第52話: 十兵衛さんはラッパーもどきの変なオッチャンとちゃうかった!『見よ!空の利剣!』やって。
「敵やって!え、何人くらいおるん?どうしよ!今ガム新さんと十兵衛さんしかおらへんやん!お祖母ちゃん、ひい爺ちゃん、どっかに隠れて!アイツらの武器、神様でも傷つけられるねん!」
ウチが慌てて皆を立たせて、隠れる場所を探そうとすると、アレ君が「そっだら慌でなぐで良いべ」って言うた。
「アレ君、何言うてんの?こっちで戦えるのって二人しかおらへんねんで?それに、石清水で見たあの兵器がいっぱい出てきたらなんぼガム新さんでも……」
ウチがそう言うと、アレ君が自分のスマホを取り出して、傍に座ってる十兵衛さんに声をかける。
「十兵衛さ、良が?」すると、十兵衛さんは、無言のまま小さく笑って立ち上がる。
「承知!銀次郎殿、今こそ仕れ!我が柳生新陰流、存分に馳走してくれようぞ!」
「よし!せば召喚するべ!南無十兵衛来臨守護急々如律令!」
アレ君が、スマホアプリのアイコンをタップすると、十兵衛さんの周りを光る五芒星が包み、次に唱えた真言で、白く光る無数の文字コードが螺旋状に走って人の形を作っていく!
目を開けると、銀色の光の粒子に包まれた十兵衛さんが立っていた。
「ふ…‥ふはは……これはたいしたものだ。銀次郎殿、高野山で鍛錬した甲斐があったな。これならあれらが如き、人間どもの木偶人形になど負けはせぬ……」
それを見てたガム新さんが呆然ってなってる。
「ガム新さん、どないしたん?石清水でガム新さんもあんな風になってたやん?」
せやけど、ガム新さんは「そうじゃねぇ!」って首をブンブン振る。
「静かすぎるぜ……どういうこった?神兵召喚ってな、ものすごく力が漲ってるもんじゃねぇのか?オレだけじゃなくて、総司も半次郎の旦那もそうだったが……まるで、十兵衛殿の周りだけ、時間が停まってるみてぇじゃねぇか……」
「ガム新、ぼうっとしている暇はないぞ?あれなるを見よ。」十兵衛さんが指す方を見ると、家の前の神社の参道……といっても、常世の参道やけど、その上に大きな裂け目が出来て、その向こうに現世の風景が見える。ほんで、そっから石清水で見た人型の兵器がいっぱい入ってきた!
理沙ちゃんが、強化外骨格とか、パワードスーツって言うてた奴や。
「わわ!いっぱいおるで!いちにいさん……10個くらい出てきたけど、ガム新さん、大丈夫?」
「いやいや、そんなこと言ってる場合じゃねぇって!早く召喚してくんな!」
ガム新さんが急かすんで、ウチはスマホの「しんぺー」アプリに出てきたガム新さんのアイコンをタップした。
赤い五芒星がガム新さんを包み、真言を唱えると、赤い炎に包まれたガム新さんが現れる。
「お、おぉ?なんだこりゃ?前と随分ちがってるじゃねぇか……夏菜子ちゃん、なんかしたかい?」
「えぇ?ウチは何もしてないで?ガム新さん、こっそり修行してたんとちゃうん?」
「いや別にそんなこたぁしちゃいねぇが……まぁでも、前より力は増してる感じはするが……ってそんなこたぁどうでもいい!十兵衛さん、どうするよ!」
でも十兵衛さんが慌てる風もなく、鉄扇で敵の方を指すと、こない言うた。
「ガム新、いささか其方の剣が見てみたい。まずは、二つ三つ、片付けてみよ。」
十兵衛さんがそう言うと、ガム新さんが、
「おっ、そんなこと言って良いんですかい?この神兵召喚はすげぇんですぜ?あんな奴らは一刀両断……では、神道無念流、永倉新八、いっちょ行きますぜ!」
ガム新さんは、そう言うと背中まで太刀を振りかぶって、一番先頭のパワードスーツに肉薄し、燃え盛る刃を叩きつける!……瞬く間に敵は爆発!……って思ったら、パワードスーツの腕が一本吹き飛んでヨロヨロってなったくらいで、そいつは体制を立て直すと機銃を撃ってきた!
