第53話: 必殺技が炸裂や!って思ったら、めっちゃ可愛かったり、めっちゃ腹立ったりして、ウチ忙しい!
「ふっ!我らを攻撃すると同時に通信とやらを送るつもりか!そうはさせぬ!ガム新、我が新陰流の『空』の太刀筋に、其方の神道無念流の『火』の太刀筋を乗せよ!」
「なんだって!ええい、ままよ!五加の太刀!」ガム新さんが叫ぶと、上段に振りかぶった太刀から青い炎が空を突くほどに噴きあがる!
「うむ!初めてにしては重畳!ならば参る!神妙剣!」
十兵衛さんが、太刀を晴眼に構えると、澄んだ音が響いて空間が鳴動した!
「ゆくぞ!共鳴奥義!!『虚空炎斬剣』!!!」
二人が同時に太刀を振り下ろした瞬間!
弧を描いて、銀色の軌跡と青い軌跡が絡み合いながら大きな光の刃になった!
それが、空間そのものを真っ二つに斬り裂くと、裂け目(虚)に、青い炎が流れ込み一瞬で焼き尽くしていった!
「すご……なにあれ?」ウチがびっくりしてポカーンってしてると、真魚さんが教えてくれた。
「凄まじいな……十兵衛の次元を斬る剣と、ガム新の全てを焼き尽くす炎が合わさって、敵のカラクリ人形だけやのうて、呪力結界と通信網さえも切り裂き、焼き尽くしていくんや。見てみぃ、あんだけおった敵の人形が跡形もなく焼き尽くされていきよる。あんなかには人間もおったやろうに……アホなやつらや。」
「誠よな……人の身で常世に入り、神仏に刃を向ければ阿鼻地獄は免れ得ぬ……まして、我ら天津軍の器物で霊核を焼き尽くされれば、輪廻転生すら叶わず、魂が消滅すると言うに……おや?此奴は息があるようじゃな?弘法大師様!ひとつ此奴を問い糾しては如何じゃ?」
十兵衛さんが指す方を見ると、十兵衛さんが斬った一体のハッチが開いて、中からパイロットみたいな人が投げ出されて出てきた。
そのパイロットがヘルメットを脱ぐと、めっちゃびっくりなことに、高校生くらいのおかっぱ頭の女の子やった。
お兄ちゃんとこの甥っ子よりは年上やけど、ウチから見たらまだほんの子供や……なんでこんな危ない兵器に……。
その子は、地面に尻餅をついたまま、ぼうっとした顔で、周りを見廻した。
「あ、あの……ここってどこですか?お姉さんたちは誰ですか?」
「えと……ここは畝火山口神社やけど……アンタ、自分がどこにおるか分からんのか?」ウチがそう言うと、その子は辺りを見て、一刀両断されたパワードスーツと、そこから流れる赤い血、そして丸焦げになった残骸と、何かが焼ける匂いを嗅いでブルブル震えだした。
「え?なにこれ?……ボク、こんなの聞いてない……」女の子は、両手で胸を押さえ、縮こまって俯くとポロポロ泣き出した。
「ちょっと!アンタ、どうしたんや!?なんでこんなことになってんの!?」
ウチが駆け寄って、その子を抱きしめると、女の子は胸にしがみついて来てわんわん泣きだす。
「こ、怖い!怖いよぉ!ママ!ママぁ!」
「こら一体どういうこっちゃ?……夏菜子、これでは訳がわからん。とりあえずその子に茶でも飲まして、落ち着かそやないか。十兵衛、ガム新、他に敵はおるか?」
おっちゃんが訊くと、二人は首を振る。
「太子様、このカラクリ人形はこれで全てじゃ。外の現世にも隠れておらぬようだし。銀次郎殿、周辺にはおらぬか?」十兵衛さんの問いに、アレ君がパソコンの画面を確認する。
「大事ねぇべ。式神さ飛ばして確認したども、どうもあのパワードスーツさ下ろしたトラックは、そのまま逃げでったみてだべ。だども、この場所さ分がって襲って来だのは良ぐね。オラ、金烏玉兎集さ応用して、敵の位置さ分がるアプリ作ったども、相手も同じごどできるべ。」
