表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ネコ耳❤アリシアの魔王城日記  作者: 独瓈夢
第五部 アリシア大公
322/340

第322章 アリシア大公の時代

第五部に入りました。

アリシア、いよいよ大公になりました。

え、侯爵から大公って飛躍しすぎじゃないかって?

その理由は、読んでいくとご理解いただけます。 

 テルース歴 5070年4月中旬― 


 私は、ゆっくりとゲネンドル領の視察旅行をしていた。

 この3年間、すごく多忙で、唯一私が所有するゲネンドル領をゆっくりと落ち着いて視察するヒマもなかった。


「アリシア大公さま、今回、ゆっくりと視察の日程を組むことができると伺い、まず始めに、アリシアさまが西ディアローム帝国の伯爵になられた時に、ご自分のものとなられた領地を見るために最初に来られた場所にご案内したいと思いました」

 アマラちゃんが笑顔を満面に浮かべて、ドコデモゲートで開けられたゲート(通り道)を示した。


 アマラ・エボニーは、私がプリシルさまに抜擢されて情報分析室長になった時に、初めて自分の部下として外部から採用した六人の優秀な輔祭(ほさい)だった()の一人だ。

 彼女たちは、その優秀さで私の仕事と事業を支援してくれ、アマラちゃんはゲネンドル領の長官として満足できる結果を出してくれている。



           ゲネンドル領のトリゴ麦畑

   挿絵(By みてみん)



 通り道(ゲート)を通って出た場所は、小高い丘の上だった。

 遠方には山々が連なっていて、あたり一帯は青々としたトリゴ麦畑がなだらかな丘陵に広がっており、雑木林も見える。


 丘の麓には農家が見える。大きな母屋と納屋があり、庭には白い花やピンクの花が咲いている大きな木があり、カプラニディオ族(ヤギ人族)の子どもたちが走り回って遊んでいるのが見えた。


「ねえ、ねえ、ママ。ここどこ?」

 金色の髪の女の子が、鮮やかな緑色の目をクリクリさせて周りを見ている。

「ママ 、あのおうちにおようじ(用事)あるのでしゅか?」

 こちらは黒い髪をした女の子が、スミレ色の目で落ち着いた感じで周囲の状況を確認している。


「ここは大公さまにとって、記念すべきところなのですよ、レーヌちゃん、ロッテちゃん」

 アマラ・エボニー長官の片腕のペラジーちゃんが、しゃがんで子どもたちと目線を合わせて説明している。


 ペラジー・ハルメ=ボルル、ペラジーちゃん。年は二十歳。

 ゲネンドル領の鉱山・動力部門部長だったリラーナ・ ダルドフェルの補佐役だった、バラメ・ハルメ=ボルルの妹だ。

 ハルメ=ボルル姉妹は、没落エルフ族貴族の娘で、私が西ディアローム帝国― 西ディアローム帝国が東ディアローム帝国との戦いに勝って、東ディアローム帝国を併合した後は、東西に分裂する以前通りにディアローム帝国と呼ばれるようになっているが― から領地を下賜され、事業会社『エルオンタリエ』社を立ち上げ、同時にアングルスト領の総督に就任した時、新しい人材を求めて一般公募で採用された職員のひとりだ。


 ペラジーちゃんは、アングルスト領でフローリナ副総督の副官を務めていたが、今はゲネンドル領で内政部長を務めている。ペラジーちゃんだけでなく、あの当時、厳しい審査と入社(入省)試験を受かった優秀な者たちは、仕事を覚え、経験を積み、今ではゲネンドル領、アングルスト領、そして魔王国政府で重要な(ポスト)に就いている。



「初めてここに来た時は、3月でまだ寒かったけれど、今は春真っただ中だから全然寒くないわね!」

「大公さまが、初めて来られた時は、かなり寒かったとミルイーズさまからお聞きしましたので、フード付きチュニックをお着せしたんのですけど、脱いだ方がいいですわね」

 ナニー(子守役 )のナーラさんが、暑いので子どもたちが脱いでしまったウールのチュニックをナーサリー・メイドのミネッタちゃんに渡す。


 ナーラさんは、レーヌとロッテの教育と保育を担当する乳母で、ミネッタちゃんは、子ども部屋の清掃、洗濯などをし、ナーラさんのお手伝いもする。



 私は、丘から農家を目指して下りながら、麓に広がる畑を見た。

 今は4月だから、トリゴ麦の追肥作業をしているのだろう、あちこちでセルヴィニディオス(シカ人族)カプラニディオ族(ヤギ人族)の農夫たちが作業をしている姿が見えた。


「今年は、四年続きの豊作予想ですので、農民たちも大へん意欲的になっています」

 農牧産業部門部長のミンタちゃんが、後から説明してくれる。


 彼女もアマラ長官と同期採用の元輔祭(ほさい)組でとても優秀だ。私が元ゼーブランド伯爵(私の秘書ミルイーズちゃんの父親だ)の元領地を下賜された時、相次ぐ凶作と長引く戦争で働き手(働き盛りの男たち)をとられた領地の農業は衰退の一方で領地経営は完全に破産していた。


