第99話: 石清水の戦い 第2幕! 『みんなで知ろう、八幡大菩薩!』④ なに?無刀なぞ玄人にしか分からぬじゃと?左様なことはあるまい!玄人芸がある故、落語でもラップでも面白いのじゃ!
『十兵衛殿!いくらアンタでも鎧なしで呪力弾を受けちゃいけませんぜ!』
なんじゃ総司よ、やいのやいのとやかましい……当たらねば良いのであろう、当たらねば。
ズダダダダッ!!……
うーむ、先ほども霊子通信で見たが、どうもこ奴らのやることは単調じゃ。
銃弾が効かぬと分かった相手に、何故おなじことを繰り返すのであろうのう?
「W-Why...?! He's just walking slowly! ...Fire! Keep firing!」
(な……なんでだ…?ただゆっくり歩いているだけなのに!……撃て、撃ちまくれ!)
おいおい、止めぬか。少し下山すれば住宅街ぞ。赤子が寝ていたら起きてしまうではないか。
「It's not hitting him... We can't hit him!!」 (当たらない……当たらないぞォ――!!)
なんじゃ、ヒスを起こしおって。男の癖にみっともない。
あ、いまそう言うのを言ってはいかぬのか?なんでも『じぇんだーばいあす』とか言うそうじゃ。読者の皆も気を付けねばならんぞ!
『あれれ?……十兵衛さま、そんなにゆっくり歩いていて、どうして銃弾が当たらないんです??』
おお、理沙殿か。そうじゃな、全国の、孫のために『星産みの儀』の“ちけっと”とやらを買おうとしているお歴々には解説しておかねばなるまい!
「あ~、ああ~、全国のぉ~、剣術が大好きな皆の衆!少しばかりこの術を解説しておくとしよう。銃などというものは、見てから動いていたのでは間に合わぬ。相手が撃とうと思ったら、その気が先ず届く、それを避ければよいのじゃ。どうじゃ?簡単であろう。そうと分かったら皆もレッスンじゃ!まず最初に……」
『ちょっと十兵衛さま……あれっ!?視聴数伸びてる?……え~このカルトっぽい話のどこにそんなに需要があるのかしら……?』
なんじゃ理沙殿、まこと失礼な娘御じゃな。相手の気を観るなど、落語でも歌舞伎でも同じではないか……それこそラップバトルでも!
まわよいわ、今は、某の口伝を待っておる皆の衆に剣の理合を教えて進ぜるのが先というもの!
「え~これは、兵法家伝書においては活人剣といい……なに!?活人剣を知らんとな!?いますぐ書店に行って某いわなみ書房のコーナーで『兵法家伝書』を買うのじゃ!!」
そんなことを言っている間にも相変わらず鉄砲を撃ってきおるが……おっ?一人匕首を抜いてきおったな。意味もなく鉄砲を撃つよりは良い。良いが……遅いのぉ。
何故にこ奴らは、動こうと思ったり、動くのを止めたり、と言ったことを何回も逡巡しておるのじゃ?
「Die, you freak!!」(死ね、バケモノめ!!)
行くと思ったら刹那に行かぬか!まったく牛のような連中じゃ。しかも躰がガタガタに崩れておるし。これでは当たった時に豆腐のように崩れてしまうではないか。
よく巻き藁などを斬るときに、腕だけで太刀を振り下ろす輩のすることじゃ。
まぁそれは良いとして……ほれ。
(What the hell...?! Why are the sky and the ground upside down...?!)
(な、なんだ……!?なんで空と地面が逆さまに……!?)
ドスン!
あ、しまった……少々強めに投げてしもうた……
こ奴が行かんのじゃ!ふらふらした足元でやたらに突っ込んできおって!
