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『左遷先が神域でした。』 ~地方公務員、淡路島へ。神話夫婦のやりなおしが、私の「業務」になりました~  作者: 梛良次郎衛門八房
第五章: よっしゃこれから忙しなるでぇ~って思ったら、要らんタイミングでチャチャ入れるヤツが来よってん。
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第101話: 石清水の戦い 第2幕! 『みんなで知ろう、八幡大菩薩!』⑥ 半次郎さん!ウチはアンタを信じとる!来たれ!南無、天叢雲剣!来臨守護急々如律令!!

「なんちゅうこつば! ヤッどんの狙いは、そんお二人じゃ! いますぐ門の中に入って……!」


「ちゃう!!……半次郎さん。姫も、ウチも、半次郎さんだけに苦しい想いをさせるつもりなんか無い!……姫!!」

 ウチがそう言うと、姫が大きく頷き、ウチの手を握る。


「な、ないをすっとじゃ……」

 半次郎さんがそういうと、姫が叫んだ!


「半次郎!ただいまより、天(あめの)叢雲(むらくもの)剣(つるぎ)の本体を召喚します!いつぞや呼び出したレプリカではありません!今こそ、其方(そなた)に託す!……夏菜子ちゃん、行くよ!ひふみ神事!!」


 それを合図に、ウチと姫は向かい合って両手を重ね、ひふみ神事の祝詞(のりと)を唱和する!


「ひふみ よいむなや こともちろらね しきる ゆゐつわぬ……」

 姫が唱和すると、その身体から黄金色のオーラが立ち上る!


「そをたはくめか うおえ にさりへて のますあせゑほれけ……」

 ウチの身体からは、闇色に星を散りばめたようなオーラが流れ出た!


「布留部 由良由良止 布留部(ふるべ ゆらゆらと ふるべ)!!」

 力強く声を合わせて謳いあげると、二つのオーラが渦巻いて太極を形作る!


「来た!準備はいい?夏菜子ちゃん!」

「よっしゃ!いつでもええで、姫!」


「南無、天叢雲剣!」

「来臨守護急々如律令!!」


 二人で印を結び短く叫ぶと、白い光が天空から舞い降りる!


「こ……こいは!?」


「取りなさい、半次郎!これこそが、真なる破邪の神剣、天叢雲剣!!」


「し、しかし姫様!敵は厄介な結界を持ち、中に人が……!」


「臆するな!この剣は人の命は取らぬ!邪心のみを斬る!いざゆけ!この大八嶋(おおやしま)の昼と夜の女神の剣となれ!」

 白い光の柱の中に、炎みたいに赤く輝く刀身を持った剣があった。


「なんか……まえに饒速日(にぎはやひ)さんの『処刑するんかい、せえへんのかい騒動』があった時に見たやつと全然ちゃうなぁ……なぁ姫、あれがホンマの天叢雲剣なん?」

 ウチが訊くと、姫が無言で頷く。


「夏菜子ちゃん、天叢雲剣っていうのは、ものすごーく古い時代に神々の鍛冶によって鍛えられた、邪悪な神や悪魔を討つための神剣で、正確には『剣の精霊』って言われてるの。それは、現在・過去・未来のあらゆる時代、そしてこの多元宇宙の全ての次元に分身があるんだけど、天叢雲剣はその中でもかなり上位の存在なのね。」


「精霊?……なんのこっちゃ分からんけど、なんでそんな凄いもんが……だいたい半次郎さんに扱えるん?」

 ウチがそう言うと、姫は親指を立ててグッ!ってしながらウィンクした。


「この剣があるのは、人間に自らの選択で世界を切り拓かせるため……むしろ半次郎さんみたいに真っ直ぐな人こそが相応しい!見て……!」


 姫の言う方を見ていると、半次郎さんがその剣の柄に手を伸ばすのが見えた。


「こ、こいは!?……色んな男や女子(おなご)ん記憶が流れ込んできよる!……なんじゃこの白髪の男は……自分の国を焼いとるやと!?……こん色黒の女は……星を丸ごと吹き飛ばしおった……うぅっ! 頭が割れそうじゃ!」


「半次郎さん!」

 頭を抱えてうずくまるのを見て、ウチが飛び出そうとすると、姫がウチを抑えてきた。無言で首を横に振っている。


 そして……彼がゆっくりと立ち上がる……その顔に、一筋の涙が静かに流れていた。


「なんちゅうこつじゃ……おいが西南の役で戦ったこつも、こん『螺旋の修羅』ん一(ひと)つじゃったとは……じゃが、分かった……こいが、未来永劫(みらいえいごう)、おいん運命(さだめ)なら……こうするしかなか!!」


 そう言って、半次郎さんが天叢雲剣をトンボに構えると(ウチもちょっとは分かってきたんやで!)、もんのすごい目でパワードスーツを睨み、轟くような声を張りあげる!