「なにそれ?めっちゃヤバイじゃん?」田島が言うと、太子のおっちゃんは溜息をついた。
「ま、それも含めて、ちょっと考え方を変えなあかんな。のんびりしてる間もなさそうや。」
◆
「はいこれ……」なぜか、お祖母ちゃん家にココアがあったから、ウチはそれに砂糖を多めにして、女の子に入れて上げた。
「あ、はい……あ、あのお姉さん、すみません……震えが……」その子はココアを受け取ると、不安そうな顔をして見上げてきた。まだ目に涙がいっぱい溜まってる。
「大丈夫やで、酷いことせぇへんからゆっくり飲みや。背中ポンポンしたろか?」
ウチがそう言って、その子を抱きしめて背中をポンポンって叩くと、その子はちょっと安心したみたいで、ウチにもたれてきた。
「ほな、ちょっと落ち着いたみたいやし、その嬢ちゃんに話聞こか?なぁお嬢ちゃん……って、痛っ!夏菜子ちゃん、何すんねん!」
真魚さんがいきなりその子の前に髭面出してきて質問しようとしたから、ウチは真魚さんの肩を思いっきり叩いた。
「真魚さん!なに言うてんの!まだこの子泣いてるやん!ココアくらい飲ましたりぃや!そんなんやから女にモテへんねん!」
そしたら、女の子はキョトンてなって、その後でケラケラ笑い出した。
「ウケる……お姉さん、すっごく強いんですね。えと、お姉さんお名前……」
「ウチ?ウチは……」
「夏菜子さ、スパイかも知れねのにこっちの情報さいうのは……モガモガ!太子様、何すだ!」
ウチが名前を言うのを止めようとするアレ君の口を、太子のおっちゃんが塞いだ。
「えーと、おっちゃん、大丈夫なん?」
「ワシは、女人の力を信じてこの国を変えようとしてきた。その大元である石長比売はんの力が、オマエの中にはいっちゃん強く受け継がれとるんやろ?ほったらお前に任せるんがいちばんやと、ワシは思う。」
おっちゃんがそう言うと、お祖母ちゃん、石長比売さんがニッコリ笑った。
「さすがウマヤド様、かっこええこと言わはるわ。なぁお父はん。」そしたら、隣に座ってる大山津見神、ひいお爺ちゃんも大きく頷いた。
「ほんまに、この国の黎明がウマくんやったら全然違うとったやろな。」そう言われて、おっちゃんは苦笑した。
「まぁ、人も神もどいつもこいつも、とかく男っちゅうもんが噓八百でこの国をズダボロにしてきたんや。多少はカッコ良うせなあきませんわ。まぁこの子の世話は夏菜子に任して、アレ君、ワシらはあのカラクリを調べた方がええやろ。真魚、小角はんと連絡付かへんか?ホンマにアイツらがワシらの位置分かっとるんやったら、第2陣、3陣が来てもおかしない。今回はたまたま十兵衛の力が計算外だっただけや。」
おっちゃんはそういうと、アレ君、真魚さんと、パワードスーツの残骸を調べ始めた。
「あの……あの人たち誰なんですか?……神様ってどういうこと?それにここ、なんか変です。空気がキラキラ光ってて、昼間なのに空に星が光ってて……」
女の子が、不思議そうにあたりをキョロキョロ見廻した。
「え?アンタ、ひょっとしてここがどこか知らんと来たんか?あ、ごめん、ウチは小路夏菜子って言うねん。アンタはなんちゅうの?」
そう言うと、女の子はちょっと怯えた感じになる。
「え、あの、ボクは貴崎花奈って言います……あの、ゴメンナサイ、お姉さん怒ってますか?」
あ、怖がらしてもうた。アカンアカン……気をつけんと。このくらいの年の子は敏感やねん……しかし、可愛い!めっちゃ可愛い!なんやボクって!?萌えるでしかし!
