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ネコ耳❤アリシアの魔王城日記  作者: 独瓈夢
第五部 アリシア大公
334/336

第334章 アリシア大公の鉱山事業視察(後編)

ストリーの都合上、章タイトルを変えました。

 そこは、華やかなピンクの色彩と白い大理石がふんだんに使われた壮大な空間だった。

 

 ゴールデンイエロー壁には、凹凸模様がついた見事な装飾が一面にあり、その上部には明り取りの窓が並んでいる。

 天井は見上げるほど高く、吊り下げられた大きなクリスタル製のシャンデリアには、宝石でも散りばめられているのか、青や緑の石がキラキラと明かりを反射していた。


 壁には、歴代の太守の肖像画や美しい絵画が飾られており、床は色鮮やかな幾何学模様のモザイクタイルが敷き詰められ、厚い手織りの敷物が中央に敷かれていて、私たちはその上に座っていた。


     マハラストリージャ城の応接間

  挿絵(By みてみん)



 私たちは、マハラストリージャ城の応接間にいた。 


 応接間に座っているのは、マハラストリージャ城の当主のザームジヤル太守と先ほど出迎えてくれた三人の太守、それに宰相らしい者が数人、後ろの方に座っていた。



 三人の太守は―


 北部最大の領地を保有する、ブランダラバード太守国のパタウディール・サヴァモール太守。

 サヴァモール太守は、“北部の雄”と呼ばれる有力太守であり、マジェストゥーズ大洋に面した長い海外線を持ち、漁業や海運業が盛んな豊かな国の太守だ。


 トロールらしくない細い体格で長身のワンド・ウッダジャー太守のブラッデタール太守国は、ブランダラバード太守国のの南西に位置する。もともとは、海への出口を持たない国であったが、ウッダジャー太守の娘が海に面した小太守国バルーシン太守国の王子と嫁いだことから、バルーシン太守国はブラッデタール太守国の属国になり、これによって港を使えるようになり、漁業も行えるようになった。


 70歳を超した老トロールだが、いまだ矍鑠(かくしゃく)としているダモダル・ガッドワール太守のガッドワール太守国は、領地の西側が海に面しており、南にはグワンラン高原を抱え、ブランダラバード太守国と同様に比較的豊かな太守国である。



 四人の太守と会談をすることになった私のすぐ後ろには、私が大公を拝命した直後に内閣府大臣に任命したフローリナちゃんとニカノラ秘書官が控えていた。

 組閣において、もっとも重視したのは信頼度と優秀さだ。そしてこの二人の優秀さは抜きんでていた。

(彼女たちのほかにも信頼できる才媛を内閣の重要職に任命しているが)



「大公殿下、前もってお知らせせずに本当に申し訳ありません」

 みんなが座ると、開口一番にザームジヤル太守が謝った。


 私に無断で三人の太守を招待したことを謝ったのだ。


「いえいえ。魔王国がアングルスト国の北部に攻め入ることをお知らせするために、ザームジヤル太守さまを訪問したわけではないから構わないのですが...」

「え... 魔王国がここに攻め入る?!」

 ザームジヤル太守はのけぞりそうになった。

「何ですと?我々は、魔王国に対して反乱を起こそうなどと一切考えておりませんが!」

 サヴァモール太守は、驚いて立ち上がった。

「そうです。我々は、魔王さまと大公さまに感謝こそすれ、不満など持っておりません!」

 ウッダジャー太守も目を見開き、口をあんぐりと開けた。


「皆、落ち着きなさい。攻め入ることを知らせるためではないと太守殿下は申しておるではないか?」

 ガッドワール太守の言葉で、ほっと安心するザームジヤル太守とまた座りなおしたサヴァモール太守。ウッダジャー太守もあんぐりと開けた口を閉じた。



「我々、北部の有力太守たちは、1年に数回会議を開いて、北部の状況やテルースの世界の政治・経済状況などを話し合うようになっておりましてな...」


 ザームジヤル太守がなざ北部の有力太守たちが一堂に会するしているか説明しはじめた。

 説明によると、北部の有力太守会議は回り持ちで、ザームニズ太守国、ブランダラバード太守国、ブラッデタール太守国、ガッドワール太守国の順番で当番国に太守たちが集まり、会議が行われて来ていて、今月はちょうどザームニズ太守国の番だったらしい。