「うわっ!痛ててっ!こんにゃろう!やりやがったな!にしてもおかしいな。別に力を出し惜しみしたわけじゃねぇのに。なんだかあの人形の周りに綿布団でもあって、力が逃げちまうみてぇだ。どうなってやがる?」
ほいたら、アレ君がパソコンの画面をみてこう言う。
「ガム新さ、十兵衛さ、アイツらの廻りさ呪力で作った結界あるべ。呪力波動の共振効果さ用いて物理的な力さ、磁石みてぇに弾くだ。いっぐらガム新さん、力任せに殴っだっでそれだけじゃ中々効がね。十兵衛さ、どうすべ?」
せやけど、十兵衛さんはちょっとも慌てんと、すっと右手の親指を太刀の柄に掛けると、不敵に嗤って敵に向かって歩を進める。
「ガム新、はや打たんとするばかりなれば己も見えず相手も見えず。己の拍子狂いたる上に、相手の虚実見えなば、百戦に百勝とは参らぬぞ?疾く見ておれ。」
十兵衛さんはそういうと、ゆっくり、悠然と、敵のパワードスーツに向かって歩き始めた!?えっ!ヤバいって!銃で蜂の巣みたいにされるで!
せやけど、敵がどれだけ銃で撃ってきても、十兵衛さんに全然弾が当たれへん?っていうか、なんか十兵衛さんの姿が幻みたいで、ユラユラ動いてどこにおるのかよう分からん。ウチは何回も目をこすったけど、まるで幽霊みたいに動いて相手に近づいていくと、手元だけが動いて「カチッ」って言う音がする…‥
それで、十兵衛さんはそのまま別のパワードスーツに向かって歩き出すけど、それを追いかけようとそのパワードスーツが振り返った時!
そいつの上半身と下半身がズッとずれて、そのまま滑るように上半身だけ地面に落ち、どうっと倒れた!
「ゲッ!げぇぇ!なんだありゃ!」
ビックリするガム新さん、でも十兵衛さんはニヤッて笑うと、ガム新さんに語り掛ける。
「この結界、此方の力が乗らんとする刹那に呪を当て、此方の力を弾くなり。されば、いつ此方の力乗るか知らざれば、呪は集めることも当てることも能わぬ道理。力、躰に備わらば、ただそれ当たるるばかりなり。当たらば即ち斬るる倣い。ガム新、ゆめ、忘るまいぞ。」
けど、言われたガム新さんの方は、口をパクパクさせてた。
「いつ抜いたんだ……?っていうか、抜いて当てただけで斬れたってのか?これが柳生新陰流かよ……」
「なにガム新さん、そんなすごいん?なんか、幽霊が歩いてるみたいで、ゆっくり動いてるみたいやのに、十兵衛さんがどこにおるんか分からへん感じやけど?」
ウチがそう言うと、ガム新さんはウーンて唸った。
「いや、なんて言うんだ……アレを見ちまうと、オレらの剣法は力止まりってことじゃねぇか?なにをどうやったら……」
十兵衛さんはその間にも、敵を1体、また1体と両断しながら、ガム新さんに声を掛けた。
「ガム新、闘いの最中に何を思案しておる!敵は待ってはくれぬぞ?そんなに不可思議なら、先ず太刀を振りかぶるときに、背中の力を抜いてスッと伸ばすようにして見よ!太刀を落とす時も、自ずと落ちるようにするのだ。間違っても斬ろうと思って振り下ろすのではないぞ、よいな!?」
「いや……なんだか良く分からねぇが、見せれちまったら否も応もねぇ!やってみますぜ!」
そう言うとガム新さんは気を取り直して太刀を真ん中(晴眼って言うんやって!)に構えて、ふぅって息を吐いた。
そしたら、太刀先の炎が赤から青に変わる。
で!ガム新さんが十兵衛さんからレクチャーを受けてる間にも、敵のパワードスーツがどんどん迫って来て、銃を撃ってきた!
