第二部 七章7『二人で水になれたら』
※リアナ視点――ノバル・ハン国港
カイルの腹を貫く、帝国の剣士の刃。
鈍い衝撃とともに、彼の身体から赤が滲み、波のように広がっていく。
その後、カイルの身体が次第に赤く染まっていく。
「カイル!」
私はその姿を目の当たりにし、ただ叫んでいた。
仮面の女性は駆け寄ろうとする私を止めるべく、服の肩口を掴むけど、私はそれを全身震わせるように引き払い、カイルの元へ駆け寄った。
カイルの手から剣が離れ、崩れる様に、膝をつき、そのまま倒れ込んでいく。
そんなカイルの頭を、私は抱えるように抱きしめ、膝の上にそっと乗せる。
胸の奥が裂けそうに痛い。
彼の身体は温かいのに、力はすでに抜け落ちていて――その右目は、もう私を映していなかった。
「カイル! 駄目、目を閉じないでお願い、カイル! カイル!」
私の叫びに、目の前の現実は何も応えない。
ただ静かに残酷で容赦がなくて、命を選んではくれない。
分かっている。
神もこの世界も人の願いに耳を傾けたりはしない。
ここはそんな夢を見ていい場所じゃない。
カイルの胸の動きは浅い、それでも命を捩じる様に私の名を紡ぎ出す。
「い、あ……な。に、げ」
リアナ、逃げろ――。
それはきっと私を生かそうとする言葉。なのに私は首を振った。
赤はじわりと広がり、命の灯は確かに小さくなっていく。
私はその全てから目を背け、ただ彼を抱き締める。
「カイルありがとね、あの日……私と出会ってくれて、見つけて追ってくれて。
私、貴方の方向音痴大好きだったよ……」
私の嗚咽に混じる声が震える。
彼のあの不器用な笑顔。
いつも道に迷っていた方向音痴。
そんなあなたが――私は大好きだった。
でもごめんね。でも私の願いはただひとつ。
あなたと最後まで……一緒に居たいの。
夜を踏みしめる足音がこちらへ近づく。
帝国の剣士が、剣を握り、こちらへ歩いてくる。
カイルはもう動けない。
そして私には彼を守る力はない。
足音が止まり、剣の柄に音が落ちた。
「一太刀で終わらせる」
静かな声。冷たさの奥に滲む、かすかな悲しみの色。
それでも私は怯えなかった。
怖いのは、ただ彼をひとりにしてしまうことだけ。
「ごめんね、カイル。
貴方はきっとこういうのを望んでない、筈だけど……」
それが、たとえ愚かな幻想だとしても――。
私は信じたかった。この想いがどこかに届くと。
だから――私は、剣を抜かれる音の中で、最後に彼の名をもう一度呼んだ。
「カイル……」
カイルの頬を撫でながら、私は彼の横顔を見つめる。
剣士は夜を背負い、影をまとい、剣を掲げる。
夜と影が私を覆う。
――カイル、ねえ……ありがとうね、私と出会ってくれて。
今度二人もしも、もしもね、生まれ変われるような事があれば、私とカイル二人で奇麗な水になりたい。
そのまま彼と静かに混ざり合って、流れていけたら。
どこまでも、何も汚されずに――ただ一緒にいられたら。
這いずる夜と影に――一輪の光。
闇と影に覆われた筈の、私の視界に走るのは幾多の光の線。
――ここは既に俺の領域、さあ銀月の光に抱か――
あ、いかんそこは、糸が切れッやばっ! 引っ掛か落ち落ち落ちぃぃぃ!
ド ガ ア ァ ァ ァ ァ ン !
……銀色の長髪の男の人が落ちて来た。
第二部 完
◇ ◇ ◇
参考までに第一部主人公
◆【マクガイア王国】
◆シルバー・ヴィンセント
年齢:16歳
身長:178cm
髪型:銀色(腰くらいまでのロングヘア)
幼少期は編み込んだりされてた、しかし今はケアはしっかり行うが編み込みはしない(恥ずかしい)三つ編みされた事もある(ルーシェ)
瞳の色:灰銀色
体型:細身の筋肉質
星:ギグ・マーガ
※ギグ・マーガの星詳細
恩恵内容:肉体の自己再生能力を持つ。高所落下や爆発でも死なないが、痛みは伴う。シリアスモード時に再生能力が完全に停止。痛いし泣きたいし、ついでに普通に死ぬ。
発動条件:常時発動(ただしふざけた精神状態で維持される)
弱点:本人が真剣になると恩恵が止まるという理不尽な仕様。
シルバー曰く。
『戦争が始まると真っ先に逃げて、戦後の酒場での祝いにしれっと参加している星』