『十兵衛さま、その人、大丈夫なのですか?身体が宙に浮いた後、真下に地面に落ちて……ピクリとも動きませんけど?』
「だ、大丈夫じゃ!ちょっと背中をしたたかに打っただけであろう!だいたいなんじゃ!受け身も取れんのか!」
『十兵衛さま、夏菜子さんのオーダーは、誰一人殺さない、ですよ?剣で斬らなかったらオッケーとかじゃないですからね。あっ、また投げた。やっぱり動きませんわ……ちょっと乱暴なのではありませんか?十兵衛さま。』
「なんじゃ、そんなことを言うても致し方なかろう。こ奴ら、大したことはないが数はそこそこおるのだし……それにだいいち!某は動画を見ておる皆の衆に剣の理合を教えねばならん!」
とそのとき、こちらに向かって銃口を付ける兵士がおる。おお、ちょうどよい。
「まず、敵の目付けが入ったと感じたならば、その次には必ず敵の刃が、穂先が、弾が来るものなり。目付あって撃たぬは下手なり。」
某がそう言いつつ、その者の間を外しつつ歩を進めると、その者は眼を開いたまま慌てたように銃身を動かす。
「皆の衆、見たかな?歩みというのは早くても、遅くともいかぬ。日々歩く様にするものじゃ。決して居ついてはならぬ。ただ心を空にして神に従えば心動くなり。心動かば気もまた動き、気動かば躰は既に動いておる。
あ奴のように心を一つ所にとどめようとすれば、驚きて動き、また動きて驚くということを繰り返す。そういう時はどこか一ヵ所ばかりをみておるものだ。」
某はそういいつつ、その男に当身を食らわせる。するとそ奴は「ウッ」と唸って倒れ込んだ。
『う、う~ん、なんだかわかりませんが、視聴数がすっごく伸びてます!十兵衛さま、他にも達人っぽいヤツお願いします!』
なんじゃ、げんきんな娘じゃ。まぁ良いか。次は何にしよう……神・妙二字のことと歩みのことは言うたゆえ……
『十兵衛さま、危ない!』
なんじゃ?
振り返ると、敵のからくり人形が、ズレるように胴から真っ二つに裂けておった。いかんいかん、いつの間にか抜いてしもうたか。
今日は華麗に無刀オンリーで決めようとおもっておったのに……
「S-Samurai! He's a real Samurai!」 (サ……サムライ!本物のサムライだ!)
おぉ……なにやら浮足立っておるな……仕舞にいたすか。
(S-Stay back! Stay away from me!) (く、来るな!やめてくれぇー!)
残り4人ほどじゃが、動転してメチャクチャに撃っておるな。この方が危ない。早々に退治てくれよう。
(ガッ!)
(ウウッ!)
(ウワァー!)
(ヒぃ!やめ、やめっ!ウグッ!……)
ふむ、綺麗に片付いたところで……
「皆の衆!見たかな?斯様に多数の敵に対するときは、心とどまることなく、一太刀うったらば、すぐさま捨てる心持とするのじゃ!たった今撃った心を捨てよ!さすれば、神より心あらたに出ずるものなり!」
決まった……これぞ活人剣の奥義……今ごろコメ欄がドッカンドッカンであろう。
『十兵衛さま!なんですか今のは!いきなり視聴者が離れていきましたわよ!あ、こんなコメントが……このひとワザはスゲーけど、言ってることイミフじゃね?心捨てるってマジウケるwww……』
◆
不愉快じゃ、実に不愉快じゃ!
なんじゃ、我が家伝の新陰流の奥義を惜しげもなく教えてやっているというのに!
まったく今どきの若い者というのは!
お?また理沙殿からの通信じゃな。どれどれ……
『十兵衛さま、私情を差し挟むのはお止めくださいね?今は任務優先ですから。それよりも、その兵士たちを拘束して連れて来て下さい。』
「全員を連れて行くのかね?ちと面倒じゃが……」
『2-3人で結構です。ほかは、銃弾とナイフだけ没収して放っておきましょう。警察には通報しておきましたから。』
「ふむ……ならば、神馬の背に載せて連れていくとしよう。」
某は、神馬を召喚すると敵兵をその背中に載せ、茅乃輪をくぐると常世にある本殿に戻った。
「お疲れさまでした十兵衛さま!さすが見事なお働きでしたね!」
「まぁまぁ、こやつらはあのカラクリ人形を送り届けるためだけの工兵部隊のようじゃからな……それより動画配信の方はどうじゃ?」
「ばっちりですわ……あ、捕虜の尋問が始まりますわ。沖田様が捕縛したのと、いま十兵衛さまが連れ帰った兵士らの、ですが。十兵衛さまはアレクセイさんの神兵ですから、ご覧になってください。」
