第22話 あるアフリカの草原で
当話次編に合わせて、若干修正
現地調達➡️その場で用意
程度の修正です
マサイマラからンゴロンゴロに変更した関係です
ケニアからタンザニアで、スワヒリ語の習得も必要になり、マサイ語の習熟度を低下させました
「村長、ダンジョンができるとか言ってたよね。それできてるよ」
「何じゃ、まだ暗いじゃねえか」
「まあ、そう言うなよ爺さん。見たらおっ魂消るぜ!」
「はあ、分かったから、そう急かすでない。懐中電灯はと」
枕元をアサって手に取ったのは、グルグルソーラーラジオライト。ハンドル回して発充電、ソーラーパネルで充電、ラジオも聞けて、ライトで照らせる優れ物、UBSでスマホの充電もできてお得です。まあ、炎天下で充電しようとすると、熱過ぎてガワが溶けますが。
「で、何ができたんじゃ」
「ダンジョンだって言ってるのに村長」
「そうだぜ爺さん。朱い変な門だよ」
「どこにできた。多分、5メートル位のヤツじゃろ」
「そうだぜ。小ダンジョンってヤツだ。牛囲いの中の、村中門の傍だ」
「何と、村の中か。行くかの」
「おお、本当にできとるの。こりゃ、村々に一つずつできとるかもしれん」
「そう思って隣のに電話してみた。できてたぜ」
「ソーラーアンテナは便利じゃの」
今では、ほぼ全ての村で携帯電話が使えます。4Gです。
「今、日付が変わった頃かの」
「日付が変わったらコイツができた。中を偵察して、コイツは爺さんを叩き起こしてでも知らせる必要があると思ったのさ」
「中はどうなっとる」
「直接見ないと信じやしないさ」
「まずは、自分の目で確かめてよ」
「分かった分かった」
そう言って村長はゲートをくぐりました。
懐中電灯の光に照らされたのは泉です。周りは草地が広がっているようです。
泉に光を向けると水底まで透き通り、湧水に揺れる小石まで見えます。
村長は自分が泣いている事に気付きました。涙を拭いますが止まりません。
「飲んでみて。美味いよ」
「! 美味い! こんなに美味い水があったのか!」
「村長、夜が明けたら牛達を入れてやろうと思うんだ」
「女共が怒らんか」
「泉は道沿いに四つずつあるよ。道の反対側にもね」
「牛が独占は出来んよ」
「八つも泉があるのか」
「道からライトで確かめた範囲にね」
「この階層中ならもっとあるだろ。俺達もこの辺しか見てねぇよ」
「興奮してもう寝れそうにないの。お前らもじゃろ。牛達が起きとったら暗い内でも入れてやれ。一番近い泉に柵を巡らそう。人間用じゃ」
「二つともか」
「ああ、こんなにも豊富にあるんじゃ、使用用途で分けたがええ」
「ああ、日本のテレビ局が来た時に言ってた」
「カンジか。雨が降り過ぎて困るって言ってたが。でもまあ、探検してからにしようぜ。まだこの泉しか知らないんだ。材料だって、この下にあるかもしれねえ」
「そうだね」
「ヒナタが巡回から帰ってくるのは、いつじゃな」
「予定通りならもう帰ってるはず」
「帰ってるぜ。いつになく疲れてたから、食いもん押し付けて、ネレって言っといた」
ヒナタと言うのは、日本の青年何とか言うボランティアです。彼女は環境生態学の研究者で、環境衛生何かを教えてくれます。彼女が来てから、明らかに乳幼児が死ぬ数が減っています。村々のみんなは、コロナ騒ぎで彼女が期間を延長してくれた事に感謝しています。ヒナタとしては、
「やった、タダの研究延長~」、
ですが。
「そうか。神様が王女に降りたのは日本じゃな。質問責めにされたんじゃろ」
「そうだね」
「ところで、食いもんとは何じゃ」
「ウサギのロースト」
「ああ、彼女の好物じゃの。何でそんな物持っとったかは、聞かんでおいてやろう」
「うるせージジイだ」
「兄さん、バレバレだよ」
照れ隠しはほっといて、朝一番で6階まで降りて、肉が取れるか確認する事を、村長とその外孫達は決めました。
ちなみに、村長の息子は大学の寮、娘達は闊達で、娘婿が村長を継ぐと思われています。蛇足ですね。
空が白んで来ると、ダンジョンの中も白んできます。ただ、ダンジョンの中の方が少し涼しい気がします。
女達をダンジョンの泉に案内すると、皆静かに泣きます。男達も泣きますが、彼らは警戒する牛達をダンジョンに導く仕事があります。それが済むと、6階まで降りて肉の確保です。女達が昨日の残り物を温め直して朝ご飯、6階に急かされる中、腹ごしらえです。
慌ただしく出発ですが、女達も付いて来るようです。この距離なら水汲みなど終わったような物だそうです。実際、バケツリレーで届きますね。
6階を目指しますが、2階で捕まりました。
そこは、水が引いては寄せて、引いては寄せて、不思議な水の平原です。
「海よ。舐めてみなさい、塩っぱいから」
「「「「「塩っペえ!」」」」」
「塩の取り方は後で教えてあげる」
「ヒナタ、来てくれたのじゃな」
「そりゃ、こんな物出来てれば行くわ。アディ、悪かったわね、あなたの晩酌までもらっちゃって」
照れ隠しが炸裂していますが、女達の雰囲気からすると、脈なしみたいです。頑張れ青年!