 私は領地の経営を立て直すために調査団を送りこんで、広大な領地の調査をさせた。  

 そして、100万ヘクタールという広大な領地には、これまでに耕作されて来た土地の数百倍の農業に適した肥沃な土地があることがわかった。


 しかし、領地の主産業である農業を振興させようにも圧倒的に農民の数が足りなかった。

 計算上、農民1人当たり約1.3ヘクタールの面積を農耕できる。その計算で行けばゲネンドル領には約80万人ほどの農民が必要になる。

 だが、私が元ゼーブランド伯爵領の新領主となった時、領内にはわずか30万人の農民しかいなかった。単純計算で40万人ほど不足していたのだ。


 人手不足の問題を解決するため、私はガバロス族のアュンケン族長とドワーヴァリ族のドジョーネル王に会って、ガバロス族とドワーヴァリ族の若者で、新天地で夢を叶えたい者を開拓団として私の領地へ送ってもらうようにたのんだ。

 開拓精神にあふれたガバロス族とドワーヴァリ族の若者たちは、挙って応募に参加し、集団で続々とゲネンドル領の奥地へ入植していった。


 同時に、私は魔王国立銀行から無担保、無利子で金貨1万5千枚を借りた。

 いや、これは私が、“魔王さまのお気に入り”だからじゃないよ。最初、私が魔都の魔王国立銀行に融資をお願いしに行った時、銀行側は、()()()()という理由で融資を断った。

 私の窮地を知った魔王さまが、国立銀行の頭取にひと声かけてくださったことで融資が承認された。しかし、それは()()()()()()でもなかった。


 魔王さまは、無利子・無担保の条件として、“十日に一度、魔王さまに抱かれること”を要求されたからだ。

 私は全然イヤじゃなかった。だって私は魔王さまを愛していたし、魔王さまが支援してくださらなかったらゲネンドル領の復興・開発事業資金もなかったしね。 

 でも... やっぱり最終的には、私が“魔王さまのお気に入り”だったからということだよね?(汗) 



 銀行から借りた融資で、私は農民たちに穀物の種や飼育用ならび役畜用の牛馬を購入する資金、および必要な(餓死しないための)食料を買う金を無利子で融資することにした。この時、農民の中には度重なる冷害による不作で食べる者も食糧を買う金もなく、餓死する者も出ていたからだ。


 そして、私は疲弊した領地(農民)の状況を改善するために農民ギルド(組合)を設立した。

 それまで、元ゼーブランド伯爵領の領民は、ほかの領主同様、人頭税を収めていた。すべての領民は、15歳になった時からほぼ死ぬ頃まで、一律一人当たり銀貨10枚を毎年払わなければならなかったのだ。


 引き続いた冷害により農民は深刻な打撃を受け、収入がほぼ無くなっていた農民にとって人頭税を払うということは大へんなことだった。冷害により領内には貧困農家が続出していたのだ。

 それでもゼーブランド伯爵は、農業不振により減った税収を補うために増税に次ぐ増税を課した。あまりの劣悪な状況に田畑を捨てて他の領地に逃げ出す農民が続出し、領内の状況は悪化する一方だった。


 そんな状況下でこれまで通り人頭税を徴収し続けるなんてできない。

 長引く戦いで農村の男手が減り、さらに逃散する農民が増え続ければ、領地の立て直しなど到底無理だ。そこで考え出したのが、人頭税を廃止し、代わりに農民ギルド(組合)を設立することだった。



 人頭税を払うより、ギルド(組合)する方が得だと領民たちにわかってもらうため、次の条件を提示した。


 ①ギルドの加入金は一家につき銀貨4枚(分割払い可)。毎月のギルド費は一家あたり銀貨1枚~4枚とする。(農家のギルド費は銀貨1枚。商人/町民は銀貨4枚)


 ②ギルド加入対象は15歳以上の成人、もしくは独立して家族持つ者、ならび商売をしている者。ギルドに加入した者の家族はギルド会員の特典を享受できる。


 ③加入者農民の地代は2割。加入しない者は4割。地代を払えない者は、領主の経営する事業で働いて税金を払う。商人/職人の加入者は、営業許可料を免除。売上税は2割。加入しない者は営業許可料銀貨10枚を収め、売上税は4割払う。払えない者は、領主の経営する事業で働いて税金を払う。


