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徹夜続きのゲーム開発者、気づいたら自分が作ったはずの文明調律RPGに転移していました 第五部  作者: マスター


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第71話 踏み固めた泥は、また寝床へ戻ってくる

第71話です。


第70話では、布屋根と雨だれの流れを扱いました。


《風選び》で斜め庇を作ったことで、強い川風は寝床へ直接入りにくくなりました。


しかし、屋根の角度を変えれば、今度は雨水の落ちる場所が変わります。


澪たちは、《雨だれ筋》を作りました。


雨を落としてよい場所。


落としてはいけない場所。


一度受ける場所。


これを分け、青床、病人寝床、荷置き帯、火受け帯、通り帯へ水が落ちないようにしました。


しかし、雨水を逃がしても、人が何度も通る場所は泥になります。


清め場前。


寝床くぐり。


夜道。


そこがぬかるめば、泥はまた足について寝床へ戻ります。


今回の条件は、


《踏み固めた泥は、また寝床へ戻ってくる》


今回は、雨後の地面と、歩く場所を扱います。

雨は止んでいた。


けれど、地面は止まっていなかった。


外縁避難居住帯の清め場前には、無数の足跡が重なっていた。


最初は、ただ濡れた土だった。


そこを人が歩く。


桶を運ぶ。


子どもが走る。


荷物を持った大人が踏む。


すると土はこねられ、黒い泥になっていく。


神代澪は、寝床くぐりの前に続く足跡を見た。


泥が、青床の入口へ細く伸びている。


調律核が黄色く点滅した。


《雨後地面:ぬかるみ発生》


《清め場前:泥化》


《寝床くぐり:泥戻り増加候補》


《夜道:滑落リスク》


《泥落とし砂:消費増加》


《条件候補:踏み固めた泥は、また寝床へ戻ってくる》


ライカが足元を見て、顔をしかめる。


「歩くだけで、泥を作ってる」


「はい」


澪は頷いた。


「雨を屋根から逃がしても、地面で混ざります」


ミルカがしゃがみ、泥を指で押した。


「ここは水が逃げてない。人が踏むから、どんどん柔らかくなる」


フィリアも清め場を見る。


「清めた後に、また泥を踏んでいます」


「意味が半分なくなるやつですね」


澪は小さく息を吐いた。


リーネが困った顔で言う。


「でも、ここはみんなが通る場所です。避けろと言っても、ほかに道がありません」


そう。


泥の場所は、人が必要だから通る場所でもある。


清め場。


寝床入口。


汚れ場へ向かう夜道。


食料の小受け台。


そこを閉じれば、生活そのものが止まる。


だから、ただ「通るな」では駄目だ。


セラフィナが記録板を開く。


「作業名を設定しますか」


澪は、泥の足跡を見た。


水を止めるのではなく、足を置く場所を決める。


「《歩き床》」


セラフィナが頷く。


「記録します。《歩き床》」


澪は言った。


「歩く場所を、泥にしないための道にします」


***


《歩き床》は、最初から立派な道ではない。


まずは、三か所だけ。


清め場前。


寝床くぐり前。


汚れ場へ向かう夜道の入口。


そこへ、足を置けるものを並べる。


平たい石。


割れた板。


古い荷車の床板。


使えない帆布を畳んだ下敷き。


ただし、何でも置けばよいわけではない。


ミルカが板を持ち上げて言った。


「薄い板は沈む。滑る板も駄目。割れた板は足を切る」


サヴィが石を選ぶ。


「船荷の重石に使ってた平石ならある。重いが安定する」


トマが注意する。


「火受け帯の焦げ板は使うなよ。脆い」


ライカが小声で言う。


「歩く板にも赤黄青?」


澪は頷いた。


「はい」


青板。


すぐ歩き床に使える板や石。


黄板。


補修すれば使えるもの。


赤板。


割れている、滑る、焦げている、危ないもの。


ノアが絵板を描く。


「青は踏んでいい! 黄色は直してから! 赤は踏まない!」


「分かりやすいです」


澪は頷いた。


まず、清め場前に平石を三枚置く。


その横に、泥落とし用の砂箱。


