第100話: 石清水の戦い 第2幕! 『みんなで知ろう、八幡大菩薩!』⑤ なんじゃと?ニューサンノー米軍センターじゃと?そいは合衆国も絡んじょるちゅうこっか?
おいは、配信されちょる動画を見とった。
まこと、理沙どんは恐ろしく頭の切るる女子じゃ。
まるで『星産みの儀』の宣伝じゃと見せかけて、この戦の有様を日の本中に配信しおる。
その一方で、『えすえぬえす』とやらを使うて、実はこの動画が単なる宣伝じゃなく、「異国が日の本を侵略しちょる」という、まことしやかな噂を流すとは。
そうすいば、疑心暗鬼に駆られた民草の心は、裏で糸を引く『神国日本の明日を考える会』への反発へ向かうちゅう寸法か……まこと、篤姫様に勝るとも劣らんほどの女丈夫じゃ……!」
『半次郎様、ご準備、よろしくて?』
おう、噂をすいば影とはこんこと。理沙どんからの霊子通信じゃ。
「むろん、出来ちょいもす。そいにしても、毒ガスを撒こうとしたこつば、Homines creavit corp.の仕業じゃちゅうこて、全部敵ん口から言わせてしまうとは……」
『ふふ……陸軍少将までお勤めになられた半次郎様にお褒めいただくなんて光栄ですわ……とまれ、この動画の要諦は、ただの宣伝とは思えないほどのリアリティがあって、フィクションか現実かの区別がつかないこと。そして、外国の最新鋭の軍隊を神々の軍団が鮮やかに撃破しているのを見せること。この2点です。ですが……』
「わかっちょる。仕上げをせいち言うとじゃろう?任せもんそ。」
『ふふ……さすがは半次郎様!ぜひ、かっこよく決めて下さいましね!』
理沙どんがそう言うと、通信が切れて複数の式鬼が飛んでくっ。こん式鬼どもが、活動写真を撮るちゅうこっか。何とも不思議なからくりじゃのう。
「さて……」
おいは、幕末んころからの愛刀、二尺二寸にすり上げた『盛定』を腰に差すと、本殿の南総門を出て、石畳の参道を進んだ。
◆
「ガシャ……ガシャ……」
何か、からくりの動くごたる音がすっと。目を凝らすと、三ノ鳥居ん方から、前んやりおうたのよりも太てえ(大きい)、禍々しかカラクリ人形が進んできおった。
そいは、参道の石畳を打ち割りもって歩いち来よる。
「どげな罰当たりなヤッじゃ……止まらんか。おはんら、何者じゃ?」
すいと、そんからくり人形……理沙どんが言うとこの『ぱわーどすーつ』ちゅうもんは、腕を広げてせせら笑うごたる仕草をしおる。
「なんだ?この21世紀に第一次世界大戦前の軍服をきたサムライがいるぜ……おいアンタ、そりゃなんのコスプレだい?」
「おいは中村半次郎……またの名を『人斬り半次郎』じゃちいいもす。お方様……八幡大菩薩にお仕えする武士の一人じゃ……」
おいがそう言うと、そいつはゲラゲラと下品な声を上げ、後続のからくり人形に言うた。
「ハンジロウ? 知らんな。俺はアーロン。次代の神を創る男だ。おい聞いたか、八幡大菩薩に仕える武士だって? お前らの神なんぞ、ただの偶像だろ?神とは、俺たちの唯一なる主しかいない!……さぁ、そこをどけ、蜂の巣になりたくなかったらな。それとも自殺願望であるのか?」
は、はは……うははは!……
「こいはまこと面白か…まさに、まさに太子様の言わった通りじゃ!」
おいが腹を抱えて笑うと、そいつは不機嫌そうな声を出しおる。
「おい?何がおかしい……未開人のクセしやがって……」
「おお、すまんすまん…いやいや、仏の教えにはのう、自分だけが正しか、自分だけが特別…そげな心ば貪慾、そして無明ち言う教えがあってのう…おはん知らんか?『人は他人ん中ん塵芥には気がつくっど、自分ん目ん中の柱には気が付かん』て。長崎んキリシタンに聞いた話じゃっどん、おはんは知らんようじゃのう…」
「なんだと……俺たちの前で、あの穢らわしい大工の話をするな!…」
そいつは怒気を孕んだ声で喚き散らすと、剣のごたるもんを振り上げ襲いかかってきよる。
ガッシャアァン!!……
「ほぉ…一撃で石灯籠が斬れちしもうたか…じゃっどん、そいはいかんのう……八幡宮の氏子らが寄進したもんを、そげん粗末にされちゃあのう……」
「だまれ!舐めた口利きやがって!……おいっ!あのコスプレ野郎をさっさと始末しろ!」
いちばん前の『ぱわーどすーつ』、隊長機じゃろうか?頭に飾のごたる角があっせえ、色が他ん機体と違うて赤か色に塗られちょった。
そんヤツが後続機に指示ば出すと、そいどんが一斉に撃ってきおる!