「きぃええぇ――――!!チェストォォォーーー!!!」

 まるで地震みたい八幡宮全体が揺れ、あっちこっちでゴロゴロと雷鳴が轟いた!


「な、なんだ、この男……化け物め!クソッ、こんな連中相手にしてられるか!一斉射撃!そしてその間に対象を確保せよ!」

 6体のパワードスーツのうち、3体が機関銃を撃って来て、残り三体がウチらに迫って来る!


「うわっ!こっち来たで、姫、逃げやんと!」っていうたら、姫がニヤッと笑って扇子を広げ、口元を覆う。

「夏菜子ちゃん、わたくしたちの武士(もののふ)は半次郎さんだけじゃないでしょ?ほら……」


 パワードスーツの腕が伸びる瞬間、

「ガッキィィィン!!」

 大きな音がして、そいつらが仰け反り後退した。


「姫様、すみません遅くなりました!」

「んだこの野郎、姫様とお夏菜さんを掻(か)っ攫(さら)おうなんてふてぇ野郎だ!おいテメェら、この新選組一番隊と二番隊の組長が相手してやるぜ、覚悟しな!」


『ガム新さん、総司さん!いけねぇだ!さっきの駅前の戦いで、神鎧の稼働限界時間使い切っちまったべ!そのまんまでは!』

 アレ君が霊子通信で叫ぶと、総司さんが戦いながら答える。


「半次郎の旦那にあんなもん見せられちまって、オレたちが『鎧が無いから怖くて闘えません』ってわけにいかんでしょう!旦那!こっちはオレたちに任せてアンタはそいつを振るいな!あんたら薩摩武士の言う『敬天愛人』ってのをぶっつけて下さいよ!」


「クソ!次から次へと妙なコスプレ野郎が出てきやがって……!」

 いちばん前におる、赤いパワードスーツから甲高い悲鳴が聞こえてきた……たぶん乗せられてる人が魂を吸い上げられて苦しんでるんや!


 そいつが大きな剣を振るって襲ってくるのを、総司さんは巧みにかわし、撃ってくる弾はガム新さんが叩き落してウチらを守ってる!


「くっそ~!かってぇなぁー!」

 苦戦するガム新さん。せやけど、神鎧が無い上に、召喚者である田島と理沙ちゃんがこの場におらんから、共鳴召喚も使えへん!だんだんと押し込まれてくる!


「ふふ!もう少しだ!もう少しで俺たちのメシアを孕ませる女が手に入る!」

 うっわぁ~……この赤いパワードスーツ乗ってるやつ、何言うてるねん。セクハラの上にキモイし。


「半次郎!まだかい!もう俺も総司も持たねぇぜ!!」

 ガム新さんがそう言った瞬間、半次郎さんがカッと目を見開いた!


「南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏……」一気に半次郎さんの気が高まり、天叢雲剣の刀身が虹のような五色の光を放つ!

「参る!!桜獄(おうがく)地雷閃(じらいせん)!!」


 凄まじい速度で走り抜けながら剣を振るうと、そこから放たれた五色の光が、6体のパワードスーツを貫く!そのむっちゃ大きいエネルギーの奔流が八幡宮の参道に溢れ、空間に裂け目が出来た!


 次の瞬間……

「ぐっ!!ぎぃやあぁぁぁーーー!?いたいっ!痛いぃっーーー!!」


 ぜんぶのパワードスーツからケダモノみたいな悲鳴があがり、ロボットの腕が苦しそうに空を搔きむしって崩れ落ちる!


「なんだこりゃ?半次郎さんよ!いってぇ何をしたんでぇ!?」

 ガム新さんがそういうと、半次郎さんは静かに天叢雲剣を鞘に納めて言った。


「この剣ン力が流れ込んじょった時、あの『ぱわーどすーつ』のなかに、白い魂みたいなもんと、黒い呪いのごたるもんが見えた……おいはそいを斬ったと」


「黒い呪い?そいつはいったい……」

 総司さんが言う間も、そいつらは、苦しそうに喚き散らし、手足をジタバタさせてたけど……


「痛い、痛い……ちくしょう、母さん、もっと俺のことを見てくれよ……父さん、どうして出て行ったんだよ……痛い、痛い、いた……」

 なんか、よう分からんこと言うと、ソイツはパッタリ動かなくなった。


 ◆


「あぁ!……妾(わらわ)の愛するこの八幡宮が!いたるところ弾痕だらけになってしまって……何と悲しや、およよ……じゃが!これでこの八幡宮の!妾に仕える宮司や巫女、氏子の皆を守れた!この日ノ本の神として、かほどに嬉しきことなし!この動画を見ておる我が子らよ!このようにして思い通りにならぬものを力づくで消し去ろうとするのが、Homines creavit corp.と、その首魁アーロン・ベン・ハイムじゃ!……皆も気を付けねばならんぞ!」