清めた後、すぐ泥へ戻らないようにする。


次に、寝床くぐり前に古い床板を並べる。


板の下には小石を少し入れ、沈みにくくする。


最後に、夜道入口へ短い板道を作る。


全部を板道にする余裕はない。


だから、ぬかるむ最初の一歩だけを守る。


「全部じゃなくて、最初の一歩?」


ライカが聞く。


「はい」


澪は答えた。


「一番泥を作る場所からです」


リーネが頷いた。


「少しなら、人手も出せます」


「少しずつで大丈夫です」


いきなり道を完成させようとすると、資材も人も足りない。


だから、泥が一番戻る場所から。


まず三歩。


次に五歩。


それでいい。


***


歩き床は、すぐ役に立った。


清め場で手を洗った子どもが、石の上をぴょんと渡る。


泥を踏まずに食料列へ戻る。


それを見た別の子どもも真似する。


「石の上だけ!」


ノアが声を張る。


「泥に入らないでください!」


サヴィが笑う。


「遊びみたいにした方が早いな」


「子どもは覚えるのが早いですね」


澪も少し笑った。


しかし、大人はそう簡単ではない。


荷物を持った男が、板道を避けて泥の上を直進した。


近道だからだ。


板道は少し遠回りになる。


「そっちは泥になります!」


リーネが声をかける。


男は面倒そうに振り返った。


「急いでるんだ!」


その足が泥に沈む。


ずるり、と滑った。


抱えていた布袋が落ちかける。


アオイがすぐ支えた。


「大丈夫ですか」


男は顔をしかめる。


「……悪かった」


ミルカが泥を見て言った。


「一人が踏むと、そこが次の道になる」


澪は頷いた。


「だから、近道を塞ぐのではなく、近道側にも小さな歩き石を置きましょう」


「そっちも整えるの?」


ライカが驚く。


「人が通るなら、道になります」


澪は答えた。


禁止しても、必要なら人は通る。


なら、そこに小さな足場を置く。


ただし、寝床へ泥を持ち込まない方向に誘導する。


近道側に平石を二つ置く。


その先を寝床くぐりへつなぐ。


完全に自由にはしない。


でも、現実の足の動きは見る。


調律核が青く反応する。


《清め場前:歩き床形成》


《寝床くぐり前:泥戻り低下》


《近道踏み荒らし:誘導石により低下》


《夜道入口:滑落リスク低下》


「少し効いてる」


ライカが言う。


「はい」


澪は頷いた。


「道は、人の歩き方に合わせないと続きません」


***


問題は、雨だれ筋の溝の近くで起きた。


水を逃がすために作った浅い溝。


そこを子どもが飛び越えようとして、足を滑らせた。


「きゃっ!」


フィリアがすぐに支える。


怪我はなかった。


だが、泥が跳ね、近くの黄床の端へ飛んだ。


ミルカが顔をしかめる。


「水を逃がす溝が、歩く人には罠になってる」


澪は額に手を当てた。


「水の道と、人の道が交差してる……」


サヴィが言う。


「船着き場でも同じだ。排水溝は必要だが、足を取られる場所に作ると危ない」


調律核が黄色く点滅する。


《雨だれ筋溝:歩行交差》


《子ども転倒リスク》


《泥跳ね:黄床端部へ飛散》


《水路・歩行路交差管理:未成立》


澪はすぐに言った。


「渡し板を置きます」


ミルカが頷く。


「溝を埋めない。水は流す。でも人は渡れるようにする」


細い板を二枚、溝の上に渡す。


板の下は空ける。


水は通る。


人は渡る。


ただし、渡し板の幅は狭すぎないようにする。


ノアが絵板を掲げる。


「水の道はふさがない! 人は板を渡る!」


子どもが真似して言う。


「水は下、人は上!」


ライカが笑った。


「また標語が増えた」


「分かりやすいなら助かります」


澪は本音で答えた。


歩き床は、雨だれ筋とつながった。


水の道。


人の道。


泥落とし。


寝床くぐり。


全部が別々ではない。


交差する場所ほど、危ない。


調律核が青く光る。


《渡し板:設置》


《水路機能:維持》


《歩行安全:改善》


《泥跳ね:低下》


***


夕方には、《歩き床》は仮成立した。


清め場前。


