18 再会
「お待たせ致しました。こちらが更新されたギルドカードになります」
ちょうど職員が戻ってきたので受け取り、外に出ようとする。
固まっていた太っちょが意識を取り戻し、止めようとしてきた。
「ちょっ、待て!」
関わっていると日が沈む。
ここの書店がいつまで営業しているが判らないが、早めに行った方が良いだろう。
「というわけで、さらば」
「いや、何が?!」
捕まえて来ようとするのを避け、出入口へ向かう。
人望があるのか他の冒険者たちも手伝いだしたが、大きさと機動力の違いで捕まらない。
引き離し出入口に差し掛かると、ちょうど人が入って来た。
「何の騒ぎでござるか?」
「シロ! ちょうど良い、そいつを捕まえてくれ!」
「合点承知でござる。《スパイダースレッド》!」
危険信号に従って回避する。
もう少し出入口に近ければそいつを飛び越えて行ったのだが、距離が足りない。
向けられた掌から糸が噴出し、追いかけてきていた冒険者たちが絡まる。
粘っているところを見ると粘着力もあるのだろう、移動できる範囲が狭まった。
入ってきた人物は出入口に陣取っている。
下手に飛び上がれば先ほどのスキルの餌食だろう。
奥の手を使えば避けれるだろうが、これだけ人目があるところでは使い難い。
(《スリープミスト》や《パラライズミスト》を使うか? 距離近すぎて自分も巻き添えくらいそうだが……)
考えている間にも残りの冒険者たちが追いつき捕まえようとしてくる。
また糸が飛んで来たので冒険者たちを盾にして回避したが、出入口付近は糸塗れで道が制限されている。
「ところで、何で捕まえようとしているのでござるか?」
絡まっている中に居た太っちょにそんな質問をするシロと呼ばれた人。
よく見ると人の背丈の半分ほどの、革鎧を纏ったコボルトみたいな人だった。
まあ〈ソウル〉効果なんだろうけど、白色って何なんだろう…雪とかかな?
「いや逃げようとしたんでつい…」
「ナンパに失敗したでござるか?」
「いや、違うって!」
(…今のうちに出るか)
気付かれないようにそっと抜け出ようとしたが、目聡く見つけてくる。
「ちょっと待てって、俺だよ俺!」
「…オレオレ詐欺でござるか?」
「ちげぇ! ポンだってば!」
「…ポンさん?」
田中ポン―茶色の毛並みでぷくぷくな体、垂れ目のような黒い隈取り模様付きで狸にそっくり、そんな猫。
改めてみると髪の色は茶色で垂れ目、太っているのは見ての通り。
ポンッと手を一つ打つ。
「…って、ポンさん?!」
「おうよ」
―――
「――というわけだ」
片づけを終え、落ち着いて話をするために場所を変えた。
日が落ちていたのでスキル書を今日買うのは諦めた。
今居るのはポンさん達の借家だ。
そこでこれまでの経緯を聞いていた。
ポンさんは1年以上前にこの世界に来たという。
場所がわからず状況もわからないので最初は猫のままで居たが、野良猫を見かけず目立ったため、人化しているとのこと。
巻き込まれた経緯については、飼い主とLost EDENをはじめ、ログアウトした時に気が付いたらこちらだったという。
なんでベルクハントと名乗っていたかというと、ポンって感じじゃないだろとのこと。
今は元に戻っている、やっぱり猫の方が楽らしい。
もう1人は里見シロ。
行動範囲外なので会った事は無いが駅向こうの神社の飼い犬で、元からポンさんの知り合いだったらしい。
彼女も巻き込まれた経緯はポンさんと同様だという。
その後ポンさんに出会って行動を共にしているようだ。
2足歩行出来ているのはスキルの効果らしい。
口調は神主と一緒に時代劇を見るのが趣味で、それを覚えたからだという。
来た日付を聞くと、オレがこの世界に来る前日だった。
他にあちらから来た者に会った事は無いというが、たった2例のはずは無いだろう。
ニュースで見かけた覚えは無いが、昨日の今日だから騒ぎが大きくなっていなかっただけかもしれない。
2人ともランクはBランク。
元に戻る手がかり探して動き回っているためあまりランクが上げてないのだという。
こちらの状況も教え、目的が〈迷宮図書館〉だと伝える。
「あそこか。俺達も行ったが、文字がな…
少しは読めるようになったが、さすがに無理だった」
「それはまあ、方法あるんで」
「…ほほう?」
「…そういや、そういうの使えるんだったな」
「そういうこと。手伝ってくれるか?」
「もちろん」
その後は互いが何が出来るか〈コンパネ〉を見せ合い確認する事になった。
名前:ポン
種族:〈猫又〉
職業:〈戦猫〉
レベル:88
名前:シロ
種族:〈神犬〉
職業:〈斥候犬〉
レベル:86
レベル高!
オレはまだ46レベルだって言うのに。
足手まといになりそうだ……
「…〈神犬〉って?」
「ああ、拙者の家系は盤古に連なる一族で多くの名犬を輩出したと言い伝えられてござってな。
桃太郎や花咲爺の犬も一族の者だと教えられたでござる。
眉唾に思っていたでござるが幾割かは真実なのでござろう」
「ふむふむ。
…そういえばポンさんは《猫術》持ってないの?」
《妖術》があってその系統に《人化》はあったが《猫術》は無かった。
ほか《妖術》系には《七生報復》とか物騒なのを見かけたがそれは置いておこう。
それと元から猫だからか《猫》シリーズが無く、《猫又》で一括されていた。
「《猫術》ってなんだ?」
「こういうのだ」
自分の〈コンパネ〉を見せる。
目を丸くしていたが、動画を見せたところで反応が少し変わった。
「ちょっと止めてくれ!……こいつはタマツーか?」
「タマツー?」
「タマ爺知ってるよな」
「ああ、あのエロ爺」
人間だったらアロハ着てグラサン掛けてる様なファンキーなセクハラ爺猫。
「あの爺さん、元は飼い猫なんだよ。猫として生きてるとやばい歳になって引き上げたけど、代わりに息子をそこの家に送り込んだんだと。
で、そいつにつけられた名前がタマツー。
…うん、やっぱりタマツーだ」
そんなのが動画で踊っている。
「……なんだか盛大なドッキリの気がしてきたんだが」
「猫の王ならやりかねないが、シロも巻き込まれてるんだ。
流石にそれは無いだろ。
まあとりあえずは〈迷宮図書館〉に期待って事だな。頼りにしてるぜ」
「まかせて。そっちも護衛お願いね」
「おうよ」
「拙者たちに任せるでござる」