 そこに、私から、ゲネンドル領の軌道列車計画への投資の話が舞い込んだ。有頂天になったザームジヤル太守は、酒の酔いも手伝って、そのことを三人に話した。

 その結果、三人も投資の話に乗り気になったらしい。

 四人の太守たちは、それぞれの宰相や財務長官と相談した上で、それぞれ必要額の5パーセントを投資してくれることになった。つまり、金貨6千枚ずつで合計金貨2万4千枚だ。


 


 ザームニズ太守国訪問は、私としては“願ったり叶ったり”の結果となった。


 そして、最後に軌道列車計画への出資の交渉相手として、私が選んだのは―


  ドワーヴァリ族の大富豪、ドジョーネル王とナンシーネ王妃だった。

 この二人は、魔王さまが雌伏の時代を過ごされたホルモール農場時代から、魔王さまに資金援助をして来ており、魔王国建国の後も軍事、製造、農業・食料製造業などの主要な事業に投資をしており、魔王国の経済を陰から支えて来た。現在、ドジョーネル王とナンシーネ王妃の二人は、それらの会社の大株主となっている。

 だが、二人とも国外での投資にはあまり乗り気ではなく、ドヴェルゴ国と鬼人族国、それにミタン国で銀行業や運輸業などに小規模な投資をしているだけだ。かなり控え目で消極的な投資だけを。



     ドジョーネル王邸の応接間

  挿絵(By みてみん)



「さすが、魔王さまが、最初から目をかけられただけあって、アリシア殿は立派に魔王国を背負う人物として成長されましたな!」

「その若さで、それだけの才能を持ち、かつ、みんなから慕われ、こぞって支援・協力をしたがるとは、まさしくエタナールさまの申し子とした言いようがございませんわ!」

 

 魔都郊外にあるドジョーネル王の豪邸を訪問した私を、ドジョーネル王とナンシーネ王妃は改築が終わったばかりだという豪華で広い応接間に案内してから、私を褒め称えた。


 いや、そんなに褒められても... 


 私は、魔王さまからお願いされ、魔王妃さまたちから懇願されたから引き受けてやっているだけで、魔王国の統治者になりたいなどとは一度も思ったことはない(汗)。 



 その時の訪問は、軌道列車計画への出資のお願いだったのだが、ドジョーネル王夫妻からは、すでに15万枚の金貨を投資してもらっていた。

 “魔王さまのご寵愛の深いアリシア”だと信用して投資してもらったものだけど、ドジョーネル王夫妻からの金貨15万枚の投資は、毎年5万枚ずつ3年間にわたってゲネンドル領政府の銀行口座に振り込まれている。

投資の据え置き期間は5年間なので、来年からは初回分の返済が始まり、以降10年間にわたって年間5パーセントの利子をつけて返済することになっている。


 これほどの巨額をドジョーネル王夫妻が投資してくれた理由は、一つには“魔王さまという大きな後ろ盾”を私が持っていたことと、彼らが投資するゲネンドル伯爵領の事業の利益の3割を受け取ることになっていたからだ。

 ドジョーネル王夫妻も趣味や暇つぶしに投資をやっているのではないので、儲ける見こみのない事業でなければ投資しないのは当然だ。

 幸い、ゲネンドル領の諸事業は好調なので、返済にはまったく心配ない。


 私は、さらに新規の投資をお願いに来たわけだが、たぶんドジョーネル王夫妻も訪問の意図を知っていただろう。


「ほほう。その蒸気動力で動く軌道列車線が完成すると、鉱山・製鉄事業だけでなく、農業・畜産業の利益拡大にも繋がるというわけですな?」

「その通りです、ドジョーネル王さまにナンシーネ王妃さま。この資料をご覧ください」

 説明のために同行したゲネンドル領行政長官アマラちゃんが、数枚の資料を二人に手渡す。


「1、鉱業は、輸送費用の大幅削減が可能となります。軌道列車は、鉄鉱石や石炭などの重量物を一度に大量に運べるため、馬車輸送に輸送費が大幅に下がり、利益が増大します。


