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女B アイリス

 もう何度目かしら。

 アランがまた別の女の子とイチャイチャしてる。

 アランと付き合っていることをあまり人に話さないように言われているのは、恥ずかしいから、なんて言っていたけれど、こうやって気ままに好きな人をとっかえひっかえするためなんだわ。

 こんな都合のいい女役、そろそろ終わりにしなきゃ。

 父にも誠実ではない男と付き合っていることが知られ、来週にもお見合いすることになってしまった。

 ちゃんとさよならしよう。

 そう思いながらも、いつも口だけで何もできない私に、ヘンリエッタがかなり呪文に長けた魔法使いの恋愛呪文の噂を教えてくれた。

 踏ん切りがつかない時は、魔法の力を借りるのもありだって。

 そうね。言うとおりだわ。


 ヘンリエッタ、ジェシカと一緒に、村はずれにあるという魔法使いの家に行った。

 行きはしたものの、まだ決意がつかず、丁度留守だったこともあって、縁がなかったんだと諦め気味だった。でもヘンリエッタとジェシカが魔法使いの呪文を必要としてる。そう思って、一緒に待っていると、魔法使いがお弟子さんと思われる方と一緒に戻ってきた。

 私たちは家に招かれ、一人づつ魔法のレシピ作成のため、事情を聞かれた。


 浮気ばかりの彼と別れたい。

 口にした途端、恨む心を持っている自分に気がついた。

 彼のことは、諦めがついている。でも自分のこの惨めな心を少しでも慰めて欲しい、そう思っている自分がいた。二人が困って、ざまあみろって言えるような状況になったら、笑ってお別れできそうな気がした。

 もう二度と心を揺さぶって欲しくない。一時でもときめいてしまった過去を思い出し、ごめんの一言でずるずると許してしまう、愚かな私が、本当に嫌。


 家に戻り、もらった呪文をそっと燃やした。

 今度こそ、ちゃんとお別れできますように。

 一緒に買ったよく眠れるお茶が聞いたのか、次の日はさわやかに目覚めることができた。


 あの魔法使い、本当に腕は確かだわ。

 あれからほんの二日で、アランから私に別れを告げた。

 私は即答でOKして、思わず笑みまで漏れそうになるのをぐっと我慢し、俯いて立ち去る姿は、もしかしたら落ち込んでいるように見えたかも知れない。でも本当は校舎の影に入るなりにんまりと、今までの人生で一番の笑みを壁に向かって披露していた。

 今まで何だったの? 何てあっけない。こんなにすがすがしい気持ちになれるなんて!


 私がいなくなって、シャーロットさんもほっとしたようだった。私という存在をちゃんと知っていて、アランと付き合っていたんだもの。

 多分アランはシャーロットさんにも、付き合っていることは秘密、とでも言ったのでしょう。でもシャーロットさんはそんなのに従うような人じゃなかった。私のようなばかじゃないのよ。

 自分たちはラブラブ、お似合いアッピールを全身で表現して、これまで以上に人前でいちゃつくその姿に、どうしてだかあんなに自信満々に見えたシャーロットさんが、不安で、怯えているようにさえ見えてきた。

 急にしがみついてきたシャーロットさんに少し体勢を崩したアランを追い込むように、突然突風が吹き抜けた。

 目の前で、アランとシャーロットさんが風に吹き飛ばされ、学校の中庭の池へと体が傾いていく。

「わあああ、ママぁ!」

 …池に落ちる前、アランは確かに、そう叫んだ。

 そして、よりにもよって、何とか助かりそうだったシャーロットさんを掴み、二人揃って池に落ちてしまった。

 本当に不謹慎だと、そう思ったのだけど、懸命にこらえた笑いが少しづつ大きくなっていって、気がついたらおなかを抱えて笑っていた。

 ママって、…ママって言って、彼女を一緒に巻き込んじゃうなんて!

 少し遅れていたら、巻き込まれていたのは自分なんだわ。

 ああ良かった、魔法が効いて。


 父の勧めてくださった方とお見合いをして、でも今回はまだ保留と言うことになった。

 もしかしたら、私は黙っていたけれど、アランの元彼女と言うことはそれなりに世間に広まっていて、牽制されたのかも知れない。

 それは、自業自得ね。しばらく、どなたともお付き合いせず、自分の時間を楽しみましょう。

 そう思っていたのに、

「あなたが傷心なのは知っていますよ。一月後に、再度お尋ねしますのでお返事はその時に…」

 その方は、そう言って去って行った。

 そして、本当に一ヶ月後に、婚約を決める前にお付き合いからいかがですか、とお声をかけて頂いて…。

 ゆっくり考える時間はあったから、決めた心のまま、お受けした。


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