10 ギルド
椅子と机が一方向へ向けて並べられて居る部屋。
その前方、後ろの者でも見えるように少し高くなっている位置にローブを身に纏った1人の老人がいた。
その老人は長い時間の疲労を欠片も見せず、いまだ熱弁をふるっていた。
「――であるからして我々はこの大地に存在するのである!」
(なんで年寄りって話し長いんだろうな、しかも色んな所に飛ぶ)
ここは〈ドーリカ連合〉の都市〈リシカ〉。
今、そこのギルドで『新人訓練』を受けていた。
―――
ディアガの村で宴会に巻き込まれた後、色々な情報を教えてもらった。
ここが4大陸の一つ、東の〈ドーリカ大陸〉である事。
他にも守人は居るが、今は素材を売りに街のギルドへ行ってる事。
ギルドは買取所、斡旋所、銀行で構成されていてある程度の大きさの都市ならば必ずあり、特に買取に力を入れているので人材確保のため『新人訓練』を無料で行っているという。
登録するとギルドカードを貰え、身分証になる他、銀行に預けた金が記され、提携店ならカードで買える様になるという。
金銭稼ぎと情報収集にもってこいだと思い案内を頼むと、他の守人が帰って来た後でならと承諾をもらった。
帰ってくるまでに拾った倒木などの下処理をするから出してくれと頼まれ出したら、既に〈丸太〉になっている事を驚かれた。
どうやら〈アイテムポーチ〉にゲーム的なドロップアイテム化はないようだ。
出かけていた守人と入れ替わって荷馬車に乗り村を出て、都市に近づいてきたあたりで売る物を実体化した。
売り上げは案内料と口止めを込めて2:8で分ける事に決めておいた。
全部で金貨2枚になり、分け前として銀貨40枚受け取った。
貨幣レートは1金貨=100銀貨らしい、他に銅貨も使用してるようだった。
案内の礼を述べて別れ、『新人訓練』の受付へと向かった。
〈ソウル〉を全身に付けているのは、珍しい部類ではあるが居なくもないので格好に疑いをもたれなかった。
訓練受講前に職業適性を調べられた、といっても水晶玉のようなものに手を置くだけだが。
魔力の性質によって〈戦士〉なら黄、〈斥候〉なら青、〈祈祷士〉なら白、〈魔術士〉なら黒の炎が灯るという。
複数の素質がある場合は色が混じるが、一旦スキルを覚えると性質が固定て不可逆らしい。
手を置くと黒い炎が灯り、猫の尾のように揺れた。
そして〈魔術士〉のクラスに振り分けられ、部屋へ通された。
素質ある人が少ないのか、他に2人しかいなかった。
―――
初めは〈魔術士〉の役割などを説明していたが、スキル辺りから様子が変わった。
高等な魔法理論を展開したかと思うと元冒険者としての実体験から奥さんとの馴れ初め、ギルドの成り立ち、この大陸の歴史など、とどまる事を知らずに話し続けた。
「お時間です、教授」
「うむ、そうか。諸君、明日の試験を行う。十分勉強するように。では、さらばじゃ」
余りの長さにギルド職員が止めに来たようだ、もっと早く来ても良い様な気がするが。
5時間に及ぶ講義から開放されたので、固まった感じがする体を伸ばす。
外はもう夕暮れになっていた。
開始前に渡された《マナブレット》が解説されている冊子を手に外へ出ると、木の杖と〈アイテムポーチ〉、仮ギルドカードが手渡される。
宿屋の場所を聞くとすぐ隣だというので向かった。
「いらっしゃ…っとガキか。坊主、こんなとこに何の用だ」
はげた頭の強面のおっさんが迎えてくれた。
1階は食事所になってるようで、酒盛りをしているのも居る。
仮ギルドカードを見せて、部屋が開いてるか聞く。
「小さいとこなら開いてるが…」
「そこで良い。いくらだ?」
「銀貨3枚だ」
銀貨を手渡すと、鍵を渡された。
「まいど、2階の一番奥の部屋だ」
「そういえば飯は出るのか?」
「いや、別料金だ。ほれメニュー」
手渡されたメニューで安かったパンとスープを注文して食べ、すぐに部屋へ引き上げる。
部屋はほぼ寝台で埋まっているような部屋だった。
―――
「…さて、どうするかな」
冊子―〈簡易スキル書:《マナブレット》〉は読めなかったが、インベントリから使用することで《マナブレット》を取得でき、《リード・○○》で呼び出すと翻訳されていたので大きな問題は無い。
だが、木の杖―〈ビギナーロッド〉を装備できなかった。
Strの問題かと思い1つ伸ばしてみたが変化は無かった。
武器装備制限:小というのが影響しているようだ、人の手に合うが猫の手には合わないという意味だろう。
〈ビギナーロッド〉の武器種別は〈杖〉、中型武器に分類される。
つまり、それ以下の小型武器のみ装備できるのだろう、ナイフは使えたし。
後日使える杖を探すとして、明日は地面に突き立てて試してみようと決めた。
そして今頭を悩ましているのが、ステータス割り振り。
目的を考えれば1人で行動するのが良い以上、ある程度何でもこなせるか、特化するのが好ましい。
ただ武器が制限されている以上何でもこなすのには少し無理があるので、Agi、Int特化するのが最良と思われた。
ただ、ここ数日の経験で疲労がある事がわかった。
Vitを上げると疲れが薄れるので、関係するのだろう。
新は感じていなかったように見えたが、単にモフモフで我を忘れていただけかもしれない。
結局のところ、状況に合わせて余裕を残して慎重に割り振っていくしかないだろう。
一応の目標は見つけた。
年寄りの長話の中に情報があった。
ここから南に行った所にある大都市〈スォーロ〉、そこに隣接する〈ドーリカ学院〉。
その中に、数多くの書物を集め、それらの力によってダンジョンと化した〈迷宮図書館〉があり、実力のある者―Cランク以上の冒険者にのみ立入りが許可されるという。
そこに行けば、何らかの手がかりが入るかもしれない。
その為に、まずは明日の試験だ。
次の日、《マナブレット》の使用試験は問題なくクリアした。
また5時間近く老人の話を、今度は立ったままで聞き続けなければいけなかったが。
耐えるのにVitにちょっと多めに消費してしまった…ま、いいか。




