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母国で虐げられた男勝りな姫は、隣国のオネエな魔王陛下に嫁ぎ幸せになります  作者: 久遠 千暁


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17.ベタ惚れ


 そうして私イザベラは、魔物襲来事件で素晴らしい戦功をあげて魔王陛下にとても褒められたのだった。もしかしたら私は天才だったのかもしれない。

 魔物を二十匹ほど倒したぐらいから、フラン団長やマリアンヌ様にどことなく引かれたような態度を取られたのは実に遺憾であるが。



 そして今、魔王陛下に抱きしめられているのだ。

 これはとてつもないプロポーズチャンスではないか。討伐に行く前のあの約束を忘れたとは言わせまい。

 


「という訳で、魔王陛下。

 愛してる、どうか私と結婚してくれ!!!」


 

 私の満面の笑みと共に、愛の言葉を贈る。いつものようにピシャリと切り捨てられることは無く、何かを考え込むように黙ってしまった。

 私は照れ屋さんな魔王様の返事の言葉を、ワクワクそわそわと何時間でも待つつもりであった。



 

「……嫌よ」

「何で!?」



 思わず叫んでしまった。私の中でYESの想定しかしていなかったのだが。

 


「そんな、今めちゃくちゃいい場面だっただろう!感動の再会では!?」

「アンタが口にした時点で半減したけどね」



 ふん、と鼻を鳴らして彼は顔を逸らした。話はそらさせまいと抱きつく腕に力を込めていれば、ポツリと彼が口を開いた。

 

 

「……アタシ、景色のいい場所で100本の花束と大きな魔石の指輪を渡されてプロポーズされたいの」

「ふんふん、なるほど」


 

 つまり、それらを揃えたらプロポーズを受けてくれるというヒントかと、今までにない好感触に私は目を輝かせる。忘れないように脳内にメモをしないと。

 そんな私の反応に、彼は手をしっしっと振った。


 

「……やっぱりいいわ。プロポーズなんて男がするのが普通だから、一々気に留めなくていいわよ」

「いいや? 性別なんて関係なく結婚して欲しいと願い出る方がすればいい」


 

 真っ直ぐな私の言葉に、魔王様はぐっと唇をかみ締めていた。ここ最近のアプローチの成果で、照れた時の魔王様の可愛い癖だと私は知っていた。

 そしてモゴモゴと照れくさそうに、彼は口を開く。


 

「あとね、結婚する前に婚約期間をしっかり取りたいの」

「なるほど……?」

「これからもよろしくね、アタシの婚約者さん」



 そう言って顔を赤く染めた彼は、私の頬に優しくキスを落とした。

 理解するまでにぴったり十秒が経過し、情けないことに恋愛経験のない私はキャパオーバーでぶっ倒れてしまったのだった。

 




 


 それからのことなんだが、色々吹っ切れたのか魔王様がめちゃくちゃデレた。それはもう別人なのではと疑うレベルに。

 その後、魔王様は城中の騎士や使用人達を集めて「この子はアタシの婚約者だから!!」と改めて宣言してくれた。

 その時の「知ってますが……?」といった視線を四方からヒシヒシと感じたのだが、まぁ人前でわざわざ言葉にして知らしめてくれたのが嬉しいのでよし。

 また、みんなの目線が私のブレスレットに向いては、微笑ましそうな生ぬるい視線を向けられて首を傾げた。あんなに好き好き言ってた相手から贈り物を貰えて良かったねということだろうか。



 

 そして基本何処に行くのにも一緒で、今までは夕食のみだったが朝昼晩の三食を一緒に取ることになった。今までのように朝と昼のご飯を抜くことが出来なくなってしまった。

 また、今までだだっ広いテーブルの遠くに座っていたが隣に座るようになって、魔王様と話しやすくなったのは嬉しい。


 

 そして私の部屋も住み慣れた客室から魔王陛下の隣の部屋へと移された。客室でさえ私には広く豪華だったのに更にグレードアップしてしまって目眩がしそうだった。そんな私を見て気に入らないかと改装を始めようとした魔王様を必死に止めた。

 リリアナを始めとした侍女達は部屋の移動の作業や、新しい部屋の掃除という仕事が増えたというのにウキウキとしていたのが記憶に新しい。

 ちなみに私の部屋と魔王様の部屋は扉一つで繋がっているため、すぐ戻れるからか夜寝るまでの時間を一緒に過ごすことが増えた。いつ寝ているのかわからなかった魔王様だがしっかり睡眠を取っているようで安心した。初めて魔王様のパジャマ姿を見た時は感動すらした。

 

 

 それから、またキスする度に気絶されては困るとスキンシップが日常的になっていた。朝は目覚めのキスでおでこに、エスコートをする時は指先に、眠る時は頬に、とキスの嵐で初日は熱が出そうだった。

 他にも手を繋いだり抱きしめたり、腰を抱かれたりと彼と一緒にいる時はどこかしら触れ合っているような気がする。


 

 今まで私の方が魔王様に押せ押せでアプローチをしていたのだが、こうも彼に愛を返されるとタジタジになってしまう。突然の形勢逆転に少し悔しい気持ちもある。

 それでも私は好きな人に愛されるというこの幸せを噛み締めていたのだった。

 

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