11 金策
こちらに来てもう7日、時間的に新が帰ってくる頃だろう。
向こうでどうなっているかはわからないが、嫌な予感しか感じない。
猫集会に出かけて帰りが遅くなった時、町内中迷猫のポスターで埋め尽くされていたのは記憶に新しい。
あの後、一月近くありとあらゆる場所へ行くのに付き纏われたのだ。
出来るだけ早く戻ろうと新たに心に刻み、ようやく見つけた草を摘み取る。
「これで〈上薬草〉30個っと。一旦戻るか」
道中モンスターを倒して経験値獲得と剥ぎ取りをしながら町へ戻る。
先はまだ長そうだ。
―――
結局のところ、武器問題はすぐに解決した。
『新人訓練』終了後、ギルドカードを貰ったときに武器屋について聞いたら、交換を受け付けていると教えられた。
得意武器などが違う場合もあるので一式揃えているらしい。
なら、最初から出せやと思ったが、おとなしく短杖に交換してもらった。
〈ウッドケイン〉、一見すると小枝そのままに見えるが加工してあるため丈夫になってるそうだ。
実はただの棒などでもスキルは使えるという、未加工のものでは簡単なスキルを1回使えるかどうかという感じらしいが。
とにもかくにも一応武器は手に入れた、次はスキルだ。
詠唱さえすれば即発動である以上手数増やすのが重要だ、と書店へ向かった…まあ、買えなかった訳だが。
最低でも一冊銀貨50枚。
その時から金稼ぎに奔走する事になった、ついでにランク上げも。
色々とやってみて、『薬草採取』が一番効率がよかった。
〈薬草〉なら銅貨10枚、〈上薬草〉なら銀貨1枚、〈特上薬草〉なら銀貨20枚。
普通の冒険者は沢山ある中から目で見て探さなければならないが、自分は匂いを嗅ぎ分けて探せる。
流石に〈特上薬草〉は見つからなかったが、〈上薬草〉は結構見つかったので良い稼ぎになった。
他にも討伐依頼をいくつか受けて朝に街を出、夕方近くに戻ってくるのがここ数日の日課だ。
〈上薬草〉をいくつも採取してくる上、モンスター素材もそれなりにいい物を持ってくるので高く評価された。
《ゲイザー》でアイテムドロップしてるからだが、《マナブレット》は外傷を負わすことなく倒すので良い物を剥ぎ取る条件は揃っており、その先は個人の技術の問題なので疑問に思われてはいないようだ。
ただし、剥ぎ取りやすい代わりに〈ソウル〉が生じにくいらしく、今のところドロップしていない。
始めGランクだったのも今ではEランク、Dランクの依頼を請ける許可も貰っており、いくつかこなせば上がるという。
まあ、Dランクの依頼は採取場所にしろ討伐対象にしろ、効率悪そうなので請けるのはもう少し先の話になりそうだ。
そして、こういうぽっと出の新人が気に食わない者も居るわけで…
「――どうだ、悪い話じゃねぇだろう」
そういう類なんだろうな、と思いながら立ち塞がる奴らを見上げた。
ギルドに戻って素材などの清算をし終えた後、書店へ行く道すがら声をかけられた。
いつもギルドで嫌な視線をこちらに送っていたEランクの3人組。
最初は仲間に入らないか的な事を言っていた。
悪意が透けて見えたので断ったが、道を遮り更に熱心に話しかけて来た。
色々と言葉を並べ立てていたが彼らの主張を整理するとこうなる、仲間に入れてやるから〈上薬草〉の群生地の情報をよこせ。
情報さえ手に入れればてめぇに用はねぇ的な雰囲気満載の癖に、相手にされると思ってるのだろうか?
この世界では〈薬草〉などは自然に凝ったマナがその辺りの草に宿り、変質させる事で生じる。
人工栽培も試されているらしいが、うまくいったためしは無いという。
モンスターの類が湧く仕組みも同じで、凝ったマナが宿り変質した結果出現する。
もし仮に群生地があったとしたら、相当な量のマナが集まっているという事で、大量のモンスターも一緒にいるという事でもある。
一度彼らが戦っているのを目撃したが、〈リシカ平原〉によく出没する〈グラスウルフ〉の群れからはぐれた2匹を3人がかりで攻撃し、倒しきれずスピードに翻弄され仲間を呼ばれて追い回されていた。
近くに味方がいなければそのまま餌食になっていただろう。
そんな自分らの手に負えるかどうかの判断すらつかないのだろうか?
ちなみに、今のオレの場合だと〈グラスウルフ〉を沈めるのには《マナブレット》が1発~2発、その上攻撃も回避可能で群れ1つ程度なら敵ではない。
名乗りを信じるなら目の前の赤毛の男がバーク、右隣にいる黒髪の男がアカロ、左隣にいる金髪の女がヌクス。
全員〈地人〉の〈戦士〉で、〈ソウル:グラスウルフ〉らしき犬耳が誇らしげに立っている。
あんな戦い方で全員分揃えるのは大変だったろうに…色々な意味で可哀想な奴らだった。
余りにも可哀想なのでヒントをあげる事にした。
「自分の鼻で探せ」
「?! てめぇ、人が下手に出てればいい気になりやがって!!」
「そうよ、何様のつもり!」
何故かいきり立ったが、正直もう関わり合ってる暇は無い。
日が沈むと書店は閉まるのだ。
捕まえてこようとしたのを避ける。
「俺を踏み台にした?!」
「くそっ、待ちやがれ!!」
がやがや言っていたが、次第に遠くなり聞こえなくなった。
―――
ぎりぎりセーフで買えた本を持ってほくほく顔で戻ると、宿屋は騒然としていた。
何か緊急事態が生じたらしく、ギルドがEランク以上の人員を全員集めているとのこと。
とりあえず顔を出すとちょうど説明をしている最中だった。
「――報告によると周辺に約10体、洞窟内部にはまだ多数いると思われる。
通常この危険度はCランクに相当するが、生憎この支部にCランク以上の者は存在しない。
他の地域から呼ぶには時間がかかりすぎるため、ここに居る者たちで解決してもらう。
Dランクの者は強制、Eランクの者は志願だが出来れば行って欲しい。任務完了後Dランクに上げる事を保障しよう。
報酬は1体につき銀貨10枚だそう」
集めっているのは自分も含めて10名。
さっきの3馬鹿も一応いるが顔が引きつっている、あいつらは参加しないな。
報酬は頭割りすると少ないが素材分も考慮すればそれなりにはなるだろう。
パーティを組むから危険も少しは減るだろうし、〈迷宮図書館〉の前にCランク級のを経験するのも良いかも知れない。
と、そういえば何がいるんだろう、質問しておこう。
「ちょっと質問。遅れてきたんだけど、何が大量発生してるんだ?」
「〈ケイブゴブリン〉だ」