 2、鉄鋼業も供給網が効率化され、鉄鉱石・石炭などの原料搬入と、鋼材など製品の出荷の両面で安定した物流が確保されるので操業率が向上し、利益が増えます。


 3、農業も穀物などは、梱包した農作物を遠方の港や大きな町へ安価な輸送費で運べるようになるため、農家の販売価格競争力が強まるので利益が大きくなります。


 4、畜産業も、飼料が少ない地域へ、ミーリョなどの穀物を安価な輸送費で大量に輸送できますので経費を低減できますし、肉加工製品も安価な輸送費で港や大きな町へ運搬することが可能となり、これも利益を増やします。


 つまり、これまで“輸送費が高すぎて儲けが出なかった”、遠隔地の資源や農地が、軌道列車線が開通うすれば、一気に“収益を生む資産”へと変わるのです!」


「おお。一気に収益を産む資産に変わるのか!」

「軌道列車があれば、すべての事業で利益が増えるのですね!」


 ドジョーネル王もナンシーネ王妃も、“収益”と“利益”という言葉に乗り気になった。

 二人とも身を乗り出し、目を輝かせている。


「軌道列車は、経済の大動脈となるのです!」


「おお!」

「まあ!」


 すでにゲネンドル領の財務部長が作成した経営成績書と収益予測表も前もって送ってあり、農業改革により、生産性が見違えるほどに向上し、収益は大幅に増えていること、鉱山業も好成績をあげており、製鉄業も好調なことが報告されていた。


 それを見れば、ドジョーネル王夫妻の行った投資の返済は、予定通り問題なく行われることが明らかになる。なので、追加で3万や5万の金貨を追加投資するにはまったく問題ないはずだ。


「アリシア大公殿。儂もすでに王妃とも相談して決めておりました。大公殿が新しい投資を望まれるのなら、応じようと」

「私たちの同胞も、アリシア大公さまの領地でたいへん喜んで働いていると聞いております。ドワーヴァリ族の若者たちの生活の向上と幸福は、常にわたくしたちの願いでもあります」

「大公殿、必要な金額を言ってくだされ!」


 こちらが拍子抜けするように簡単に残りの必要額を調達することができた。

 



 必要な資金額を調達できたとドンゴ・ロス王に報告すると、すぐに土地測量士技師と基礎工事の専門家の集団を送りこんで来た。

 ドワーフの測量士技師は、軌道建設予定地の地盤・地質調査をし、問題がなければ基礎工事が開始され、地固めをし、砂利を敷いてから枕木を固定し、軌道が敷かれる。



 軌道敷設作業は、大きな支障もなく進捗し、1年とかからずに全線が完成した。

 ドヴェルグ王国の軌道列車製造工場からすでに完成していた10両の蒸気動力軌道列車と300両の貨車が到着し、早速輸送作業が開始された。

 2年目には、さらに総延長を400キロメートル増やすとともに、ドヴェルグ王国の製造工場に新規発注していた10両の蒸気動力軌道列車と30両の客車と200両の貨車が導入され、を大きな町には次々と駅が建設され、領民を乗せた客車も運行するようになった。



                  鉄鉱石鉱山

  挿絵(By みてみん)




 ブレスタンネン大炭田の次は、ファウニバール山脈の鉄鉱石鉱山と金・銀鉱山を視察した。


「ここも、とっても、あっかんですね――っ、ママ!」

「本当にすっごく、あっかんべ――ですね、ママ!」

 レーヌとロッテは、ブレスタンネン平原でおぼえた言葉を連発している。


 まさに、ファウニバール鉱山の採掘現場の風景は圧巻、圧倒的だった。

 ファウニバール鉱山は、見渡す限りどこまでも一面に黄色土の地表が広がる場所だった。


「土が黄色なのは、鉄が多く含まれた地層だからだそうです」

 アマラちゃんが説明してれる。

「鉄鉱石鉱山の場合、鉄の含有量一般的には、25パーセントから35パーセントなのですが、ファウニバール鉱山は、鉄の含有量が70パーセントに近いそうです」


 ファウニバール鉱山でも、鉄鉱石は露天掘りだった。鉄鉱石の鉱脈は地下深くまで続いているらしいが、今のところは地表に露出している鉱石を採掘し、そのまま大きな渦巻き状に地下に掘り進めていく方法がとられていた。

