第31話 男系男子?
「庭田栽由、素行調査もするのか」
「ああそれね。宮内庁に庭田家の照会をしたら庭田家全体の調査依頼が来たの」
内調、内閣情報調査室が栽由を調べているのは、神宮寺ダンジョン担当補佐官から『政府機関が関係を持つ相手として、『農業法人 山ん中組合』と代表社員『庭田栽由』は適格か』、と言う調査依頼があったからです。
納税記録調べると、金持ってんな~、てなって、原資は何だと調べたら爺さんの遺産で、戸籍から調べ始めると旧宮家に行きついて、びっくりして宮内庁に照会した訳です。そしたら、旧有栖川宮家の家系図と共に、庭田家全体の調査依頼が来たのです。
「それじゃあ、有栖川家に男系男子が残っているって事か」
「有栖川家自体の男系は絶えてるのよね」
「ああ、血脈は繋いでいるが女系に移った」
「まあ、有栖川家自体がもう無い訳だが」
「何で今更よ?」
「大方、宮内庁自体見落としてたんだろう。記録によれば、生まれた直後に臣籍降下した養子だ。しかも、三つ子の一番下。これ位の条件が無いと、当時の皇室典範を躱せなかったんだろうな」
今も昔も、出すも入れるも、皇籍にある者の養子を認めていませんからね。結果、幽霊みたいな男系がいた訳ですね。
「有栖川宮栽仁親王と貞宮多喜子内親王の第八子五男重仁か。名前こそ出て来るけど、三つ子の中で一人だけ陛下への報告も無いから、死産かそれに近いと言われている。それを逆手に取って養子に出すとは、…やるな」
「栽仁親王って、昭和天皇の主治医も勤めたって事ですし、ヤブじゃなかったって事ですよね」
「それは分からんな。名前だけって事もあるし。まあ、開設した医院の逸話は盛り沢山だな。言わばインターン使って庶民相手に無料診療をしたり、無料に釣られて来た金持ちから寄付金をせしめたり、医院を多喜子内親王が建築勉強してプレハブで建てたり。一本、小説が書けるぞ」
「結局何で庭田家に養子に出したの」
「経歴だけ見ると、多喜子内親王と妻の公子の仲が良かったみたいだが、手記とか日記とか探してこないと分からんぞ」
「有栖川家は絶えて遺品はどうなったの」
「調べないと分かりません」
「宮内庁が庭田家の調査依頼を出した主旨は何?」
「ああ、そこからか。とりあえず、有栖川家から宮内庁に遺品が戻ってないか確認だな。日記とかあればそれは宮内庁に任せよう。宮内庁としては、本当に記録が正しいかが第一だろう。自分達でやらせれば良い。庭田家に確認するのも、宮内庁がやるのが筋だ。重仁王が、間違い無く栽重だと証明するのは、身分を明かして正面から当たる必要がある。内の仕事じゃない」
「そうね。庭田家については家系図を作りましょう。後は、どうせお婿さん候補だからその辺のピックアップね」
「そして、金・人・物、ですね」
「そう言う事」
「宮内庁は実子様で痛い目を見たからな、玲子様と芳子様で失敗するわけにはいかんか」
あれは黒歴史ですね。もう実子さんは日本に戻ってこないでしょう。宮内庁が先に情報を得ていれば、十分、対処可能な案件でした。人気高い内親王でしたが、惜しい事です。こんな事やっていると本当に天皇家の血が絶えますよ。
「しかし、この手の仕事は楽になったな。データベースに繋いでパソコンの前から動かずに終わる」
「終わりましたか」
「終わったよ。未婚の男系男子が4人、内、適齢期が三人だ。残り一人は乳児だよ」
「そっちは皇室典範が動かないと意味無いですよ」
「家系に禁治産は無し。交通事故による収監者はいるが、他はきれいな物だ」
「交通事故の内容は分かります?」
「それは司法に当たらないと」
「じゃ未婚男性は?」
「本家の長男栽晴32、次男家の次男栽和24、そんで三男家の次男が栽由28だな。三男家の長男の初子が栽尚で4ヶ月」
「庭田家の人間は自分達の出自を知ってるわね」
「初代かな、栽重以後、通字が重から栽に変わっている。よほどの言いくるめがない限り、知らないと維持出来ないだろうな」
「今の時代ではそうですね」
今の時代、通字なんて知らないでしょうね。大体、通字なんて予測変換に出てきませんよ。
「でも、本人達に確認しないと、確定はしませんよね」
「それはそうね。まあ、それは宮内庁の仕事。それでその三人で優秀そうなのは」
「断然栽由だな。大学3年でラグビー日本代表になってる。他はさらっと浚った限りでは何も出てこない」
「でもラグビーは辞めたのよね。その辺は?」
「当時の記事によればね、代表戦で怪我している」
「じゃあそれかな。まあ裏取りがいるわね。それで内から人を出す方が良い?」
「この位なら、探偵に任せて大丈夫だろう。ただ、山ん中組合は調べ難い。田舎過ぎる」
「まあ探偵の腕次第でしょ。それじゃあ下請けに出すとして捕まりそう?」
「それです。ダンジョン騒ぎで、探偵が出払っている所が多いです」
「そうなのよね。そうなると貴方が出る事になるけど内調としてのダンジョン探査メンバーに選ばれるているしね」
「それです。この際、ダンジョン探査を山ん中組合でやろうかと」
「ああなるほど。それも良いわね」
「それじゃあ、三男家は私が担当します」
「うんお願いね」
「じゃあ、俺は何とか探偵を捕まえよう」
「捕まるの?」
「それ以上は聞かないで下さい」
「そうまあ良いわ」
それは黒そうですね。まあ、何かを盾に仕事を押し付ける位でしょうが。
「末っ子長女は外務省に任せるとして、みんな金持ってるわね」
「初代栽重が金で資産投機しています。後は、納税記録からすると仮想通貨ですね。一族上げて買って、一斉に売ってますね。18年納税ですから、暴騰のピーク辺りにきれいに売り抜けてますよ。」
「ああ、今も多少なりと持っているのは、今収監されてる次男家の長男栽克だけだ」
「ふうんでそいつの裁判内容は?」
「雨中のスリップ事故だが、跳ね返って対向車線に突っ込んだ。結果的に老人三人が死んでいる。まあ、カーブの出口に水が集まっていたようだが、基本、飛ばし過ぎだな。民事和解は済んでる。後、二月で出て来るな」
「仮想通貨は誰主導?」
「納税記録からすると、この栽克と栽由だな。他の一族が全員同額だが、二人は突出している」
「ふうん先見があるわね。他に何か出る?」
「今の所無さそうです」
「じゃ1次報告ね。上手く行った時にはあんな事にはなりそうに無いって喜ぶでしょ。データちょうだい」
「送ります。家系図は、重仁王から三代遡ってあります」
「助かる。これで素行と周辺ね。任せるわよ」
「了解」
もう栽由と玲子様が出会ったって知ったら、どう思いますかね。
有栖川宮栽仁王、貞宮多喜子内親王、共に早逝夭折した皇族です。
逸話に付いてはちょいちょい出して行きますので、いつか書くと思います。
まあ、栽仁王は盲腸では死ななかったが、健常者の体力は回復出来なかった。
多喜子内親王は、白粉による水銀中毒にはならなかった。
その程度で大丈夫です。
庭田家は、直系の絶えた公家系伯爵家です。
まあ逸話はちょいちょい出して行くつもりです。