「そうか、これが海か」
「村長…、スマホで見た事あったでしょうに」
「いや、こんなえっと…」
「そうね、『波』って言うの。他に『うねり』って波と、『潮』って言う波があるの。釣りも良いけど、『簀立』漁かな」
「ワシらの釣り竿ではダメか」
「行ける行ける。ただ海の魚は、この辺の雨期に釣れる魚より大きいの。一番丈夫な竿に糸じゃないとダメよ」
「アディ、何人か連れて竿を取って来るのじゃ。魚籠も忘れるな」
「ザルと干し肉作りの網も持って来て。私達はあの辺にいるから」
「何だ! 海から木が生えてる!」
「『マングローブ』って言う林ね。後、反対側の森も、この辺の森とは違うわよ」
「本当だ」
生温い視線がアディを襲いますが、気付きません。
「そうだ、餌」
「その場で用意よ。ダメなら私のおやつね」
「分かった。行って来る」
「後、男衆何人か『魔石』を取って来てちょうだい」
「魔石って何だ」
「ネズミを踏み殺してたでしょ。あれよあれ。あの辺にいるはずだから」
そう言って指差すのは3階へ降りるスロープトンネルの上の辺、森ではなく開けている辺りです。
「後、もっと大きい魚籠がいるの。作って。目は粗くて良いから」
そう言って示す大きさは1.5メートルほど、びっくりする男衆に、
「蓋も作って、海に浮かべるの」
と、砂に簡単な設計を書きます。
「なるほど、でっかい籠じゃな。ジャン、任せた」
そんな時に電話が鳴ります。
『はいはいヒナタ、…そう、うんうん……なっなるほど。……それ、多分ローマン・コンクリートよ。まさか、火山があるとはね~。日本には、砂利と水を混ぜればそのままコンクリートに使えるような灰を吹く火山があるのよ。……こっちには、海が出来てるよ。今度行く時は、お魚持って行くね。海のお魚美味しいわよぉ。うん、じゃ』
「誰じゃ」
電話がが切れた途端に質問です。
「レンジャーさん達の所よ。1階に透明な川があるって。で、2階は火山があって灰が降ってるって」
「火山じゃと!」
「びっくりだよねぇ。村長さん、多分、この辺で海があるダンジョンはここだけよ。魚と塩がこのダンジョンの特産品ね。しばらくは、魚と塩を売って、必要な物を買うの。その間に、11層より下に降りて、このダンジョンの本当の特産品を探すの」
「そうか」
「ここのマングローブの感じだと、『潮の満ち引き』は2メートル位。網を立てて漁をしましょう。『簀立漁』なら作ってしまえば、子供でだってできる。それを干して売るの。塩は、ちゃんと設計すれば、基本何もせずに出来るの。時間は掛かるけど。最初のうちは、海水を炊かないとダメかな」
「そうか、何も想像がつかん」
「今は満ち潮、次潮が、水が引いたら分かって来るよ。女衆、蔓網がいるの。取りあえず、ハンモック10枚位」
「もっと沢山って事ね。任せなさい。みんな行くよ」
「村長さん、アディが帰って来たら、下の階の様子見をお願いしましょう。写真さえあれば、何とかなると思うの」
「はあ、…魔性の女じゃの」
「アディがウブ過ぎるだけよォ。子供達、こんな虫みたいのがいると思うの、探してくれる」
「「「「「はあい!」」」」」
そう説明したのはカニです。
アディの春は遠いようですね。
合掌。
ローマン・コンクリートは、正確には火山灰モルタルです。こっちの方が通りが良いので。