 採掘した鉱石はトロッコまで運び、トロッコに移してから最初の破砕機で大な原石を扱いやすい数10センチから1メートルほどの大きさに砕き、さらに二次破砕でさらに細かく砕かれる。


 二次破砕で細かく砕かれた鉱石粒は、対向回転する2つの鋼鉄製円筒を内臓する粉砕機で圧縮・摩砕されさらに細かい粒状にされる。そして最後に金属の玉が詰められた円筒に入れられ、そこに石と水が咥えられ、筒を回転させることで鉄鉱石は最終的に粉状になるのだ。



         ボールミル粉砕機

  挿絵(By みてみん)



 鉄鉱石と来れば、次は鉄鉱石から鉄を作る製鉄所だ。

 視察に訪れたミンクボールン製鉄所は、ファウニバール鉱山から直線距離で約50キロメートル、軌道列車で行くと約70キロメートルの距離で約1時間20分で着く。

 私は、魔都でマフトレーン(魔法式浮動列車)に乗ったことがあり、ドヴェルグ王国の首都ガラガスで蒸気動力で動く軌道列車に乗ったこともある。


 ゲネンドル領に導入された蒸気動力軌道列車は、ガラガスで乗った形式の改造廉価版だった。ただ、石炭や鉄鉱石、鉄材などの重い貨物を問題なく運べる馬力(パワー)と長期間の酷使耐えれる頑丈な作りの軌道列車を作って欲しいとドンゴ・ロス王にお願した。


 ゲネンドル領仕様の蒸気動力軌道列車は、ガラガスで乗った軌道列車のように流線形で美しくなかったが、煙突から真っ黒な煙をモクモクと出しているのを見ると力強さを感じた。

 まあ、ガラガスの流線形の軌道列車は、他国にドヴェルグ王国の技術力の高さを見せつけるために余計に金のかかる形にしたのだそうだが。


 私はこういったものは、美より実をとる。

 見てくれは二の次だ。安くて頑丈でたくさんの貨物を運べればいいのだ。


 軌道列車は、石炭や鉄鉱石を満載した貨車を20両ほど牽引するが、いつも最前列と最後尾に鉱山や製鉄所で働く労働者を運ぶ客車を1両ずつ連結してあった。

 私たちは、その最後尾の客車に乗った。もちろん労働者用の客車なので、マフトレーン(魔法式浮動列車)やガラガスの軌道列車のような豪華なものではないし、座席も油や煤で汚れた木の座席なのだが、急遽クッションを置いたり、シーツを敷いたりして服が汚れないようにして座った。


「ママっ、見て、見て!木が後に走って行くよ―――!」

「ママ、草を食んでいるお牛さんが走って行くよ―――!」

 レーヌとロッテが、大はしゃぎで窓にかじりついて景色を見ている。


 木も牛も動かないのだけど、走っている軌道列車の中から見れば、後ろに向かって動いているように見えるので、子どもにはそれが面白いようだ。


「キドウレッシャって、とても、あっかんですね――っ! モグモグ ママ、このサンドイッチ、美味しいですね――!」

「キドウレッシャは、本当にすっごく、あっかんべ――ですね!モグモグ ママ、このサンドイッチ、あっかんべ――ですね!」

 レーヌとロッテは、ブレスタンネン平原でおぼえた言葉を相変わらず連発している。


 ジアネッタさんにたのんで作ってもらったお弁当のサンドイッチは、二人の好物だ。

 サンドイッチなんて、おかしな名前の軽食だけど、魔王さまがそういう名前の貴族が前の世界にいて、その貴族が考え出した軽食なのでそう呼ぶのだと教えてくれた。


 サンドイッチは、ゆで玉子を刻んで調味料を加えてパンの間にはさんだもの、豚モモ肉燻製の薄切りと葉野菜をパンにはさんだもの。それに酢漬けのペポノスと燻製ソーセージの輪切りをパンにはさんだものという三種類だ。


 私たちがギルド本部を訪問中に、みんなの分もジアネッタさんに作ってもらったので、軌道列車の中はにわかに食堂列車と化したかのように、みんなは美味しいサンドイッチに舌鼓を打っていた。



           ゲネンドル領の軌道列車

  挿絵(By みてみん)




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