14.魔物討伐
そうして魔王様の言いつけ通り、私は指定された馬車に飛び乗り、城下町へと向かった。そして降りた場所に見覚えのある二人の影が見えて私は駆け寄った。
「フラン団長!マリアンヌ様!」
「魔王陛下から聞いて来た。人手不足なので正直有難いよ」
「やぁ、イザベラ。今日はよろしくね」
そこには私が親しくさせてもらっているフラン団長とマリアンヌ様が待っていてくれたのだ。あんな啖呵をきってここにやって来たが、二人の姿が見えただけで正直とっても心強い。わざわざこの二人を選んだのも魔王様なりの優しさなのだろうか。
「それにしても、てっきりフラン団長とマリアンヌ様はお強いので魔王陛下と一緒に向かうのかと」
「魔王陛下は強すぎて騎士たちが守るどころか逆に守られてしまうから、一緒にいると足手まといになってしまってね。
魔王陛下は大抵リンとスズだけ連れて一番強い魔物……今回だと魔物たちのリーダーのところへ向かうんだ」
こんな時も一緒にいれるリンとスズが羨ましく感じてしまう。それにしても彼らは秘書のはずだったが、魔王様についていけるほど強いのだろうかと不思議に思う。いつか私も彼と肩を並べられるぐらい強く慣れればいいなと願う。
「アタシ達は街へと入り込んだ何十匹の魔物たちを駆除するのが仕事って訳。人員不足でこっちのほうがキツイよ。でももう既に避難は住んでいるから暴れても大丈夫。
でもあまり建物は壊しちゃダメだよ。やりすぎると反省文書かされるから」
「そういや前回マリアンヌは10枚ぐらい書かされていたな……」
「今回は書かずに済むといいけど」
「毎回言ってるよなそれ」
なんて言いながらマリアンヌ様は肩を竦め、フラン団長は苦笑を漏らす。私も反省文は書きたくないから気をつけようと思う。二人と話していたらだいぶ緊張が解けたような気がする。
そんな雑話もそこそこに、私達は急いで城下街を走り出す。効率のために二手に分かれて街の魔物たちを探し討伐するため、フラン団長、私とマリアンヌ様で動くことになった。
暗くなって何処か不気味な街、マリアンヌ様と人っ子一人居ない道を走っていく。
「言っておくけど、アンタのこと守ったりはしないよ。魔物は本当に危険だ。おんぶにだっこされるつもりなら先に帰りなさいね」
「あぁ勿論。もし逃げ遅れた人と私が襲われそうになっていたら、迷わずに相手を助けてやってくれ」
間髪入れない私の回答に、マリアンヌ様はニンマリと満足そうに笑った。そして強く肩を叩かれる。
「いい回答、やっぱり騎士に向いているわ。でもアタシは両方たすけるよ」
「それは心強い」
そうして二人で笑いあっていれば、ふと彼女視線が私の手元へと向かっていて首を傾げる。
「あれイザベラ、アンタそれって……」
マリアンヌ様の驚いた視線の先を辿れば、魔王陛下に貰ったブレスレットがあった。今も赤い石が月のあかりに照らされて美しく煌めいていた。
「あぁ、先程魔王陛下から貰って付けてもらったんだ。
ヴァルディア王国伝統の御守りと聞いていたが、そういえばフラン団長もマリアンヌ様もつけていないな」
「え、あ~っ……そう、アタシたちは強いからもう必要ないのさ!」
「なるほど、御守りに頼らなくていいほどの実力ということか。流石だな」
まだまだ半人前の私はつけさせてもらおう。それに、好いた相手からの贈り物なのだ。壊れるまで使うに決まっている。壊さないのが一番だが。
「……っ、マリアンヌ様!」
「あぁ、行こう!」
すると道の先に、影になっていて分かりにくいが誰かが蹲っているのが見えた。私達は急いで駆け寄った。そこにいたのは若い女性で、泣きじゃくっていた。逃げ遅れてしまったのだろう。
マリアンヌ様がしゃがみこんで話を聞いていく。
「ま、まもの、魔物がいて」
「もう大丈夫だよ。アタシは騎士だ。怪我はないかい?」
「だ、大丈夫です。魔物がどこから出てくるか分からなくて怖くてここに居ただけなので」
「いい判断だね。偉いよ」
マリアンヌ様が快活に笑って、女性の頭を撫でれば安堵したのか涙が止まったようだ。
「イザベラ! アタシはこの辺りをもう少し見て魔物を探すから、この女性を城への馬車まで連れて行ってほしい」
「分かった。マリアンヌ様、お気をつけて」
私達は視線を交わし、違う道へ行く。私は安心させるために女性に笑顔で話しかける。
「では行きましょうか」
「は、はい!」
私か彼女の肩を支えて歩き出す。おぶろうかと提案したのだが、恥ずかしいし歩けるからと断られてしまった。こんな状況下で楽しくお喋りをするという訳にもいかず、無言のまま私たちは歩いていく。
もうすぐ馬車乗り場へとたどり着く、その時だった。
「イザベラ!!!危ない!!!」
後ろから聞こえたマリアンヌ様の切羽詰まった声に、一瞬で私は状況を理解して、隣の女性を思い切り突き飛ばす。
そして剣を握る手に力を入れて振り向いた。
______魔物の大きな牙が、私の眼前に迫っていた。
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