寝床くぐり前。


夜道入口。


雨だれ筋の渡し板。


近道側の誘導石。


すべて短い。


本当に短い。


けれど、泥を寝床へ持ち込む量は減った。


調律核が青く光った。


《歩き床:仮成立》


《清め場前ぬかるみ:低下》


《寝床くぐり泥戻り:低下》


《夜道滑落リスク:低下》


《雨だれ筋交差:渡し板設置》


《泥落とし砂消費:低下傾向》


《条件候補:一部達成》


《踏み固めた泥は、また寝床へ戻ってくる》


澪は息を吐いた。


「一部達成」


ライカが足元の石を踏んで言う。


「道が少しできたね」


「はい」


「でも、これ、みんなが通ると石が沈まない?」


ミルカがすぐ反応した。


「沈む。あと、板もずれる」


調律核が、まるで待っていたように黄色く点滅する。


《歩き床:反復使用》


《板ずれ:発生候補》


《平石沈下:発生候補》


《夜間転倒リスク:再上昇》


《維持係:未設定》


《次条件候補:作った道は、直さなければすぐ壊れる》


澪は目を閉じた。


「……次は、維持ですね」


ライカが頷く。


「作って終わりじゃないやつ」


「はい」


道は作った瞬間から壊れ始める。


人が歩く。


雨が降る。


泥が動く。


板がずれる。


石が沈む。


だから、誰かが見て、直さなければならない。


リーネが静かに言った。


「係を作りましょう。歩き床を見る係を」


澪は頷いた。


外縁避難居住帯の足元には、短い板道と平石が並んでいる。


それは小さな前進だった。


けれど、その道を明日も道にするための仕組みは、まだできていなかった。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。


第71話では、雨後の地面とぬかるみを扱いました。


第70話で《雨だれ筋》が作られ、屋根から落ちる水の位置は少し整いました。


しかし、水を逃がしても、人が何度も歩く場所は泥になります。


清め場前。


寝床くぐり。


汚れ場へ向かう夜道。


そこがぬかるめば、泥はまた足について寝床へ戻ります。


今回の条件は、


《踏み固めた泥は、また寝床へ戻ってくる》


でした。


澪たちは、《歩き床》を作りました。


最初から立派な道を作るのではありません。


まずは、泥が一番戻りやすい場所だけです。


清め場前。


寝床くぐり前。


夜道入口。


そこへ、平たい石、古い床板、使える荷車板を置きました。


ここで大事なのは、全部を道にしようとしないことです。


資材も人手も足りません。


だから、まず最初の一歩、三歩、五歩だけを守る。


そこから少しずつ伸ばしていきます。


また、人が実際に通る近道も無視しませんでした。


禁止しても、人が必要なら通ってしまいます。


なら、そこにも小さな誘導石を置き、寝床くぐりへつなげる。


道は、上から決めるだけでは続きません。


人の歩き方を見て、少しずつ整える必要があります。


途中では、雨だれ筋の溝を子どもが飛び越えようとして転びかける場面もありました。


水の道は必要です。


でも、人の道と交差すると危険になります。


そこで、溝を埋めずに渡し板を置きました。


水は下を通り、人は上を渡る。


水の道と人の道を、交差する場所で分けることも大切でした。


結果として、《歩き床》は仮成立しました。


清め場前のぬかるみは少し減り、寝床くぐりへの泥戻りも下がり、夜道の滑落リスクも下がりました。


しかし、ラストでは次の問題が見えます。


作った歩き床は、人が歩けばずれます。


雨が降れば沈みます。


板は滑り、石は土に埋まります。


作った道は、直さなければすぐ壊れます。


次の条件候補は、


《作った道は、直さなければすぐ壊れる》


です。


次回は、歩き床の維持、見回り、直す係、夜間のずれ、道具の置き場所を扱います。


住める場所は、作って終わりではありません。


明日も使えるように、直し続ける必要があります。


原案・構想:マスター

物語構成・本文作成・文体調整:G(ChatGPT)

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