「え?ガム新さん?」気が付くと、そこにはガム新さんがいなくて、10mくらいの距離を一瞬で詰めると、いつの間にか太刀が振り下ろされていて……
パワードスーツにパックリと切れ目が入ったと思ったら、そこから炎が上がってパワードスーツが瞬く間に炎上した!
「やった!できましたぜ!十兵衛殿!」すると、十兵衛さんニヤッて笑う。
「フッ、今の一合で理合を掴んだ様じゃな……然り、それこそが斬ると想わずして斬るという事、力ありて太刀筋合えば自ずと斬れるもの。其方に斬らんと思う意無くば、敵の呪は働かぬ。これぞ空の利剣なり!」
でも、アレ君がパソコンの画面を食い入るように見て叫ぶ!
「十兵衛さ!こいづら二人の戦闘データさ取るのが目的だべ!呪力通信さ傍受したべ!一気に潰してけれ!」
「なんと!小賢しき真似を……ならばアレを仕ろう……銀次郎殿!共鳴召喚じゃ!あれなら報せを送る間もなく、空間ごと一気に砕けよう!」
「分がったべ!夏菜子さ、スマホの『共鳴召喚』のアイコン、ぽちっとするべ!」
「えっ!?わ、わかった!」
ウチが慌ててスマホの画面を見ると、ガム新さんのアイコンの横に、今まで見たことない光るボタンが出現してる!「よっしゃ!ポチッとな!」
すると、画面にブワァッ!って古代文字みたいなんが表示された!
画面にはこんな風に書いてある。
『詠唱してください!ひふみ よいむなや こともちろらね しきる ゆゐつわぬ そをたはくめか うおえ にさりへて のますあせゑほれけ 布留部 由良由良止 布留部』
「え!なにこれ!む、難しい!」ウチが言うと、アレ君が後ろからウチのスマホを持った。え!?このタイミングで!?ちょっと恥ずかしいやん!
「夏菜子さ!大丈夫だべ!オラも一緒に詠唱するべ!」
「え!?あ、うん!分かった!」
ウチとアレ君は、声を合わせてその祝詞を叫んだ!
「ひふみ よいむなや こともちろらね しきる ゆゐつわぬ そをたはくめか うおえ にさりへて のますあせゑほれけ 布留部 由良由良止 布留部(ふるべ ゆらゆらと ふるべ)!!」
詠唱が終わった瞬間、十兵衛さんとガム新さんの身体から、ものすごい氣が吹き上がる!
「おおおっ……!なんじゃこりゃ!?」
アレ君がスマホの画面が見ながら叫んだ。
「成功だべ!4人の意識さシンクロして、阿頼耶識が解放されてくべ!」
気がつくと、ウチの体から光の粒々が流れ出てガム新さんの身体に流れ込んでいく……
アレ君からも、光の粒々が出て来て十兵衛さんの身体に流れ込んでいった。
さらに、ガム新さんから青い炎が吹き出し、十兵衛さんからは銀色の光が吹き出して、螺旋を描いて一つに混ざり合っていく!
その間に、残りの6体のパワードスーツがウチらの方に銃口を向け、最大出力で呪力結界を張って迫ってきた!
どうしよ!間に合うかな!?
お読みいただきありがとうございます!
十兵衛さんの圧倒的な剣の理合い、そしてガム新との共鳴召喚!
科学の産物であるパワードスーツに対して、神道の言霊と仏教の阿頼耶識、そして剣聖の技が激突する、個人的にも書いていて非常に熱い回になりました。
迫り来る敵の最大攻撃の前に、二人の合体奥義は炸裂するのか!?
次回、「空の利剣」の真の力をお見せします!
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