「おいおい……石清水八幡宮は国宝じゃど? ようもそげなこつができっもんじゃのう……」
重機関銃弾じゃろうか? そいつらが辺り構わずメチャクチャに撃ちおるせいで、摂社の社殿や鳥居が穴だらけになっちいく。
「むごか……人のすんこつじゃなか……」
『大丈夫です。修復自体はどうにでもなるそうです。それよりも……』
「なんじゃ理沙どん。いくら常世にある八幡宮ん本体はなンでんなかち言うたて、現世ん境内がこげん傷つけられちゃあ、宮司殿や商店街ん者らが気の毒でならん。」
『ですから、アレクセイさんによると、修復は式鬼を用いればすぐ出来るんですって。なんか、予算はヒルコ様がいくらでも調達できるとかで、さすが商いの神様!……それよりも、この弾痕と弾丸、彼らが国際法を無視して日本国内でテロリズムを働いた何よりの証拠ですわ!でも、あんな挑発に簡単に乗るなんて、敵の隊長はよっぽどバカなのねぇ……』
「いや、挑発んつもりで言うた訳じゃなかがのう?」
そげな話をしちょる間にも、敵はめくらめっぽうに撃ちこんできよる。
おいは、腰を落として身体を縮むっと、腰に差した太刀の鞘を返した。
ガッ!キィィィン……
「な、なんだ?……どうした……お、おい!2号機、応答せよ!……な、なんだ……アイツはどこに行った!」
おいは、左側におった敵機ん後ろに立っちょった。
そいどんがおいに気付き振り返ろうとしたとき、
「ズ……ズズッ……ガシャアァァン!!」
機体の股関節の部分がスッパリ切れて、そんヤツは横倒しに倒おるっ。
『お見事!薬丸示現流の“抜き”ですね!いまの半次郎様の踏み込みでは、相手は目の前から消えたように見えたでしょう。』
「いや、斬った時ん手応えがおかしか。見えん壁に弾かれたごたる……まるで人形ん周りに綿布団のあるごたる感触じゃ……もしや、十兵衛どんが言っとった結界とやらか?」
そん時、アレクセイどんから通信が入った!
『半次郎さ!それら、オラだつが畝傍山と談山神社で戦ったヤツとおんなじだべ!呪力波動の共振効果さ用いて、刀や銃弾を磁石みてぇに弾くヤツだ!剣禅一如さ使わねばなんね!』
「そいはいかん……おいはまだ修練の途中じゃ……敵が一体ならともかく、こげん多うては……」
そん一瞬の躊躇いをついて、敵がまた銃撃してきよる!
「く、クソっ!やれっ!やってしまえ!」
「今は迷いおる時じゃなか!」
敵機が号令した瞬間、太刀を返して蜻蛉に構えた。
「ダッ!」
腰を落として脱兎んごとく駆け抜くっと、走り抜く勢いんまま、二合、三合と太刀を振るうた!