「いやいや!怒ってないで、大丈夫やからね……いやその、花奈ちゃんはここがどこか、知らんと来たみたいやなーって思って。っていうか、花奈ちゃんの家は何処なん?関西の子とちゃうね?」
うちがそういうと、花奈ちゃんは三角座りになって、身体を小さくした。
「あの、ボク神奈川の施設に居て……でもそこが経営難?とかだから、出なきゃいけなくて……でも、どうして良いか分かんなくて。そしたら、黒い背広来た人が、住むところもあってお金もくれるって……」
聞いた瞬間、ウチは頭が沸騰しそうになった。隣で聞いてる田島の顔が、みるみる真っ赤になってく。
「マジかよ……クソがっ!行き場のない女の子を騙してんのかよ!許せねぇ!あーしが今すぐそいつら……」
ウチは、いきなり立ち上がった田島を引き留めて何とか落ち着かせたけど、そうやなかったらウチがブチ切れてたと思う。
「待て待て、田島、今怒るところやないって。花奈ちゃん怖がらすだけや。せやけど、黒い背広のやつって……あっ!饒速日さんが言うてた!」
「え、あの、夏菜子さん、どうしたの?ニギハヤヒさんって?」ウチがいきなり大きい声出したから、花奈ちゃんの眼が真ん丸になった。アカン、そんな顔も可愛い。話が進まへん。
たぶん高校生の花奈ちゃんは、背はウチより低いから150㎝くらい?ほっそりしてて色白、黒髪のおかっぱ頭、丸顔で大きな目はちょっと切れ長。色黒ぽっちゃりドワーフのウチとはえらい違いや。
ええわ~、これで一人称がボクやで?可愛い以外の何があんねん!こんな妹欲しい。多分毎日お弁当作れる。
いや!今はそんなこと言うてる場合ちゃう!
「あの、花奈ちゃん。その背広の人ってどんな人?覚えてる?」尋ねると、花奈ちゃんは首を傾げた。アカンって!
「えーと、男の人で、顔が……あれれ?分かんないです。忘れたとかじゃなくて、雰囲気とか顔の感じも、何も思い出せないです……」
ビンゴや……饒速日さんがいってた黒い背広の男、そいつは何か、怪しげな呪術を使ってるんとちゃうか?
「ほんで花奈ちゃん、どこにいったんやろ?覚えてる?」でも、花奈ちゃんは「ううん」って言った。
「なんか、窓のない車に乗せられて、5時間くらいしたところで、降ろされて、そしたら、山の中みたいなところの病院っぽいところで……」
「病院?」ウチが訊くと、花奈ちゃんはブルブル震えだす。
「なんか……変なところでした。ボクたちは、6人で一部屋に入れられて、ご飯とお風呂もちゃんとあるけど、変な注射されるの。あと、Xの嫌な感じの投稿とか、コメント見せられて、ヘッドギアみたいなの付けさせられて……時々夜中に、『アァッ!』って叫び声がして。同じ部屋の子が、動かなくなるの。そしたらその子、どこかに連れていかれて……それっきりで……」
どういうこっちゃ?Xの投稿?ヘッドギアって?そんなことを思ってると、おっちゃんと真魚さん、アレ君が戻ってくる。
「どうやった?」ウチが訊くと、アレ君が眉間に皺の寄った険しい顔で応える。
「あのパワードスーツ、操縦桿も何もねぇべ。頭の後ろのところに、呪印と変わった形のトランスさあるだけだべ。」
アレ君がそう言って、シートの頭のところの部品を放り投げる。そこには、格子状の模様が印刷されてた。
え?それってどういうこと?ウチが不思議に思ってると、真魚さんが続けて言うた。
「これはセーマンドーマンっていう呪印や。これで人の精気を吸い取っとるんやろ。ほんで、操作はAIとちゃうか?操縦桿がないのはそういうこっちゃろ。人間は、ただの生きた電池ちゅうこっちゃな。」
お付き合いいただきありがとうございます。
十兵衛とガム新の共鳴奥義、いかがだったでしょうか? そして今回明かされた、敵のパワードスーツの恐るべき動力源。
呪符のようなオカルトを、SNSやAIといった「現代のテクノロジー」と合体させているのが敵のやり方です。
人の「魂」を消費する最悪の兵器に対し、神仏との「絆(共鳴)」で戦う夏菜子たちはどう立ち向かうのか。いよいよ反撃の準備が始まります!
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