第21話 ウォール街降人警報
ウォール街には人が降る。
飛ぶのは、主に穀物先物のトレーダーが多いだろう。資源先物がそれに次ぐはずだ。
穀物価格高騰は何よりも確実な事だった。そのはずだった。
元々の不作による高値、そこにウクライナ戦争で高騰が始まり、インド、パキスタンの異常熱波が拍車を掛けた。アメリカ国内でも作況の低下が予想される気象傾向で、高値要素はあっても、安値要素が何もない。
そんな状況を一変させたのが『ダンジョン』だ。
ブラック・フライデーの始まりは、同盟国日本のおかしな会見だった。
エンペラーがダンジョンを語るおかしな会見はオカルトだ。
AIはダンジョンの情報の全てをフェイクと判断した。
オカルトだし当然だ。
しかし、それが事実であると、判明した。
AIの判断を変えるのは思ったよりも大変だった。
判断の基礎の基礎になる情報を変える必要がある。結局、AIを一度停止させた。
それは取引の中断を意味する。
AIが復帰した時、既に、ブラック・フライデーは終わろうとしていた。
主任トレーダーも兼ねる社長の顔が青い。
AI判断による安定した取引がウリの、利益をあまり重視しない会社。
そんなトレーダーに金を預けるヤツがいるだろうか。
ここの出資者のスジは良くない。
元々がマネーロンダリングが目的の金だ。儲からなくても問題はない。手数料も高いしプレッシャーはない。儲からなくても問題ない、天国のような仕事だ。儲からなくても問題ないが、大損ならどうだろう。
真っ当なスジの金なら会社が潰れるだけだ。
ここは違う。
彼は飛ぶだろう。
生命保険の受け取り名義人を変えて。
彼の家族に送るメッセージを考えなくては。
さて、この混乱の中でAIシステムエンジニアを雇ってくれる会社があるカネェ。
ああ、それでダンジョンなのか。
ううん、俺もまだ若いし、一度、体を動かして稼いでみるのも良いか。
どうにも話が膨らみませんでした。




