒に来てくれへんの?」ウチが訊くと、小角さんは首を振った。

「すまんの、夏菜子ちゃん……正直、ワシかてアンタらと太子はんだけで行かせたくない。せやけど、今はなるべく、連中の裏を探らなアカン。道真(みちざね)(あやかし)の一党も協力してくれとるが、ことはこの国の政財界にも及んどって根が深い……その代わり、飛び切りの腕利きを呼んだ。コイツを連れて行きなさい。永倉くん、君はいったん石清水に帰ったほうがええ。」


 小角さんがそういうと、ガム新さんは「そいつはちょっと……」って言ったけど、出てきた人を見て固まった。

「この男は鬼一法眼(きいちほうげん)。京八流の祖にして、ワシら修験の技を剣術に高めた奴や。コイツと十兵衛殿やったら遅れはとらんやろ。」


 その人をみて、太子のおっちゃんも、真魚さん、十兵衛さんも、同意したように頷く。

 お祖母ちゃんが、「気を付けや」と言ってくれたけど、もうウチも腹が決まった。


「よっしゃ。ほなおっちゃん、真魚さん、アレ君、田島、談山神社に行くで。これはもう、神さん達だけの戦いやない。ウチら、この国に生きとる者みんなの戦いや。」


第54話、いかがだったでしょうか。

今回はついに、敵のシステム「パワードスーツの悪辣なカラクリ」が明らかになりました。オカルト×現代テクノロジーの最悪の融合……。これにどうやって対抗するか?それが、アレ君と真魚さんという天才コンビのこれからの仕事です。


そして、料理が苦手なはずの田島美紗が、なぜか常世のカマドで完璧な「奈良漬けチャーハン」を作ってしまうという謎の現象……花奈ちゃんの「女神様みたい」「いい匂い」という言葉の真意とは……?


新キャラの最強剣士「鬼一法眼」も加わり、いよいよ物語は談山神社へと向かいます!夏菜子の「誰も見捨てない」覚悟がどう道を切り開くのか、次回第55話もぜひお楽しみに!

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