19 迷宮図書館
「――硬きものは砕け散れ《ハードブレイク》!」
金属製の巨像の1体が崩れ落ちる。
他にもそこかしこに色々な残骸が散逸している。
ここにくるまでに石像を始め、動く骨たちや、実体化した挿絵など数多くと戦ってきた。
ここは〈迷宮図書館〉最下層。
辺りにうごめく巨像と共に、いくつものぎっしりと詰まった書架がこちらを見下ろしている。
「マオ、まだかよ?!」
さすがに最下層なだけあって、準Aランクの2人にも余裕は少ない。
マオは目を閉じ手を掲げていた。
掲げた掌の丸い光の玉が少しずつ大きくなっていき、ボーリングの玉ぐらいになった途端、閃光となって辺りに広がる。
光は部屋に満ちると途端に収縮をはじめ、ボーリングの玉ほどの大きさへ戻った。
その玉を〈コンパネ〉に落とすと、吸い込まれるように消えていった。
《目録作成魔術》―マオが学者になろうと勉強中に良くお世話になっていたものだ。
本来なら白紙の本なりに落とし込むのだがMAPに書き込みが出来るので、地属性の《ロケーション》で周辺図を取り込みそこに落とし込んでいる。
落とし込むと題名も翻訳されるので、更に便利。
そして、《目録作成魔術》で作られた目録には一つ便利な機能があった。
「これで完成。もうちょっと頑張って。検索『召還』」
――該当0
そう、検索システム。
題名だけだが参考程度にはなる。
「検索『召喚』」
――該当0
「検索『送還』」
――該当0
「検索『異世界』」
――該当0
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「まだか!!」
ポンさんの声に疲れが見える。
次の検索で何も出なければ一旦戻った方がいいかもしれない。
ラストに何を検索するか少し考え、言葉に出す。
「検索『Lost Eden』」
――該当1
『なぜなにLost Eden』
地点:※MAP
「なんかあった?! 場所は…そこの先。一番奥だ」
「おう、道を開ける。取って来い! 回り振りぬき、弾き飛ばす《フルスイングインパクト》!」
強烈な一撃に巨像たちは吹き飛ばされ、そこへシロが念入りに《スパイダースレッド》をぶちまける。
本を取り戻った頃には、《スパイダースレッド》を引き剥がして起き上がってきていた。
「とりあえず戻ろう」
「おうよ」
「承知」
後ろから迫ってくる地響きから逃れるため、遁走を開始した。
――
『序文
まず、Lost Edenとはなにか。
それはこの世界のことだ。
私はそう呼ばせてもらうことにした。
なぜそう呼ぶのか、その理由を語ろう。
かつて、この世界には1つの大陸だけがあった。
そして、その地を守護する神々
力を司り、地人を生み出したる〈闘神ユーステイト〉
技を司り、草人を生み出したる〈隠神シアネイン〉
心を司り、森人を生み出したる〈聖神フォリア〉
知を司り、街人を生み出したる〈魔神ロードメア〉
かの者らの加護の元、豊かな繁栄を極めていた。
だが、ある日を境に全ては変わった。
知に使えし者の1人、この世界の全てを知るとまで言われた者が彼方へとつながる道を作る術を生み出した。
その道を辿って現れたものは素晴らしく、神々は道を作る術を生み出した者を大いに賞賛し不老不死を与えた。
そして、神々はそのものに心酔し、崇拝し、そのものの寵を争った。
神々の争いに空には雷光が乱舞し、海は渦を巻き、大地が割れた。
気が付けばそのものは居らず、神々は嘆き悲しんだ。
そして、そのものを探すために神々は彼方へと去っていった。
長き争いに文明は崩壊し、神々は消え去った。
楽園は失われ、もう戻らない。
故に、私はこの世界をLost Eden―失った楽園と呼ぼう。
ヌクス・ロー・ハニ著』
――
「――で、なにが書かれていたんだ?」
《言語読解魔術》を使い読み終えるとポンさんが聞いてきた。
「この世界の歴史とか、あと地理や史跡、言い伝えなどだな。なんか観光ガイドっぽい」
「……って戻る方法じゃないのか?!」
「いや、手がかりはあった」
言い伝えの中に『全てを知る者は自ら作った従者と共に山の奥へ消えた』とあった。
そこは、ここ〈ドーリカ大陸〉の中央部、未開の土地。
「〈霊峰サンクリフ〉、そこに手がかりがある!…かもしれない?」
「…疑問系でござるか」