拝殿の前の白砂のところが、急ごしらえの白州のようになっていて、捕虜たちはそこに引き立てられてきた。
その者らは、先ほどまでいた現世から常世に連れてこられて、明らかに不安そうにしている。
そこに、鎧姿で薙刀を携えたお方様……八幡大菩薩がやって来て、拝殿の前に設けた床几台に座ると、轟くような声で宣言した。
「妾は、畏れ多くも皇大神よりこの日ノ本を守護する任を賜った、八幡大菩薩である。ものども、面をあげよ。」
すると、そ奴らは驚いたように顔を上げ、恐怖の籠った眼でお方様を凝視した。
「日本語が理解できることに驚いているようですね……まぁここは現世ではありませんから。思念がダイレクトに伝わりますからね。」
なるほど、確かにこ奴らは日本人には見えぬ。それで、こ奴らにはお方様が発した言葉が英語に聞こえているのであろう。
「ただいまより、この八幡大菩薩自ら吟味いたす。嘘偽りなく、己が心に誓って真実を述べよ。もし、嘘偽り申したならば、其方らの罪の如何に関わりなく、この剣で斬首する。よくよく心得よ。」
お方様が左様に言われると、そばに控えた護良親王殿下が天叢雲剣を抜き、その赤銅色に輝く刀身を捕虜たちに見せた。
「まず問う。そなたらは、八幡宮駅の商店街で毒ガスを撒こうとした。相違ないか?」
捕虜たちは怯えて顔を見合わせる。すると……
「疾く答えぬか!」
お方様が一喝し、白州に雷が落ちる。
「ヒッ!ひぃぃ!そ、そうだ!俺たちは毒ガスを撒こうとした!上から指示されて……」
「上とは誰じゃ!」
お方様がそう言って、薙刀の石突でドンっと床を鳴らすと、たちまち風が吹き荒れる。
おお……常には無い様子でお怒りのようじゃ、これはさだめし……うん?
「理沙殿、なにをしておるのじゃ?よもや、そのカメラは……まさかこれも配信しているのではあるまいな?」
「いいっ!八幡さま、武神としての峻厳さがスパークしていますわ!練習しておいてよかった!お方様ったら、楽だからと言って最近ずっとジーパンだったんですもの!」
な、なんじゃ……結局これも配信のための芝居ではないか。
「う、上って言うのは……アーロン、Homines creavit corp.のアーロン・ベン・ハイムだ!」
敵兵がそう言った瞬間、理沙殿とお方様がニヤッと笑う。
「Homines creavit corp.のアーロン・ベン・ハイムとな?そなたらも、Homines creavit corp.のものか?いずこの国より参った?この国で何をしておる?」
「しっ!知らない!俺たちはアーロンの命令でニューサンノー米軍センターに駐留しているだけだ!」
しかし、そう言った男にお方様は薙刀の切先を突き付ける。
「貴様……いますぐ首と胴を切り離しても構わぬのだぞ?……この薙刀はな、魂魄を斬るのじゃ。さすれば、貴様の魂は霊核が砕け転生も叶わぬ。未来永劫の完全なる消滅じゃ。そうなりたいか?」
「や、やめてくれぇぇ!……なんでも言うから!アーロンは、アーロンは上野で人造の神を造ろうとしている!そんな話を聴いた!」
本日もお読みいただきありがとうございます!
前回の沖田に続き、今回は柳生十兵衛の無刀(?)チャレンジでした!
伝わりましたかねぇ……このシーン書くためだけに兵法家伝書読み直しましたが……
まあどのみち、十兵衛さんがドヤ顔で活人剣の極意を語ったところで、現代のネット民にそんな話伝わるわけないんですよ(笑)。
そして舞台は常世での尋問へ。 八幡大菩薩の圧倒的な神威!雷!風!……と見せかけて、実は裏で理沙ちゃんとバッチリ配信の打ち合わせをしていたという。普段はジーパンでくつろいでいる八幡さん、お疲れ様です。
まぁようは、敵自身に今回の作戦や黒幕の正体を言わせて全世界に配信したろやんけ、っていうのが理沙ちゃんの作戦なんですね!
そして……次回はいよいよ、連載開始からの一つの区切りとなる**【第100話】**に突入します!
ここから物語はどう動くのか? アーロンは?八幡さんはこれで勝利ってこと?っていうか、夏菜子と姫は今何してんの?
記念すべき第100話も全力でお届けしますので、ぜひ下部の☆☆☆☆☆評価やブックマークで応援していただけると、執筆の大きな励みになります!引き続きよろしくお願いいたします!