 ④ギルド会員には、優先的に植え付け用の穀物の種、穀物の種や飼育用ならび役畜用の牛馬、それに飼育用のヒツジ、ヤギ、ブタ、ニワトリ等家畜購入用の融資を受けれる。

(注:それらの耕種農業、畜産農業ができる土地や必要な働き手が一家にいるか事前調査が行われることがある)。


 ⑤ギルド会員とその家族は、病気になった場合は病院で無料で治療を受けることができるし、無料で薬を受け取ることが出来る。


 ⑥ギルド会員の家族の女性が妊娠した場合は、当妊婦の出産の1ヵ月前から出産後の2ヵ月後まで、ひと月に銀貨4枚の出産援助を受けることが出来る(注:産婦人科の医者による妊娠の確認が必要)。


 ⑦ギルドの福利厚生事業:

  ギルドは、会員のための学校を開設する。

  ギルドは、身寄りのない老人や、世話をする者がいな老人のために養護施設を運営する。

  ギルドは、貧しい会員の葬式代を支払う。

  ギルドは、聖日には祭りを催し、祭りに参加する領民が楽しめる娯楽を手配する。



 領民たちの反響は大きく、ギルド加入金は銀貨4枚で収入があまりない農家や貧困農家には高いかも知れないが、分割払いできるようにし、毎月のギルド費も農家は銀貨1枚と安くしたのは、ギルド設立で農家を救済するのが主目的だったためだ。


 ギルドに加入すると多くの恩典が得られるため、布告以来、ギルド加入者が『ゲネンドルタウン』と名前を変更したゲネンドル領最大の町に創設したギルド本部ならび領内の主な町に設置したギルド支部に長蛇の列ができた。

 領民のギルド加入数は、当初の予想を大きく上回る数となり、ギルド設立計画は順調な滑り出しをした。


 元ゼーブランド伯爵の領地では、寒冷で雨の多い天候が長く続いたことにより、領民の主食だったトリゴ麦が不作となり、深刻な食糧不足をもたらし、餓死者まで出た。

 その問題を解決するために、私はギルドを通してポテトイモとミーリョの栽培を推奨した。ポテトイモは、寒冷地でも育ち、栄養もあり、腹持ちもいい。そしてミーリョは、山地や痩せた土地でも栽培でき、収穫量も多いのでこれもポレンタなどの主食になる。


          ポレンタ料理

   挿絵(By みてみん)


 ギルドによって新しく導入されたこの二つの農作物は、農民の食糧問題を解決し、領内の食糧事情を徐々に安定し、逼迫していた状況も改善されていった。

 不作による食糧不足から、商人たちは他の領地で購入した穀物を高値で領内で販売していたため、領民の生活を圧迫していたのだ。


 だけど私は、食糧不足を利用して儲けようとする商人たちを罰したり、取り締まったりしようとは思わなかった。そんなことをすれば、商人たちは他の領地に逃げて行ってしまうし、ゲネンドル領では自由に商売ができないという噂が広まるのは今後のことを考えるとよくない。

 ゲネンドル領の農業が回復し、経済の牽引力となれば、次は商業、工業の発展に力を入れなければならない。将来を見据え、ゲネンドル領のさらなる経済発展には商人の存在が不可欠だ。だから彼らから嫌われるような政策をとってはいけない。

 


 私は、領土内での物流を活性化するために、融資の一部で領土内を縦横する主要道路の整備をする計画を立てた。道路網の整備は、人の移動と物の流通を増大させ、時間を短縮させる。穀物、野菜、果物などの農産品、それに牛、豚、ガル()、ヒツジなどの肉や乳、卵などの畜産品の運搬を容易かつ短い時間で輸送することを可能とする。


 農家が生産した農畜産物を出来るだけ早く、消費地である町や都会に運べば、輸送経費は下がり、農家の収益は増大し、地域経済の活性化をもたらす。

 それは農業の安定した維持を可能にし、農家は増えた収益で農作物の耕作面積を増やし、家畜の数を増やすことになり、それは多くの新たな雇用(農夫)を必要とし、収入を得れるようになった農夫は消費をし、地域経済はさらによくなると言う相乗効果をもたらす。


 つまり、道路を整備するということは、いいことづくめなのだ。

 しかし、問題があった。それは、ゲネンドル領は広すぎたということだった。わが領地は、東西に110キロ、南北に80キロという大きさなので、銀行から借りた金の一部を注ぎこんでも焼け石に水だ。



□ 金貨1万5千枚、おおよそ円にして15億円ほどの価値です。

円で考えると少ないようですが、テルースの世界の物価は安いのでかなりの価値になります。


□ ポテトもイモも同じく芋ですが、作品中ではあえてほかの芋(山芋とかサツマイモ、サトイモなど)と区別するためポテトイモとしました。また、写真の黄色いイモは、ペルーで栽培されているインカ種のジャガイモです。

□ 肥料をやらなくても農作物が立派に育つ土地は、日本では見当たりませんが、海外では結構あるようです。ちなみに満州(現在の中国東北で、戦前は日本が植民地としていた)でも、やはり土地が肥沃で何もしなくても作物が育ったそうです。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