敵ん『ぱわーどすーつ』ん機銃を、腕を斬り飛ばす。じゃっどん、機体を破壊すっには至らん。
呪力ん結界が強うて、胴や頭の部分を斬ろうとすっと、太刀が真綿でくるまれたごつ勢いを失うちしまう。
「難儀じゃな……」
おいが言うと、アレクセイどんが再び通信してきよった。
『こいづはいげね……畝傍山で戦った時より性能が上がってるべ……なんでだ?……』
しばらくすいと、アレクセイどんが「うぅっ」と唸るごたる声がした。
『こさ酷ぇだ……中に人間さ乗ってるが、やっぱり霊力を吸い上げられて生体電池にされてるべ……でもこれは……』
「アレクセイどん、どげんした!」
おいがい戦いもって呼びかけると、彼が怒りに震えた声で答える。
「中ん人間さ、薬物と電気信号で拷問されでるべ……前に見だやつは、機体ん中で陰惨な映像さ見せられでるだけだったども、こいづは酷ぇ……人のやるごどでねぇ。」
なんじゃと……おいは、敵ん隊長機に呼びかけた。
「おはん、そん人形ん中に人を閉じ込めちょっじゃろ? 何んために拷問のごたるこっをしちょる?」
おいが尋ねっと、そんヤッはさも愉快そうにあざ笑いおった。
「なんだ?……この機体のバッテリーのことか?……ふん、身寄りのない難民や行き場のない連中がどうした?生きる価値の無いゴミどもを有効活用してるだけだろ!」
な……なんち?……
『より強ぇ苦しみさ味あわせるごどで、よりおっきな恐怖と憎しみさ抽出し、出力さ稼いでるってごどだか……そん所為で結界の強度が……』
「アレクセイどん、そげなこたぁ、どげんでんよか。」
「どげんでんって……なしただ!? 半次郎さの霊力、メチャクチャ上がってるべ!!」
「結界ん隙間を斬れんち言うなら、押し通るまでじゃ!……神鎧召喚!きたれ、桜花王!!」
太刀の切先で頭上に円を描いて叫ぶと、異次元の扉が開いて鎧が召喚され、そいがおいの身体に装着さるっ!
『待ってけれ半次郎さ!神鎧の装着限界時間さ、3分しかねぇべ!そんな勝算のねぇ状態で!……』
「アレクセイどん!救わねばイカン命があっ時に、そげん悠長なこつば言っとる場合じゃなか!キェェェェーーッ!チェストォォォーーッ!!」
おいは鋭く猿叫を挙げっと、裂帛の気合を込めち敵の機体へ斬りかかる!
(くっ!またこん真綿のごたる感触か!……じゃっどん!)
そこからさらに一歩踏み込み、神鎧の羽根を展開して、全身の力を太刀に乗せっと、真綿のごたる感覚が弾けて、深々と頭部ん装甲に食い込み、そいを斬り飛ばす!
そん時じゃ!
「ドガガガッ!!……」
残りん敵が、味方もろともおいめがけて銃撃してきおった!!
おいはとっさに羽根で身を覆うて銃弾を弾くが、そん『ぱわーどすーつ』はたちまちハチの巣になっちしまう。
「どげな惨いこつば……こいじゃあ、中におる者も生きちゃおらんじゃろう……」
『ちょっとここまで敵のパワードスーツの性能が向上しているとは……計算外でしたわ。急ぎ永倉様と沖田様を呼び戻して……』
「理沙どん、そいはイカン。敵はあと6体、時間が無い。そいに……うっ!」
急に隊長機が突っ込んできて、巨大な剣を振るう。桜花王の力で辛くも耐えたが、機体の中から命を吸い取らるっ者の悲鳴が聞こえた!
『んだべ理沙さん!性能が向上しでる上に、こっちは人質まで取られてるようなもんだべ……分が悪りぃだ……搭乗者ごと斬るしか……』
「アカンっ!!……誰一人殺したらアカンって言うたやろ!? なんべん言うたら分かるねん!!」
え?……今ん声は、霊子通信じゃなかっ……!?
おいが振り返ると、本殿に至る南総門に、姫様と夏菜子さぁが立っちょる!?
い、イカン!奴らん狙いは、そんお二人じゃ!
いつもお読みいただき、本当にありがとうございます!
皆様の温かい応援のおかげで、本作も無事に「第100話」を迎えることができました。
ここまでお付き合いいただいている読者の皆様には、感謝の言葉しかありません。
しかし、記念すべき100話、半次郎さん、まさかの大ピンチ!
なんかこう、ガム新、総司、十兵衛さんが余裕のよっちゃんで敵を撃破してきたのに、なんでやねんって思ったら、まさかの敵の首魁、アーロン自ら登場やて!?
ほんで、半次郎さんと理沙ちゃん、アレ君が「どないしょー!?」って思ってるときに……ちょっと! 姫様と夏菜子ちゃん、出てきたらアカンやん! 敵の狙いはアンタらやで!!
絶体絶命の次回、第101話もぜひお楽しみに!
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