第47話 アユちゃんは見た その3
まあ、そんな感じで情報収集は進みました。順調です。おばちゃん達のセクハラ攻撃をかわす方が大変でした。元・芸能人と言うのが攻撃を加速しました。途中でおじさん達、気まずくて先に上がりましたよ。
そしておばちゃん達も夕食のために上がりました。
アユちゃんはちょっと情報がオーバーフローしそうなので、思いっ切りボーっとして温泉に浮かんでます。炭酸泉ですから全身アワアワです。
まあ、日も暮れて来たので上がります。
「食事は期待出来るそうですけど。がさつっぽかったのにね」
言いますね。
でもここは戦場ですよ。下手な軽口はいけません。今回は誰もいなかったようですが、一言で戦況が悪化します。
まあ、お疲れみたいですが。
軽4に乗り込んで出発です。カメラの準備も忘れません。
フードコートになっているオープンテントでは、配膳が進んでいるようですね。
豚汁はお姉様が、ご飯は自衛隊さんが装います。メインはカツみたいですが、他はちょっと遠いです。でも、5皿はありそうです。
取材しても良いですが、まあ、慣れ過ぎも良くないですし、何より、お腹がグーグー鳴ってカッコが付きません。
と言うわけで農家民宿山ん中。
おい、もちっと捻れ。
アユちゃん突っ込みそうでしたが、ガマンです。ホームページで民宿もやってるんだ、助かるぅ、とか思いましたが、店名は確認してませんでしたね。
「お帰り。早かったね。もっとギリギリだと思ってたよ」
「た、ただいま。お腹が鳴ってカッコが付かないので、帰って来ました」
大笑いされました。
「果物は何取って来たんだい? ル〇ーロ〇ンか、他のと合わせて出すよ。荷物は?」
「取材は続行中なので、商売道具だけです」
「ならもう座ってな。葡萄もだけど、他も出すから」
「ありがとうございます」
と言うわけで座って待機。葡萄7種盛とペッてするボールがすぐ出ました。
「これ全部ダンジョンのですか?」
「そうさ。一番手前がアユちゃんが取って来たやつさね、奥でもっと品種が別れてるんだよ。まだ誰も端まで行ってないと言う情けない惨状さね」
「端まで25キロでしたか」
「そうらしいね。3階以外誰も行ってないけど」
お察しの惨状です。
まあ現状、車で端まで行けるのは2階と3階だけです。しかも、2階はかなりの起伏があるので、それなりの車でないと行けません。
「はい。キュウリベースの浅漬けとマスのマリネ。献立が無茶苦茶なのは勘弁しとくれ。今ここの厨房がレシピの実験場になっててね、色々出て来るよ。はい。菜の花の白和えとごま和え」
あっと言う間に4皿並びます。
「基本全部ダンジョンの食材だよ。昆布とか牛乳とか卵とかは外のだけど」
「ありがとうございます、いただきます」
ちゃぁんと手を合わせて食べ始めます。浅漬けにはトマトも入っていて斬新です。ホームページには、夕食は定食とありましたが、みんな小皿が並びます。1品の量が少ないのが気合を感じます。これは絞めてかからないと、デザートや果物にはたどり着かないかもしれません。
「はいお茶。アルコールはどうするんだい?」
「ありがとうございます。みんな美味しいです。浅漬けのトマトにはびっくりしました」
出て来たのは寿司屋の湯呑みに焙じ茶とお酒のメニューです。
「それはね、安物のトマトは果肉が締まっててね、これならお漬け物も行けるかもと試し始めて、これなら人様にもお出し出来る2回目さね。まあ普通ミニトマトでやるものさ」
「そうですね。お弁当に良いからかも」
「そうだね、汁が出ないからね」
「えっとお酒は、まだもう少し取材を続けようと思うので」
「なら、8時半位から食堂に行ってみな。居酒屋みたくなるから色々聞けるよ」
