表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
毒花の聖女は無愛想婚約者に愛でられる  作者: MIRICO


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

19/33

6 実験

「お父様、あそこに毒のお花があります」


 その花を見つけたのは、私が七歳の頃。王城の庭園で行われた、大規模なガーデンパーティの中でだった。

 そのときすでに私には毒の聖女の片鱗があり、王からも薬草などの学びを行うよう、お父様に指示がされていた。そうして見つけた、薔薇の垣根の足元。白色の花が、ピンク色の薔薇に混じって咲いていた。


「毒の花? どこにだい」

「あっちです」


 お父様は王と話していたが、それを邪魔しても何も言われないほど、私の力は珍しく、本当に毒があるのか、王も興味津々で、薬師を呼び、衛兵も交えて、その花を探した。


「あれ、お花が……」


 しかし、そこに行ったとき、私が見つけた花はなく、周囲に注目されて、すごく怖かったのを覚えている。

 あったはずの花がない。王との会話を邪魔したのに、私が案内した場所に毒の花はない。


 周囲から聞こえる、本当に毒の聖女なの? という声。本当は毒の聖女ではないのでは? と蔑む声。それに混じって、本当に毒の聖女のならば、自分で毒を作れるのでは? という声まであった。

 私は震えて、お父様の後ろに隠れてズボンを握りしめていたが、薬師が大声を上げた。


「王、この葉は間違いなくヤラーニャです。ヤラーニャは万能な薬草ですが、この茎の根本、紫に変色しているので、猛毒に変化しております。誰かが花をむしったとしたら……」


 周囲がざわめくと、王は静まるようにと皆を落ち着かせた。私がお父様の後ろでそれを見上げていると、王は膝を突き、私と視線を合わせた。


「毒花は、どこへ行っただろうか? そなたならば、見えるのではないか?」


 私は頷く。今さっきここで花を見て、お父様を呼びに行っている間に花がなくなったのだ。ならば、近くにあるだろうと、私は左右を見回して走り出す。どこにお花は行ったのだろう。私の目は特別だ。それがどこにあるのか、服の中だろうが、靴の中だろうが、透き通ったように色が見える。その色が他の誰にも見えないことを知ったのは、屋敷の鼠取りを見つけてからだが、そんなことはともかく、私は先ほどの色を探した。


「あ……」


 走り回ってあちこち見て、私はその色を見つけた。手のひらに入るような、小さな色だが、間違えることはない。その色は私の目には緑に見えたり紫に見えたり、いろいろな色に見えるが、毒であるとわかるように探知でき、はっきりとその色が鮮やかに目に映るのだ。

 けれど、女の子がその毒の入ったカップを差し出して、受け取った男の子が口をつけようとしていた。


「飲んじゃダメ! 毒が入ってる!!」


 銀色の髪の男の子が、近くにいる女の子に笑いかけながら、カップを口にした。私の声に気付かずに、男の子はそのまま毒の飲み物を喉に通した。色が体の中を通っていく。その瞬間、男の子が赤い鮮血を吐き出した。

 一斉に悲鳴が上がる。男の子が椅子から崩れるように落ちて、周囲の人たちが男の子に駆け寄った。


 癒しの聖女を呼ぶ声が聞こえた。女の子が呆然とそれを見つめる。第二夫人が、女の子、クリスティナ王女を抱きかかえた。隣にいた女性は、真っ青な顔になっていた。

 パーティ会場はあっという間に混乱し、騒ぎになった。男の子が落としたカップから、紅茶とあの花が溢れていた。


 私は人々の隙間をぬって、地面に倒れて意識を失っている男の子、アルテュール様に走り寄った。大人たちが私の邪魔をしたけれど、王の呼び声に私は自由になり、アルテュール様の背中に触れた。

 毒の色は一瞬で消える。ぴくりとも動かなかったアルテュール様だったが、毒が消えたことで、一瞬目を覚ました。けれど再び瞼を下ろしたため、走ってきた癒しの聖女たちに治療を受けた。


 毒に侵されてから除去には数秒の時間がかかった。癒しの聖女の治療は、数分後だった。毒を持ったヤラーニャの花は猛毒で、花を浮かべた紅茶を飲んだだけで、内臓を壊死させるほどだった。


 アルテュール様は三日三晩眠り続けた。猛毒の威力はアルテュール様の命をあと一息で吹き消すほどで、癒しの聖女たちの献身な治療でも、子供が含めばすぐに死に至るような猛毒では、完治させることができなかった。

 その結果、アルテュール様は人よりずっと体が弱くなったのである。


「おはな、お花、が、かわいかった、から、お茶に、浮かべたのっ」


 クリスティナ王女は、毒花が入ったお茶をアルテュール様に飲ませたことを、しゃくり声を上げながら説明した。乳母は子供の遊びだからとそれを咎めず眺めていたとして、首になって王城から追い出された。第二夫人はその事件のせいで心労が祟り、痩せ細っていった。


 クリスティナ王女は事故とはいえ王太子殿下を殺しかけた罪で、第二夫人と共に王宮から離れた宮に住まうことを命じられた。事実上の幽閉である。今は自由に出入りできるが、住まいは離宮のままだ。


 私がアルテュール様の婚約者となったのは、その事件の後。

 アルテュール様の命の恩人として、毒の聖女の力を持ち、アルテュール様の身辺を守れる者として。


 ガーデンパーティを騒がせた毒の聖女。私はそうやって、アルテュール様の婚約者として収まったのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