 なんや?なんか鎧姿の八幡さんが、オーバーアクションでウソ泣きしたり、両手を合わせて嬉し涙を流したりしてるで。なんか、へんなイントネーションの標準語やし……


「八幡さん、なにキショイ標準語なんか喋ってんの?八幡さんは河内(かわち)弁しか喋られへんやん、変にカッコつけても恥かくで?」

 っていうと、理沙ちゃんが慌てて飛び出してきてウチの口を塞ぐ。


(ちょっとちょっと!!生配信中ですのよ!石清水を襲った邪悪な敵を退けて、感動のシーンを撮影しているのに!!)


(なんや、芝居かいな。それにしても、八幡さんは芝居が下手くそや。いや、下手くそって言うより、ぜんぜんキャラでもなんでもないことしようとするから嘘っぽいねん。)

 ウチが小声でそういうと、理沙ちゃんもウーンて唸った。


「仕方ないではありませんか……お方様がどーしてもああいうのがしたいっ!て仰るんですから……あ、それよりも、夏菜子さんもなんか喋ってくださいよ。ほら、姫様がお話になっている間に。」


 そう言われて姫の方を見ると、こっちもなんか芝居っぽいことを喋ってる。せやけどさすが姫やなぁ~こういう時に、この国の神様の女王っぽく振舞うコツ分かってるんやんね。


「斯様(かよう)に……歴史ある神の社を傷つけるとは……この動画を見ている皆さん、よくお考えなさい。あのアーロンという者が言っていましたね?『ただの偶像だろ?』とか、『自分たちの神だけが唯一の正しい神だ』とか……そのような浅ましい考えを持つと、あのようになるのですよ……」


 そう言って扇子をパッと開くと、一瞬口元を覆ってパッと両腕を開きその場で一回転する。

 そしたら、夏やのに桜の花びらが一面に舞った。


「すっご~姫はやっぱり見せ方が分かってるなぁ~コメ欄すごいで。なんか、アマテラスさま、超ラブとか書いてる人おるし。しかもこれ、女の子ちゃう?」


「ええまぁそうですね。まあでも、そんなの良いので夏菜子さんも女神らしく決め台詞を決めポーズで言ってください!」

 え、ちょっと待って。なんか既にカメラがこっち向いてるし。理沙ちゃん容赦なさ過ぎへん!?


(いーんですよ!夏菜子さんは等身大の河内弁で喋るのが可愛いって、みんな書き込んでるんだから!)


 ホンマかいなぁ~、まあそれやったら……ウチはそう言うて、とりあえずカメラに向かって手を振る。

「あ、ごめんな~、みんな配信楽しみにしてたのに、怖かったんちゃう?でも、もう大丈夫やで。ウチらのカッコイイお侍さんたちがやっつけてくれたから。ほんで……」


 ウチはそう言いながら、手近な位置にあるパワードスーツのハッチを開けると、人間電池にされてた子どもしか乗ってへん。あれ?あのアーロンって悪もんは?


 第101話、最後までお読みいただきありがとうございます!


 皆さん、どうでしょうか?

 中村半次郎こと、桐野利秋……カッコいいですねぇ~史実的にもカッコいい人らしいんですが、一番最初の淡路島で、姫と夏菜子の護衛として、ガム新・総司・半次郎さんを呼びだした時は、特に誰を持ち上げようとか無かったんですよね。

 

 でも、結果論ですが、おいしいところではけっこう半次郎さんが出てきてます。

 石清水でピンチになって夏菜子たちを助ける時とか、今回みたいに敵を一掃する場面で神剣を授けられるとか。


 そんでもって、アーロンたちを撃破した後で、ちょっとちょっと、八幡さん何言うてますねん。

 いっつもエプロンして、部下の武士たちにムリヤリお好み焼き食わしてばっかりいるので、こういう時にアカンのです。

 で、そんなんに呆れながら夏菜子がパワードスーツを開けてみたら、子どもしかおらんて?いやいや、めっちゃアーロンの声きこえとったやん。どこいきよってん?


 少しでも「半次郎カッコいい!」「夏菜子のツッコミ最高!」「続きが気になる!」と思っていただけましたら、ページ下部にある【☆☆☆☆☆】をポチッと押して応援していただけると、執筆の大きな励みになります! 次回もよろしくお願いします!


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