「分かりました。行ってみますね」
もぐもぐ。
「シェフが白和えごま和えどっちが美味いって?」
「ううん、美味しいのはごま和えでしたが、白和えだと、食材色々使えますね」
「そうなんだよ。ごま和えだとどうしても合わせる物が限られる。はい。マスを冷しゃぶにして柚子酢味噌を和えてみたって。思い付の実験料理さね」
もぐもぐ。
「美味しいですよ。でも柚子酢味噌の味かも」
「やっぱりそうかい。ダンジョンのマスは淡白でいけない」
この時車の音がしました。
ごそごそゴロゴロ音がします。
「あっもういる」
「のあちゃんお帰り。工場から車が来たからもう出せるよ」
「アユちゃんが食べてるのも食べたい」
「はいはい」
のあちゃん座ると直ぐに葡萄をパクパク。湯呑みを取ってお茶汲みます。勝手知ったる感じです。
「皆さんこちらで食事ですか?」
「いいや、私だけ。みんなは協力者達と一緒だよ。でもここに来れば色々食べれるからねぇ~」
アユちゃん名刺の裏書きに、食いしん坊と書き足す事に決めました。
ゴロゴロとワゴンが来て配膳してくれます。
白菜の浅漬け、菜の花の白和え、シイラとマグロのお刺し身、カボチャと色々とお肉の煮物、マスの西京焼きと付け合わせ、イノシシカツと付け合わせ、カブの羹、豚汁、ご飯にデザートのガトーショコラです。中々にボリューミーですよ。その献立はどうなんだと言うご意見は受け付けます。
更に小皿でお肉が追加。
「イノシシの味噌漬けに生姜焼き。そのカツも豚汁もイノシシだよ」
「それはジビエなんでしょうか?」
「ダンジョンのイノシシだからどうなんだろう?」
「さあ? 何でも良いんじゃない? イノシシのクセに刺し身に出来る位に清浄だけど」
「ブタのお刺し身ですか?」
「ダンジョン7階のヤツ。大腸菌の1匹もいやしない。まあ、さすがに刺し身で出されても、食べたくないわよね~」
「確かに」
「そんな気色悪い物出さないよ。出さないはず、出さないよね?」
「出さんわそんな物! ほれ、シャモのハーブグリル」
呆れ顔のシェフさんが追加を持って来ました。デザートも乗ってます。そしてそのまま座りました。
もぐもぐ、もぐもぐ。
「さて、どうだい?」
「浅漬けとマリネはひとまず完成で良いんじゃない? 白和えは進化したね。ごま和えはびっくりするほど美味しくなった。どうやったの?」
「蜂蜜入れた」
「なるほど。でもそれ工場に下ろせる?」
「出来なくはないが単価がなあ」
蜂蜜は高いですからね。
「こんな感じでレシピ決まるんですか?」
アユちゃん、おばちゃんに聞いてみました。
「外の意見も欲しいからね。率直に言ってくれる分には大歓迎さ」
もぐもぐ。
「あっ、このカブラ美味しい」
シェフが親指立ててます。
「イノシシの肉の厚さはこれで良いんじゃない? 筋張った感じはなくなったね」
「俺もこれで決まりだと思う。シャモはどうだ?」
と急かします。
もぐもぐ、もぐもぐ。
「まだ硬いよ」
「そうですね。筋張ってぱさつく感じです」
「やっぱダメか。ダンジョンの肉はクセがあって使い辛い。一番クセがないのはウサギなんだがね?」
「ダメよ。5階でペットにしてるんだから」
「分かってるよ。ただの愚痴さ」
「ウサギがいるんですか」
「いるの。デッカいのが」
「…組合長さんがぶっ飛ばしてたデッカいウサギ」
「それ。25キロ、手脚伸ばして2メートル30センチのデッカいもふもふ。カワイイわよ」
「それはウサギ何ですか?」
「分類学上は、アナウサギが丸っと大きくなったヤツね。大きくなるための進化をして無いから、多分、ダンジョンから出すと死んじゃう」
「えっ!」
「あの筋肉を支える骨格になって無いし、心臓もあの大きさに応じた物になって無い」
「そんな物を作って、神様どうするつもり何でしょうか?」
「多分意味は無いと思うのよ。ダンジョンの地平線に意味は無かった。これも多分、肉にするのに良いんじゃね?位で大きくした。分かんないのはシャモよ。あんな人工種が出てくるのか。しかもクセが強くて使い辛い。何で?」
「分かりません」
「即答せずに考えようよぉ」
もぐもぐ、もぐもぐ。
「畜養とかして無いのですか?」
「おお、良いとこ気づいたな。2階で5キロのウサギとシャモ飼ってる。その成果の一つがこのプリンだな」
「ああ、卵が採れましたか。いただいても?」
「そりゃ食ってもらうために持って来たからな」
ほれほれと進められるのをちょっと留めて定食を済ませます。豚汁が1/4って感じです。2口で済ませて、ふうと一息、視線はプリンとガトーショコラに行ったり来たり。プリンから行く事にしました。
「あっ、もう完成した味。シンプルに濃厚です。力強い。美味しい。こんなの初めてです」
「確かに。うーん、卵の味が変わった?」
「そうなんだよ、のあちゃん。こりゃもう少し広げて数増やさないと統計出せないわ」
「気になってたんですが、無茶苦茶な献立と関係したりします?」
プリンを一気に片付けたアユちゃんが聞きます。
「優秀優秀。ダンジョンで採れる作物の栄養価が外のと違うの。一から育てたらどうか、頑張って収穫して、作付けを急いでもらってるんだけどね。結果が出るのは、早いのでも15日後よ」
「ああ、官僚さんにとって、ここは良い実験場何ですね。公立の試験場と違ってマンパワーがあるし、いち早く実験体制を構築しているし」
「それね。精神疾患の身障者さんが安定してるの。ここは、寒暖差を利用したブランド野菜や穀物を加工して利益が出る仕組みなの。アユちゃんがどこまで調べて来たか分かんないけど、身障者を使うビジネスモデルとしては、精神障害知的障害の身障者を身体障害者で管理するビジネスモデルよ。身障者への還元率は置くとして。ただ、その親子さんを巻き込むのが他と違う点。組合長さんとしては、過疎地への人口流入の動態実験何でしょうけど、ダンジョンはさすがにイレギュラーでしょうね」
「のあちゃん、その還元率と言うか、仕事に対する解答を見ようよ! 身障者雇用に対する補助金は丸っと消えてる。俺らの頑張りが重要なんだよ! 親子さんを巻き込むって言ったけど、身障者を雇用する事で、技術を持った保護者や家族を巻き込むビジネスモデルなんだよ。主と従が逆なんだよ!」
組合長さんをディスられて、シェフさんちょっとお怒りです。
「怒られてしまいました。まあ、アユちゃんは、アユちゃんの目で見れば良いわ」
「はい」
シーンとしてガトーショコラを食べて葡萄もパクパク、ご馳走様しました。
「この後どうするの?」
「雇用主に報告です。その後食堂ですね」
「男共が騒ぎそうね」
「のあさんの方が騒がれそうですが?」
「私はこんな所に来るなって追い出されますー。まあ、もうそんな事は無いでしょうけどね。おばちゃんに聞いて、一杯引っ掛けて寝るかと、結構うきうき行ったら、女子高生は帰れ!よ! 失礼しちゃうわ!」
今ではアラフォーの官僚と知られてますが、1週間ほど前は、誰この女子高生でした。まあ、身分証明書を提示して、一番良い酒せしめたんですがね。
「その失礼なヤツがコイツだよ」
おばちゃんが指差すのはシェフさんです。微妙な空気が流れます。先ほどのやり取りも、中々に微妙な含みがありそうですね。
詰めの部分で滞っています。
肝心の部分をお待たせするかもしれません。
のあがどんどんバカになってきて困ります。




